「しゃーせー」
コンビニに入ると、灰色の髪の少女がダルそうに言ってくる。
「相変わらずやる気ない挨拶だなぁ…モカ」
「あ〜、ユウくんだ〜。 やっほ〜」
モカは、俺を見て笑顔で手を振ってくる。
客が俺しか居ないとはいえ、自由だなぁ…
「あれ、ユウじゃん。 おはよ〜!」
「おはようございます。 リサさん」
リサさんに挨拶をし、俺は何も持たずにモカのレジの前に行く。
モカはキョトンとした顔で首を傾げる。
俺は、ズボンのポケットからキーホルダーを取り出し、モカに渡す。
「モカお前、昨日ライブハウスにキーホルダー落としてたぞ」
そういうと、モカはハッとした顔でキーホルダーを受け取る。
「これはこれは…モカちゃんとした事がうっかりでした〜」
「気をつけろよ? これ、ひまりから貰った奴なんだろ?
Aftergrowの皆でお揃いの。 それを無くしたって知ったら、ひまり号泣するぞ」
「う〜…気をつけます…ユウくん、ありがとね」
俺は「おう」と返事をして、コンビニを出ようとする。
すると、モカに呼び止められた。
「待ってユウくん。 あたし、13時でバイト終わるから、待っててくれない〜?」
時計を見ると、今は12時50分。
まぁ…10分くらいいいか。
「りょーかい。 んじゃ、すぐそこの公園にいるからな。
リサさん、お邪魔しました」
リサさんに手を振られ、俺はコンビニをでた。
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「お待たせユウくん〜。 待った〜?」
「あぁ。 今は13時5分だから、15分待ったぞ」
「も〜。 そこは「いや、今来たとこ」でしょ〜?
そんなんじゃデート出来ないよ〜?」
「知らんがな」
モカにやれやれという態度を取られた後、俺はモカに冷たいココアを渡す。
「ほい。 バイトお疲れ」
「……おぉ〜ありがと〜。 はい。 これはモカちゃんからのプレゼント〜」
モカはココアを受け取ると、バッグの中からコーヒー牛乳を取り出し、俺に渡してくる。
まさかモカから飲み物を貰うとは…!
「サンキュー」
「こちらこそ〜」
2人で飲み物を飲み終える。
「んで、なんで俺を待たせたんだ?」
「んーとね〜。 キーホルダーを届けてくれたお礼をしようと思って〜」
「いや、お礼とか別にいいぞ?」
「まぁまぁ〜。 モカちゃんとデートしよ〜」
モカとデート。 その言葉で、俺は少し赤くなってしまった。
モカは美少女だ。 そんな女の子から「デートしよ」なんて言われてみろ。
赤くならない奴なんて居ないだろう。
「あれれ〜? ユウくん赤くなってる〜?
そっかそっか。 美少女モカちゃんとデートが嬉しいのか〜」
俺の顔を見て、モカがからかってくる。
くそっ…図星だが、なんか悔しい…!
よし、ここはからかってみるか。
「…まぁな。 モカみたいな可愛い女の子とデートとか、嬉しいに決まってるだろ?」
あああああ恥ずかしいいいいい!!!
俺何言ってんだああああ!!
「………」
ほらあああ! モカ喋らなくなったじゃん!
顔見れねぇよ…! 恥ずかしいよ…!!
