あの人を見ているとドキドキする。あの人が誰かと話しているのを見ると凄く胸が苦しくなる……この気持ちはもしかして……
「ネプギアー、おーい大丈夫?」
「ふぇっ!?あ、お姉ちゃん……どうしたの?」
「どうしたの?じゃないよ!さっきから呼んでるのに返事が無いんだもん」
目の前の少女がむーっと頬を膨らませ拗ねたように話す。この人はネプテューヌ、このプラネテューヌの女神で私の大好きなお姉ちゃん。ちょっと子供っぽくてだらしないところがあるけど、いざって時は本当に頼りになる人
「ネプギア、今失礼なこと考えてなかった?」
「そんな事ないよ!?それで何か用件かな」
「…何か誤魔化された気がする」
「き、気のせいだよ?」
「いーや!絶対に誤魔化した!私の勘が告げて“ゴンッ!”あいたー!?」
詰め寄ってきたお姉ちゃんが誰かに小突かれ倒れる
「ったく、馬鹿なことやってないでちゃんと用件を話せ馬鹿ネプ子」
「あ…拓真さん」
「よ、ギアちゃん。久し振り」
そう言って目の前の男の人はニカッと笑う。それだけで私の胸は高鳴る……あぁ、格好良いなぁ。あ、えっとこの人は炎王寺拓真さん。数週間前このプラネテューヌの空から落ちてきた違う次元の世界の住人さん。真面目で優しいけどちょっとエッチなところもあるけど、凄くステキな人……私の片想いの人だったりします
「もぅー!ちょっと拓真!女の子を叩くとか、紳士としてなってないよー!」
「やかましい、俺は紳士じゃねーし。ったく、あぁごめんなネプギア。ちょっと手伝って欲しい事があるんだ」
「手伝って欲しい事?私に出来ることなら」
「実は迷子の捜索依頼があるんだけど人手が足りなくてな。手伝って欲しいんだが…大丈夫?」
「勿論です!早く見つけてあげましょう!」
迷子の子が心配なのもあるけど、拓真さんと一緒にいられる…なんて下心もありその申し出を私は即答で承諾した
「じゃあ私はこれでー…あだだ!?」
「お前も来るんだよ、ネプ子」
「えー…」
「不満か?なら1ヶ月お前の飯は3食ナス料理な」
「誠心誠意やらせて頂きます!ほら行くよネプギア、拓真!」
先ほどのだらけっぷりはどこへやら、キビキビと歩き出す。そんなお姉ちゃんに私達は苦笑するのだった
「そういえば迷子の特徴はどんな感じの子なんですか?」
迷子の子が消息を絶ったという場所へ向かう途中、はたと思い出し問い掛ける
「あぁ、そうだったな。こんな感じの子だよ」
拓真さんがポケットから写真を取り出し、私に見せる。そこには髪の長いちょっと大人しめな雰囲気の女の子が写っていた
「あ、後その子だけじゃ無いんだわ」
「え?」
そう言い、拓真さんはもう2枚の写真を取り出す。どちらも1枚目と同じような子が写っていた……それに
「私に…似てる…かも」
「あぁ、気付いちゃった?だからただの迷子って線は薄いなぁって話になったの」
「そういうこと。だから誘拐っていう線で調べてたんだ。出来ることならギアちゃんは巻き込みたくなかったんだ」
“ごめんね”と申し訳なさそうに謝る拓真さん。もう…謝らなくても良いのに
「謝らなくても良いですよ…でもちょっと怒ってます」
「え…」
「私だって女神候補生なんですよ、少々の危険なんか大丈夫ですよ」
「…そうだったね、ギアちゃんも強いもんな」
「私はいつまでも甘えん坊で泣き虫なイメージしか無いからなぁー」
