百鬼夜行のヒーローアカデミア   作:ソトン9

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新年一発目の投稿です!

今回は屋内戦闘訓練。萃香ちゃん初めての対人戦です!

それでは、本編


~ヒーロー基礎学と戦闘訓練①~

 次の日

 

 初日から入学式をすっぽかして個性把握テストという強制イベントに参加させられた私たちは、今日はとても平和に授業を受けていた。相澤先生は相変わらず眠そうで怠そうな顔を隠そうともせず、かといって昨日のようにいきなり校庭に連れ出すようなこともなく、ただ今日の連絡事項だけを私たちに伝えて教室を出て行った。昨日の件もあるので皆緊張して身構えていたのに、なんだか肩透かしを食らってしまった。何人かの生徒はホッと肩を撫で下ろしていて安心した様子。

 そんな状況でも最初の授業の時間が近づいてくるにつれて、少しずつ皆の期待感が膨らんでいくのがわかる。私もその一人だしね。日本最高峰と言われる雄英高校ヒーロー科。そこで行われる授業とはどれほどのものだというのか。一限目があのボイスヒーロー『プレゼント・マイク』による英語ということもあって、どんな授業になるのだろうと想像してみる。ラジオでやっているような面白いやり方かな?それともまた違ったパフォーマンスで盛り上げるのだろうか?きっと他の皆も少なからず私と同じようにいろいろ想像したりしているだろう。

 時間になりチャイムが鳴ると出席簿と教材を手に『プレゼント・マイク』が教室へ入ってきた。

 

「イエエエエエアアア!!!お前らの入学最初の授業は英語だ!知ってるとは思うが、俺はボイスヒーロー『プレゼント・マイク』だ!身長は185㎝、誕生日は七月七日だ。よろしくな!この中に俺のラジオを聞いてくれてるリスナーもいるだろうが、贔屓無しでビシバシいくからそのつもりでいろよ~。ただし、贈り物や誕生日のお祝いは大歓迎だ!んじゃさっそく、教科書の四ページを開け!――」

 

 インコの鶏冠のように長く聳え立つ髪に黒い逆二等辺三角形のサングラス、ピンと伸ばされた襟、ヘッドホンと首に装着されたスピーカー、あとちょび髭。全身黒のパンクな出で立ちだが、子供からお年寄りまで幅広い人気があるヒーローだ。教卓についたマイク先生はなかなかのハイテンションで、簡単な自己紹介をするとすぐに授業へと入った。

 

 ――結果から言って、マイク先生の授業はとても"普通"だった。どれくらい普通だったかと聞かれたとして、大多数の英語教師がするような普通の授業としか答えられない。まさに普通の見本ともいうべきものだった。時々「盛り上がれー!」と拳を突き上げて叫ぶんだけど、盛り上がるはずもなく淡々と時間は過ぎていく。

 結局午前中は他の学校と変わらず一般的な高校と同じような授業が進み、気付けばあっという間に昼休みの時間になっていた。私はお弁当持参だったんだけど、昨日仲良くなった緑谷君たちに誘われて飯田君や麗日さんも一緒に大食堂で食事をすることにした。食堂はまさに大がついてもおかしくないほどに広く、ここのコックがクックヒーロー『ランチラッシュ』ということもあって沢山の食事をしに来た生徒達で溢れている。手近なテーブルで四人分の席を確保してから他の三人は注文に行ったので、留守番の私は楽しみにしていたお弁当の包みを解いて中身だけ確認する。こういうのはやっぱり皆で一緒に食べたいからね。

 座ると少々テーブルが私にとって高かったため、一度能力で椅子を高くしてから再度座る。よし、これで完璧。

 お弁当の蓋を開けてみると中は半分に仕切られていて、片方はご飯の上に梅干し、もう片方は揚げた竹輪に鮭の塩焼き等が並んでいて、『ザ・幕の内』といったラインナップだ。

 

「あれ?伊吹さん、先に食べずに待っててくれたの?」

 

 早く食べたい衝動に駆られてウズウズと帰りを待っていると、緑谷君が食事の載ったトレイを持って申し訳なさそうに聞いてきた。

 

「なんというか、こういうのはやっぱり皆で一緒にいただきますをしたいんですよね。ああ、私の個人的なこだわりなので気にしなくても大丈夫ですよ」

 

 恥ずかしい理由を少し照れながら答えると、緑谷君は納得したようだけどなぜか私と向かいのひとつ横の席に座った。

 

