誇り高き弱虫の幻想郷生活   作:パラリズム

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酒饅頭喧騒譚 その5


第429話

幻想郷の実力者達が突如正気を失い、暴れ出すと言う事件が発生した。人里で慧音、永遠亭で永琳、命蓮寺で白蓮、紅魔館で咲夜を正気に戻したラディッツ一行は、彼女達の証言から事件の原因を作ったのが白玉楼の管理人である幽々子だと確信した。現在、偶々紅魔館を訪れていた幽々子に一連の事情を説明中・・・

 

幽々子:えぇっ!?私が皆にあげた御饅頭が原因で、皆が暴れ出した!?

 

ラディッツ:そうとしか考えられん。慧音も、永琳も、御師さん(白蓮)も、咲夜も、皆アンタが作った饅頭のせいでおかしくなったんだ。

 

幽々子:そんな筈無いわよ。だって、私が皆にあげたのは、私御手製の酒饅頭なのよ。

 

ラディッツ:酒饅頭?

 

幽々子:そうよ。ずっと大事に漬け込んでおいた、30年物の梅酒を使って御饅頭を作ったの。だから、酒饅頭よ♪

 

鈴仙:此処に来て新しい情報が・・・

 

アリス:饅頭に使った御酒は、梅酒だったのね。

 

ラディッツ:因みに、その梅酒に使った梅はどんなのだったか覚えてるか?

 

幽々子:えっと・・・紫色の梅の実よ。大昔に露店で買っておいた物で、名前までは知らないんだけど・・・

 

ラディッツ:紫色の梅の実・・・

 

ラディッツを始め、他の面々もそれが何か考え込む

 

パチュリー:それの正体は、鬼梅よ。

 

考え込んでいる面々の前に、パチュリーと小悪魔が姿を現す

 

レミリア:パチェ。

 

美鈴:調べ物は終わったんですか?

 

パチュリー:えぇ、ついさっきね。得た情報が少なかったのと、こう言うのは専門外だったから、少し手こずったけどね。幽々子、貴方が使った梅の実は、こんなのじゃなかった?

 

パチュリーは、皆に見える様に図鑑のあるページを開いて見せた。其処には、般若の顔の様な怖い模様が入った紫色の梅の実の写真が描かれていた

 

鈴仙:鬼梅・・・その名前、確か・・・

 

幽々子:そうそう♪この実で間違い無いわ♪

 

ラディッツ:その実、一体どんな代物なんだ?

 

パチュリー:コレの効果、医者の弟子である妖怪兎ならよーく知ってるんじゃなくて?

 

ラディッツ:何?

 

他の面々の視線が、鈴仙に集中する

 

鈴仙:思い出しました!永遠亭に御世話になる様になってすぐの頃、御師匠様に教わった知識の中にありました!この鬼梅と言うのは、実に超強力な幻覚作用が含まれているんです。

 

ラディッツ:何だと?

 

妹紅:私も思い出した。その為、この幻想郷じゃ最大ランクの危険物に指定されてて、一切の採取を禁じられてる代物だった筈だよ。

 

アリス:それで酒饅頭なんか作って、それを今回の被害者達が食べたから、今回みたいな事になったと・・・

 

はたて:そんな物、何で露店で売られてたのよ・・・

 

小悪魔:恐らくですが、闇露店の類いだったんでしょう。

 

美鈴:それに気付かず、幽々子さんが購入してしまったと・・・

 

悟空:そんなもんがあるんか・・・怖ぇなぁ・・・

 

咲夜:と言うか、まだまだ新参な部類の我々は兎も角、幻想郷古参勢の亡霊の姫君がこんな事を知らない筈は無いと思うけど・・・

 

幽々子:・・・

 

その話を聞いていた幽々子は、無言のまま滝汗を流している

 

レミリア:何にせよ、コレでハッキリしたわね・・・幽々子!やっぱりアンタのせいじゃないのよ!どうしてくれるのよ!

 

レミリアは激怒し、幽々子に掴み掛かる

 

幽々子:ゴメンなさーい!昔そんな事を聞いたかも知れないけど、すっかり忘れてたのよ!

 

アリス:忘れてたって・・・

 

妹紅:やれやれ・・・

 

ラディッツ:レミリア。この様子だと、幽々子に悪意があってやった訳じゃ無さそうだ。その辺にしておいてやったらどうだ?

 

フラン:そうだよ御姉様。許してあげようよ。

 

レミリア:むぅ・・・仕方無いわね・・・

 

レミリアは、幽々子からゆっくりと離れる

 

はたて:一応聞くけど・・・幽々子、他に酒饅頭を配った人は居ないの?

 

幽々子は、その問い掛けに対して少し考え込む

 

幽々子:・・・あっ・・・

 

ラディッツ:どうした?

 

幽々子:えーっと・・・怒らないで聞いてくれる?

 

ラディッツ:早く言え。

 

鈴仙:何か嫌な予感が・・・

 

アリス:私も・・・

 

幽々子:えっと・・・私・・・酒饅頭、紫にもあげちゃったわ♪

 

その言葉を聞き、その場の空気が一瞬で凍り付いた

 

ラディッツ:・・・何?