「ちょ、お姉ちゃんっ!」
「へぇー、ギアちゃんって泣き虫だったんだ…ネプテューヌ、その話、後で詳しく」
「おっけー!でも先ずは」
「周りの御客さんを片付けてからだな」
「え…?」
辺りを見渡すといつの間にかモンスターの大群に囲まれていた…全然気付かなかった
「どうやら当たりみたいだね、拓真」
「あぁ、さっさと片付けて捜索再開だな!はぁっ!」
「了解っ!」
そう言い、二人は大群へ向かう。息ピッタリだなぁ、ちょっと嫉妬しちゃうなぁ……は!そんな事してる場合じゃなかった!私もやらなきゃ
「むぐっ!?んんっ!むうっー!?」
走り出そうとした瞬間、後ろから伸びてきた腕に口を塞がれ、腰をガッチリ掴まれて暗がりへ連れ込まれる。視線を移すと見知らぬ男が不気味な笑みを浮かべて私を見ていた
「ぐひひひ、やっと見つけた、本物のネプギアちゃん…ひひひ」
必死に抵抗するも男の力が強く、口を塞いでいる手の布に薬を仕込んでいたのか、段々と力が抜けて、意識が薄れていく……
(お姉…ちゃ…拓…真…さんっ………)
段々と視界もぼやけて、遂に意識は闇の中に呑まれていった…………
「ふぅ、大体片付いたな…大丈夫か?ネプテューヌ」
「これくらいへっちゃらだよ!ネプギアは大丈夫?……あれ」
ネプテューヌがギアちゃんへと問い掛けるも返事が無い。慌てて周囲を見渡してもギアちゃんの姿は無かった
「しまった!狙いはやっぱりギアちゃんだったか!ネプテューヌ、警備隊に連絡、俺は先に行ってギアちゃんを助ける!」
「良いけど、何処に居るか分かるの?」
「ギアちゃんのNギアにGPS機能付いてるからね。それを辿れば……居た。」
町外れの廃墟か。あそこは絶好の隠れ家だしな
「じゃあ頼んだぞ!ネプテューヌ!」
「おっけー!連絡したら私も直ぐに行くから!」
「あぁ!」
ギアちゃん、どうか無事でいてくれ…!
「んっ…此処は…?」
目が覚めると見知らぬ廃墟に居た。確かお姉ちゃんと拓真さんと一緒に迷子の人を探して…それから…!!
「んっ…くぅっ…ダメ、ビクともしない……」
脱出しようと体を戒めている縄を千切ろうと体を動かすも、切れる気配は無かった
「ふふ、お目覚めかな?ネプギアちゃん」
「貴女は……!?」
声の方を見ると、さっき私を拐った男が居た。この人が誘拐犯…!
「俺ね、ネプギアちゃんが大好きなんだよ…否、愛してるって言った方が良いかな。本物の君に会いたくて仕形がなかった!でも漸く!今日願いが叶った!さぁネプギアちゃん、俺と永遠の愛を誓おう!」
“ビリィィ!”
そう叫び、男は私に馬乗りになり、衣服をビリビリと破いていく
「いやぁっ!止めてっ!助けて…助けて!拓真さぁぁん!!」
“ガシャァァンッ!!”
「な、何だっ!?」
大きな物音と共に、大型のバイクが窓を突き破り廃墟へと侵入してきた。あのバイクって…まさか!
「おい、そこの変態…ギアちゃんから離れろ…」
「何だ!貴様は!俺とギアちゃんの邪魔をする気か!」
「合意の上だったらそんな野暮なことはしねーよ。ただ…動けない女の子を無理矢理ってのは見逃すわけにはいかねーな……その子が俺の大切な子だから尚更だ…!」
バイクの男性もとい拓真さんは殺気を隠そうともせず、誘拐犯を睨み付ける……あれ?今、私の事を大切って…言った?
