百鬼夜行のヒーローアカデミア   作:ソトン9

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ヒョコ|д゚)

スッ|д゚)_(本編)




~ヒーローは遅れてやってくる~

 捕らえたヴィラン達から今回の襲撃に関する情報を得た私と尾白君は、それを阻止するべく各ゾーンに散らされた皆と救援を含めた合流のために移動を開始していた。

 

 拘束したヴィランが言うには、今回襲撃してきた目的はあのオールマイトを殺害するためだと言っていた。ただし自分たちはあくまでも下っ端であり、どんな方法かまでは知らないらしくほんのちょっとだけ脅してみたものの、答えが変わることはなかった。

 

 彼らが担っていた役割は黒霧と呼ばれるあの靄のような男の個性で飛ばされてきた私たちを蹂躙し殺すことであり、誰一人として生きて返すつもりはなかったんだとか。

 

 結果としては逆に返り討ちに終わったわけだけどね。

 

「伊吹さん。他の皆は大丈夫かな?」

 

「・・・どうだろう。轟君や爆豪君、あの二人はまず心配はないかな。実力は折り紙つきだし、あのレベルのヴィランが相手なら遅れをとるなんてことにはならないと思う。・・・峰田君とかちょっと心配な人もいるけど、私たちは雄英の生徒で、ヒーローを目指してここに入学したんだからこのくらいの困難は乗り越えて見せないとね」

 

 皆の身を案じて表情を曇らせる尾白君に、私は明るく応じてみせる。

 

 尾白君はそれで少し安心したのか、幾分表情の硬さが取れて「そうだね、皆を信じよう」と言葉を返してくれた。

 

 しばらくして火災ゾーンの出口へとたどり着いた私と尾白君は、次に向かう災害ゾーンを決めるため辺りを観察してみた。

 

「こっちの巨大な岩場は山岳ゾーンで、あっちで渦を巻いてる湖があるのが水難ゾーンかな?伊吹さん、まずはこのどっちかに向かうってことでいい?」

 

「うん。それなんだけど、分身の私からの情報であっちの水難のほうは緑谷君達がなんとかしたみたい。今は岸の陰で休息してる状態だって。だから私たちが今から向かうのはこっちの山岳ゾーンのほうかな」

 

 私がそう言うと、尾白君もそれで納得してくれた。

 

 緑谷君達のいる水難ゾーンは最初にヴィランが出現したところに近いけど、プロヒーローの相澤先生が戦ってくれているし私の分身もサポートにまわってもらってるから他の場所よりは比較的安全なはず。であればまずは各所に飛ばされたであろう皆と合流したうえで安全を確保することが最善だろう。

 

「!?」

 

 そんな時、分身から緊急事態の情報が告げられる。

 

 それはこの超人社会にあっても異形と言わざるを得ない見た目をしていて、スピードもパワーも圧倒的なヴィランに分身は終始押され続けて敗北。情報共有が途端に切れてしまう。

 

「ごめん尾白君、私行かなくちゃ!あとはお願い!」

 

「ん?え?ちょっと、伊吹さん!?」

 

 私はそれだけ言って、返事も待たずに踵を返して広場へと全力で駆け出した。

 

 最後に分身から伝わって来たあの異形ヴィランの情報。あれは危険だ。相澤先生でも敗れる可能性が高い。

 そうなってしまったら次に標的になるのは、今一番近くにいる緑谷君達になってしまう。

 

「…急がなきゃ!」

 

 

 

 

「~~~~っ!!!」

 

 異形の改人"脳無"と呼ばれるヴィランに敗北した相澤ことイレイザーヘッドは、地面にうつ伏せに押さえつけられていた。掴まれた右腕は肘から先が折れ曲がり握り潰されているものの、彼は痛みに悲鳴を上げることなく歯を食いしばる。

 

「個性を消せる。素敵だけどなんてことはない。圧倒的な力の前ではつまり、ただの無個性だもの。」

 

 身動きの取れない相澤の前でフラフラと左右に頭を振りながら誰にともなく話すヴィラン。顔や肩、首、腕といった箇所に人の手首を身に着けたその姿はまさに異様と言えるものであった。

 

「ぐぁ…!!」

 

 相澤のぐちゃぐちゃとなった右腕を放して、続いて左腕をも握りつぶす脳無。

 それはヒーローとしての行動を起こせなくするための対処なのか、それとも単純に人を壊すことに楽しさを見出しているのか、焦点の定まらないその無機質な脳無の表情からは何も読み取ることが出来ない。

 

