25人の少女と、1人のサポーター   作:皐月 遊

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2話 「頂点を目指す音楽」

《モカ? 神崎優だけど、もうバイト終わったか?》

 

モカからもらったメアドを打ち、モカにメールを送る。 すると、すぐにメールが返ってきた。

 

《モカちゃんだよー。 早速なんだけど、電話しないー?》

 

俺は、《いいぞ》といい、電話番号を打ち込んだ。 すると、すぐに電話がかかってきた。

 

「もしもし」

 

『もしもしー、ユウ君ー、ユウ君はいつからこっちに来たの?』

 

「ついこの前だぞ、花咲川学園に通ってる」

 

『花咲川学園かー、近いから、また前みたいに会えるね』

 

「そうだな。 …て言っても、皆俺の事覚えてるのか?」

 

モカが覚えていても、他の人が覚えてないんじゃ前みたいな関係にはなれない。

 

すると、モカの声色が真面目なものに変わった。

 

『皆覚えてるよ。 ユウ君を忘れた事なんて一度もないから』

 

「お、おう…ありがとな」

 

皆覚えてくれてるのか…純粋に嬉しい。 モカ達は最初に出来た友達だからな。

 

『そうだ、今度また皆で集まろうよー。 ユウ君土曜日あいてる?』

 

「あぁ、何も用事ないぞ」

 

『それじゃあ土曜日のお昼に、今日会ったコンビニに来てねー』

 

「了解だ」

 

そのあとは普通に会話をし、電話を切って寝た。

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

次の日も何事もなく進み、放課後になり、教室を出た。 相変わらず誰とも話す事はない。 だが、今日の俺はノリノリだ。 なんたって待ち合わせの約束があるからな。

 

「きゃっ…!」

 

「わわっ!」

 

ウキウキしながら歩いていると、下駄箱付近で誰かとぶつかってしまった。

 

俺は倒れる事はなかったが、向こうは倒れてしまった。 黒髪ロングで、清楚なイメージがある女の子だった。

 

「す、すみません! 俺見てなくて…」

 

「い、いえ…私こそ…それじゃあ私、急いでるので!」

 

そう言うと、黒髪の女の子は走っていってしまった。 …可愛い人だったなぁ……

 

「あっ! 俺も時間やべぇ!」

 

もうすぐ待ち合わせ時間だ。 俺は素早く靴を履き替え、一旦家に帰って着替えてから、待ち合わせ場所に向かった。

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

「えっと…喫茶店はここ…だよな」

 

言われた通りに駅前の喫茶店に入る。 …そう言えば俺、堕天使ルシファーさんの顔知らないや…どうやって会えばいいんだよ!

時間的にはもう着いているはずだ。 えっと女子中学生…女子中学生は…

 

「あっ」

 

「あっ! ユウさんですか!?」

 

店内に1人だけ、中学生っぽい女の子がいた。 その子は俺と目が合うとそう言ってきた、紫色の髪をした可愛らしい女の子だ。

 

「堕天使ルシファーさん?」

 

「はい!」

 

俺はとりあえずルシファーさんの前に座り、カフェオレを注文する。 苦いのは苦手なんだ。

 

「りんりんはもうすぐ来ると思うので、先に自己紹介しちゃいましょう!」

 

「そうだね」

 

「私は…いやっ、我は魔界から君臨せし…えーっと…君臨せし堕天使の王。 宇田川あこ!」

 

頑張って厨二っぽい言葉を使おうとしたんだな……

宇田川あこちゃんか。 ……ん? 宇田川…? あこ…?

 

「…あ、あれ…? あこちゃんってもしかして、お姉ちゃんいる?」

 

「はい! お姉ちゃんいますよ! あれ? なんで知ってるんですか?」

 

「やっぱりあこちゃんか! 俺、神崎優! 覚えてるかな? 昔よく巴と一緒に遊んだんだけど」

 

そう言うと、あこちゃんは俺の顔をジッと見る。 …まぁ、覚えてないよなぁ…あの時は俺は小4で、あこちゃんは小3だったからな。

 

「あーっ! ユウお兄ちゃんだ! 4年生の時に転校しちゃったユウお兄ちゃんだよね!?」

 

「覚えてたんだ! 大きくなったなぁ…」

 

まさか覚えてくれているとは思わなかった。 あこちゃんとは巴の家に行った時によくゲームをして遊んだんだよなぁ…

 

そのあこちゃんと知らない内にゲーム内で会っていたとは…

 

「いつこっちに帰ってきたんですか?」

 

「ついこの前だよ。 今は花咲川学園に通ってる」

 

「おー! お姉ちゃんにはもう会いました?」

 

「いや、まだ会ってないよ。 昨日久しぶりにモカに会ったくらいかな」

 

「お姉ちゃんに言ったらきっとびっくりしますよ!」

 

