“定食屋で面白い試みをしている”とはたてに言われて、私達は彼女と共に定食屋にやって来た。其処で私達を待っていたのは、店先に貼ってある一際目を引く貼り紙だった…
ラディッツ:何々…特製メガ盛り天丼キャンペーン実施中…
咲夜:30分以内に完食した方には、賞金として金一封。但し、失敗した場合は全額自腹…
はたて:どう?中々面白いと思わない?
咲夜:別に…外の世界では珍しい話って程じゃ無かったし…
はたて:そ、そうなの?
咲夜:はぁ…何があるのかと思えば、こんな事だったなんて…
ラディッツ:まぁ暇潰しにはなりそうだな。折角だし、挑戦してみるのも良いだろう。
咲夜:アレ?やる気満々?
はたて:アハハラディッツなら、完食間違い無しだね
ラディッツ:さて、どうかな…
はたて:そんじゃま、行くとしますか。
ラディッツ:おう。
咲夜:やれやれ…
妙にやる気満々のラディッツさんと共に、私達は定食屋へと入店した。すると、何やら店内が騒がしくて…
客A:マジかよおい…あの女、メガ盛り天丼を苦にもしてねぇぞ…
客B:化け物め…
客C:違う…奴は悪魔だ…
はたて:何だろ…
ラディッツ:聞いた限り、どうやら先客が居る様だな。
咲夜:大方の予想は付きますが…
店員A:いらっしゃいませ。
すぐに店員が私達に気付き、近付いて来た
ラディッツ:この特製メガ盛り天丼キャンペーン、まだやってるのか?
店員A:はい。御三方共挑戦されますか?
咲夜:いえ、私は普通の定食で御願いします。
はたて:私も応援担当って事で。
ラディッツ:挑戦するのは俺だ。
店員A:畏まりました。挑戦者用の特別席がございますので、此方にどうぞ。
ラディッツ:あぁ。
ラディッツさんは挑戦者用の特別席とやらに案内され、応援役のはたても彼にくっ付いて移動した
客A:おい、あの男もやる気だぞ…
客B:バカな…あの量を30分でなんて無理がある…
客C:自殺行為だぞ…俺もやってみたが、正直今は後悔してるくらいだ…
経験者は語ると言う奴かしら…まぁ彼ならば何の問題も無く完食し、賞金の金一封を手にするだろう。取り敢えず、私は特別席のすぐ横の席に着いて様子を見る事にした。ふと特別席の方を見ると、其処に居たのは…
幽々子:あら、ラディッツ君じゃない
妖夢:あ、どうも。
ラディッツ:幽々子と妖夢か。
まぁ予想はしてたけど、案の定と言うか何と言うか…其処に居たのは、白玉楼の亡霊姫と御付きの剣士だった。幻想郷で食べる事と言えば、彼女が食い付かない筈が無かった…
はたて:分かってたけど、やっぱりだよね…
妖夢:スミマセン…
はたて:いや、謝らなくても良いんだけど…
ラディッツ:アンタも特製天丼を食いに来たのか?
幽々子:勿論よこの機会、見逃す手は無いわ
ラディッツ:そうかよ…
はたて:と言うか、既に食べてるじゃん…
ラディッツさん達が特製天丼の完食に挑戦している最中、私は妖夢と共に普通に食事する事になった
咲夜:妖夢、貴方も大変ね。こんな事に付き合わされて…
妖夢:いえ、問題ありません。それに、食費が浮くのは此方としては大助かりですから。
咲夜:成る程…
妖夢:咲夜さんは何故此方に?
咲夜:御嬢様から臨時の休みを頂いたのよ。只、何をすれば良いか分からなくて…取り敢えず、彼に付いて人里にやって来て…色々あって今に至ると言う訳よ。
妖夢:そうなんですね。
咲夜:貴方は、御休み貰えないの?
妖夢:…貰えると思いますか?
咲夜:…ごめんなさい…
本当に色々苦労してるのね、この子…しかし、白玉楼なのにブラックとはコレ如何に…
幽々子:スミマセーン!特製天丼の御代わり、御願いしまーす
ラディッツ:ん?何だ、御代わり自由なのか?じゃあ、此方も御代わりだ。
店員達:ひいぃぃ!
店長:勘弁して下さい!
妖夢:幽々子様!食べるのは1杯で良いんですよ!
咲夜:うんうん…
妖夢:もう10杯以上食べてるでしょう!このままでは、赤字が原因でこの御店が潰れてしまいます!
咲夜:おぉう…
2人の並外れた食欲に阿鼻叫喚する妖夢や店員達、1人だけ空気化してたはたてを尻目に、私は食事を続けた。それから暫くして、私達は御店を後にしたんだけど…
幽々子:良い味だったわー
ラディッツ:あぁ、悪く無かったな。
はたて:結局、2人共20杯ずつ完食してたもんね。
妖夢:と言うか、あんなに食べてすぐだと言うのに、何で平気そうにしてるんですか?