「緑谷君、そこ空いてるよ?」

 

 疑問に思いつつ私が目の前の席を指さすと、緑谷君は少し赤ら顔になってオドオドとしだした。

 

「い、いや!僕その……女の子と未だに話慣れて無いというか。異性と向かい合わせで座るのがなんだか恥ずかしくて、あはは」

 

「なるほど」

 

 どうやら彼はシャイボーイらしく、異性との会話にはまだまだ慣れていない様子。はにかんだ笑顔はなかなかどうして母性が擽られる。ふ、可愛いじゃないですか緑谷君。いやそれよりも、どうですか。私だって立派に女性として、異性として見られているじゃないですか。やはり、私の体から滲み出るお姉さんオーラは隠しようが無いみたいです。見ましたか?友子。今や私も立派なレディなんですよ。

 得意になった私は、緑谷君に「いいんですか?」と聞いてみる。

 

「おそらく私の隣には麗日さんが座るので、結果は変わらないんじゃないでしょうか」

 

「あ、そ、そうか!」

 

 私の言葉にハッとした表情で反応した緑谷君は、なぜか席を立って私の目の前に座りなおした。

 

「……」

 

「……」

 

 ……え?なにこれ?今のはいったいどういうことなのだろうか?

 緑谷君の行動にさっきまでの余裕も忘れた私は、一転してなぜかとてつもない敗北感のような感情に襲われていた。解せぬ。

 

「おまたせ~ってどうしたの伊吹さん?!なんとも言えない顔になってるよ?!」

 

「いったいどうしたというんだ伊吹君!」

 

 ……はっ!あぶないあぶない。無意識に現実から目を背けようと思考が停止していた。そしてその表情を見られたようで、いつの間にか戻ってきていた飯田君と麗日さんにツッコまれてしまった。

 私は二人になんでもないと言って平静を装いつつ、早くご飯を食べようと促す。うん、さっきのことは忘れよう。考えても無駄なことだからね。

 緑谷君も気まずかったのか。昼食も済ませて教室まで戻る途中ペコペコと謝られた。彼に悪気はなかっただろうし、気にもしていない。ちょっと意地悪な質問をした私も悪かったと返してこの件は一件落着!

 「それよりも」と午後のヒーロー基礎学の話を振ると、やはり三人とも関心を持っていたようですぐに食いついてきた。あれやこれやと憶測を話し合いながら教室に入ると、クラスの中でもこの話題で持ち切りらしく全員が席に着いたのは授業が始まる数分前だった。

 

 

 

「――ーたーしーがー!!普通にドアから来た!!!」

 

 昼休みの終わりを告げるチャイムとともに勢い良くドアを開けて入ってきたのは、現在すべてのヒーロー達の頂点に君臨している№1ヒーロー『オールマイト』だった。HAHAHAと劇画タッチな笑顔でポーズをとる姿はクラス全員の視線を釘づけにする。どうやら今年から雄英で教師を勤めるという話は本当だったらしい。

 筋骨隆々な肉体と二メートルを超える長身に加え、筋肉を強調するようにぴっちりとしたコスチュームと一人だけ画風の違う出で立ちは、某国の〇ーベルなコミックからそのまま出てきたような印象をうける。

 クラスが本物のオールマイトの登場にざわつく中、ルンルンと教卓の前まで移動したオールマイトはスッと片腕を前に出して静かにさせる。

 

「ヒーロー基礎学!ヒーローの素地をつくる為、様々な訓練を行う課目だ!!」

 

 単位数ももっとも多いぞ!と補足をつけたオールマイトは手に持ったプレートをバンと前に突き出す。そこには『BATTLE』と書かれているのがわかる。

 

「早速だが今日はコレ!!戦闘訓練!!!」

 

「戦闘……訓練!……」

 

 戦闘の言葉に再度ざわつくものの、続きを聞こうとすぐ静かになる。

 

「そいつに伴って……こちら!」

 

 ピッとオールマイトがリモコンを操作すると、なんと教室の壁の一部が横にスライドしていくつもの番号が書かれた箱が出てきた。どうやらあれには入学前に送った要望に合わせた私たちのヒーローコスチュームが入っているらしい。何人かが興奮を抑えきれずに自分の番号と同じ箱へと駆け寄る。先生はそれを特に注意することもなく、昨日の相澤先生のように準備が出来たらグラウンドβに来るようにと言い残して教室から出て行った。

 

 女子更衣室

 