そう言って楽しそうに笑う。 昔と何も変わってない。

あー、早く土曜日にならないかなぁー、早く皆に会いたい。

 

「あっ、りんりんだ! おーい、りんりんこっちだよー」

 

「あこちゃん、ごめんね遅れて」

 

りんりんと呼ばれる人が来たみたいだ。 俺は声がした方に顔を向けると…

 

「「…えっ」」

 

俺とりんりんさんの声がかぶった。 りんりんさんは黒髪ロングで清楚なイメージがある女の子で、さっき下駄箱付近でぶつかった女の子だった。

 

つまり、俺はりんりんさんと同じ学校の生徒だったらしい。

 

「えっと…ユウさん、ですか…?」

 

「は、はい。 えっと…りんりんさん?」

 

「はい…」

 

……こんな事もあるんだなぁ…

目の前ではあこちゃんが俺とりんりんさんを交互に見ている。

まずは自己紹介をしないとな。

 

「初めましてりんりんさん。 神崎優です。 花咲川学園の1年生です」

 

りんりんさんはあこちゃんの隣に座り、下を向きながら

 

「し、白金燐子、です。 花咲川学園の…2年生です」

 

「えっ…」

 

え? 2年生…? 白金さん先輩だったの!?

俺が驚いていると、あこちゃんがスマホを取り出した。

 

「じゃあ早速ゲームしよ! ユウお兄ちゃんはモン◯トやってる?」

 

「え? あぁ、やってるよ」

 

「じゃあマルチやろうよ! ほらりんりんも!」

 

「う、うん」

 

俺と白金さんもスマホを取り出し、モン◯トを起動した。 暇な時はずっとモン◯トをやっていたから、結構強い自信がある。

 

あこちゃんが部屋を作り、俺と白金さんが部屋に入る。

 

堕天使ルシファー。 使用キャラ、ルシファー。ラック5

 

りんりん。 使用キャラ、パンドラ。 ラック5

 

ユウ。 使用キャラ、ルシファー。 ラック運極

 

「え!? ユウお兄ちゃんルシファー運極!?」

 

「あぁ、ガチャ引きまくってたらこうなった」

 

「か、課金したんですか…?」

 

「いや、無課金ですよ? イベクエとかクリアして、オーブ貯めました」

 

今までのイベントは全てやってきたし、イベントキャラは全て運極だ。

なにせ時間は沢山あったからな!

 

その後は3人でサクサククエストを進めていった。

 

「じゃあもう終わりにしようか! ユウお兄ちゃんにフレンド申請送ったよ!」

 

「私も、送りました」

 

「オッケー、承認しとくよ」

 

時刻はもう直ぐ6時になるところだった。

 

「そうだりんりん! 明日の練習って放課後だよね?」

 

「うん。 放課後にライブハウスだよ」

 

…ん? ライブハウス?

 

「え? 2人ともライブするの?」

 

「あ、ユウお兄ちゃんに言ってなかったね。 あことりんりんはバンドやってるの! あこはドラムで、りんりんはキーボード!」

 

バンドか。 あこちゃんは分かるが、白金さんは意外だった。

でも、他人と何かをやるっていうのはいい事だと思う。 すごく羨ましい。

 

「へぇ、凄いじゃん! 今度聞いてみたいな」

 

「あ、じゃあ明日練習見にくる?」

 

「え!? いいの!?」

 

「多分大丈夫だと思うよ! 」

 

そして、明日の放課後、あこちゃんの所属するバンド、Roseliaの演奏を見に行くことになった。

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

次の日の放課後、俺はあこちゃんと待ち合わせする為にライブハウスCiRCLEへやってきた。 ライブハウスなんて来たことがなかったから凄く緊張している。

 

音楽は学校の授業でしかやった事がない、評価はいつも5だったが、楽器はリコーダーくらいしか吹けない。

 

「あ、ユウさーん!」

 

あこちゃんが手を振りながらやってきた。 さすがにお兄ちゃんはまずいから、さん付けにしてくれと頼んだのだ。

あこちゃんの隣には白金さんもいる。

 

「早速入ろ!」

 

「友希那さんにはもう話してあるので、行きましょう」

 

どうやらバンドメンバーには話してくれているらしい。 まぁいきなり知らない奴が入ってきたらビビるもんな。

 

あこちゃんについていって受付をすませ、Roseliaの練習部屋に入る。

 

「お疲れ様でーす!」

 

「お疲れ様…です」

 

2人がそう言って入る中、俺はお辞儀しながら中に入った。

 

部屋の中には3人いた。 銀髪のクールそうな女の子と、茶髪のギャル風の女の子と、水色の髪の真面目そうな女の子だ。

 

「き、今日見学させてもらう予定の神崎優です! よ、よろしくお願いします!」

 

