時はカカロットが神社から出発したたった数分後の出来事にさかのぼる。
霊夢が部屋の片付けをしていると、茶の間の方から物音が聞こえたので不思議に思い、そちらへ向かった。
「カカロット?何か忘れものでもしたの?…あれ?」
霊夢が茶の間にやってくると、そこに見えたのはカカロットの姿だった。ついさっき出たばかりなのに、吸っていたパイプでも忘れたのだろうか。
…しかし、すぐに違和感に感づいた。顔つきや髪型、体格はカカロットにそっくりでありスカウターを装着しているが、肌の色や服装は明らかに違っていた。肌は浅黒く、グレースケール調の見た事もない衣装に身を包んでいる。
「よう」
「…アンタ誰よ!?」
霊夢はすぐにその異常な気を感じ取り、後ろへ下がる。しかし、ターレスはそれを追うように接近し、霊夢の腕を掴んで茶の間から外へ放り投げた。障子の戸を突き破り、庭の地面にゴロゴロと転がる。
「そうか…お前がカカロットの…。おい、カカロットは何処にいる?」
「…アンタ誰って…聞いてんのよ!」
カカロット似の謎の男が近づくと、霊夢は飛び上がり、その顎に蹴りを食らわせようと足を振り上げた。しかし男は顔を横へずらして躱し、逆に霊夢の足を掴んだ。
「俺の名はターレス。女、俺はカカロットに用があるんだ…」
「な、何の用なのよ…?」
「ふっふっふ…俺とカカロットは同族なんだ。サイヤ人という種族でな…赤ん坊の頃戦闘力の低さから地球に送り込まれたのを、ある理由で仲間が必要になったから連れ戻しに来たんだ」
「なんですって…サイヤ人?」
「まあ理解できないのも無理はない…。だがしかし、まさかサイヤ人がこんな異様な場所に迷い込んでいたとは…。少し調べてみたがここに住んでる連中の中には戦闘力100を超えた不思議な種族が多い…普通の人間は弱いがな。そんなのがゴロゴロいるこんな環境じゃ、あんなクズ同然だったカカロットが委縮し、地球人類を制圧する目的を達成できなくてもおかしくないな」
ターレスはそう言い放つと、霊夢を放り投げて地面に落とした。
「所詮は俺もアイツも使い捨ての下級戦士…サイヤ人はサイヤ人らしい生き方をするべきなのだ」
「使い捨て…?」
「もう一度聞くぞ、カカロットはどこにいる?」
だが霊夢は答えず、ゆっくりと立ち上がる。
「…そう、わかったわ…今まで弱いからってのけ者にしてきたヤツを、そっちの都合で必要になったからって連れ戻しに来たって訳ね…」
「む…戦闘力が上昇している…3300…!」
ターレスのスカウターに映る霊夢の戦闘力がどんどん上昇していく。
「まるでかぐや姫ね…あれは気に入らない話だわ…。勝手に子供押し付けて…いつか連れ戻しに来る…ソイツに出来た友達や周りの人との間に出来た心のつながりなんか全部無視で…。それも知らずに、昔のカカロットは仲間もいない孤独感を抱えたまま生きていた…どれだけカカロットの奴、寂しかったでしょうね」
霊夢は全身から激しい赤色のオーラを噴出し、ターレスに飛びかかる。
「バカが!その程度の戦闘力で俺に敵うものか!」
ターレスは向かい来る霊夢のパンチを腕でガードする。ビリビリと響くような衝撃が腕を伝うが、すぐに振り払い、霊夢を吹き飛ばす。
「はっ!」
だが霊夢は空中からターレスに向けて強力な気功波を撃つ。だがターレスはそれに拳をぶつけると、何とたったそれだけで気功波を打ち破った。
「う、うそ…!」
次の瞬間、ターレスは霊夢の背後に瞬時に移動し、両手を合わせて作った拳を振り上げた。
「終わりだ」
それを脳天へと叩きつけ、霊夢はあまりの痛みに気を失い、地面に落ちた。ターレスは霊夢の頭を掴み上げると、スカウターが何か戦闘の気配を察知しているのに気付き、その方角を睨んだ。
「俺の子分と何者かが戦ってる…カカロットか?」
ターレスは戦いの気配をする方角へ向けて高速で飛び立つのだった。
カカロットは気を失った霊夢の喉元を掴んで持ち上げているターレスを見ると、それをシロナに見せないように目元を手で覆い、庇うようにして背後へ隠した。
「カ、カカロット…」
か細い声で霊夢がそう呟いた。
「おいテメェ!霊夢を離せ!!!」
怒気を込めて怒鳴りかかるカカロット。
「黙れ!静かにしろ、俺がちょいとでも力を込めればこの女の首は捩じ切れる」
「くっ…!」
ターレスの手の中で苦しそうな表情を浮かべる霊夢を見て、カカロットはギリリと歯を噛み締めた。
