魔法少女リリカルなのは 魔法を使えない高校生 作:キングver.252
時刻は午後の五時くらいを回った時であった。
大半の聖祥生は家に帰ったり、外で遊んでいたりするのだろうか。
そしてきっと今はそろそろ帰らないとまずいかなーなんて不安に押しつぶされそうになって結局6時くらいに帰っても全然怒られなくて平気でしたーみたいな、そんなことをやってる最中ではないだろうか。
そんな時間に俺こと持田千海は、ものの見事に未だ草刈りを行っていた。
否、草刈り自体は先ほど終了したのだが、生憎と身体が最早クタクタで動けないのである。俺然り、隣で寝転んでいる八神然り。
「な、何とか終わったわ。もうダメや、ボケる気力もあらへん」
「お前最初はツッコミ役っぽいこと言ってなかったっけ?」
「気の所為や、昔の女ァ忘れろや、とっつぁんよォ」
「とっつぁんじゃねえし、誰の真似だよ。それとついさっきの八神を死んだ人みたいに言うなよ、言っとくが酷い自虐は嫌われるぞ?」
「大丈夫や、周りの好感度はもうこれ以上無いくらいに上がりまくっとる。こんだけ上がりまくったらもう何しようが構わないくらいには上がりまくってしもうた」
「――酷いナルシストも、嫌われるんだぜ?」
大分綺麗になった地面に二人して寝転んで、もう夕日も見え始めてきた空を眺め言葉を交わす。
傍から見たら青春をしているように見えるのだろうか。アオハルに乗っているように見えちゃうのだろうか。
どちらにせよ、交わす言葉を聞いたらがっかりするだろう。鋭さも気力もないボケとツッコミのオンパレー
ドである。誰も聞きたいとは思えない。
「もう大体終わったし、八神もう帰っていいよ」
「そうしたくてもなぁ、身体が悲鳴を上げてて動いてくれんのや」
「お姫さまだっこしてあげましょうか?」
「やめてや気持ち悪い」
ズバンッッッ!!!と切り捨てられた。
「じゃあどうすんだよ」
「疲れが取れて回復するまでここにおるよ。千海と話すの楽しいしな」
「俺は疲れるからヤダな……」
「おいアンタ!せっかく美少女が話してあげようとしてんのにそれは無いんちゃうか!?」
「あー鼓膜が破けるー隣の自称美少女さんに鼓膜が破かれるー誰か助けてー」
「人聞きの悪いこと言うなや!」
耳元で大声で喋られ、本当に耳が逝きそうだった。
一通りボケとツッコミを終えると、二人は元の定位置に戻りまた寝っ転がる。
「もう私動きたくないねんけど」
「ただただボーッとしてるだけで読者が楽しめると思ってんのかー?働かざるもん食うべからず、きりきり動けー」
「なんでアンタは動かんのや!!」
「いやそりゃお前アレだよ。俺の足は良く見ると疲れた後すぐには立てない構造になっててな?もし立ってしまうと足が根本から崩れ落ちてしまうんだよ」
「なら私が立たせてやろうかぁ?ついでに色んなところも」
「ていっ!」
俺の言葉を聞いて、八神は目をキランとさせる。そのままド下ネタに走ろうとしてたので、頑張ってそれを阻止してあげた。
「あいたっ!何てことするねんアンタ!動物愛護協会に訴えるで!?」
「お前それ自分で自分のこと狸だって認めてるから。
それと女の子がそういうこと言うんじゃありません」
まったく。と、俺は再び空を見上げる。
時間はもうすでに、6時少し前ぐらいまで進んでいた。
☆☆☆☆☆☆☆
八神がいつまでも愚図るから、結局家に帰り始めたのがすっかり暗くなってからになってしまった。
「送ってかなくてもええっちゅうのに」
「バァカ、危ないだろ」
そんな他愛のないことを喋りながら、俺と八神は夜の街を歩いていく。
外灯は最早満遍なくつけられ、店の光で夜でも明るい海鳴の町は、観光地ということもあってか行き交う人の数が多い。きっと高台から望遠鏡でも覗きこんだら、人がアリのように見えてしまうのだろう。