「そんなあんたに比べたら、さっきのガキの方がまだ頑張った方じゃないか。まぁ結果は脳無が地面に叩きつぶしてお終いだったけど、ヒーロー目指してたんだから死んで本望じゃないかな」

 

 圧倒的な優位性から人を小馬鹿にする態度と言葉を並べるヴィラン。その視線の先には覗かなければ底が見えないほどに深い陥没した穴が出来上がっていた。強い衝撃と威力によって成されたそれは穴の底にどんな惨状が広がっているのかを想像するだけで顔を覆いたくなるほどであるが、むしろこのヴィランは脳無と呼ばれた怪物によって作り出されたその惨状を見たいというようにそちらへと近づいていく。

 

死柄木弔(しがらき とむら)

 

 しかし、その歩みは先ほどまでUSJの入り口にて雄英の生徒達と対峙していたはずの男"黒霧"が現れ名を呼ばれることで止まる。

 

「…黒霧、13号はやったのか」

 

「行動不能には出来たものの、散らし損ねた生徒がおり…一名に逃げられました」

 

「………は?」

 

 肯定の直後に失態の発言を聞いた死柄木はさっきまでの上機嫌はどこへやら、一転して不機嫌となりガリガリと首筋を掻き毟り始める。ボソボソと悪態をつき、黒霧がワープという個性でなければ殺していると言い放った死柄木の目は暗く澱んでおり、本気であることが窺える。

 

「さすがに何十人ものプロ相手じゃ敵わない。…あーあ、今回はゲームオーバーだ。帰ろっか。…けどその前に――」

 

 そうしてぴたりと動きを止めた死柄木はゆらりと黒霧の方へと体を向ける。

 

 

 ほんの少し前にヴィラン達を退けて水辺に隠れながら状況を観察していた緑谷・蛙吹・峰田は、先ほどの死柄木の発言を聞き彼らが撤退することを知る。

 

 伊吹萃香の分身が異形のヴィランの一撃で地面に埋まって消え、さらにプロヒーローである相澤ですらも血まみれで倒れている。その両方ともがあの改人"脳無"によってもたらされたことを間近で見ていた三人は、死柄木というヴィランが帰ると言ったことに対して安堵するよりも気味の悪さを感じていた。

 

「気味が悪いわ、緑谷ちゃん…」

 

「これだけのことをしておいて…あっさり引き下がるなんて…(オールマイトを殺したいんじゃないのか!?これで帰ったら雄英の危機意識が上がるだけだ!!ゲームオーバー?何だ…何を考えてるんだ…こいつら!)」

 

 ここまでに警報装置が作動せず通信機器が使えなくなり、二人のヒーローが無力化されクラスの生徒達もこの施設のどこかへとバラバラに飛ばされるなど、これが用意周到に練られた襲撃計画であることがよくわかる。

 しかし本命と言える"オールマイト殺害"を前にしてあっさりと帰るという選択を取った死柄木の考えが、緑谷には読み取ることが出来ず困惑してしまう。

 

 まだ何かあるはずだとヴィランを注視しつつも思考の渦に入ってしまったせいか、ほんの少し気が逸れてしまい死柄木が少しずつこちらに視線を向けていることに気付くのが遅れてしまう。

 

「平和の象徴としての矜持を少しでも」

 

 そして次の瞬間には――。

 

「へし折って帰ろう!」

 

 一気に接近されたことに反応が出来ず死柄木の手が隣にいる蛙吹梅雨へと伸ばされる。こちらにはまだ気づいていないと思っていたせいか3人ともが呆然とした表情で固まってしまう。

 

 しかし咄嗟のことに身体が固まってしまったのとは逆に死柄木の手が彼女に届いてしまえばどうなってしまうのか、相澤の肘が崩れてボロボロになってしまったシーンが頭の中でフラッシュバックする。

 

 そうしている間に死柄木の手はとうとう蛙吹梅雨の顔を捉えてしまう。

 

 まだ中学を出て高校生になったばかりの少女が想像もしたくないような凄惨な死をむかえてしまう。間に合わない。

 

 死柄木の目が狂気に歪み、その場の誰もが彼女の死を確信する。してしまう。

 

 ……しかし、触れればすぐさま発動するはずの個性がいつまで経っても発動しない。

 

「………本っ当かっこいいぜ、イレイザーヘッド」

 

 少しの沈黙を挟んで言った死柄木。なぜ個性が発動しなかったのか。その言葉でわかる通り、両腕を潰され満身創痍の相澤が脳無に押さえつけられながらも、なんとか頭を上げて死柄木を見ることで個性を抹消した結果であった。

 

 そして…。

 

「本当に、さすがですよっね!」

 

「ぐっ!」

 

 突如横合いから蹴り飛ばされ苦悶の声をあげる死柄木。反射的に蹴飛ばされたほうへと踏み出したことでなんとか直撃を避け態勢を立て直したものの、脇腹から激痛が走り思わず顔が歪んでしまう。

 

 しかしその体に奔ったダメージよりも怒りが勝った死柄木は自分に不意打ちを食らわせた相手を見て驚愕する。

 

 

 

 

 間に合った!

