「ボクを無視するんじゃない!」
すっかり蚊帳の外になっていた弱虫野郎こと『インセクター羽蛾』は、大袈裟に騒ぎ立てた。
「そう言えば、弱虫野郎が残ってたの。スッキリ忘れてたの」
「スッキリだとぉ~!?」
ついでに思い出したけど、レアカードは渡さなくても良いのだろうか?
「もう許せん…これまでの無礼な暴言の数々、全日本チャンプのこの僕がデュエルで叩きのめしてやる!」
羽蛾は全国大会で優勝した程度で調子に乗っているが、デュエルを挑んだ相手は『あの』武藤遊戯の弟である。
単純なドロー力もさることながら、最も恐ろしいのは彼のデッキが時間が惜しくなった場合を考慮して、ワンキル能力を兼ね備えている事だろう。ライフポイントが4000な事に合わせたお手軽なバーン効果を使う程度なのだが、カード3枚があれば発動可能な物なので持ち前のドロー力でもって、それなりの頻度で初期手札である5枚の中に紛れ込んでいたりする。
付け加えるのならば、羽蛾が優勝したのは俺ルール時代のデュエルモンスターズであり、その時代の戦略の多くは使い物にならない。
「待てよ…そのデュエル俺が相手になるぜ!」
「遊戯兄さん?」
「せっかくデュエルキングダムに来たんだ。参加者同士でデュエルしないとな!」
デュエルキングダムのルールとして、プレイヤーキラーが大会参加者から勝負を挑まれたからといって、態々相手をしなければならない理由は無い。参加者が、プレイヤーキラーから逃げられないだけである。
龍斗としては、原作通りになるであろう試合に興味もない。
「ヒョッヒョッヒョ、どこかで見た顔だと思ったら…遊戯君じゃあないか、あの海馬君を破った」
「おうよ、遊戯にかかれば海馬のヤローなんて…」
「でもこの大会は特殊勝利カードの使用は禁止されてる。知ってるよねぇ?」
「何!?そうなのか、龍斗?!」
「そだよ」
当然の様に頷く。
カードゲームには良くあることなのだが、大会ごとに使用カードが決められている事は珍しい事ではない。俗にいう『大会レギュレーション』という奴である。
バトルシティ編のバーン効果禁止ルールなどは、これに当てはまる。
余談だがプロデュエルリーグには、各種族限定の大会なども存在しており、全ての大会で優勝を収めると
『マスター・オブ・デュエリスト』の称号が送られる。
メタ的な発言をすると、ペガサスが遊戯に勝つために動員したルールでもある。せっかくサウザンドアイズサクリファイスを出して、追い詰めたとして「俺の引いたカードは、封印されしエグゾディア!」をされては、堪ったものではない。
「フン、お前相手にエグゾディアはもったいないぜ!」
「ヒョッヒョ、良いだろ相手してやるよぉ。その威勢、どこまで持つか楽しみだぁ」
決着は呆気なく付いた。
やはり羽蛾如きでは、アテムの足のつま先程にも実力が満たないのだ。しかも、ちゃっかりスターチップを全部奪っている。
「まぁ、でも見ごたえはあった…」
ミラーフォース先輩の初登場シーンであるからして、罠カードの有用性を広くプレイヤーに知らしめてくれることだろう。つまりだ。
「大会参加者、武藤遊戯選手!」
遊戯兄さんは憑依が解けた様な、きょとんとした表情をしながら振り向く。
「先程の試合は、罠カードの有用性を周知させるのに十分な物であった物と認める。よって大会限定カードを進呈する…の」
いかん、最後まで我慢できなかった。
「ああ、プレイヤーキラーが認めたら貰えるっ言いう…ブラック・カーテン?」
ブラック・カーテン フィールド魔法 オリカ
一ターンに一度、手札の闇属性モンスターを墓地に送り、デッキから同レベルの光属性モンスターを自分フィールド上に特殊召喚する。
このカードの効果によって特殊召喚されたモンスターは、効果を無効にし自分エンドフェイズに除外される。
「これは…テクニカルなカードだね」
前に言っていたと思うけど元々デュエルキングダムは、フィールド魔法の盛り上げように企画された大会だ。まぁ、世界大会や海馬コーポレーション乗っ取りも同時進行しているから、カオスな大会ではあるのだが。
そんな訳で実力が認められた(今後PVとして使えそうな)デュエルの報酬として最も相応しいと言えるだろう。
しかし、ペガサスにフィールド魔法を復旧させたいなら凡庸性の高いカード作れよと言ったら、酷いカードが出来た。確かに属性対応の効果なら凡庸性は高いだろうが、パッと思いついただけで暗黒界、カオス、サイバードラゴン、ブルーアイズ、モリンフェン…色々酷い事になりそうだ。
しかもこれ、全属性対応するようにカードが作られている。それぞれ違う属性の組み合わせで、同じ効果を持っているのだ。いつか種族もの出そう。
「うっし、龍斗俺とデュエルしてくれ!」
「ん?」
俺とデュエル?
「城之内の野郎、さっきのサンダーアイズを見て暴走してやがる」
「龍斗君、相手してあげたら?」
悪い笑顔ですねバクラさん。
「どっちが真のレッドアイズ使いか、確かめてやるぜ!」
「?」
あれ、竜崎編先に終わってた?
「城之内さん、レッドアイズ持ってたの?」
「そっか龍斗は知らなかったな。あの羽蛾って野郎が、全国大会の決勝で戦った相手が持っててよ」
ダイナソー竜崎ですね。
「で、アイツは羽蛾に負けたのを気にしててな」
城之内さんの話が、長くて分かり難かったのでまとめると、ダイナソー竜崎は全国放送で羽蛾に敗北→次は負けない様に強いカードを購入(レッドアイズ)→デュエルキングダムに乗り込んでみたら、羽蛾が気にしていた武藤遊戯を発見。勝負を挑む→人命(龍斗)が掛っているから絶対に負けられない。城之内乱入→遊戯と戦いたいなら先に俺をtaデュエル。
「それで何でアンティルールになったの?」
船に女子部屋を作ったから、部屋追い出され事件は無かったはず。つまりダイナソー竜崎が、孔雀舞の下僕になるくだりもなくアンティに移行する事もない。
「何かデュエルの最中に杏子に惚れたとか言い出してよぉ」
竜崎ェ。
「ワイが勝ったら、そこの杏子はん貰っていくってな?」
「冗談じゃないわよ。もう!」
アイツそんなキャラだったのか、まぁ女に惑わされて部屋から叩き出される様な奴だったけど。
「まぁ、そんな訳でレッドアイズを持つ者同士デュエルと行こうぜ!」
「んー、チップは?」
「全掛け…っと言いてぇ所だが、どうも格上みてぇだからな竜崎からぶんどったスターチップ2個だ」
じゃあ最初の敗退者はダイナソー竜崎になったのか。
「良いよ、リングに上がるの!」
「「デュエル!」」