チラッとモカの顔を見ると………
モカの顔は、俺と同じくらい赤くなっていた。
こんなモカは初めて見た。
「…き、急にびっくりするな〜。 さ、ユウくん早く行こ〜?」
モカは顔を逸らし、立ち上がる。
俺も立ち上がり、モカについていく。
珍しいモカを見れたなぁ〜
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俺とモカは、この地域で1番大きなデパートに来ていた。
「モカ、どこに行くんだ?」
「ん〜ユウくんが行きたい場所…? ユウくん行きたい場所ある〜?」
急に言われてもな…デパートなんてあまり来ないし……
「いや…特には無いな…」
「あらま…これじゃあお礼が出来ないよ〜」
「んじゃ適当にぶらぶら歩こうぜ? モカと出かけるだけでも、俺は楽しいからさ」
「…っ……りょーかーい」
少し間が空いた後、モカが返事をする。
それからは、いろいろな場所を見て回った。
アクセサリーショップ、ペットショップ、服屋など…
「どうユウくん。 似合う〜?」
現在、俺達は服屋に来ていた。
目の前でモカがハンガー付きのパーカーを持って俺にそう言ってくる。
モカの奴、パーカー好きだなぁ…
「いいんじゃないか? …でも偶にはパーカー以外もどうだ?」
「パーカー以外? ん〜…モカちゃんには合わないかなぁ〜」
そんな事を言うモカに、近くにあった可愛い系の服を渡す。
ひまりが着てそうなふわふわした系の服だ。
「これとか?」
「わ〜。 ひーちゃんが好きそうな服だ〜」
モカも同じ事を考えていたらしい。
モカは、渋々俺から服を受け取り、俺に見せてくる。
……おぉ…
「…服ってすげぇな…」
「…何その感想〜」
予想以上に可愛かった。 美少女すぎてびっくりだ。
「…それ奢るからさ、着てみないか?」
「いやで〜す。 モカちゃんはパーカーを買いまーす」
そう言うと、モカは服を元あった場所に戻し、パーカーをレジに持って行く。
俺は、モカが財布を出すより早くお金を出し、パーカーの会計をする。
横でモカがめっちゃ見てくるが、気にしない。
会計が終わった後
「ユウくん、流石に奢りは悪いよ〜…」
「いいって。 あまり金使わないし」
その後は、アクセサリーショップに行った。
「そういや、Aftergrowって皆アクセサリーつけてるよな。 ネックレスとか」
「カッコいいでしょ〜?」
「正直カッコいい。 俺アクセサリーとかつけないからなぁ〜」
「え〜。 絶対似合うと思うよ〜?」
俺がアクセサリーとか…想像出来ないな。
蘭とかに、「何それ。 ダサっ」って言われそう。
…そんな事言われたら泣くなぁ…
「この際に何か買ってみる〜?」
モカがとんでもない事を言ってきた。
アクセサリーを買うだと…!?
いや…でも確かに…女子に選んで貰えばダサくはない…はず…
「んじゃ…買ってみようかな」
「おー。 ユウくんアクセサリーデビューだ〜」
そう言われると恥ずかしくなってくるな…
モカが、アクセサリーを真剣に選んでいる。
モカがバンド以外で真剣な顔を見るのは初めてかもしれない。
俺は、モカとは違う場所でアクセサリーを見ていた。
「…おっ」
そこで、気になる物を見つけた。
目の前には…
"大事な人とお揃い! いつまでも仲良く"
と紙に書かれた複数のネックレスがあった。
赤、青、緑など、様々な色のネックレスがある。
形もオシャレ…だと思う。
"大事な人とお揃い"…か
「モカー。 ちょっと来てくれ」
モカを呼ぶと、モカは俺の元にくる。
「これさ、Aftergrowの皆にどうかな…?」
モカは、俺が指差した方向を見ると、目を見開いた。
珍しくびっくりしているようだ。
「…いや…! やっぱり男とお揃いとかキモいよな…! すまん」
他の場所に行こうとすると、服の裾を掴まれた。
振り返ると、モカが首を横に振っていた。
「…全然…気持ち悪くないよ…? 」
モカが、少し顔を赤らめながら言ってきた。
「そ、そっか…。 んじゃ、これにしよう」
「うん。 ユウくんとお揃いだ〜」
蘭には赤い宝石が入ったネックレス。
モカには青いネックレス。
ひまりにはピンクのネックレス。
巴にはオレンジのネックレス。
つぐみには黄色のネックレスを選んだ。
そして俺は、黒いネックレスを選んだ。
6個のネックレスを買ったので、かなりのお値段だったが、問題なく払えた。
モカと共に店を出る。
「モカ、ネックレスを渡すのは明日でもいいか?
