「バブ?」
ここは何所だ?
「爺ちゃん、龍斗が起きちゃったみたい」
何だか聞き覚えのある声ですね?
「おお、遊戯や。そんなに大きな声を出したら、龍斗が泣き出してしまうぞ?」
龍斗って誰だ?
俺か?俺なのか?
いや、流れ的に俺だろうけれども
「ブァブ?」
近くに赤ん坊がいるのか?
てか赤ちゃんってバブバブ言わないからな?
「おーよしよし、じぃちゃんだぞ~」
うわ、体が宙に浮いて…高所恐怖症になったらお前の所為だからな!?
「ズルいよ爺ちゃん。僕にも抱かせてよ!」
止めろ!
引っ張るな揺らすな!
訂正するお前らのせいだからな!
―――
それから三カ月が経ち、嫌々ながら状況が呑み込めてしまった。
どうも転生したらしい。それもデュエルが出来ないと死んでしまう遊戯王の世界である。
まぁ、遊戯王は好きだから別にいいけどね。前の自分の事とかよく覚えてないし、ただ遊戯王関連の記憶は覚えてる。知らない事は仕方ないとしても、覚えている事は利用していこうと思う。
「ただいま~龍斗。あのね杏子がさぁ」
それと俺は遊戯の弟になるらしい。あ、遊戯兄さんの。
流石、何でも願いが叶うのに友達が欲しいと千年パズルに願っただけあって、ボッチ街道順調に進行中である。杏子は友達じゃないのかとも思ったけど、恋人だったっけ?
まぁ、それはともかく遊戯兄さんが友達が出来ないのは、双六お爺ちゃんの出どころ不明ゲームの所為だと思う。そりぁ、話題も合わないだろうと。
教師の悪口でも言い合えれば良いのだろうが、心優しい遊戯兄さんには人の悪口はハードルが高いのだろうな。
「遊戯ー、帰っとるのか?」
「あ、爺ちゃん。どうしたの?」
「うむ。実はこれをやろうかと思ってな」
そういって取り出したのは、金色の小箱…って千年パズルの箱じゃん!?
てことは原作開始、6年前ってことか…いや、イレギュラーの俺がいる時点で当てにならない。去年母親が妊娠していたならパズルしてる時間もないだろうし…。
「なにこの箱?」
「これはな…」
そんな危険な物は、俺の目の届かない所でやってくれないかな!?
――――
そして生まれてから三年が経過し、言葉を発声できる様になった。
遊戯兄さんは、相変わらずパズルと格闘している。
大きく変わった事と言えば、爺ちゃんが店でデュエルモンスターズのカードパックを扱う様になった事だろう。今までなら入手したカードパックは、爺ちゃんが全て開封してしまっていた。(我慢できなかったらしい)
最近は遊戯兄さんが、にこにこしながらパックを開けるのを見て、子供の楽しむ顔が見たいと我慢できるようになったとか。
「爺ちゃん、カード!」
俺も弱かったとはいえ元OCGユーザー、カードが好きなのである。
「ホッホッホ、龍斗にはまだ早いかの」
「ちがうのー、カード欲しいの!」
どちらかというとパックを開封するドキドキ感が、大好きなのである。最近は発売されているパックの中身を公式サイトで確認してから買うために、このドキドキ感が無くて結構がっくりしていた。
しかし、この世界では全てのカードが同じパックで出る。
つまりはカードは何が出るか分からないのである。ワクワクとドキドキが帰って来た。
「ゲームは、良いのかのう?」
あ、爺ちゃん。あんな俺ルールゲーム無理です。
「ゲームは良いの、カード集めるの!」
「ホッホッホ、龍斗はコレクターなんじゃな」
いや、エキスパートルールになったら、やるよ爺ちゃん。
「じゃあ、店の手伝いをしてくれるならご褒美にパックを一つあげようかの」
「ホント?お手伝いするの!」
――――
「ありがとございましたーの!」
俺は爺ちゃんのお店でお手伝いをしている。重い物は持てないから、在庫整理は出来ないけど店番は出来る。商品には値札が張ってあるから、レジに数字を入れるだけで良いのだ。カードパックを買って行く人は、その場で直ぐに開封するからゴミ箱が必要だ。
でも要らないからってカードを捨てて行くのは、ダメだろう。マナー的にも。
爺ちゃんに相談したら、そういうカードは貰っても良いんだってさ。捨てられたカードは、オリパにするかまとめてカード専門店とかに売り払うらしい。しかし、はにわとか運命のろうそくとか凄い懐かしいカードだ。
「龍斗やご苦労様、ご褒美のカードじゃ」
「やったの!どれにしようか悩むの…」
カードパックは正方形の箱に、小さい正方形の敷居一つ一つ収められている。
「よし、決めたの!」
俺は左端から三つ右のブロックのカードパックを選ぶ。
「ホッホッホ、何が出るかの~?」
早速、パークを開く。
このワクワク、ドキドキする感じ…カードゲームの醍醐味の一つだよね。
「五枚入りなの!」
パックを開けたら裏向きでカードが出て来た。
なかなか焦らす奴だ。
カードをカウンターに置いて、一枚ずつ表にする。
サイクロプス
トモザウルス
眠り子
死者蘇生
マブラス
「やったの死者蘇生なの!」
「良かったの~、爺ちゃんもデッキに入れとるカードじゃぞ。それにサイクロプスも出とる、もう少しカードを集めたら一緒に遊べるぞ」
「サイクロプスは、強いの?」
サイクロプスの攻撃力は1200、守備力は1000っと大して強い印象は無い。
「ホッホッホ、強さ自体は中の下と言った所じゃが、このデュエルモンスターズでは攻撃力が1000を下回るモンスターはかなり多いのじゃ。ほら捨てられていったカード達もそうじゃろう」
そうか、今の遊戯王の世界では、シンクロやエクシーズ、ペンデュラムもリンク召喚も無いからステータス重視になるんだ。
しかも魔法やトラップのカードは、数が少なく殆どがレアカード。それはカード市場もステータス押しになる。
「デュエルモンスターズは、日本に入ってきてまだ日が浅いからのう。攻撃力が高いモンスターがどうしても目立つんじゃな」
そう言えばデュエルモンスターズって、アメリカ発祥なんだっけ?