 

その直後、ある地点から溢れんばかりの凄まじい気の反応が突然出現する

 

美鈴:この反応・・・

 

悟空:ゾクゾクするくらい凄ぇ気だ・・・

 

フラン:御兄ちゃん、コレって・・・

 

ラディッツ:間違いねぇ・・・コレは紫の気だ。

 

小悪魔:えぇっ!?

 

鈴仙&アリス:嫌な予感的中・・・

 

妹紅:ちっ・・・面倒な事態になったな・・・

 

はたて:どうする?ラディッツ。

 

ラディッツ:聞くまでもねぇだろ。放置は出来んからな。

 

はたて:そうね。

 

幽々子:あの・・・もう1つ思い出した事が・・・

 

ラディッツ:今度は何だ?

 

幽々子:紫に聞いた話だと、確か今日紫の邸宅には、ザーボン君と小傘ちゃんが招かれていた筈なんだけど・・・近況報告を兼ねて御茶するって・・・

 

妹紅:マジか・・・

 

はたて:次から次へと全くもう・・・

 

ラディッツ:なら尚更だ。手遅れになる前に急ぐぞ。カカロット、紅魔館の事は任せるぞ。

 

悟空:分かってる。そっちもしっかりな。

 

ラディッツ:おう。幽々子、アンタは俺達と来い。

 

幽々子:えっ?私、この後急用が・・・

 

ラディッツ:嫌とは言わせんぞ。

 

幽々子:・・・ハイ・・・

 

ラディッツ:パチュリー、お前は・・・

 

パチュリー:不参加で。

 

ラディッツ:だろうな・・・よし!行くぞ!

 

ラディッツ一行は、幽々子を強制的に同行者に加え、気の反応が強い地点、八雲邸を目指して移動を開始した。一方、渦中にある八雲邸では、例によって正気を失い、現在進行形で凄まじい闘気を溢れさせている紫がザーボンと小傘に睨みを利かせていた

 

小傘:えーっと・・・紫さん、コレは一体何の冗談なの?

 

ザーボン:我々が争う理由等、何処にも無い筈です。その闘気を収めて下さい、紫様。

 

紫:何を言っているの?ザーボン、小傘。貴方達は、やってはいけない事をしてしまったのよ。

 

小傘:・・・えーっと・・・記憶に無いんだけど・・・

 

ザーボン:同じく。

 

確認しておこう。今作のザーボンは、地獄から復活して幻想郷にやって来ており、自らの過去の罪を悔い改め、償いの為の善行や修行の日々を送っており、小傘はそれを優しく支える役回りなのだ

 

紫:知っているのよ。ザーボン、小傘。貴方達は・・・事ある毎に2人だけのラブラブ空間全開にしてイチャイチャしているのよ!

 

紫は、声を張り上げてそう言い放った

 

小傘:・・・えっ?

 

ザーボン・・・紫様?

 

紫の予想外の言葉に、呆気に取られる2人だった

 

紫:何かにつけて、周りを気にせず自分達の世界を作り出して乳繰り合ってるって話じゃないの!その若さと初々しさ・・・あぁもう羨まし・・・じゃなくて!このままじゃ、幻想郷の風紀が乱れるのよ!

 

小傘:わちき達、そんなにベタベタくっ付いてますかね・・・?

 

ザーボン:いや、そんな事は無い・・・と思いますが・・・

 

視線を合わせ、互いに首を傾げる2人

 

紫:それよそれ!そうやって見つめ合ってイチャイチャイチャイチャと・・・どうせ、毎夜毎夜此処では言えない事をして、2人の愛を育んでいるんでしょ!

 

小傘:コ、コレはそう言うのとは違うと思うけど!?

 

ザーボン:我々は、その様な事は一切していません。そもそも、同居している訳でもありませんし・・・

 

確認しておこう。ザーボンは、仙人の茨木華扇の元で毎日修行を就けて貰いつつ彼女と共同生活しており、小傘は人里にある自分の店である鍛冶屋唐笠で生活している。と言っても、小傘は彼等と共に修行、そして彼等の日常生活の補助の為にほぼ毎日華扇の屋敷へ行っているのは事実である

 

紫:言い訳無用!風紀を乱す愚かな行為、見逃す訳にはいかないわ!此処で粛清してあげるわ!

 

小傘:うえぇーっ!?わちき達、近況報告を兼ねて御茶でもどう?って誘われただけなのに!?

 

ザーボン:くっ・・・どうしてこんな事に・・・

 

次回、酒饅頭喧騒譚、完結!?




小傘は傘の付喪神だから、100年くらいは生きてそう

ザーボンは、ラディッツや王子が子供の頃には既に今の姿のままだったし・・・

そもそも変身タイプの宇宙人だし、年齢は見た目よりも上の可能性もあるけど

それでも、2人共紫さんよりは遥かに若いのは確か

次回、正気を失った紫との激闘→エピローグになるかと

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