誇り高き弱虫の幻想郷生活   作:パラリズム

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第373話

遅めの昼食を摂った後、ラディッツ一行は月の宮殿へとやって来ていた。しかし、宮殿は先の戦いにより崩壊しており、動ける玉兎の兵士達による復興作業が始まっていた

 

ラディッツ:改めて見ると酷い有り様だな。

 

はたて:ま、こうなった原因は私達にあるんだけどね。

 

ラディッツ:・・・少しやり過ぎたか?

 

妹紅:だが、加減して勝てる相手じゃ無かっただろ?

 

ラディッツ:それはそうだが・・・

 

玉兎達の作業を横目に通路を進み、最奥部に近付いた彼等を、レイセンが出迎えた

 

レイセン:御待ちしていました、皆さん。

 

ラディッツ:お前は確か・・・

 

レイセン:レイセンです。その節は御世話になりました。

 

レイセンは、そう言いつつ頭を下げた。その節と言うのは、フランとの戦いに敗れた後、兎人参化に部下諸共人参にされていた彼女だったが、ラディッツが兎人参化を倒した事により元に戻れた時の事である

 

ラディッツ:元気そうだな。そう言えば、あの後姿を見掛けなかったが・・・

 

レイセン:豊姫様から、「戦いに巻き込まれない様に部下と共に遠くに避難しろ」と言う命令を受けまして。道中で見付けた清蘭や鈴瑚も拾い、皆で避難していました。

 

ラディッツ:そうなのか。何にせよ、無事で何よりだ。

 

レイセン:貴方達も、御無事で何よりです。

 

鈴仙:えっと・・・王の事についてだけど・・・

 

レイセン:豊姫様達から御話は伺っています。邪悪な力に蝕まれていた王を、貴方達が救ってくれたと。

 

ラディッツ:成り行きでそうなっただけだがな。

 

レイセン:豊姫様、依姫様がこの先で御待ちです。どうぞ御入り下さい。

 

ラディッツ:あぁ、スマンな。

 

レイセンに通され、玉座があった最奥部に到着した彼等を、綿月姉妹が出迎えた

 

依姫:待っていたぞ、地上人。

 

豊姫:遅かったわね?

 

ラディッツ:スマン、俺が寝坊しちまってな。

 

依姫:激しい戦いだったからな、無理も無い事か・・・

 

フラン:王様の容態はどうなの?

 

依姫:治療はさせているが、生憎まだ御目覚めにはなっていない。

 

豊姫:命に別状は無いから、心配しなくて大丈夫よ。

 

フラン:そっか、良かった。

 

輝夜:フフ・・・

 

依姫:姫様、どうかなさいましたか?

 

輝夜:だって、私達は昨日まで敵対していた筈だったのに、今はこうして普通に話せているんだもの。それが、何だか妙な感じに思えちゃって。

 

依姫:成る程、言われてみれば確かに・・・

 

豊姫:フフ、言い得て妙だわ♪

 

そう言いつつ、笑みを浮かべる綿月姉妹。因みに、言い得て妙とは、その通りと言う意味である

 

豊姫:王の事に関して、貴方達には心から感謝しているわ。王の闇の呪縛を解いてくれて、本当に有難う。

 

依姫:私からも、礼を言わせて貰う。

 

綿月姉妹は、頭を下げて御礼を言った

 

ラディッツ:気にするな。俺は、ダチを連れ戻しに来ただけだ。言葉は悪いが、王を助けたのはついでと言うか、成り行きでそうなっただけだ。

 

豊姫:ついででも何でも、王が助かったのは事実だわ。

 

妹紅:王にあんな力を与えた連中には、心当たりがある。奴等の討伐は、私達に任せて貰うぞ。

 

豊姫:了解。我々も、調査を進めていくつもりよ。今後は手と手を取り合い、互いに何か分かったら、すぐに連絡し合いましょう。

 

依姫:所謂、休戦協定と言う物だ。

 

豊姫:我々の力が必要になった際には、いつでも呼んでくれと伝えておいてね。

 

ラディッツ:あぁ、上の連中にはそう伝えておこう。

 

豊姫:宜しくね。

 

依姫は、ゆっくりと鈴仙の方へと歩み寄る

 

依姫:鈴仙よ。お前に送った手紙にも書いてあったと思うが、お前が過去に犯した罪・・・仲間を捨て、地上に逃げた罪は、もう刑期が明けている。お前さえ望むならば、またこの月で我々と共に暮らす事も可能だ。どうする?

