魔法少女リリカルなのは 魔法を使えない高校生 作:キングver.252
「へぇ。女1人取るために、こんな人数引き連れてかい」
「生憎と、好きなモンのためなら手段は選べねえタチなんでな」
全員同じ黒色の服に赤のラインが入っている、如何にも暴走族ですとでも言いたいような服を来て詰め寄る。
気づけば行き交う人もいなくなっていた。
そりゃそうか。誰が暴走族が屯う道路を歩きたいと思うものか。
「俺ァそこの女に心底惚れててなァ。どうだい兄ちゃん、俺に譲ってくれねえかい」
「だとよ八神。お前コイツになんか優しいことでもしてあげたのか?こんなとこまで来るたぁ随分な執着ぶりじゃねーの」
「私はなんもしとらんよ!こんな男初めて見たわ!」
そう言い、八神は顔をブンブン横に降る。
「だとよお頭さん?そういうわけだ、諦めてくれ」
「バァカ、今から知っていけばいいんだろうが!てめぇらかかれぇ!!」
金堂悠雅がそう告げると、群がる暴走族どもが一斉に鉄パイプやらを持ち上げ、かかってくる。
数にして凡そ20人くらい。
どう考えても勝ち目は無さそうだ。
「くそっ!逃げ場はつくる!八神は一人で逃げろ!!」
「んなこと出来るわけないやろ!」
「ハハッ!いい子だねぇますます惚れた!!」
まず1人、鉄パイプを振り上げる瞬間に木刀を首にかけ、掠めるように横に凪ぐ。それだけで敵は気絶し、地面に伏せる。
「ったく!敵を奮い立たせてどうすんだ!」
そのまま凪いだ勢いを利用して旋回しつつ、周りの雑魚を一掃する。
「ほら逃げろ!俺は大丈夫だから!」
「でも!」
「いいから!に、……げろぉ!!」
振り下ろされた鉄パイプを木刀で受け止め、そのまま
弾き返して脳天をぶち割る。
今ので何人だ。
後何人打ちのめせばいい。
視界に写るのは有象無象の雑魚どもだ。
「オラァ!!」
後ろの奴らは全員片付けた。これで八神の退路は確保された。
「捕まんじゃねえぞ!」
そう言って八神の背中をポンと押す。
もうすでに八神の目には涙が溜まっていた。
「絶対、絶対助けに来るから!!それまでは負けないで!!」
そう言って八神はようやく、道路をかけていった。
「行かせるかよォ!!」
暴走族どもが追いかけようとするが、―――――ムダなことだ。
「こっちのセリフだバカ野郎!!」
一凪ぎ。それだけで敵は撃沈していく。
「―――こっから先は行かせねえ。死にてぇヤツからかかってきやがれ!」
「――かっけえじゃねーの」
後10人以上もいる中から、一人の男が歩み出てくる。
言わずもがな、金堂悠雅だ。
「テメェみたいなやつが、族に欲しかったんだよなぁ!」
その手に持つのは木刀。そこら辺の鉄パイプの方が威力あるんじゃないのかと思うが、木刀ほど戦いやすい
武器はない。
まず一つに、力の加減をする必要がないのだ。
真剣の如く刃先が切れる訳でもない。ただ叩き潰すだけだ。頭とか殴ればそれ相応にはなるかもしれないが、それでも死ぬことはないだろう。
そして二つ目に、軽いということだ。鉄パイプや真剣等とは違い、木刀は軽い。そのために、速く振れるし、躊躇いもなくなるのだ。
「おいテメーら。手ェ出すんじゃねえぞ」
そう言い仲間を下がらせて、金堂悠雅は俺を見据える。
「……随分まっすぐした目してるじゃねえの。そんな目出来るならなんで暴走族になっちまったのかねえ」
「うるせェ!俺の事は今関係ねえだろうが!」
そう吐き捨て、木刀を正面に構える。
それに対して、こちらには構えなどはなく、至って自
然体である。
「――――オラァ!」
どちらからともなく、剣は交えた。
「ハッ!!」
だが、そのつばぜり合いもすぐに終わる。
金堂悠雅はつばぜり合いの最中、重心を下にずらし足をかけた。
言うまでもなく地面に倒れ伏したのは千海だった。
「終いだ!!」
「まだまだァ!」
木刀を振り上げ、そのまま振り下ろされた木刀を受け止める。そのまま今度は千海が金堂悠雅に足掛けをし、体勢を崩させる。
「くっ!」
両者は互いに立ち合い、一歩ずつ下がった。
「―――なんでそこまで俺のジャマをする!?」
「バァカ。一度知り合っちまったんだよ。だったら助けるしかねーだろ」
――――――ガンッ!!
と、木刀と木刀が打ちあう音が夜の街に響きわたった。
☆☆☆☆☆☆☆☆
八神はやては走る。
より遠くへ、より速く。
それは、暴走族から逃げるというためではなく。
どちらかというと、『速く助けを呼びたい』という一心で。
(なんで私の力はこんな時に使えんのや!!)
八神はやては言うまでもなく魔法が使える。
この世界の住人に対しては圧倒的な力を行使出来る。
ただそれは、許されてはいない。この世界の住人に魔
法の存在を知られることそのものがあまり良くないことなのだ。そんな世界で友達を守るためとは言え、魔法を行使することは許されてはいない。
(どこに助けを呼べばええんや!?シグナムか!?い
や、こっからならなのはんとこの士郎さんに言った方が近いか!!)
