女王領域調査官の四姉妹   作:ぱる@鏡崎琴春夜

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息抜きと腕慣らしだと思ってください。


あぁ、無情...

「何ですかねこれ?」

 緑のポンチョのような服を着た眼鏡の女s...お姉さんが後ろをついて歩く四人の少女たちに質問を投げ掛ける。

 その手には他の場所では見かけたことのないキノコだった。

 

「えーっと確かこのキノコはですわね...?」

「ベニテンヤマキノコだったかな?」

「違うぞい。このキノコはベニジョウロウじゃ」

「まっ特殊なキノコなのは違いありませんね~」

 

 少しづつ埋まってゆく地図や資料を見て確かめる椿に、記憶で答える楸と榎、そして興味無さげに頭の後ろで腕を組んでそっぽを向いている柊。

 

 しかし、急に柊の顔が険しいものとなり左手がポーチに伸び、右手は大槌に伸びる。

 まさに臨戦の構えであった。

 

「おねーちゃんたちー♪彩りゴリラが来たよ~♪」

 まぁ、声は軽いままだが...

 

 妹の報告を聞き、姉たちは迅速に動き出す。

「これより女王領域調査官たちは戦闘状態に突入します。榎は民間人の保護を」

 陣頭指揮をとる椿の命令で、榎は即座に抜刀し護衛対象の民間人、我が団の看板娘を庇うように警戒する。

 

 女王領域のエリア2は森林である。

 それも一つ一つが縄文杉の二倍も三倍もあるような巨木である。

 そして不幸なことに今日は霧が立ち込め、辺りが見にくい状態であった。

 

「えっ!彩りゴリラと言うことはもしかしてババコンガの修羅種ですか!?」

 自分の身が危ないことに気がついているのか榎は疑いの目を向けつつも片手剣だけを片手につかみ、盾は背中にかけたまま空いた片手で看板娘を小脇に抱える。

 

「そうだな!」

「じゃっじゃあ観察をぉぉ!」

 榎は自分の身が危ないことに気がついているのかという疑問に気づいていないという回答を導きだし、全力で離脱することを決める。

 

「じゃあ姉さんに妹共!先に離脱してBCで待ってるよ!」

「この椿了解しました!」

「「合点承知のすけェッ!」」

 

 こう言うときは息がピッタリだなと二人の妹共に苦笑しながら足に力を込める。

 そんなときに自分の腰の辺りから泣き言が聞こえてくる。

「お願いしますッ!我が団のハンターさんは中々こう言うの許可してくれないんです!だから折れてくれた今回を有意義にしたいんです!」

「命と探求心のどっちが大事だバカ!」

 一喝してせめてもエリア1に移動しようともう一度足に力を込める。

 

「来ます!方向十二時真正面ッ!」

 スポッターの役割を今回受け持った柊が叫ぶ。

 BCでの予め決めたことで、スポッターから見ての方向がそのまま叫ばれるのを知っている看板娘を除く四人が一斉に柊から十二時の方向を睨む。

 

 

 

 柊の報告通り十二時の方向から体全体を辺りの景色と似た色にパッパッパッと変えて迫り来るババコンガを発見する。

 

「なんですかあのババコンガ!まるでオオナヅチの様に色が!?」

 こいつの知的探求心は疑いの余地なく命より上だなと察しながら仕方なくこれ以上時間をかけない方法を告げる。

「私のポーチの中に黒っぽい機械があるそれを出せ」

 

 その言葉に目を光らせ、パッと言ったものを取り出す。

 そして、その瞬間に跳び女王杉(仮称)の枝に降り立つ。

 

「それはカメラ?って奴だ使い方はよくわからん直感でやれ」

 早口でそう伝え、木の上にいた漁夫の利狙いのモンスターに小石を投げつけ脅す。

 

 あたふたしつつ、直感で適当にボタンを押しまくった看板娘は渡されたものがどんなものか瞬時に理解した。

「これは、一瞬で絵を描く道具?」

 ・・・まぁ、モンハンの世界の住人なら上出来と言える理解だろう。

 第一これの使い方がわかっていたのは修羅の里の住人でも両手で数えるほどしかいない。

 

「ありがとうございます!看板娘、恐縮です!」

 少し別の世界の人格が混ざりかけたが、それを気にせず看板娘は思いっきりシャッターを切りまくる。

 

 カシャカシャという音が幾つか続き、それが止まった瞬間に榎はタイムアップを表すように高速でBCまで跳んでいった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「行ったわね?」

