無縁塚の最奥部でザーボン一行を待ち構えていたのは、天邪鬼の鬼人正邪だった。彼女曰く、今回の騒動は「人間共に捨てられて、もう何の価値も無くなった道具達に、人間共への復讐の機会を与えてやる為に起こした」との事だった。そして、正邪は無縁塚に眠る付喪神達のあらゆる負のエネルギーを集めて作られた土人形(ゴーレム)を出現させた。同胞達を良い様に利用され、怒りを露にする付喪神達は、彼女が作り出したゴーレムと戦うも、脅威的な再生能力を持ったゴーレムに大苦戦し、その圧倒的な力の前に、共に戦っていた博麗の巫女諸共傷付き倒されてしまった。更には天候が崩れ、土砂降りの雨が彼等に追い打ちを掛ける。絶体絶命の状況の中、ザーボンは小傘やその仲間である付喪神達(と霊夢)を守る為、ある覚悟を固めるのだった
正邪:まさかとは思うが、てめぇ1人でコイツ(ゴーレム)とやり合うつもりか?
ザーボン:その通りだ。どうせ分かる事だから言ってしまうが・・・、私は変身型の宇宙人で、変身する事で真の力を出せるタイプだ。
正邪:変身だと?
ザーボン:そう・・・しかし、変身した姿はとても醜い・・・美を好む私には、それが耐え難いのだ・・・それを知る者は、元の世界でも少数しか居なかった・・・
正邪:そうかよ・・・そんなに忌み嫌う姿に、どうしてなろうと思ったんだ?
ザーボン:この世界に来て、右も左も分からない私に、此処の人達・・・特に人里の人間達はとても良くしてくれた・・・勿論、小傘さんや霊夢さんも・・・此処での生活は、恐怖による支配の中で生きて来た私にとって、とても心地良い物だった・・・お前をこのまま止められなければ、そんな人達に危害が及ぶ。それだけは、何としても防がねばならない。例え、その生活に終わりが来たとしても・・・私は、此処でお前を止める!
小傘:・・・
正邪:良いぜ、見せてみろよ。真の力とやらをよ?
ザーボン:言われなくても・・・今・・・見せてやるぞ・・・
ザーボンは気を高め、全身に力を込めた。すると、見る見る内に全身の筋肉が膨れ上がり、細身だった身体は丸々と太った体型になり、最後に美形だった顔が醜い爬虫類の様に鳥肌だらけの醜い姿へと変貌した
霊夢:なっ・・・
雷鼓:す、姿が・・・
小傘:・・・
その変貌ぶりに、後ろで見ていた小傘や雷鼓、他の面々も驚きを隠せずにいた
正邪:ハッハッハッ!それがてめぇの変身か!前よりも男前になったじゃねぇか!
正邪は、彼の変貌した姿に少し驚きこそしたものの、直ぐに笑いながらそう言い放った
ザーボン:笑ってられるのも此処までだ!うおぉぉぉっ!
ザーボンは、瞬時にゴーレムの懐に潜り込み、力任せの打撃をゴーレムの身体に叩き込んで行く。しかし、攻撃を受けて砕けはするものの、ゴーレムの身体はその度に再生し続けるのだった
ザーボン:むっ・・・
その時、ザーボンは何かに気付いた
正邪:そんな攻撃じゃ、どれだけやってもさっきと何も変わらねぇぞ!無駄無駄無駄!ハーッハッハッハッ!
ザーボン:いや、そうでも無い様だ。
正邪:何だって?
ザーボン:今に分かる。
そう言いつつ、ザーボンはゴーレムをその圧倒的パワーで攻撃し、ひび割れさせ、そして砕き続けた。対するゴーレムは、尚も砕ける度に再生を続けた。しかし、その時ゴーレムの身体はある異変を起こし始めていたのだった
正邪:勝てねぇからって自棄になったか?姿だけじゃなく、何もかも醜くなっちまったな!力任せの攻撃じゃ、一生戦ったってコイツには勝てやしねぇぞ!
ザーボン:フッ・・・どうやら、気付いていない様だな・・・
正邪:あぁ?
八橋:ザーボンさん、何を言ってるの?
こころ:あの姿になっても勝てず、本当に自棄になったか・・・
小傘:再生スピード・・・
霊夢:えっ?
小傘は、そう言った後にゆっくりと歩み出した
小傘:さっきからずっと見て分かりました。ゴーレムが身体を再生する時、そのスピードが遅くなってるって・・・
正邪:何・・・だと?
小傘:そうですよね?ザーボンさん?
ザーボン:えぇ、その通りです。更に付け加えると、再生スピードだけでは無く、攻撃や回避のスピードも落ちている。
正邪:バカな・・・何で・・・って、まさか・・・!?