頭に残るのは、自分を庇って暴走族に自ら飛び込んでいった少年。たかが木刀一本で、暴走族に立ち向かっていった少年を思い出す。
(なんで!?なんでなん!?なんで今日初めて喋った女の子のために命はれるん!?なんでまだ友達かも分からん人のために暴走族に飛びかかれるん!?)
少年の行動が意味分からなかった。自分なんか置いて、すぐ逃げれば危害など加わらなかっただろうに。なんでそこまでして自分を助けたのかが、八神はやて
には理解出来なかった。
「――――おいそこの。ちょっと待ちな」
八神はやての首に、知らない間に手が翳されていた。
「頭の命令なんでな。ちょっくら来てもらうぜ」
(あかんッ―――――)
「…………………………………」
そのまま、トンっと首を叩けば、すぐに意識が落ちる。
八神はやての逃走劇は一旦ここで幕が閉じることになる。
☆☆☆☆☆☆☆☆☆
「ハァッ!!」
「甘ェっつーんだよォ!!」
激しい剣戟の中、持田千海は少しずつだが押され始めていた。
無理もない。今までのくぐり抜けてきた修羅場の数が違いすぎる。
鍛錬でのみ剣を鍛えてきた千海に対し、金堂悠雅は実践で剣を磨きあげてきていた。
『どうすれば勝てるか』『如何にして敵より優位に立つか』それを考える頭は、やはり金堂悠雅の方が少し上だった。
「ぐぅっ!」
バキィッ!!と、木刀が折れる音が聞こえた。
それは金堂悠雅が振るった剣が、千海の剣を打ち砕いた音であった。
「今度こそ終いだな。ガキにしては良く頑張った方じゃねーの?」
「ハッ、ハッ!何勝手に、決めつけてんだよ。……まだ終わってねえよ!!」
木刀が折れた?だからどうした。なら拳があるだろう。そう奮い立たせ、金堂悠雅に真正面から駆けていく。
正直に言って、愚の骨頂であった。
年上の、そして格上の相手に、武器も何も持たず、作戦すらないままに拳一つで挑む。
勝つ要素がどこにも見当たらなかった。
「――――頭。八神はやての方、確保しましたぜ」
――――ピタッ。と、振るわれそうになった千海の拳は、まるで世界が静止したかのようにその動きを止めた。
……今ソイツはなんて言った?
「おう、そうか。良くやったな。これでようやく―――――」
……ソイツが抱えている、気を失っている少女はなんだ?
分かっている。八神はやてだ。
じゃあなんで八神を敵が抱えている。
何故気を失っている。
―――その涙の後をつけたのは、一体誰だ?
「――――――せ」
一言。持田千海が口を開いた時には、もう金堂悠雅は遥彼方へぶん殴られていた。
「その汚らしい手を、八神から離せよ」
最早感情というタガは外された。
言わば、怒りに身を委ねる獰猛なる獣。
「八神はやてを守り通せ!!」
埋もれる瓦礫の中から、金堂悠雅のそんな声が響いた。
「了解!」
八神を抱えているやつがその声に反応し、バイクに八神を乗せる。流石は暴走族。普段暴走しているだけあって、行動が素早い。
「行かせるわけねえだろうが!!」
一瞬で、と言ったら瞬間移動のように聞こえるかもしれない。
『一歩』で、八神を乗せたバイクに肉片し、粉々にするために拳を振り上げそのままバイクのど真ん中を音速を超える速さでぶち抜く――――――ッ
「―――させるわけねえだろォォ!!!」
その瞬間、千海の元へ金堂悠雅が飛んできた。足を2本同時に振り上げ、ドロップキックよろしくの勢いで千海を吹き飛ばす。
「グッ!?」
その吹き飛ばされた勢いで大勢を立て直そうとするが、――――金堂悠雅の方が一足速かった。
「テメェはしばらくそっから動くんじゃねえよ!」
大勢を立て直すために手を地面についたところを、金堂悠雅は見逃さない。音速の突きで持って、左手を地面に『縫いつけた』。
「ガァァアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアァアア!!!?!?」
―――――ブシャァッ!!と、まるでケチャップの中身を全てぶちまけたかのように血が溢れだした。
木刀は何度も言う通り貫く型に適していない。そんなもんで無理やり手を貫通させられ、地面に縫い付けられたら、その痛みも絶大であろう。
「そこでずっとくたばってろや!!」
痛みで反応が遅れた。
拳が飛んでくる。
その二つに気付いた時には、縫い付けられた木刀ごと拳でぶん殴られていた。
(ちっ、くしょー……)
何がいけなかった。何がダメだった。
――――決まってる。全てにおいて、ダメに決まってる。
あそこで逃がして、八神一人で逃げきれると思ってたのか?
こんなのにボロボロの状態で拳一つで挑んで、勝ちきれると思ってたのか?
遠のく意識の中、微かにまだ見えた。
涙で濡れた八神がまだそこにいた。
(ちょっくら、待ってろよ……。絶対に、連れ……帰……る、から……)
「おいガキ。まだ意識はあるか。最後に俺の居場所を教えといてやる。まだ挑む勇気があるのなら、仲間を引き連れていつでも来いよ」
そう不敵に笑う金堂悠雅は、不敵にこう告げる。
――――海の見えるコンテナだ。忘れてくれるなよ?