OCGみたいにデッキ販売とかやればいいのだが、自分で組んだデッキでゲームをプレイして欲しいというペガサス氏の純粋な願いが見える気がした。
「ただいまー。あ、龍斗そのカードどうしたの?」
「店番のご褒美じゃよ」
「そうなんだ。何が出たの?」
「んー、サイクロプスとー…」
「へー、僕もサイクロプスは持ってるけど死者蘇生は持ってないよ。龍斗は凄いなぁ」
遊戯兄さんサイクロプス持ってたんだな。
使ってるシーンは見た事無いけど、代わりにシルバーファングを入れたのかな?
死者蘇生を持ってないのは、以外。
「死者蘇生いるー?」
俺はまだデュエルする予定は無いし、エキスパートルールになった頃には爺ちゃんのデッキ貰うハズだから死者蘇生も帰って来るだろ。
「え?良いよ。それは龍斗が手に入れた初めてのレアカードなんだから、大切に持ってなよ」
遊戯兄さんは心優しい、天使やな。
「そうだ!僕から龍斗にパックをプレゼントするよ。デュエルモンスターズを始めたお祝い!」
「ホッホッホ、遊戯やお兄ちゃんしとるの」
双六は微笑ましい物を眺めている目をしている。
若干ムカつくけど新しいパックにドキドキだ!
「良いの~!?」
「うん、好きなパックを選んで」
「じゃあ、これにするの!」
「さっきと比べて、えらく早いのう」
「このパックとどっちにしようか迷ってたの!」
何と言えば良いのか、感覚的な物だから言葉にし難いがカードが呼んでいるとでも言うのだろうか、とてもそのパックに惹かれる様な感じがしていたのだ。
「さて何が出るかなぁ~」
プチリュウ
一眼の盾竜 (ワンアイド・シールドドラゴン)
真紅眼の黒竜(レッドアイズ・ブラックドラゴン)
ドラゴン族の秘宝
レッサー・ドラゴン
「ドラゴンパックだ~」
「「…れ、レッドアイズ……!?」」
レッサー・ドラゴンは初めて見るカードだ。なんか嬉しい。
「見て見て、爺ちゃん。レッサー・ドラゴンだよ!サイクロプスとお揃いなの~」
「あ、ああ。そうじゃな、サイクロプスと同じ攻撃力だじゃな」
「ぼ、防御力もだよ爺ちゃん…」
遊戯兄さんも爺ちゃんもどうしたんだろ。たかがノーマルモンスターだよ?
レッサー・ドラゴンってそんなに珍しいのかな…。
「いいかい、始めたばかりの龍斗は知らないと思うけどレッドアイズのカードは、滅多に出ないレアカードなんだ」
「じゃあ、ラッキーだね。でもレッサー・ドラゴンの方が嬉しいの~」
強いカードより、見た事のないカードの方が嬉しいのが、龍斗なのである。
「あんまり人にレッドアイズのカードを人に見せたらダメなんだよ?」
「なんでー?」
「このカードは、オークションとかで40万の値が付いた事もあるんだから、ドロボーさんが持って行っちゃうかも知れないんだよ?」
「カード盗っちゃじゃダメなの!」
「そうなんだけど…爺ちゃん」
大丈夫。高値で売られるカードが危険なのは、遊戯兄さん以上に良く知っている。グールズや海馬社長がいるのが決定しているのだから。
「ホッホッホ、強いカードよりレッサー・ドラゴンの方が嬉しいのか、これは大物になるぞ」
閉店した店内からは、楽しそうな笑い声が響いていたという。
はい、そんな訳で私の妄想ワールドへようこそ。
この話はこんな感じで進んでいきます。
因みにデッキは決まっていて、子供モブデッキとメインキャラ風デッキを考えています。
デュエルタクティクス?このお話に求めないでください。
ただの妄想ですよ。