遅めの昼食を摂った後、ラディッツ一行は月の宮殿へとやって来ていた。しかし、宮殿は先の戦いにより崩壊しており、動ける玉兎の兵士達による復興作業が始まっていた
ラディッツ:改めて見ると酷い有り様だな。
はたて:ま、こうなった原因は私達にあるんだけどね。
ラディッツ:・・・少しやり過ぎたか?
妹紅:だが、加減して勝てる相手じゃ無かっただろ?
ラディッツ:それはそうだが・・・
玉兎達の作業を横目に通路を進み、最奥部に近付いた彼等を、レイセンが出迎えた
レイセン:御待ちしていました、皆さん。
ラディッツ:お前は確か・・・
レイセン:レイセンです。その節は御世話になりました。
レイセンは、そう言いつつ頭を下げた。その節と言うのは、フランとの戦いに敗れた後、兎人参化に部下諸共人参にされていた彼女だったが、ラディッツが兎人参化を倒した事により元に戻れた時の事である
ラディッツ:元気そうだな。そう言えば、あの後姿を見掛けなかったが・・・
レイセン:豊姫様から、「戦いに巻き込まれない様に部下と共に遠くに避難しろ」と言う命令を受けまして。道中で見付けた清蘭や鈴瑚も拾い、皆で避難していました。
ラディッツ:そうなのか。何にせよ、無事で何よりだ。
レイセン:貴方達も、御無事で何よりです。
鈴仙:えっと・・・王の事についてだけど・・・
レイセン:豊姫様達から御話は伺っています。邪悪な力に蝕まれていた王を、貴方達が救ってくれたと。
ラディッツ:成り行きでそうなっただけだがな。
レイセン:豊姫様、依姫様がこの先で御待ちです。どうぞ御入り下さい。
ラディッツ:あぁ、スマンな。
レイセンに通され、玉座があった最奥部に到着した彼等を、綿月姉妹が出迎えた
依姫:待っていたぞ、地上人。
豊姫:遅かったわね?
ラディッツ:スマン、俺が寝坊しちまってな。
依姫:激しい戦いだったからな、無理も無い事か・・・
フラン:王様の容態はどうなの?
依姫:治療はさせているが、生憎まだ御目覚めにはなっていない。
豊姫:命に別状は無いから、心配しなくて大丈夫よ。
フラン:そっか、良かった。
輝夜:フフ・・・
依姫:姫様、どうかなさいましたか?
輝夜:だって、私達は昨日まで敵対していた筈だったのに、今はこうして普通に話せているんだもの。それが、何だか妙な感じに思えちゃって。
依姫:成る程、言われてみれば確かに・・・
豊姫:フフ、言い得て妙だわ♪
そう言いつつ、笑みを浮かべる綿月姉妹。因みに、言い得て妙とは、その通りと言う意味である
豊姫:王の事に関して、貴方達には心から感謝しているわ。王の闇の呪縛を解いてくれて、本当に有難う。
依姫:私からも、礼を言わせて貰う。
綿月姉妹は、頭を下げて御礼を言った
ラディッツ:気にするな。俺は、ダチを連れ戻しに来ただけだ。言葉は悪いが、王を助けたのはついでと言うか、成り行きでそうなっただけだ。
豊姫:ついででも何でも、王が助かったのは事実だわ。
妹紅:王にあんな力を与えた連中には、心当たりがある。奴等の討伐は、私達に任せて貰うぞ。
豊姫:了解。我々も、調査を進めていくつもりよ。今後は手と手を取り合い、互いに何か分かったら、すぐに連絡し合いましょう。
依姫:所謂、休戦協定と言う物だ。
豊姫:我々の力が必要になった際には、いつでも呼んでくれと伝えておいてね。
ラディッツ:あぁ、上の連中にはそう伝えておこう。
豊姫:宜しくね。
依姫は、ゆっくりと鈴仙の方へと歩み寄る
依姫:鈴仙よ。お前に送った手紙にも書いてあったと思うが、お前が過去に犯した罪・・・仲間を捨て、地上に逃げた罪は、もう刑期が明けている。お前さえ望むならば、またこの月で我々と共に暮らす事も可能だ。どうする?
