魔法少女リリカルなのは 魔法を使えない高校生   作:キングver.252

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13話 〜狂った人間は尚も嗤う

「鴉の旦那!?なんでこんなところに!!」

 

そんな金堂悠雅の声により、持田千海との斬り合いは一次幕を閉じた。

『鴉の旦那』。金堂悠雅に暴走族の頭になるように言い、その妹さえも救ってくれようとした、言わば金堂悠雅の恩人でもある人が、そこには立っていたからだ。

 

「久しぶりじゃのぅ、金堂悠雅。何事もなく暴走族の頭やってるようで何よりじゃ」

 

そう言い、シグナムをバインドで縛り付けて『鴉』は喋る。

 

「そりゃあ、旦那は俺の家族の命の恩人ですからね!頼まれれば何でもやりますよ!」

 

そう言って、先ほどまで闘っていた持田千海をもその場に置いて、『鴉の旦那』の元へ駆けていく。

 

「あっ!こらまちやがれ!!」

 

そんな金堂悠雅を、千海も追い掛け――――――。

 

「――――――――ッッッ!?!?」

 

――――――ようとして、突如千海に走った悪寒がその足を止めさせた。

 

「ほう。危機を察知できる程度の能力は兼ね備えているようじゃな」

 

冷や汗を垂らしながら千海が睨み付けるのはカリエット・オーシャン。

何をされたのかは良く分からないが、本能的に『これ以上近付いたら駄目だ』と思わされた。

 

「千海っ!ソイツに近付いたらアカンで!ソイツの魔法は隷属させるまほ――――」

 

「おっと。ネタバレはいかんのぅ八神はやて」

 

そう言ってカリエットは人差し指を上に上げた。それだけで、八神の周りを囲んでいた暴走族50人が八神はやてを押さえ込んだ。

 

「おいこらテメェら!何やってやがる!?」

 

その奇行に、思わず金堂悠雅は叫ぶ。

ソイツは人質で、手を出したらダメだと。最初に、一番最初にそう言っておいたはずなのに。

 

「待て!待てって!おいッ!!」

 

「――――ムダじゃよ、金堂悠雅」

 

金堂悠雅は慌てて群がる仲間たちを止めに行こうとするが、そのカリエットの一言でピタッ、と足を止めた。

 

「……どういうことですか?鴉の旦那」

 

その顔に浮かぶのは、困惑。何故止めに行くのがムダなのか。金堂悠雅には、本気でそれが分からなかった。

 

「お主は確か『魔法』の、奇跡の起こし方を知りたくて八神はやてを攫ったはずじゃったな」

 

「何でそんなこと……」

 

そんなことは、旦那にはおろか、誰にも告げていないはず―――――だ。

…………………いや待て。

と、そこで金堂悠雅の思考にストップがかかってしまった。

誰にも告げていない?本当にそうか、と。

では先ほどバイクを乗りながら、自分は信頼している相棒に何を言ったか、と。

 

「宗司の奴が教えてくれたよ。―――――ダメじゃあないか、大事な妹さんの命を簡単に手放しちゃあ」

 

そこでようやく上げられた人差し指は下ろされた。その瞬間、群がる仲間たちは一斉に動きを止め、『まるで人形のようにその場から動かなくなった』。

 

「……なに、言ってるんですか。何言ってるんですか!アンタは!!」

 

「―――――そこのお前の手下達は、全て隷属させてもらった。私の指示に従ってもらおうかのぅ」

 

カリエットは下卑た笑みを浮かべ、金堂悠雅にそう言った。

 

「おいおい、仲間じゃなかったのかよ。あのジジイは」

 

「……るせぇよ。そんなこと俺にも良く分からん」

 

そんなことこっちが逆に聞きたいわ。と、金堂悠雅は千海の言葉を跳ね返す。

 

「千海とやら。お主も妙な真似をするでないぞ?お主の仲間であるシグナムと、そこの男がどうなっても知らんのなら別段動いても構わんが」

 

「……ちっ。おいジジイ。テメェの目的は一体なんだ」

 

動きさえも封じられた千海は、カリエットを睨みつけながらそう問い掛ける。

それは、金堂悠雅も聞きたい問いであった。

一体何をなし得ようとし、こんなことをしたのか。全てが金堂悠雅にとっては謎であった。

 

「私の目的か……。そうじゃの、八神はやてを殺すことじゃ」

 

そうして答えられた解は、二人の予想外の解であった。

 

「なんでそんなこと……」

 

千海は思わずそんなことを口走る。その問いに答えてくれたのが、後ろで野郎どもに囲まれている八神はやてであった。

 

「アイツは一度私に捕まってんのや。きっとその時の腹いせにこんなことしたんや」

 

カリエットは嗤う。無様に固まった男どもに抱えられ身動きが取れない八神はやてを見て、嘲笑う。

 