「勿論じゃ」

「八艘跳びレベルなんて甘いものじゃなく、四十艘を一ッ跳び出来る榎姉さんじゃあ、まず追い付けないっしょ」

 姉妹一人を欠いた三人の姉妹は全員が特注の武器をとりだし、体毛の色を変化さ、遠近を狂わせ保護色として見えにくくすると人を弄ぶかのようにするババコンガに向ける。

 

「「「さぁ、宴の時間だ(じゃ)」」」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「修羅の太刀、その奥義は常に形を変える」

 そう呟くと共に自分を中心に殺気の円を広げる楸。

「解体の仕方が有りすぎて選べませんわ・・・」

 竜を解体することに主眼が置かれた大剣を片手で持ち上げる椿。

「このエリアからは出られないよ?」

 恐怖を植え付ける妖艶な笑みを張り付け楽しそうにする柊。

 

 ババコンガは今更に気づいた。

 今自分は死への道が確定したことを・・・

 

 だから、ババコンガは確定した死から逃げようとした。

 

 だが最早、諸葛亮孔明であろうと竹中半兵衛であろうと何処の軍学者すらもこの状態を打破する方法は思い付けない。

 

「潔く死ぬことを選べ愚かしい」

 先ほどまでの楸の喋りは消え、その口からはかつて地球上にいた最強の生物の名を冠したモンスターが乗り移ったような王の貫禄が滲んでいた。

 

 凛と張ったよく通る透き通った声とともに殺気の円は消え失せ、その円の円周にそって深い溝が出来る。

「その尾が代償だ、さっさと潔く戦え」

 

 気づけばババコンガの尾は切れ、近くをのたうっていた。

 その痛みに気づけぬうちに、また殺気の円が広がり、今度はババコンガの角を切り落とす。

 

「もう一度だけ宣告する。このまま死ぬか、勇猛な死か選べ」

 

 普段の楸からは想像もできない声はババコンガを円のうちに留まらせ、戦う本能を思い出させる。

 冷ややかで氷のように変わった目線、聞いたものを皆かしずかせるような声は自分専用の太刀を抜き本気を出すと決めた楸のみが使える力。

 

 モンスターであれど人であれど一定の力以上の者以外は命令が聞きやすくなる能力。

 楸のみが使う、天下に一つしかない太刀の材料となったモンスターの種族を考え姉妹誰もが楸のこの状態を『エンペラータイム』と言っていた。

 

 

「では、長女として私が参りましょう・・・」

 牙を剥き、猛々しい息を吐くババコンガの真っ正面に立ち、極限の殺気を出す。

「修羅解放・・・」

 

 淡々と紡がれたその言葉に、椿の血が、遺伝子が力を吐き出す。

 

 自らの限界に挑み続ける『努力の一族』の血が受け継がれ、修羅へと近づく。

 そして、現在では既に生まれながらに殆どの一族は修羅の力を手に入れていた。

 

 しかし、修羅の一族の脳はそれをセーブした。

 でなければ死ぬからだ。

 

 四姉妹は時間をかけ、限界に挑み全員この力を一時的に解放できるようになった。

 楸の『エンペラータイム』も同じく修羅解放である。

 

「さぁ、始めますわよ?『永遠的な世界』」

 自らの体感時間をグッと下げ一秒を一時間に、一時間を2日と12時間にと長考や手数の多さがある椿に向く能力だった。

 

 ババコンガは目の前の人間がスッと消えたように見えた。

 そして刹那の間をおき横腹に異物感を感じ目を向ければそこにはもう紅黒い血が吹き出し、次には反対の横腹に喪失感が沸き立つ。

 

 このままでは何もせずに死ぬ!というのを改めて感じ、その目標を柊に向ける。

 

 ババコンガの決死の突進に、椿の獲物と武器を後ろにしまい、帰りムードとなっていた柊は動きを止める。

 しめたっ!と勢いをまし、突っ込んでいく。

 

 しかし、柊の口から零れる言葉にババコンガの決死の信念は崩れた。

 

「修羅解放『極限強化』」

 その瞬間に柊の身体能力や思考力など多種多様な能力が限界まで高められる。

 勿論、反射と動体視力と筋力もである。

 

 急に止まることのできないババコンガの頭に、音があとに聞こえる速度で大槌が叩き込まれる。

 頭蓋はひしゃげ、目は飛び出すか潰れ、舌は噛みきり、歯が勢い余って砕け散る。

 

 そこにもうババコンガの頭はなくただのミンチがあった。

 

 

 

 

「修羅解放は疲れるわね」

「全くじゃ」

「実際エンペラータイムって霊を降ろす術なんじゃ?」

 

 そう言って三人はBCへ舞い戻った。

 

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