明日、皆に纏めて渡したいんだ」
「うん〜。 あたしもその方がいいと思う〜」
「モカ、 今日はありがとな。 めっちゃ楽しかったよ」
「こちらこそ〜全然お礼出来なくてごめんね〜」
その後は、モカを家の近くまで送り、家へ帰った。
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次の日、俺はライブハウスでAftergrowの練習をサポートしていた。
うん。 相変わらず上手いなぁ〜。 皆楽しそうに弾いているのが分かる。
それだけ、この5人にはAftergrowという場所が大事なんだろう。
「…ふぅ…ユウ。 どうだった?」
演奏が終わり、少し汗をかいた蘭がそう言ってくる。
「うん。 歌と演奏は凄く良かったよ。 あとは少しのミス修正だな。
確か来月の初めにライブがあったよな?
今のままで行けば、かなり完成度が高い演奏が出来ると思うぞ」
いつも通り、演奏に対する正直な気持ちを言っていく。
さっきも言った通り、Aftergrowは来月の初めにライブがあるのだ。
そのライブには、Roseria、ハロハピも出るらしい。
「んじゃ、少し休憩にしようか。 皆連続で演奏して疲れただろ」
皆に休憩を提案すると、皆頷く。 もう前みたいな事は起こらない。
俺は、あらかじめ用意しておいたふわふわなタオルと冷たい水を1人1人に渡していく。
「ほい、蘭。 お疲れ、今日も歌凄く良かったぞ」
「あ、ありがと…」
蘭にそう言うと、一瞬赤くなったと思ったら、すぐにタオルで顔を覆ってしまった。
「次はモカ。 モカはギターのミスも少なかったし、素晴らしかったぞ」
「ありがと〜。 ご褒美に頭撫でて〜」
「ハイハイ。 よく出来ましたー」
モカの頭を撫でてやると、モカは笑顔になる。
モカは頻繁に甘えてくるなぁ〜。
「次はひまり。 ひまりも前よりミスが減ってるよ。
よく頑張ったな」
「ありがとー!! 嬉しい! あたしもご褒美欲しいなー!」
「ハイハイ。 今度コンビニスイーツ奢ってやるよ」
「ホント!? ありがとぉ!」
ひまりのテンションが高くなる。 ひまりはいつもテンション高いなぁ。
「次は巴な。 巴はいつも通り力強いドラムで凄く良かったぞ。 ミスも少ないし」
「へへ、サンキュー!」
「あ、でも一回スティック落としたよな? ライブ中は気をつけろよ?」
「うっ…お、おう」
巴のテンションが急に下がる。 テンションの振り幅が広いなぁ…
「次はつぐ。 つぐは一生懸命演奏してるのが伝わってきて凄く良かった。
具体的に言うと、真面目な顔してキーボードを弾いてるつぐは凄く小動物感があって、守りたくなる衝動にかられるんだよな。
だからミスした時も、"頑張れ"って気持ちが強くなるんだよな。
いやぁ、練習でこんなにも癒しを与えるんだから、本番のライブでは沢山の人をいやすんだろうな。 流石、大天使ツグミエル」
「え…えっと…あはは…」
しまった。 つい本音がでてつぐを引かせてしまった。
「また始まった〜。 ユウくんの熱弁だ〜」
「…ユウ。 気持ち悪い」
モカと蘭に言われてしまった。
気持ち悪いとは何だ気持ち悪いとは!