「フォッフォッフォッ!!何とでも言うが良い!キサマには私のあの時の屈辱は分からんて」

 

「なんで、だよ……。旦那!コイツは俺の恩人なんだ!どうか見逃してくれよ!!」

 

そう言って必死に懇願する金堂悠雅を。

 

「―――――黙れ童」

 

どす黒く染まる魔法球で持って黙らせた。

 

「グゥッ!?」

 

その一撃は、今まで金堂悠雅が受けたどの攻撃よりも不可解で、どの一撃よりも強力であった。

何とか木刀で防いだは良いものの、衝撃までは押し殺せない。そのまま後ろに吹っ飛ばされて、壁に激突した。

 

「魔法を『奇跡』と呼ぶ貴様らが割り込んできて良い話しではないぞ」

 

そう言って、真っ直ぐにその眼は金堂悠雅を見据えて嗤う。

 

「どうだ?これが貴様の言う『奇跡』だ。良かったのぅ体験出来て!!フォッフォッフォッ!!!」

 

「いい加減にしいや!そんな管理外世界で魔法なんか使って、また捕まりたいんか!?」

 

「―――――捕まえる?冗談は止せ。キサマはここで死ぬんじゃよ」

 

そう言って、カリエットはどこまでも嗤う。果てしなく長い『地獄』から這い上がってきた亡者の如く、そこには笑顔なんてものは無かった。

 

「そうじゃぁ……。良いことを思い付いた。おい、持田千海、金堂悠雅」

 

カリエットは告げる。果てしなく残酷で、非道な命令を、二人に告げる。

 

「――――――貴様ら二人で八神はやてを殺せ」

 

「なっ!?」

 

「ふざけんな!!」

 

告げられた言葉に、思わず二人は言い返してしまう。だが、それは仕方の無いことであった。

そもそも千海は、八神はやてを奪還するためにこの作戦を決行したのであって、決して殺すためではない。

そもそも金堂悠雅は、八神はやてを殺すつもりは無かった。妹を幸せに出来る方法を模索し、ただ八神はやてに答えを求めただけであった。

 

「良いのか?二人ともそんなこと言ってしまって」

 

ニヤニヤと、絶望はまだ続く。

 

「金堂悠雅。お前にこれは何に見えるかのう?」

 

そうして見せられた物は、縦に長い突起物で、一番頂上にはボタンみたいな、何かのスイッチのような物だった。

 

「ただのスイッチに見えるが、それがどうしたって言うんだ!」

 

「お主の妹の身体に仕掛けた爆弾のスイッチじゃよォ!これを押した瞬間、貴様の妹はどうなってしまうのかのぅ!!」

 

ゾクゾクゾクッ、と。

カリエットの背中に何かが走った。

言いようもない快感。今すぐにでも押してしまいたい衝動に駆られるが、それでは金堂悠雅を縛り付ける『物』が無くなってしまう。

 

「そんな……。嘘だろ!?嘘っていってくれよ!旦那ァ!!」

 

「本当にこの私がお主の妹なんぞ助けてやると思ったか!?哀れよのぅ!!この私が行わせた手術が無ければ、『本当の医師』に手術してもらっていたのなら!貴様の妹も死なずに済んだかもしれんのになぁ!!」

 

狂っている。その場にいた者は、皆が皆そう思った。

わざわざ金堂悠雅を騙すためだけに、妹でさえ利用したのだ。たったそれだけのためだけに、――――――――――金堂悠雅の一番大切なモノを壊したのだ。

 

「おいジジイ、いい加減に」

 

「おっとキサマもだぞ?持田千海。八神はやて一人を殺すのとシグナムとその男を殺されることを秤にかけろ。優先された方は果たしてどちらじゃろうなぁ!?」

 

あまりの狂いぶりに、千海が止めようと割り込むが、その前に先手を打たれてしまった。

 

「……クズが」

 

「何とでも言うがいい。私はとっくに人道など朽ち果てた身。今更何を言われようと何も響かないさね」

 

どうしたものか。と、内心煮えくり返そうな怒りを抑え考える。

しかし。

 

―――――チャキッ…………。と。

真後ろから、そんな音がした。

 

その瞬間、あらゆる思考が意味を成さずに消えていった。頭をかけ巡っていたものは全て否応なく排出さ

れ、その音にのみ思考が揺らいでしまっていた。

 

「―――おい、嘘だろ?まさかお前本当に」

 

後ろを振り向かなくても分かる。その音は、木刀を置いて、真剣を持った音だった。

 

「こうしなきゃアイツは、――――玲那は救われないんだ。アイツにはよ、幸せになってもらわなきゃよォ……」

 

―――――ここまでやった意味が無くなっちまう。と。涙を流しながらも笑い、そう告げた。

 

 

 

 

 

 

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