「……ははぁん。読めたで。アンタ送ってくとかチャラいセリフ吐いて実は私の家知りたいだけやろ。その手には乗らんで!」
「なんで俺がお前の家知らなきゃなんねえんだよ!そんなん知るくらいならペットショップでも知った方がよっぽどマシだ!」
「何やて!?んじゃあそこら辺のペットショップに
行ってどうぞ!?」
「危ないっつってんだろうがァァアア!!!」
―――――ヤバイ、と、八神はやては直感的に感じていた。
八神はやては、自分の家を『一般人』にあまり知られたくないのである。
それはもちろん、八神の家には『魔法的生命体』がいるからだ。
シグナムやシャマル、ヴィータとかだったらまだ大家族で誤魔化せる。
ただ、ザフィーラとリインフォースツヴァイはダメだ。あれはダメすぎる。
ザフィーラなんて犬状態であってもめちゃくそデカイし、人間形態になったとしても『犬耳』が生えてしまう。そんなもん自分は『不審』です、と言ってるようなものだ。
リインフォースに至っては最早サイズが妖精さんなの
だ。八神家に至っては誰にでも見える妖精さんがうようよしているのだ。
いつ地雷を踏み抜いてこちらに顔を見せるか分からない。
そもそも、シグナムやらヴィータらは別に問題はないと思ったが、よくよく考えたらあんなカラフルな髪の色持つ『日本人』なんていねえよなんなの赤色とかピンク色とか薄い緑色とか。人間式信号機かよ。赤色とピンク色の区別あんまりつかないけど。
(いやアカン。アカンでこれはホンマに。こんな一般人に魔法の存在を知られるわけにはいかん)
どうにかして千海が自分の家に来ることを阻止せねばいけない。いけないのだが、そのための方法がない。
―――こっそり逃げるか?
いや、捕まる可能性が極めて高いし、そもそもそんなことしたら千海に失礼や。
―――誤魔化して自分の家の近くの家で帰ってもらうか?
いやいや、それだと私がその家にインターホンも押さずに入ってしまうことになるし、いくらご近所さんと言えども勝手に入るのは気が引ける。
(じゃあどうすればええんやぁぁあああああああ!!)
「あ、あの……」
頭の中でグチャグチャになった打開策を全て弾き出すように叫び、千海の方をチラッと見る。千海は前だけを見て、自分の方は見向きもしなかった。
「――――そんな心配すんな」
ふと、そんな千海から声がした。
そのいつもの感じで告げられた言葉に、再度目を見や
る。
「家の近くまでしか送ってかねえよ。お前の家なんて知りたくねえし、知られたくもねえんだろ?」
「う、うん」
「だったら俺はずかずか入ってったりしねえよ。自分の秘密は守り通してこそ秘密だろ?」
笑いながら、八神に告げる。とても優しい笑顔で。
「あ、ありがとな。ホンマに恩にきるわ」
「気にすんな。それより――――さ、さっきのお前のオドオドしてたの、見ててめっちゃ笑えたんだけど……っ。ククッ」
「なっ――――」
八神の顔が思わず真っ赤になる。今まではどんだけ弄ってもそうそう変わらなかったのに、ここに来てようやくそういう顔が見れた。
そう思うと、笑いが止まらなかった。
「わ、笑うなや!あれはしょうがないやろ!」
「『あ、あの……』ってお前っ、ククッ!動揺しすぎだろ!アッハハハ!」
「うわぁぁあああああああ!!殺す!絶対に殺してやる!!」
「―――――いかんなぁ。女の子がそんな言葉言ったら」
たったの二言。それだけで、それまでの前提が全て弾き飛んだ。
コンクリートで出来た地面を堂々とこちらに歩いてきて、ソイツは告げる。
否、――『ソイツ』というには、最早数が多過ぎた。
「我ァ『禍螺夢楮(カラムーチョ)』っつう暴走族の頭ァ努めてる金堂悠雅(こんどうゆうが)っちゅうもんや」
暴走族?何故こんな所に?
なんて考えてる余裕はなかった。
「そこの女ァ街で一目見た時から惚れててなぁ」
「奪いに来てやったわ。そこんとこ、夜露死苦ゥ!!」