「くっ…このっ!」
ひとしきり所長に肩を揺さぶられた後、藤丸君と僕の魔力の回復を待ってから先に進んだ
アーサー王まであと少し…という所で、黒い影に覆われたアーチャー、シャドウアーチャーに襲われた
「いい…かげんにっ!」
メカエリチャンがシャドウアーチャーを一方的に攻め立てている……ように見えるが、1度も有効打は与えられていない
躱され、いなされ、受け止められている
「ちっ!…野郎…」
クーフーリンさんが援護しようとしてもシャドウアーチャーがメカエリチャンを壁にするように立ち回っていて思うように動けない
「くっ!」
時折こちらに弓で発射される剣をキリエライトさんが盾で防ぐ、マスターである僕らへキリエライトさんを足止めにするのが狙いだろう
つまるところ、シャドウアーチャーは徹底的に守りにはいっている…とはいってもメカエリチャンの攻撃もクーフーリンさんの炎も全く当たっていないという訳では無いから、このまま行けばこちらが勝てるだろう…このままなら
目眩と脱力感で倒れそうになる
「っ!マスター!くっ!?」
動揺したメカエリチャンがアーチャーに切りつけられる、鉄の身体と刃がギャリギャリと嫌な音を立てた
メカエリチャンが戦うたびに僕の魔力が急速に減っていく、このままだと敵を倒す前に僕の魔力が尽きる、シャドウアーチャーはそれを待っているのだろう
「くっ…兵装が使えれば…」
兵装、メカエリチャンが使える武器だそうだが、魔力の消耗が激しいらしく今の僕の魔力量では耐えられない
このままじゃ真っ先にメカエリチャンが魔力切れで戦えなくなる…どうすれば…
「大丈夫ですか?」
ふらついた僕を藤丸君が支えてくれた
ふとその手にあるものが目に入り
…
「っ!……なるほど、分かりました…ソニックシャワー!」
「っ!?」
道具作成のスキルを用いて魔力で作られた弾丸が指先からばら撒かれる
シャドウアーチャーはいきなりの事に双剣でも弾ききれずに数発当たって距離を取る
「スカートフレア!」
同じく道具作成で作られたミサイルがスカートから放たれ、爆風で吹き飛ばし
「逃しません!……テイルスマッシュ!」
大きく翼を展開して足から炎を吹かせて高速で回り込み、吹き飛ぶシャドウアーチャーを尻尾で大きく跳ね上げる、その先は
「クーフーリン!」
「任せな!くらいやがれ!!」
巨大な木の巨人の腕がシャドウアーチャーを地面に叩き付けた
……
シャドウアーチャーの体が霧散して消えていく
令呪を1つ使ってなんとか勝つことは出来た…あと2つ
令呪はマスターとサーヴァントを繋ぐものであり、高密度の魔力の塊
これを使って命令すれば基本的にサーヴァントは逆らうことは出来ない…そうだが、そんなことすればサーヴァントからの不評は避けられない、せいぜい緊急時の魔力タンク程度の扱いが関の山だろう
「…エリザ粒子さえあれば」
メカエリチャンは本来はエリザ粒子を基本動力として予備動力として魔力を使っている…つまりは今のメカエリチャンは予備動力だけで無理矢理動いている状態だ
…そもそもエリザ粒子ってなに?
もしかしたら代用品でも見つかるかと思って思い切って聞いてみる
「エリザ粒子はエリザベートバートリーが撒き散らしている粒子のことです、私は度重なるチェイテでの異常事態で蔓延したそれを主な動力源としていました」
確かにお城にピラミッド突き刺さってその上に姫路城乗っかるとか意味不明なくらい異常事態だからね、ロボットの動力となる粒子くらい…いやいやいや
というかそんな荒唐無稽な粒子を撒き散らしているエリザベートバートリーってどんな英霊?
「槍の逸話もないのにランサーになってハロウィンに浮かれたらキャスターになってそれらが合体してセイバーになり、最終的にはアサシンに成り果てるろくでもない女です、多分まだ増えますよあれは」
なにか思うことでもあるのか早口で言い切ったメカエリチャン
どうしよう、説明を受けたはずなのにますます意味がわからなくなってしまった
一緒に聞いてる藤丸君とキリエライトさんも頭にクエスチョンマーク浮かべてるし所長は頭を抱えて「ありえない…」とブツブツなにか呟いてるし、クーフーリンさんは「ま、そういう奴もいるわな」となんか寛容だ、なに?サーヴァントのクラスってそんなコロコロ変えられるものなの?というかハロウィンて中世にあったの?
「あ、あの…私からもいいですか?」
「なんでしょうか?手短にお願いします」
「クラスでふと思ったんですけど…アルターエゴって別人格って意味ですよね?
