魔法少女リリカルなのは 魔法を使えない高校生   作:キングver.252

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3話 〜草刈りはチェーンソーで行いましょう〜

『生徒指導には関わるな』

 

俺と八神が、高校生活1日目にして当たり前な事実に気付いた時には、もう心は死んでいた。

とりあえず説教、何があっても説教、終わりにもう一通り説教。

何と言うか、罵倒以外に何も言われていない気さえしていた。

 

「やめよう、もう八神とバカするのはやめよう……」

 

「ちゃうで……八神『と』バカするんやなくて、千海『が』バカなんやで……」

 

「喧嘩うってんのかゴルァ、テメェの身体コンクリにしてから三途の川拝ませてやろうかアァン?」

 

「アンタこそ私の456の秘技のどれかで三陸海岸に沈めたるわ」

 

「俺なんか秘技457個あるもんね」

 

「じゃあ私は3万や」

 

「桁飛びすぎじゃね?そもそもじゃあって言ってるよね言っちゃってるよね」

 

「こまけぇこたぁ気にすんなや」

 

もちろん、そんな説教の後である。自ずと会話も気だるくなってしまうのは自然の摂理だ。

そんな中でも、ボケとツッコミは欠かさない二人は最早プロと言っても過言ではないと思う。漫才でも組んだらいい線までなら行けるのではないだろうか。

 

「八神、この後何が残ってるか覚えてるか?」

 

「はやてでええのに。……学校裏の草刈りやろ?ホン

マめんどうなことになったもんやわ」

 

精神は最早ボロボロ。それに加えてこれから身体までボロボロになると思うと、もう死んだ方がマシだと思う。あのイケメン教師とゴリラ教師め、絶対後でしめる。

 

「千海こそ知っとるんか?この学校裏の草刈りが如何に大変かを」

 

「……あぁ。だがその点は抜かりない。これさえあれば俺は草だろうが何だろうがたたっ切ることができるからな」

 

俺が鞄から取り出すのは木刀。名前は無いが、そこらへんに売ってそうな安っぽい木刀であることに間違いはない。

 

「へぇ、千海、剣なんか出来たんやなぁ」

 

「むしろこれしか出来ないと言ってもいいがな」

 

「威張んなや」

 

軽い、軽ーいボケツッコミを繰り返しつつ、学校裏を目指す。と言ってももうすぐそこまで差し迫ってはいるのだが。

現在時刻は14時をちょっと過ぎた辺り。朝ごはん以降、何も飲まず食わずで草刈りはちょっと厳しいと思ったが、それでも頼まれたので仕方がないのだ。やらないとあの先生怖いし。もしやらなければ、『今日は8月5日なのでかけて40番の持田くん、この問題を〜』や、『それじゃあ今目が合ったのにわざと逸らしやがったそこの持田くん、この問題を〜』みたいな感じで1週間はあてられ続けられること間違いなしだろう。

 

「まあでも今のご時世ちょっと腕っ節が強い程度じゃ

生けてけないし、剣なんて何の役にも立たないことは重々承知だけどさ、……ずっと前に誓ったんだ。親とかは覚えてなくても、絶対に剣だけは忘れねえって。役に立つ立たないじゃなくて、剣は俺の命なんだって」

 

俺はドヤ顔でそう言った。

きっと八神の目には歯がキラッと光る好青年に見えたことだろう。間違いない。

 

「そっか……。元気出しや。まあでも大丈夫や!私とアンタなら漫才でも食っていけるはずや!」

 

と思ったらそうでもなかった。むしろ清々しいまでに同情された。無駄な提案まで添えられる完璧な八神フルコースだった。

 

「何でだよしねーよ漫才なんか!ちょっと俺今シリアスっぽい雰囲気出してただろうが!このまま『過去編』みたいなの突入して話数稼ぎしようとしてただろうが!」

 

「過去なんか振り返ったって、良いことはないんやで?私らはきっと今をひたすらまっすぐに生きてかんといかんのや」

 

「何で俺が説得されてんの!?今の感じからどうやったらここまで形勢逆転出来るの!?すげーよお前いやマジで!!」

 

今は俺が八神を説得しようとしてたはずだ。主導権は絶対俺にあった。なのに何故勝手に話しの舵が切られているのだろうか。

 

「……まあでも、私にも分かるで。何か一つでもそうやって大事にしたい気持ち。大切なもんを何か一つでも取りこぼせば、もうそれ以外の大切なもんは絶対に手放したくないもんや。――――案外私ら、似てるのかもしれへんな」

 

八神は笑う。もう失った何かを想うように儚い笑顔で笑う。

きっと、八神がいう事に嘘偽りはない。

八神だって大切なものを失い、それを乗り越えてここまで至ったのだ。

俺にとっては『家族の記憶』。八神にとっての大切なものは…………何なのだろうか。

否、これはきっと詮索すべきことではない。八神には八神の事情が、そして俺には俺の事情がある。それを解決できるのは、結局のところどれだけ他人に助けてもらおうとしたって、自分にしか出来ないのだ。