「カカロット…会いたかったぜ。やはりお前の父親にそっくりだな…」
「なに…!?」
その言葉を聞いて、カカロットは驚いた。この男も自分とそっくりではあるが、別に父親が存在したということ。
「俺とお前はわずかなサイヤ人の生き残り…。俺たちサイヤ人を絶滅寸前に追い込んだヤロウに、復讐をするつもりはないか?」
「さ、サイヤ人の生き残り…だと?」
ターレスから発せられたサイヤ人という言葉を聞いて、カカロットは衝撃を受けるとともにひどく動揺する。
「まさか、自分がサイヤ人である事すら忘れている訳ではないだろう?自分の生い立ちを話してみろ」
「あ、ああ…俺はサイヤ人カカロットだ…!昔、この幻想郷の地底世界に不思議な球体が降ってきて、そこから出てきた赤ん坊だった俺はこの地で育った…!」
「ちゃんと覚えてるじゃないか。いいか、サイヤ人とは宇宙で最も強い戦闘種族だ!黒髪に黒い瞳、そしてその腰の尻尾が何よりの証拠だ」
「な…俺が宇宙人だと…!?」
「その昔、俺たちサイヤ人は環境の良い星の人間どもを殲滅し、その星を他の金持ちの異星人たちに高く売りつける地上げ屋の仕事をしていたのさ。しかしある時、俺たちをこき使ってやがったヤロウが急に裏切ってサイヤ人をほぼ絶滅させた!生き残ってヤロウの傘下に残ったのは俺を含めて四人だが、お前のようにはぐれ者のサイヤ人がこの宇宙のどこかに散らばっているかもしれない」
ターレスは掴んでいた霊夢を、カカロットへ向けて放り投げた。カカロットはそれを上手くキャッチし、安全を確かめた。
「う…」
「大丈夫か?」
「ええ…何とか…」
「そこでだ、カカロット。もしもそのヤロウを放っておけば、いつかこの全宇宙がその手に落ちる。いずれはこの地球も毒牙にかけられる。俺は…そのヤロウ、フリーザをぶっ殺すのに一人でも強い戦士が必要だ。戦闘力3万…お前のような勇猛な戦士が欲しい」
ターレスがスカウターでカカロットの戦闘力を測定すると、ちょうど3万と示していた。
しかし、カカロットは霊夢を背中に背負い、シロナを小脇に抱えながら言った。
「付き合ってられん」
「まあそう邪険にするなよ…。俺とお前は数少ないサイヤ人の仲間…仲よくしようや!」
そう言うと、ターレスは一発のエネルギー弾をカカロットへ向けて放った。それを難なく避け、カカロットは下に広がる森の中へ降りていく。
ターレスはにやりと笑うと腕を組みながらゆっくりとそれを追いかける。
「いいかシロナ、父ちゃんはアイツを倒してくる…だから絶対に霊夢から離れるな!いいな?」
「わ、わかった父ちゃん!」
意識が朦朧としている霊夢を寝かせ、シロナにそう言い聞かせると、カカロットは猛スピードで上空へと舞い上がり、ターレスに激突した。後方へ吹っ飛ぶターレスだが何ともない様子で態勢を立て直す。
「馬鹿な奴だカカロット!貴様もサイヤ人としての自覚があるのなら、悔しくないのか!?」
「うるせぇ!俺がこの星の制圧を任されていたことも知っている…だがそんな事はどうでもいい。俺は俺、サイヤ人のカカロットだ!俺は俺のやりたいように生きるだけだぜ」
「ますます気に入ったぞカカロット。だがお前がやりたいように生きるにはフリーザがいずれ障害となるぞ」
「どうでもいいね、そんな事。実害が及んだその時に俺がぶっ殺すだけだ」
「今のお前にフリーザは倒せない。下級戦士でありながらそれほどの戦闘力を持っていたとしてもだ」
「そうか、これでも無理だと思うか?」
カカロットは全身から真っ赤なオーラを噴出する。ターレスのスカウターに表示された数値が見る見るうちに跳ね上がり、やがてボンと爆発して壊れてしまう。
「少なくとも戦闘力10万以上か…!いいぞカカロット!どうしてもお前を戦力にしたい!いくらズタボロにしてもこっちにはメディカルマシンがあるからな!!」
ターレスも負けじと全身から白っぽい紫色のオーラを纏い、カカロットへ接近する。そしてそれを迎え撃とうと飛び出したカカロットとの、サイヤ人対決が始まろうとしているのだった…。
一応、時系列は
エイジ753年 ピッコロ大魔王が復活し国王に
エイジ754年 月の客との戦い
エイジ757年 Dr.ウィローとの戦い
エイジ761年 ピッコロvsラディッツ
エイジ762年10月31日~11月1日 幻想郷にターレス襲来
〃 11月3日 ベジータ・ナッパ地球へ襲来
となってます。