魔法少女リリカルなのは 魔法を使えない高校生   作:キングver.252

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6話 〜牛肉を買いに行くと死体が見つかることもある〜

「もう、お母さんったら人使い荒いんだから」

 

高町なのはは、1人そう愚痴りながら夜の街を歩いていた。

目当ては夕食に使う牛肉と切らした牛乳だ。

普段高町家で使う牛乳はちょっと遠いスーパーまで行かないと売っていないので、仕方なくそこまで行くことにしたのである。

 

「大体もっと計画的に買い物を――――ん?」

 

そこで高町なのはは気付いた。

遠くに見える、あの長い金髪を振り回して歩いている少女は一体どこの何子ちゃんだっただろうか。

 

「フェイトちゃーん!」

 

「あ、なのは」

 

そう言い、フェイトは長い金髪を振り分けながら振り返る。

普段から可愛らしい容姿で男女問わず人気を博すフェイトだが、夜の街を質素な服で出歩くフェイトも中々『大人の女』みたいな感じがして綺麗なのではないだろうか。

 

「こんなところで何してるの?」

 

「私はお母さんからお使いを頼まれちゃって。フェイトちゃんは?」

 

にゃはは、と笑いながら、なのははフェイトに同じ質問を投げかける。

 

「私もお買い物。牛乳が切れちゃってるから新しいの買ってきてって」

 

「それじゃ一緒に行こうか!」

 

そう言って、二人は夜の街を更に歩いていく。

 

「………ここでも、色々あったんだよね」

 

そうなのはは呟く。この街で、七年前にフェイトと高町なのはは出会えたのだ。

色々衝突も絶えなかったが、それでもこうして仲良く過ごせる『今』がある。

そんな事実に、何か懐かしさみたいなものを感じたのだ。

 

「そうだね。あの時なのはが、心から私に呼びかけてくれたから私も前に進めたし、きっとはやての時だってそう」

 

フェイトは言外に、なのはのおかげで今があると告げる。

アリサやすずか、はやてと笑い会える今があるのはなのはのおかげだと。そうフェイトは告げる。

 

「にゃはは。そんなことないよ。闇の書事件の時なんて、私かなり最低なこと言っちゃってたし」

 

思い出される記憶の数々。

『悪魔め』。

そう告げられた言葉に対し、なのはは『悪魔でいいよ』。なんて答えてしまったのだ。

もう普通の人間関係ならヒビが入っても仕方のない事件である。

 

「それでもはやての病気だって救えた。リインフォースだって幸せそうに消えてった。それだけでも、やっぱりなのははすごいよ」

 

「にゃははーやめてよもう!」

 

照れながら、なのははフェイトに止めるように苦言を呈す。

 

「それにそんなこと言ったらフェイトちゃんだって、闇の書事件の時助けてくれたじゃない。ほら、ヴィータちゃんが特攻仕掛けてきた時!」

 

『友達だ!』って言ってくれた瞬間、本当に嬉しかったなぁ。なんてなのはは感慨深く言葉を言う。

 

「あ、あれは、転送されたらなのはがいきなりピンチだったから言葉が上手くまとまらなくて」

 

今度はフェイトが照れる番であった。

 

「まあでもいつか、3人で『あの時はあーだったねえ』なんて笑い会える日が来るのかなぁ、なんて考えちゃうとなんか不思議な気分になっちゃって」

 

今でも鮮明に思い出される事件の数々。

きっと忘れることなんて出来ないのではないだろうか。

笑いあった記憶も、泣いて抱きしめあった記憶も、年月が経てば忘れてしまうとはよく言うが、この3人が出会えた『奇跡』は、きっといつまで経っても忘れられないものなのだろう。

 

「あー。それ、私も分かる。今はリンディさんとクロノと楽しく喋れてるけど、引き取ってもらえた時なんてまともに会話すら出来なかった気がするもん」

 

結局全部時間が何とかしてくれる。

そう結論づけ、高町なのはとフェイト・テスタロッサ・ハラオウンは前を向く。

 

 

 

――――――そこで、ふと違和感を覚えた。

 

管理局なんて、魔法が飛び交う危ない職についているからだろうか、『血の匂い』には自然と敏感になってしまっているのか、その違和感に気づけた。

 

「なのは、あそこ」

 

フェイトの指さす場所には、不可解は血の痕跡があった。気を付けなければ見落としてしまうような、そんな血だった。

だがそれは確かにそこに存在しており、――――何故か路地裏にまで繋がっているように見えた。

 

「猫か何かかな?可哀想に」

 

そう言って、軽い気持ちでなのはは路地裏をのぞき込む。

 

「キャッ!?」

 

当然そこにいたのは、猫でも犬でも動物の死体ではなく。

 

――――――血だらけになって横たわる、新しいクラスメイトがそこにいた。

 

「フェ、フェイトちゃん、これって……」

 

「確か同じクラスの、名前は持田千海だったはず」

 

そこには確かに血だまりが出来ていたが、良く見ればそれは大半が手から出ている血だった。

つまり、出血多量でさえなければ死んでいる可能性は低い。

 

「救急車、呼ばないと」

 

「――――待って、なのは。何か言ってる」

 

無意識に人の気配に気づいたのか、意識は無いのに千海の口は動いていた。

 

「たの、む……。救急車は、呼ぶ、な……。やが、みが、あ、……ぶ、ない……」

 

「え――――?」

 

フェイトは己の耳を疑った。

その口から出て来たのは知人の名前である。

その知人が、『危ない』?

 

「なのは……はやてに念話してみて」

 

「分かった!」

 

そう言い、可能な限り大きな声ではやてに呼び掛けてみるが、返事は無かった。

 

「応答なしだよ、フェイトちゃん!」

 

「マズイ、絶対にはやてに何かあった。問題はそれが何か、だけど……」

 

「とりあえず私の家まで運ぼう!救急車は呼んで欲しくないみたいだし、腕の怪我だけだったら何とかお父さんの応急手当が出来るから!」

 

お父さんに電話かける!と言って、なのはは携帯電話で履歴から士郎に繋げる。

コール2回程で士郎は出てくれた。

 

「もしもし、どうした?牛乳無かったのか?」

 

「それどころじゃないの!私の友達が倒れてて、今すぐ迎えに来て欲しいんだけど!」

 

「……救急車は呼んだのか?」

 

「それが、意識のない状態で救急車は呼ぶなって言ってて。それに、もしかしたらはやてちゃんが今危険な思いしているかもしれないの」

 

「分かった。とりあえずそっちに車で向かう。場所は?」

 

士郎に場所を告げると、電話は一方的に切られた。

 

「フェイトちゃん!この調子なら後数分くらいでお父さんが来てくれるよ!」

 

「ありがとなのは。……でも、どうして持田がこんなボロボロになってこんな路地裏にいるんだろ」

 

「何かと戦ってたとかじゃない?」

 

「そこにはやてが絡んでくるとなると―――やっぱり『魔法』かな?」

 

「その可能性もなくはないけど、それだったらはやてちゃんだって相当な腕なはず。そう簡単にやられるとは思えないけど」

 

考えれば考えるほど、頭がこんがらがる。今二人に出来ることは無いのだと、その無力さを思い知らされた。

 

まずは士郎を待って、持田が目を覚ましてから。全てはそれからである。

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