「ち、ふざけやがって!やっちまえ!」
誘拐犯が叫ぶと同時に、モンスター達が現れる。その中には危険種のフェンリルの姿が居た
「ふぅ…そんなもんで俺をやれるとでも?待っててギアちゃん、今助けるから」
だが拓真さんは表情1つ崩さず、私に言った。そして1枚カードを取り出すと、いつの間にか巻いていたベルトに差し込む
「行くぜ…変…身っ!」
天高く左手を上げ、叫ぶと拓真さんの体を炎が包み込む。そして炎が消え、そこには赤と銀の鎧を纏った戦士が立っていた
「な、何なんだよ!お前!」
「悪党相手に名乗る義理は無いが…冥土の土産に教えてやるよ…熱き心が悪を焼き付くす、仮面ライダーフィアンマ!見参!さぁ、正義の炎に焼かれて懺悔しな!」
「何が正義だ!やってしまえ!我がモンスター達!」
「拓真さん!」
「大丈夫、そこで見てて…すぐ終わらせるから……はぁっ!」
迫り来るモンスター達を蹴り飛ばし、殴り倒し確実に数を減らす
「おっと…危ねっ…!」
寸でのところでフェンリルの牙を避ける。今の当たってたら絶対痛いだろうなぁ
「さて、お返しだ…はぁぁぁっ……」
両拳を握りしめ力を溜め、両足に炎を纏う
“flame charge up!!”
ベルトの電子音がチャージ完了を知らせる。それと同時に高く飛び上がる
「ブレイズスマッシャー!はぁぁぁ!!」
掛け声と共にフェンリル目掛けキックを放つ。爪を振り上げ抵抗するも、砕け散り直撃、粒子となり消え去った
「ひぃぃっ!?」
「さて、聞きたいことがある……他に誘拐した子はどうした。素直に話せば命だけは助けてやる……」
「ひぇぇっ!ここの地下に幽閉してます!皆無事ですっ!だから命だけはぁ!」
先程の尊大な態度はどこへやら、無様に命乞いする誘拐犯に呆れて物も言えない。そいつを無視して、変身を解いてギアちゃんの元へと向かい、縄を切り上着を掛ける
「大丈夫?ギアちゃん」
「はい…これくらいっ…大丈夫…ですっ…」
強がっているものの、声が震えている。無理もない…誘拐された上にあんな目に合ったんだ…怖くない訳がない…そんなギアちゃんをそっと抱き締め包み込む
「拓真…さん…?」
「ここには俺しか居ない…泣きたいなら泣きなよ、我慢すること無い…だから、ね?」
「ふぇっ…拓真…さん…うぇっ…うわぁぁぁんっ!!怖かった!私、凄く怖かったですっ!うわぁぁぁんっ!」
我慢していた涙が決壊、子供のように泣きじゃくるギアちゃんをずっと宥めていた
因みにその後、突入してきたネプテューヌと警備隊に誘拐犯は捕まり、誘拐された子達も無事保護され、事件は終わりを告げた
「そういえば拓真さん」
「ん?どうしたの」
「私を助けに来たとき、大切な子って言ってましたよね?それってどういう意味ですか?」
「あー…それ聞いちゃう?」
気になっていたことを聞くと、困ったような恥ずかしそうな笑みを浮かべて彼は言った……
「あー、その……1度しか言わないよ?俺、ギアちゃんの事が好きだ…“友達”じゃなくて“異性”として…」
「え……」
あまりに急な展開に思考が追い付かない……拓真さんが私を好きって…嘘、夢じゃ無いよね?
「おわっ!?ギアちゃん、何で泣いてるの!?そんなに嫌だった!?」
「違うんです…逆ですよ…凄く嬉しいんです……っ!」
だって、憧れてたあの人が私を好きだって言ってくれたんだもの、泣いてしまうくらい嬉しいに決まってる…
「そっかぁ、良かったぁ…」
「ふふっ…ねえ拓真さん」
「ん?」
“チュッ”
振り向いた頬にキス、今は恥ずかしいからこれくらいしか出来ないけどいつかきっと
「…っ!?!?」
「今日のお礼です…助けてくれてありがとうございます」
「お、おう…」
「これからはずっと…ずーっと一緒ですよ?」
「あぁ、離してって言っても離さないからな」
「はいっ!」
そう言って二人で微笑み合う
願わくば私達の未来が光で満ち溢れていますように………