鈴仙:・・・折角の御言葉ですが、御断りさせて頂きたく思います。だって、私には・・・
鈴仙は、ラディッツ、フラン、妹紅、はたて、輝夜の顔を次々に見ていく。そして・・・
鈴仙:今の私には、心の底から一緒に居たいと思える仲間が出来ました。自由の身であると言うならば、最後の時まで彼等と共に居させて下さい。彼等と共に戦わせて下さい。
綿月姉妹を真っ直ぐ見据え、ハッキリと言い放った
依姫:フッ・・・迷いの無い、良い目をする様になったな。
豊姫:地上人の皆さん。どうか、ウチの子と末長く仲良くしてあげてね。
ラディッツ:言われるまでも無い。
フラン:任せて♪
妹紅:今更、縁を切るつもりも無いさ。
はたて:そう言う事♪
輝夜:しっかり面倒を見るから、安心して頂戴♪
豊姫:フフ♪良い仲間と巡り会えたわね、鈴仙。
依姫:置いてきぼりにならない様に、頑張らなくてはな。
鈴仙:ハイ!
鈴仙は、満面の笑顔で力強く答えた
依姫:さて・・・お前達は、いつ月を発つつもりだ?
ラディッツ:そうだな・・・月の王が目覚めるのを待ち、挨拶でもしてからと言いたい所だが、生憎そんな時間もねぇ。此処に居ても特にやる事も無いし、出来れば直ぐにでも出発したい所なんだが・・・
豊姫:そう・・・
依姫:帰る手段はあるのか?
ラディッツ:此処に来る時に使った宇宙船がある。それで幻想郷まで帰るつもりだ。
依姫:成る程・・・
豊姫:もし貴方達さえ良ければ、もう1日だけ待って貰えないかしら?
ラディッツ:何故だ?
豊姫:せめて、月の恩人である貴方達を見送る為の準備をさせて欲しいの。それと、地上に帰るまでの物資も必要でしょう?
ラディッツ:其処までして貰わなくても・・・
妹紅:良いじゃないか。確か、来る前に積み込んだ食糧が尽きかけてた筈だし。
はたて:主に、誰かさんの食欲のせいでね。
ラディッツ:・・・
依姫:必要ならば、宇宙船の整備もやらせよう。帰路の途中でトラブルがあっては困るだろう?
輝夜:正に至れり尽くせりね♪
ラディッツ:何から何までスマンな・・・
豊姫:気にしなくて良いわよ。私達が、何か御礼をしたいだけだから。
依姫:もし望むならば、帰るまでの時間で少しだけ、この私がお前達を鍛え直してやるが?
鈴仙:え゛っ!?
依姫のその一言に、鈴仙、はたて、妹紅は一瞬で固まった
依姫:実は、先程から手合わせしたいと思っていた所なんだ。特に、其処の男とな。
依姫は、ラディッツに剣の切っ先を向けた
ラディッツ:俺か?
依姫:そうだ。仮にも、我等の王に勝利を収めた程の男だ。是非とも手合わせ願いたい。
ラディッツ:奇遇だな。月の王の側近との戦いを楽しみにしていたんだが、機会に恵まれなかったからな。そう言う事なら大歓迎だぜ。
ラディッツは、やる気満々に笑みを浮かべる
はたて:い、今からやる気!?
妹紅:本気かよ!?
ラディッツ:当たり前だ。こんな機会はまたとねぇからな。
依姫:鈴仙、お前も一緒にやるんだ。お前の成長ぶりも見ておきたいからな。
依姫の切っ先が、今度は鈴仙に向いた
鈴仙:に・・・
依姫:に?
鈴仙:逃ーげるんだよぉーっ!
鈴仙は、文字通り脱兎の如く全力で逃げ出した
依姫:待て!何故逃げる?さっきの言葉は何処に行った?
妹紅:そりゃまぁ・・・なぁ?
はたて:あんな化け物達の戦いに巻き込まれたら、命が幾つあっても足りないだろうし・・・
フラン:また行方不明になっちゃう!うどんげ!待ってーっ!
フランは、鈴仙の後を追い掛ける
妹紅:そんじゃま・・・
はたて:私達も・・・
妹紅&はたて:退散!
その後、はたてと妹紅もその場から退散した
依姫:逃がしたか・・・
ラディッツ:アイツら・・・
輝夜:皆元気ねぇ♪
豊姫:そうですねぇ♪
そんな彼等を、ニコニコしながら見守る輝夜と豊姫だった・・・
と言う訳で、もう一泊する事になりましたとさ(笑)