キリエライトさんが挙手して質問する
「だからその、メカエリチャンさんは」
「メカエリチャンで結構です」
「…では、メカエリチャンは誰かの別人格、ということでしょうか?」
「……それは違います、私は始めから私として作られました…けど、こうありたい、こうなりたかった…あいつのそういう想いも私のあり方に何らかの影響は与えている可能性はありますが…」
こうありたい?機械の体になりたかった?というかあいつってやっぱり…
メカエリチャンはコホンと咳払い(?)をして話を打ち切る
「そろそろ休憩も済んだでしょう…行きますよ」
…
この特異点を作り出している現況、冬木の大聖杯の元へと歩く僕達
「気ぃ抜くんじゃねぇぞ?」
そう言って周囲を警戒しているクーフーリンさん、メカエリチャンもしきりに角(?)を動かしている、どうやらあれがセンサーのようだ
奥までは進んでいくと人影が見えた
「よくここまで来れたな…アーチャーを倒したか、そこは褒めてやろう」
「デスカッター!」
突然2枚の翼を取り外してその人影へと投げる
ギギィン!と硬いものに弾かれる音がして翼が戻ってくる
「…不意打ちとはつまらん真似を」
「弓兵を差し向けておいてどの口が言うのですか?騎士王」
そこには黒い鎧を纏い、黒く輝く聖剣を携えた騎士が立っていた
翼を元の位置に戻したメカエリチャンとクーフーリンさんはすでに戦闘態勢に入っており、少し遅れてキリエライトさんも盾を構える
「あれがアーサー王…でも…女?」
藤丸君がその姿を見て呟く、僕もそれは思ったが
…本来はもう少し驚くべきなのかもしれないけどメカエリチャンで耐性が出来たのか「実はアーサー王は女でした」程度にしか感じなくなってしまった、これってどうなんだ
「いかにも、私はアルトリア・ペンドラゴン、かつてアーサー・ペンドラゴンという男としてブリテンを収めた正真正銘のアーサー王である」
黒い騎士…アーサー王は堂々とそう告げる、なるほど、王になるなら男と偽っていた方がなにかと都合は良かったのだろうとまだ納得できる
地面に突き立てられている黒い聖剣から目が離せなくなる、僕は魔術の事も剣のことも全くと言っていいほどわからない、それでも分かる、あれはやばい
ただ襲ってくるだけの影のサーヴァントとは違う、明確な敵意と殺意
「…っ…それは…なぜ貴様がそれを」
ふとその視線がキリエライトさんへ、正確にはキリエライトさんが構えている身の丈ほどもある巨大なラウンドシールドへ、驚いたような視線を送る
キリエライトさんと融合している英霊の宝具だということらしいが、本人もその英霊が誰なのかは知らないと言っていた
アーサー王はその英霊を知っている…?
「…そうか、たしかに貴方ならその道を選ぶでしょう…でも、私はもう止まるわけにはいかない!」
キリエライトさんに…いや、その中にいる英霊へ語りかけると黒い聖剣を構える
「卑王鉄槌…」
「させません!」
メカエリチャンはスラスターを吹かせて一気に距離を詰めてソニックシャワーをばらまく
「ふんっ!」
弾丸は吹き出した黒い魔力に阻まれる
「ならっ!」
接近すると翼を取り外して二刀流のような形で斬りかかる
「邪魔をするな、絡繰風情が!」
「っ!?が…」
一気に弾き飛ばされるメカエリチャン
「極光は反転する…光を呑め」
黒い魔力が剣を覆う
「約束された…勝利の剣!(エクスカリバー…モルガン!)」
「宝具…展開します…!」
解き放たれた黒の魔力の奔流をキリエライトさんの宝具が受け止める……押されてない?大丈夫?…って、藤丸君っ!?
所長の制止も聞かずに飛び出した藤丸君がキリエライトさんと一緒に盾を支える
令呪が1画消え、丸い魔力の盾は白いレンガの城壁のように変化してアーサー王の宝具を押し返した
「くっ…まだだ…約束された…」
悔しそうに顔を歪ませて再度剣を構えようとするアーサー王
「…我が魔術は炎の檻、茨の如き緑の巨人。因果応報、人事の厄を清める社」
クーフーリンさんが詠唱してアーサー王の足元に魔法陣が浮かぶ
「ちぃっ!」
「逃がしません!…マスター!」
アーサー王がその魔方陣から飛び退く、僕は右手の令呪を使ってメカエリチャンへ魔力を送る
「全兵装、ロック解除、スカートフレア!ソニックシャワー!チャームサイト!」
高速で飛び回りながら次々に兵装を展開してアーサー王を攻撃していく
「倒壊するは灼き尽くす炎の檻!(ウィッカーマン!)」
クーフーリンさんの宝具、巨大な木の巨人がアーサー王を捕まえて体の中にいれ、自身ごとアーサー王を焼き尽くした
……
「…結局どう運命が変わろうとも、私一人では同じ末路を迎えるということか」
「どういう意味だそりゃあ」
あちこち焦げてはいるがスッキリした顔のアーサー王とクーフーリンさんが話している
アーサー王の身体はゆっくりと消えていっている、勝負は終わったのだろう
藤丸君はキリエライトさんと並んで立ち、所長はアーサー王の言葉に反応を見せている、メカエリチャンもその隣に立って消えゆく姿を見送っている
さて僕だが…足が震えて動けません、怖かったぁ…
「グランドオーダー、聖杯を巡る戦いは始まったばかりだということを…」
アーサー王はものすごい意味深な言葉を残して消えた…ってクーフーリンさんも消えかかってる?
「おおっ!?ここで強制帰還かよっ!しょうがねぇ!次呼ぶ時はランサーで呼んでくれっ!」
そういいながら消えていった…で、これでいいのかな?特異点の元凶のアーサー王も消えたし
『〜〜っ!〜〜くんっ!』
ん?どこかから声が
「あ、俺の通信機…」
藤丸君の持っていた通信機のようだ、ちょっと貸して、ちょちょいと調整して…と
『ああっ!やっと繋がった!』
「ドクター?」
ロマニ・アーキマン、カルデアの医療顧問で、スキさえあればサボってお菓子を食べてるのんびりした人、その人の焦っている声がする
爆発から残った職員で必死に救助や観測を続け、ようやく僕達のいる特異点に通信を繋げられたそうだ
「遅いわよ!もうとっくに特異点修復終わったんだから!」
『わわっ!?すみません!すぐに準備しますからっ!』
所長に怒られてる、まぁともかくこれで帰れるんだ…
…ってあれ?ライノール教授?なんで教授が?
………
シャドウサーヴァントはゲーム仕様、戦闘はアニメを参考に