正邪は、ハッとして空を見上げた
小傘:そう・・・その原因はこの土砂降りの雨!そのゴーレムは、見た感じ元は只の土の塊。だから、この雨を吸って動きが遅くなったって事・・・って推測したんですけど、合ってますよね?
ザーボン:そう言う事です。まさか天気に助けられるとは・・・それと、戦闘力が上がり、破壊力を増したこの姿で何度も繰り返し攻撃を行った事も要因・・・元の姿では、恐らく苦戦していたでしょうが・・・
正邪:雨・・・こんな事で・・・こんな・・・
正邪は、予想外の出来事と先程までの有利さが消え失せてしまった事で苦虫を噛み潰した様な表情を浮かべる
ザーボン:弱体化したゴーレムの相手ならば、もうこの姿で居る必要は無さそうだ。
ザーボンは、変身を解除して元の美形の姿に戻った
ザーボン:さて、そろそろ反撃開始と行きましょうか。
そう言ったザーボンの手を、小傘がゆっくりと握った
小傘:此処からは、2人で一緒にです♪
小傘は、そう言ってニッコリと微笑み掛ける
ザーボン:フッ・・・遅れない様に!
小傘:ハイ!合わせます!
ザーボンと小傘、2人の息の合った連携攻撃が、雨で弱体化したゴーレムの身体に叩き込まれて行く
弁々:あの2人、息ピッタリね。
八橋:私達も、何か手伝いしなきゃだね。
雷鼓:せめて援護くらいはね。
こころ:少し休憩し過ぎた・・・
霊夢:借りは返させて貰わなきゃ。
霊夢や付喪神達も、ゆっくりと立ち上がる。尚も、ザーボンと小傘対ゴーレムの戦いは続いているが、先程までの敵側不利な戦況とは打って変わり、2人のコンビネーション攻撃の前にゴーレムはドンドン圧されていた
正邪:最早、ゴーレムだけに任せてられねぇか・・・此処からは私も・・・
こころ:行かせはしない。
霊夢:アンタの相手は私達よ!
ザーボン達とゴーレムの戦いに割り込もうとした正邪だったが、霊夢とこころに止められる
正邪:ちっ・・・もう復活したってのか!クソが!
霊夢達が正邪と戦い、彼女を食い止めている間も、ザーボン達はゴーレムを圧し続けていた
小傘:傘符!大粒の涙雨!
小傘は、傘を振り回して大きな水滴の弾幕を生み出し、それを次々とゴーレムにぶつける。対するゴーレムは、その巨体で再び体当たりを仕掛けようとするが、それは後方から放たれた雷や弾幕によって不発に終わった
雷鼓:ザーボン!小傘!援護は私達に任せて!
弁々:どうぞ存分に!
八橋:同胞達を、闇の力から解放してあげて!
小傘:皆!有難う!
ザーボン:小傘さん、此処は同時に大技で決めるとしましょう。
小傘:分かりました!
雷鼓達の援護射撃と、先の小傘の水の弾幕を受けて弱ったゴーレムに対し、ザーボンは腹に蹴りを、小傘もほぼ同時に彼の首に両手を回してから両足揃えてドロップキックを顔の部分に放ち、ゴーレムを吹き飛ばした。そして、コレまた2人同時に気を高め、ザーボンは右手を前に突き出し、左手はそれを支える様に構えを取った。小傘も、取って置きのスペルカードを取り出して構える
ザーボン:コレで終わりにしましょう!
小傘:虹符!
ザーボン:エレガントブラスター!
小傘:オーバー・ザー・レインボー!
2人同時に放った光線と虹を模した弾幕が1つに合わさり、輝く虹色の光線となってゴーレムを飲み込んだ。光線が消えた時、其処にゴーレムの姿は欠片も残されていなかった。その瞬間、付喪神達は一斉に歓声を上げ、土砂降りだった雨は嘘の様に上がった
霊夢:勝負ありね。
正邪:ちっ・・・今回こそ上手く行ったと思ったのに・・・畜生!覚えてやがれ!
正邪は、悔しさの余り御決まりの捨て台詞を吐きながら瞬時に撤退した
次回予告(軽いネタバレ含む)
正邪の企みを辛くも阻止し、無縁塚に眠る付喪神達の魂を救い出したザーボン一行
喜びを分かち合う付喪神達・・・
ザーボンは、変身をずっと隠していた事を小傘やその仲間達に謝罪するが、返って来たのは彼が予想もしていない言葉だった
「どれだけ姿形が変わっても、貴方は貴方だから・・・それに、また貴方の事を知れて嬉しい♪」
その言葉を聞き、心から安堵したザーボン。しかし、彼等は気付いていなかった。迫り来る、新たな脅威の存在に・・・
「僕は優しいんだ。だから、もう一度チャンスをあげようじゃないか・・・どうかな?また僕の下で、働いてみる気は無いか?」
彼が選ぶ道は・・・