 今回私が要望したコスチュームは、幻想郷で師匠が着ていた服と同じデザインのものだ。入試の際に使った服も同じものだけど、あれは手作りで耐久性や機能性に難があるため改めて注文することにしたのだ。説明書には"特殊な鋼線を編み込んで防弾チョッキとしての役割を持たせ、さらに軽量化を実現させたコスチューム。プライベートで外出の際にも着用できる超・普段着だ!"と書かれている。後半は見なかったことにしてさっそく着てみると確かに軽い。腕を伸ばしたり上体を曲げたりしてみても特に違和感もなく動きやすい。箱の中を確認するとさらに指無しタイプの黒い手袋があった。手の甲と付け根部分には鉄板?がはめ込まれているものの、手にはめてみると非常にフィットする。説明書の二項目に記述があり、"銘『撲殺王』○ダ○ンチウム製の鉄板をはめ込んだ籠手"と短い文で終わっていた。たしか幻想郷で早苗が見せてくれた映画にこんな名前の鉄が出てきたような……まあ、気のせいだろう。

 

「準備完了!あ…っと、ごめんな……さい」

 

 制服等をロッカーに仕舞って向きを変えたところで誰かにぶつかってしまい謝ろうと見上げると、なんとそこには顔ではなく豊かな双丘が私を見下ろしていた。

 

「あら?これは失礼致しました。たしか、伊吹萃香さんでしたわよね。わたくしは八百万百。よろしくお願いしますわ」

 

 一歩下がって私と目線を合わせてきた彼女。ゆ、揺れるだとぅ?!……くっ!

 

「は、はい。よろしくお願いします、八百万さん」

 

 私はなんとか動揺を抑えつつ、微笑む八百万さんに笑顔を返して早々に更衣室を後にした。

 

 

 

「さぁ、始めようか。有精卵ども!!戦闘訓練のお時間だ!!」

 

 コスチュームへの着替えを済ませて全員が揃ったところで、オールマイトが大音声で宣言する。

 今回最初の訓練は"屋内戦闘訓練"ということで概要はこうだ。

 

 一、まず、「敵組」と「ヒーロー組」に分かれての二対二の屋内戦。

 

 二、「敵」がアジトに「核兵器」を隠して籠城している。

 

 三、「ヒーロー」はそれを処理するために行動する。制限時間内に「敵」を確保もしくは「核」の回収が出来れば「ヒーロー」の勝ち。

 

 四、逆に「ヒーロー」を確保するか制限時間まで「核」を守れば「敵」の勝ち。

 

「コンビ及び対戦相手はくじだ!!」

 

 一通り説明を終えたオールマイトはどこに隠していたのか、くじが入っているだろう箱をスッと出してきた。

 

 名前順に一人一人くじを引いていく。私のくじには「K」と書かれていて、周りをみたところどうやら私だけペアじゃないようだ。

 まぁ、私にはあれがあるし大丈夫でしょう。

 

 コンビが出来上がったところで今度は対戦の組み合わせをするくじが引かれる。時間は有限とのことですぐに実戦を始めるようだ。

 

 まず最初に対戦することになったのは、緑谷・麗日ヒーローチームと爆豪・飯田ヴィランチーム。

 順番まで待機となった私たちは地下のモニタールームへオールマイトと一緒に移動することになった。クラスメイトの個性や戦闘スタイルを観れるということで何人かは興奮していて、私も彼らがいったいどんな戦い方をするのかが気になりモニターへと噛り付く。

 しかし訓練がスタートしてしばらくすると最初の興奮はどこへやら、音声は届かないが明らかに激昂している爆豪君と、追い詰められつつも感化されたように昂っている緑谷君。その現場の緊張感は画面越しにこちらまで伝わり、皆がその空気に息を呑む。

 特に爆豪君の戦闘は終始押しているのにも関わらず、余裕がなく、何かに固執するような、むしろ逆に追い詰められているような、そんな焦躁が伝わってくるものだった。

 訓練終了間際、緑谷君が放ったアッパーの衝撃が、拮抗状態になっていた飯田君と麗日さんのいる核部屋まで貫通して床が吹き飛ぶ。事前に打ち合わせていたのか、焦る飯田君に対して麗日さんは折れた石柱で打った瓦礫に紛れて一気に接近し、見事「核」を確保。ヒーローチームの勝利となった。

 乱れた映像が戻り写っていたのは、肩で息をして呆然と立ち尽くす爆豪君と、右腕がひしゃげて全身ボロボロの状態で倒れている緑谷君だった。女性陣が悲痛な声を上げ、男性陣はグッと押し黙る。