 

 分身が消えちゃってからここまで全力で走って来たけど、目の前で梅雨ちゃんがヴィランに殺されそうになったときは思わず肝を冷やしてしまった。

 

「ふぅ、3人とも無事かな?」

 

「伊吹さん!君も無事だったんだね!良かった!」

 

「ありがとう伊吹ちゃん。助かったわ、ケロ」

 

「うおおお伊吹ぃ!」

 

 ヴィランから目を離さず声をかけると3人とも特に命に関わるような酷い怪我もないようで、それぞれの反応で返してくれる。

抱きつこうとしてきた峰田君は梅雨ちゃんが捕まえて水に沈めてくれた。

 

「本当に良かった。私だけじゃ間に合わなかったかもしれないから……相澤先生に感謝しないとね」

 

「あ…」

 

「ゲコ」

 

「ガボガボ(死ぬ)!」

 

 相澤先生は私が間に合わないと覚悟を決めそうになったとき、なんとか力を振り絞ってヴィランの個性を止めてくれた。それが無かったら今頃梅雨ちゃんは…。それに生徒を庇った結果、先生自身は黒いヴィランの脳無によって頭を地面に叩きつけられて意識を無くしてしまった。

 これがプロヒーローという職業なのだろう。時に自身の命を賭してでも誰かを救う。本当にすごい世界だと心底おもってしまう。

 

「おまえぇ!!」

 

 警戒を最大限にしたままヴィラン達の動きを観察していると、上半身にいくつもの手を付けたヴィランが私を睨みつけながら声を張り上げた。

 その男はゆっくりと立ち上がるとこっちを指さして怒りのままに話し出す。

 

「おまえ!さっき脳無が始末したはずの女だな!あの一撃でミンチになったはずのおまえがなぜ生きている!」

 

「ヴィランに答える必要のないことですね」

 

 考えるまでもない。ヒーローなれば名鑑に載るとはいえ、私たちはまだ学生だ。だからこそ個性がはっきり掴めないという唯一のアドバンテージをここで無くすなんてありえない。

 そうして回答を拒否すると、男は見るからに不快といった様子で首をガリガリと掻き始める。「どいつもこいつも」「予定が狂った」「イレギュラーばかり」。そんなことをブツブツと呟きながら男は次第に落ち着きを取り戻していく。

 

「まあいいや。また殺せば済む話だ…脳無、やれ」

 

 濁った眼で男が命令すると、相澤先生を抑えていたヴィランがそこから一瞬で肉薄してきた。

 私を捕まえようと伸ばされた腕を相手の懐に潜りこんで避けつつ、回し蹴りで足を払って浮かせる。

 脳無の身体が支えを無くしたところで払った足の指を握り、私は全力強化した状態で大上段から地面に一気に振り下ろした。

 

「ハアァ!」

 

 轟音。叩きつけた巨体が地面との激突の衝撃で浮き上がり、それを見た緑谷君達は目を見開いていた。

 私はそのまま脳無へ追い打ちをかけるべくその上にジャンプして、構えた右手周辺の密度を限界まで圧縮させて狙いを定める。

 

「これはさっきのお返し!」

 

 拳を突き出すと同時に圧縮した密度を脳無に向けて解放。両腕をクロスして防御されるけど、そのまま振り抜くと再度爆発と轟音が周囲に響き渡る。

 

 少し離れたところへ着地した私は、脳無が沈む穴を睨む。

 

「今のはさっきやられた私の分ね。そして次は相澤先生と皆の分」

 

 そして未だに動かず戦いを観察する残り2人のヴィランへと指を指して言う。

 

「本気でいかせてもらうから。ヴィラン」

 

 

 

 

 




久々にログインして、一年以上もエタってしまって、待ってる人なんてもういないと思ったんですが…、いました。いてくれました。

遅れて申し訳ない(m;´Д`)m

読んでくれる人がいるので、次もなんとか投稿出来るよう頑張ります('Д')9
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