あこちゃんによると、全員2年生らしい。 だからめちゃくちゃ緊張している。 しかも全員女の子とか…

 

「話は聞いているわ。 私は湊友希那。 Roseliaのボーカルよ」

 

「私は氷川紗夜。 Roseliaのギターをやってます。 くれぐれめ練習の邪魔だけはしないでくださいね」

 

「あたしは今井リサ! ベースやってるよ〜。 優だね、よろしく!」

 

なんというか…今井さん以外の2人の雰囲気が凄い。 同じ高校生とは思えないくらいだ。 それだけ音楽に対する思いが強いんだろう。

 

…俺も、これくらい何かに一生懸命になれるものがあればいいのに…

 

「それじゃああこ、燐子。 早速準備して」

 

あこちゃんと白金さんが素早く楽器の準備をし、演奏する準備に入る。

 

俺は、5人の正面にパイプ椅子を置いて座っている。 ……凄く緊張する。 ライブなんて見た事がないし、こんなに近くで演奏を聴いたこともない。

 

「それじゃあいくわよ。 BLACK SHOUT」

 

演奏が始まった瞬間、俺の身体中が震えあがった。 あこちゃんの力強いドラム、白金さんの正確なキーボード、今井さんの下から支えるようなベース、氷川さんのプロ顔負けなギター。 どれも凄いが、なによりも湊さんの歌声だ。

 

力強くも、どこか寂しさを感じさせる歌声は、俺の心を掴むには十分すぎるものだった。

 

演奏が終わり、5人がふぅ…と息を吐く。

 

「…す、すげぇ…」

 

思わずそう呟いてしまった。 もっと他に感想を言うべきなんだろうが、それしか出てこない。

 

「どうだったかしら、Roseliaの、頂点を目指す音楽は」

 

湊さんがそう言ってくる。 俺は、素晴らしかったと素直に伝えようとした。 だが、口から出てきたものは予想外のものだった。

 

「演奏は素晴らしかったです。 でも、素晴らしいからこそ、少しのミスが目立ってしまっています」

 

…え、俺は何を言ってるんだ…?

 

「まず、あこちゃん。 あこちゃんは力強くドラムを叩きすぎて、後半バテちゃってるね。 だから体力をつけるか、力を弱めるかした方がいいと思う。

次に白金さん。 白金さんはミスはないけど、あこちゃんの逆で音が小さい気がする。 正確さを重視して、音が小さくなっています」

 

湊さん達が目を見開いている。 …こんな事言いたくないのに、口が勝手に動いてしまっている。

俺は音楽の知識なんてないのに…

 

「今井さんは、サビの部分やテンポが早い箇所になるとミスが多くなります。 なので、早弾きが出来るようにした方がいいと思います。

氷川さんは、先走りすぎてる気がする。 他の楽器を置いてけぼりにしちゃってるから、もっと皆に合わせるといいと思います。

湊さんは…パーフェクトです」

 

なにがパーフェクトだ。 上から目線すぎるだろ俺!!

と、とりあえず謝らないと…!!

 

「す、すみません俺…! 本当はこんな事言うつもりじゃなかったんですけど…! なんか勝手に…」

 

「ユウ…と言ったわね」

 

湊さんが静かに呟き、俺の前に来る。 あぁ…これは怒られるパターンだ。

 

「…あなた、音楽の経験は?」

 

「な、ない…です」

 

「音楽に興味を持った事は?」

 

「ない…です」

 

「そう……」

 

なんで湊さんはこんな事を聞くんだろう。 湊さんは何かを考えているらしく、目を閉じている。

そして、目を開けると、俺をまっすぐ見た。

 

「ユウ。 あなた、Roseliaのサポーターになってくれないかしら」

 

「……へ?」

 

サポーター…? サポーターってなんだ…?

 

「あなたは、音楽の経験がないのに正確に私達の音楽を分析し、ダメ出しをした後に改善策を用意した。 あなたとなら、最高の音楽を作れる気がするの」

 

「え…いや、でも俺楽器の事なんて分かりませんし…」

 

「あなたはただ、私達の音楽を聴いて、気になった所を指摘してくれればいいわ。 …あなたには多分、音楽の才能がある」

 

音楽の才能…? 俺にそんなものがあったのか…?

湊さんは、俺に右手を差し出してくる。

 

「ユウ、どうかしら? Roseliaと共に、頂点を目指してみない?」

 

…なにかに一生懸命になれる人達を、ずっと羨ましいと思っていた。 そして今、音楽に一生懸命になっている人に、一緒にやろうと誘われている。

 

……これはもう、やるしかないだろ。

 

「俺でよければ、喜んで協力します!」

 

俺は、湊さんの手を握り返した。

 

「ようこそ、Roseliaへ」

 

この日、俺に初めて、居場所が出来た。

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