 その後の処理はオールマイトが行い、爆豪君・飯田君・麗日さんの三人はモニタールームへ移動。緑谷君は重傷と判断され、ロボットに保健室へと搬送されていった。

 講評時間でMVPは飯田君であることが決まり、次点で麗日さん。そして緑谷君爆豪君と続いた。

 一戦目からとんでもないものを見せつけられたものの、ここはヒーロー科。どうやら誰も委縮するようなこともなく、二戦目三戦目と初戦が嘘のようにスムーズに進んでいく。私の順番は結局五戦目が終わるまで回ってこなかったので、最終戦ということになるのかな。

 

「ふむ、どうやらあとは伊吹君のKチームのみのようだね!戦いたいチーム!!」

 

 オールマイトが腕を掲げて対戦相手を募る。そして、なんとそれに応えて手を上げたのは全チーム、というより全員だった。

 ……皆ちょっと意識高すぎませんか?

 

「はい、先生!伊吹さんはどうやらお一人の様子、このまま一対二というのは彼女には不利かと思われますが?」

 

 八百万さんがビシッと手を上げて疑問点を指摘する。

 

「その通り!だから彼女のペアはもう一度くじで――」

 

「大丈夫ですよ、先生」

 

 私は先生の言葉を途中で遮り、一人で大丈夫だと言って能力を発動する。

 

「ふむ、しかし……むっ」

 

「「「「え?!」」」」

 

「「私が二人分になります」」

 

 昔早苗に読ませてもらった漫画のキャラクター『○レイヌさん』を真似てカッコつけてみる。オールマイトを除いたこの場にいる全員が驚愕といった表情で私を見ていた。それはそうだろう。今私のすぐ隣にはまったく瓜二つのもうひとりの私が立っているのだから。

 

 この技は『ミッシングパワー』と似たようなものだけど、行使するのはそれ以上に難しい。私と同じように意志を持ち、質量を付加するのは意外と骨が折れる。分身するだけなら十人くらいにはなれるけど、代わりに身体強化や巨大化といった他の能力が使えなくなる。一人の時と変わらない状態を維持するには、今のところ一人増えるだけで限界なのだ。

 それに比べて師匠はおかしかった。いきなり百人に分裂して「私一人で百鬼夜行なのさ」とドヤ顔を決められ、そのまま百人同時に組手をさせられた。それだけ分身してるのに能力の制限も無くバンバン使用してきたし、「嬢ちゃんも分身すりゃ勝てるかもな!」と笑う師匠の顔は忘れたくても忘れられない、若干トラウマとなっている。

 

「……うん!いいよ!!それでいこう!!」

 

 オールマイトは思案するように数秒沈黙するもいつもの調子を取り戻して、グッと親指を立てて許可をしてくれた。個性届を学校側に提出した際に私が今出来ることはほぼ記入していたので、さほど驚くことは無かったのかもしれない。

 

「皆聞きたいことはあるだろうが、授業の終了時間も迫っているので質問は無し!対戦相手もくじで決めさせてもらうよ!」

 

 オールマイトがくじ箱にズボッと手を突っ込み抜き出したのは「B」と書かれた紙。Bチームといえば、二戦目で圧倒的な強さで勝利した轟君と障子君のチームだ。彼らの方を見るとパチリと目が合う。

 

 轟焦凍 個性『半冷半燃』

 左右で色の違う瞳に右側が白髪、左側が赤髪の特徴的な人だ。今はコスチュームで左側の部分が隠れているけど、昨日の個性テストで見たのを覚えている。

 映像を観た限りは、ビルを凍結させるほどの氷とそれを溶かすほどの熱を操る個性だと思う。まだまだ隠している力はあるだろうけど、いずれにしても強力な個性だから注意が必要かな。

 

 障子目蔵 個性『複製腕』

 リーゼントから氷柱がいくつも垂れ下がったような髪型、顔は目から下がマスクで覆われていて確認できない。肩からは腕以外に二対の触手が伸びていて、一目で異形型の個性だということがわかる。戦闘訓練では直接戦う場面はなかったけど触手の先から口や耳を複製していたところを見るに、戦闘以外にも諜報活動も得意らしい。とても応用力に長けた個性なのでこちらも要注意。

 

「伊吹君が「敵」!Bチームが「ヒーロー」だ!5分後にスタートするから、両チームともすぐ位置に着きたまえ!!」

 

 

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