 

「まあ、理解してもらえたならいいや。ならちょっくら下がってろ」

 

そんな事を言い合っている間に、目的地まで着いてしまった。

最早自分の背丈まで伸びてしまっている巨草『雑草』。それが学校裏全体に広がってしまっている。

こんな長い雑草、一つ一つ引っこ抜いて行く方が骨が折れる。

ならば選択肢は一つ。―――――たたっ切るのみだ。

 

―――――ヒュウ、と。風が頬を一撫でする。

 

その合間に俺は木刀を腰にかけるように持っていき、『居合』の型を取る。

心を落ち着かせ、感覚は営利に。

『斬る』という一つの動作に全てを乗せ、己の一番のタイミングで、絶好の風に乗せて刀を一振―――――――ッ

 

 

 

 

 

 

――――――ズバんッッッ!!!!!

 

 

 

 

 

そんな音を立てて、俺が立っている所から10メートルくらい離れた所まで、余すことなく根こそぎ崩れさった。

 

「……アンタ本当に人間かいな」

 

八神は苦笑する。いくらたかが雑草とは言え、千海が振るったのは『木刀』である。『斬ること』を目的とせず、『叩き潰す』ことを前提に置いた武器で、たった一振で根こそぎ雑草を切り倒したのだ。

よくある『ブチブチブチ!!』みたいな音など微塵もせず、『バサッ!』と、それこそ『チェーンソーのうるさい音を無くした状態で草を切る』とそんな音が出るような、そんな感覚。

 

「ちょっとは格好ついたかねえ。これでも精一杯カッコ良く決めたつもりなんだが」

 

「中々のイケメンやったで。その調子で切り倒していってちょうだいな」

 

そう言い、八神は切り倒した雑草をゴミ袋に詰め込んでいく。

 

「了解っと、俺より八神の方が負担少ないのは気の所為ですかねぇ?」

 

「アンタ女の子にそんなことさせるつもりなん?それにアンタこそ木刀振るうだけで仕事終わるなんていい

ご身分ちゃうの?こっちは一々草取るために上下運動繰り返さなきゃいけないっちゅうのに」

 

「……ほんっとうに口達者でいらっしゃる」

 

「若造に負けるほど落ちぶれちゃいないつもりや」

 

そんな軽口を叩きながらも、目の前の草は見る見る数を減らしていく。そりゃそうだ、数秒単位で10メートルは切り倒されているのだから。

 

「にしても本当にすごいなぁ千海!今度なのはんとこのお兄ちゃんとでも試合すればええんちゃうか!?」

 

「やだよめんどくせぇ!」

 

「絶対ええ勝負出来るって!今度言っといてやるわ!」

 

「余計!すっごく余計!何で俺の意見ガン無視!?耳

引きちぎって移植させてやろうか!?」

 

「なのはのお兄ちゃんもおっけーって言っとったよ!」

 

「何やっちゃってんのォォォオオオオオオオ!?」

 

「冗談や!」

 

「ぶっ殺すぞテメェ!テメェの顔を冗談みたいな顔にしてやろうかァアアアアア!?」

 

そう言いながらも草はズバズバ切っていきます。はい、口は熱く、手はクールに。これ絶対。

 

「ウルァ!!」

 

最後の一振。それで今までの鬱憤を晴らすが如く、猛速で振るわれた斬撃は草を根こそぎ刈り取る。大体の雑草は三分の二ぐらいまでの長さに刈り取れたよう

だった。

 

「ハァ、ハァ、おいこらテメェ。さっきからふざけたこと言いやがって、草ァちゃんと取ってんだろうなァ!?」

 

「ほらこれ見てみぃ!」

 

そう言って差し出されるのはゴミ袋。

――――ただし、十分の一も満たない量しか入っていないゴミ袋であるが。

 

「ぜんっぜん取れてねぇじゃねえか!!え!?なにお前なんで俺の後ろついて来てんの!?上下運動どうしたオイ!!」

 

「女ってゆーんはな、上を向いて生きてかなアカンのや。そう!つまり下なんて向いてる暇はないんや!」

 

「だァから草は取れねえってかァ!?んなこと言って

お前ちょっと草取ってんじゃん!それバリバリ下向いてんじゃん!なんでそこで割り切れなかったの!?」

 

「――――過去は、振り返らないもんやで?」

 

「もう黙れぇぇええええ!!よし分かった。お前は回れ右して上を向きながら草を取ってけ!涙が溢れないように上を向いて草を取っていけぇ!」

 

「そんなら草なんて取れるわけないやろ!アンタ何考えてん!?」

 

「もうお前ホントに何しに来たの!?」

 

 

 

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