 

鈴仙:・・・折角の御言葉ですが、御断りさせて頂きたく思います。だって、私には・・・

 

鈴仙は、ラディッツ、フラン、妹紅、はたて、輝夜の顔を次々に見ていく。そして・・・

 

鈴仙:今の私には、心の底から一緒に居たいと思える仲間が出来ました。自由の身であると言うならば、最後の時まで彼等と共に居させて下さい。彼等と共に戦わせて下さい。

 

綿月姉妹を真っ直ぐ見据え、ハッキリと言い放った

 

依姫:フッ・・・迷いの無い、良い目をする様になったな。

 

豊姫:地上人の皆さん。どうか、ウチの子と末長く仲良くしてあげてね。

 

ラディッツ:言われるまでも無い。

 

フラン:任せて♪

 

妹紅:今更、縁を切るつもりも無いさ。

 

はたて:そう言う事♪

 

輝夜:しっかり面倒を見るから、安心して頂戴♪

 

豊姫:フフ♪良い仲間と巡り会えたわね、鈴仙。

 

依姫:置いてきぼりにならない様に、頑張らなくてはな。

 

鈴仙:ハイ!

 

鈴仙は、満面の笑顔で力強く答えた

 

依姫:さて・・・お前達は、いつ月を発つつもりだ?

 

ラディッツ:そうだな・・・月の王が目覚めるのを待ち、挨拶でもしてからと言いたい所だが、生憎そんな時間もねぇ。此処に居ても特にやる事も無いし、出来れば直ぐにでも出発したい所なんだが・・・

 

豊姫:そう・・・

 

依姫:帰る手段はあるのか?

 

ラディッツ:此処に来る時に使った宇宙船がある。それで幻想郷まで帰るつもりだ。

 

依姫:成る程・・・

 

豊姫:もし貴方達さえ良ければ、もう1日だけ待って貰えないかしら?

 

ラディッツ:何故だ?

 

豊姫:せめて、月の恩人である貴方達を見送る為の準備をさせて欲しいの。それと、地上に帰るまでの物資も必要でしょう?

 

ラディッツ:其処までして貰わなくても・・・

 

妹紅:良いじゃないか。確か、来る前に積み込んだ食糧が尽きかけてた筈だし。

 

はたて:主に、誰かさんの食欲のせいでね。

 

ラディッツ:・・・

 

依姫:必要ならば、宇宙船の整備もやらせよう。帰路の途中でトラブルがあっては困るだろう?

 

輝夜:正に至れり尽くせりね♪

 

ラディッツ:何から何までスマンな・・・

 

豊姫:気にしなくて良いわよ。私達が、何か御礼をしたいだけだから。

 

依姫:もし望むならば、帰るまでの時間で少しだけ、この私がお前達を鍛え直してやるが?

 

鈴仙:え゛っ!?

 

依姫のその一言に、鈴仙、はたて、妹紅は一瞬で固まった

 

依姫:実は、先程から手合わせしたいと思っていた所なんだ。特に、其処の男とな。

 

依姫は、ラディッツに剣の切っ先を向けた

 

ラディッツ:俺か?

 

依姫:そうだ。仮にも、我等の王に勝利を収めた程の男だ。是非とも手合わせ願いたい。

 

ラディッツ:奇遇だな。月の王の側近との戦いを楽しみにしていたんだが、機会に恵まれなかったからな。そう言う事なら大歓迎だぜ。

 

ラディッツは、やる気満々に笑みを浮かべる

 

はたて:い、今からやる気!?

 

妹紅:本気かよ!?

 

ラディッツ:当たり前だ。こんな機会はまたとねぇからな。

 

依姫:鈴仙、お前も一緒にやるんだ。お前の成長ぶりも見ておきたいからな。

 

依姫の切っ先が、今度は鈴仙に向いた

 

鈴仙:に・・・

 

依姫:に?

 

鈴仙:逃ーげるんだよぉーっ!

 

鈴仙は、文字通り脱兎の如く全力で逃げ出した

 

依姫:待て!何故逃げる?さっきの言葉は何処に行った?

 

妹紅:そりゃまぁ・・・なぁ?

 

はたて:あんな化け物達の戦いに巻き込まれたら、命が幾つあっても足りないだろうし・・・

 

フラン:また行方不明になっちゃう!うどんげ!待ってーっ!

 

フランは、鈴仙の後を追い掛ける

 

妹紅:そんじゃま・・・

 

はたて:私達も・・・

 

妹紅&はたて:退散!

 

その後、はたてと妹紅もその場から退散した

 

依姫:逃がしたか・・・

 

ラディッツ:アイツら・・・

 

輝夜:皆元気ねぇ♪

 

豊姫:そうですねぇ♪

 

そんな彼等を、ニコニコしながら見守る輝夜と豊姫だった・・・




と言う訳で、もう一泊する事になりましたとさ(笑)

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