全く…
「さて、あと5分休憩したら一回合わせて終わりにしよう」
俺の提案に皆頷き、各々休憩を始めた。
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その日のAftergrowの練習が終わり、皆機材の片付けを済ませる。
後は部屋を出るだけ…なんだが…
「…皆。 ちょっと待ってくれないか」
俺は、皆を呼び止めた。
モカ以外の皆はキョトンとした顔をする。
あぁ…緊張する…だけど、ちゃんと言わないとな。
「…今更だけどさ、皆、俺の事覚えてくれててありがとな。
正直さ、皆俺の事なんて忘れてると思ってたから、本気で嬉しかったよ」
皆が真剣な表情になる。
「そして、Aftergrowにも入れてもらえて…皆には感謝しかないよ。 だから、これは俺からのお礼っていうか…これからもよろしくって事で…」
そう言って、俺は鞄から5つの箱を取り出し、皆に渡す。
皆、凄く驚いている。
「開けてみてくれ」
そう言うと、皆箱を開ける。
「…綺麗…」
蘭が、ボソっと言った。
俺は自分用のもう一つの箱を開け、皆に見せる。
「これはな、皆でお揃いのネックレスなんだ。 …男とお揃いとかキモいと思うんだけど、家に置いておくだけでもいいからさ、受け取って欲しい」
これが俺の気持ちだ。 Aftergrowは俺の居場所を作ってくれた。
ボッチだった俺に、居場所をくれたんだ。
この事に対する感謝の気持ちは、忘れてはいけない。
「…馬鹿じゃないの」
蘭がボソッと言った。 蘭の方を見ると、ネックレスを首につけていた。
「…うん。 ユウにしてはいい趣味してるじゃん。 …ありがと」
蘭が言うと、皆もネックレスをつけてくれる。
「良かったね〜ユウくん。 皆喜んでくれたよ〜」
「あぁ。 ありがとな、モカ」
「いえいえ〜、またデートしようね〜」
モカが言うと、蘭がものすごい勢いで俺の顔を見てきた。
「デート…? デートって…なに…? 」
「いや…これは違うんだよ蘭。 デートじゃなくて、ただデパートに行っただけで…」
「え〜、ユウくん…あれはデートじゃないって言うの…? 可愛いって言ってくれたのに〜…」
モカが爆弾発言をする。
「いや…! 確かに言ったけどさぁ…!」
「他にも〜一緒にお洋服見たりしたのに…あれはデートじゃないって言うの〜…?」
「もう黙ってくれよぉ…!!」
その後、なんとか蘭の誤解を解き、解散になった。
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その日の夜、自室でゴロゴロしていると、LINEがなった。
相手は…蘭か。
『今日はネックレスありがとう。 嬉しかった』
簡潔に纏められた蘭らしい文章に少し笑ってしまう。
「喜んでもらえて良かったよ。 これからもよろしくな」
と送ると、数分後に返信が返ってくる。
『うん。 こたらこさ』
…んん…? こたらこさって何だ…?
なんかの暗号か?
そんな事を考えていると、また蘭からLINEがきた。
『間違えた。 こちらこそ』
どうやら誤字だったらしい。
「可愛いとこあるなぁ。 こたらこさ〜」
と送ってやった。
ふふふ…今蘭のやつ、どんな顔してるかなぁ。
恥ずかしくて顔真っ赤にしてたりしてな。
『…ウザッ…』
とだけ送られてきた。
……おぉう…俺の心に3000ダメージ…
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ーー蘭視点ーー
ユウからネックレスを貰った。
「……」
あたしは、無言でユウから貰ったネックレスを眺める。
赤い宝石が入ったネックレス。
あたしの髪の色と同じ…
「…ユウにお礼言わなきゃ…。
えーと…『ネックレスありがと』…いや、簡潔すぎるか。
『この度は、ネックレスをいただき…』これじゃ固すぎか…」
悩んだ末、『今日はネックレスありがとう。 嬉しかった』
になった。
こんな文章しか送れない自分が嫌になる。
ユウからすぐに返信がくる。
ユウは、LINEの返事をすぐにくれる。
『喜んでもらえて良かったよ。 これからもよろしくな』
これからもよろしく…か。
小学生の頃は、ユウが居なくなってからずっと泣いていたけど、今はユウがいる。
また前みたいに6人で過ごせるんだ。
あたしは、それが堪らなく嬉しい。
だからだろうか。 感情が高ぶって、
『うん。 こたらこさ』と誤字を送ってしまった。
それに気づいた時は羞恥でベッドに顔を埋めてしまった。
やってしまった。 大事な文章で誤字なんて…笑われてるかな…
あたしは、速攻で訂正の文章を送った。
すると、次に送られてきたのは…
『可愛いとこあるなぁ。 こたらこさ〜』
と送られてきた。
「〜〜〜っ!!」
あたしはベッドに顔を埋め、足をバタバタさせる。
からかわれた…! ユウに馬鹿にされた…!!
『…ウザッ…』
とだけ送り、仰向けになる。
……確か…今日ユウはモカの頭を撫でてたな…
いいなぁ…あたしも…撫でてもらいたいな…