幽々子:まだまだ食べられるからだけど?
ラディッツ:俺もだ。この程度じゃ、腹八分目にもなってねぇよ。
妖夢:食欲の化け物…
幽々子:賞金も頂いたし、満足満足
咲夜:頂いたと言うより、コレ以上は勘弁してくれって言う店側の人達の意思表示だった気がするわ…
はたて:御店の人達、皆揃って涙目だったもんね…
妖夢:半ば御店から追い出された感じでしたからね。出禁にならなきゃ良いんですけど…
咲夜:可能性は高そうね。
出禁にならない事を願いつつ、私達は幽々子や妖夢と別れた
はたて:行っちゃったね…
咲夜:あんなんでも、一応冥界を治める者だからね。いつまでも持ち場を蛻の殻にしてるって訳にはいかないんでしょ。
ラディッツ:会おうと思えば何時でも会えるんだ、別れを惜しむ必要はねぇだろ。
はたて:確かにそうだね。
咲夜:それで?コレからどうしますか?
ラディッツ:お前がやりたい事を言え。付き合うぞ。
咲夜:と言われても…
はたて:何か無いの?
咲夜:いえ、特には…私は、物心付いた時には既に孤独だった…御嬢様に拾って頂けなければ、恐らくあのまま…それからは、少しでもその御恩を返す為に御嬢様の為に働く毎日…それを生き甲斐にして来た…だから、誰かと一緒に遊んだ経験が殆ど無いので、こんな時どうして良いやら…
はたて:・・・
咲夜:分かったでしょ?私は、働く事しか知らない不器用な女なのよ…
ラディッツ:咲夜、お前は奴等と違って命に限りのある人間なんだ。レミリア達の為にと言う気持ちは素直に尊敬するが、偶には我儘を言ってもバチは当たらんと思うぞ。
咲夜:我儘…
ラディッツ:レミリア達だって、難しい顔してるお前よりも人間らしく笑ってるお前の方が良いと言うだろうよ。
咲夜:そう…でしょうか…
ラディッツ:あぁ。だから、やりたい事を何でも言え。時間も金もある、とことん付き合うぞ。
咲夜:・・・
はたて:えーっと…私は御邪魔みたいだし、今日の所は空気を呼んで退散させて貰うよ。
ラディッツ:ん?そうか…悪いな。
はたて:良いってそれじゃ御両人、どうぞごゆっくりまたね
ラディッツ:あぁ。
咲夜:えぇ。
そう言った後、はたては走り去って行った。普段なら飛んで行く所なんだろうけど、今は正体がバレない様にしてるからかな…本当に、妖怪って色々と不便な存在だわ…
ラディッツ:で?どうするんだ?
咲夜:そうですね…じゃあ、少しだけ付き合って貰っても良いですか?
ラディッツ:おう。
私は、彼と共に呉服屋に向かった。何故かって?呉服屋に行ったとなれば、やる事は1つしか無いでしょ?
ラディッツ:服を見たいと言い出すとはな…
咲夜:やはり、おかしいでしょうか…
ラディッツ:いや、良いんじゃねぇか?お前も女なんだ、御洒落したいと思うくらいは当然だろ。
咲夜:フフ…
私は、かなりの時間を掛けて服を試着し続けた。その数、何と数十着…少し張り切り過ぎてしまったかしらね…いつの間にか、私の中から彼は監視役なんだと言う思いとモヤモヤした気持ちは完全に消え失せていた。散々化け物のメイドだ等と後ろ指を指され、忌み嫌われていた私だったけど、久々に普通の人間の女に戻れた気がした。この時の私は、一体どんな顔をしていたんだろう…試着した中から、特に気に入った数着を購入して店の外に出た。因みに、支払いと荷物は全てラディッツさんに任せた。我ながらちゃっかりしているなと思ったけど、我儘を言って良いと言ったのは彼だものね?店を出ると、既に夕方だった。夕焼けのオレンジ色が、辺りを美しく染め上げていた
咲夜:流石に時間を掛け過ぎてしまいましたかね…
ラディッツ:だな。そろそろ帰るとするか。
咲夜:そうしましょうか。とその前に…
ラディッツ:どうした?
咲夜:今日は、私の我儘に付き合って頂いて有難うございました。本当に楽しかったです
私は、ラディッツさんの方に向き直り、彼に頭を下げた。此処に来た時とは違い、今の彼には嫌な気持ち等欠片も感じていなかった
ラディッツ:そりゃ何よりだ。さぁ、帰るぞ。夕飯に遅れちまうからな。
咲夜:はい
明日からは、またいつも通りの生活が始まる。でも、もしも御嬢様が許して下さるならば…コレからも、時々今日みたいに我儘を言わせて貰おうかな…そんな事を思いつつ、私は足取り軽やかに紅魔館へと向かった
いつの間にか、早食いから大食い選手権になっていたでござる(企画崩壊)
店長と店員に合掌(チーン)
最後は、咲夜さんとの距離がほんの少し縮まった感じにしたかった…