ちょっと短いんですが、ゆっくりしていってね(=゚ω゚)ノ
「はぁ はぁ はぁ――」
早朝6時。
入試試験から一週間が経ち、私は2年前から日課として取り入れているランニングをしていた。今朝は冷えるものの、体を動かしていればそれほどでもない。春の匂いが香り始めた空気を楽しみつつ、呼吸のリズムに合わせてタッタッタッといつものコースを駆け抜けていく。
ランニングを始めた当初は1㎞走っただけでフラフラになってしまっていたのが、今では10㎞くらい走ってもほとんど息があがらない。転生前の体が弱かった頃は1500mを走り切ることすら出来なかった私が、今では自分の思うように動かすことが出来る。
さらに私は体幹・筋力トレーニングにも力を入れていて、体育で行われる体力測定は女子の中でトップはもちろんのこと男子の一位よりも上だ。一部の男子から"ロリならぬゴリ"なんて言われたこともあったけど、女子側が"注意"してくれたおかげで次の授業が始まる頃には皆紳士的な人になっていた。あれが所謂"女子力"を発揮した結果なのだろう。すごいね女子力。
目標の10㎞を50分ほどで完走したところでクールダウンさせるため、徐々にペースを落としつつ家にへの道を進んで行く。
「ただいまー」
「――おかえりなさい。萃香、ご飯作るから先にシャワー浴びておいで」
玄関で靴を脱いで軽くマッサージをしていると、母がリビングから着替えを用意して出てくる。
「はいどうぞ」
「ありがとう、お母さん」
母から着替えを受け取り服を脱いで浴室へと入る。取っ手を捻り少し熱いシャワーを頭から浴びると、冷え込んだ手足がじんじんと痺れながら少しずつ温まっていく。そうして汗を洗い流してから体を洗い、十分温まったところでシャワーを止め浴室を出る。
タオルは置いてないが気にせず換気扇のスイッチを入れてから能力を発動させる。すると体から滴る水分が霧散して換気扇へとどんどん吸い込まれていく。全身の水気が飛んだことを確認してから能力を解除し部屋着に着替え、ついでに浴室も乾燥させておく。
こんな能力の使い方を教えてくれたのも師匠だったことを思い出す。
たしか昔、つい八雲家の蔵の酒を全部飲み干してしまい、それがバレないように空気中の酒気を散らしたのがきっかけだったと言ってたっけ。空の樽や瓶を処分し忘れて、結局バレて紫ちゃんから大目玉を食らって大変だったってケラケラ笑ってたっけ。
浴室も乾いたところで朝食を食べるためにリビングに入るとすでに食事はテーブルに並べてられていて、メガネをかけた母が対面に座ってパソコンを操作していた。
「そろそろ上がってくるころだと思った。さぁ、温かいうちに食べちゃいなさい」
「は~い」
私が戻ってきたことに気付いた母は柔らかな笑みを作ると朝食を食べるように言ってくる。その優しい顔を見ると相変わらず美人な人だな~と思う。
幼い頃に聞いた話で、母と父が初めて出会ったのは父の勤める市役所に母がやってきたのが最初なんだとか。その当時窓口を担当していた父がやってきた母に一目惚れ。その場で「僕とお付き合いしてください!」て告白したんだとか。母は困惑したものの「それじゃあお友達から」とお互いに連絡先を交換してその日は終わったという。もちろん父はこの後で上司にしこたま怒られたらしい。
これを聞いた当時父に対して仕事中に何をやっているんだという気持ちもあれば、そこで何の抵抗もなく簡単に連絡先を交換してしまう母にも驚いたものだ。
「合否の通知、今日あたりじゃないかしら?」
「んむぅ」
黙々と食事をする私に母が試験の結果がそろそろ届くのでは?と聞いてくる。
確かに、試験が終わってからはや一週間。大抵の学校であれば通知書が届いていてもおかしくない。今日の夕方あたりだろう。そんな風に思っているとピンポーンと家のインターホンが鳴った。
「私が出るから食べちゃいなさい」
私が行こうと箸を置くと母が先に立って待っているように制止をする。
食事を続けつつ玄関のほうに聞き耳を立ていると、少し会話が聞き取れた。どうやら配達員が来てなにやら荷物を届けにきたようだ。会話が途切れてドアの閉まる音と同時に母が興奮した様子でリビングに入ってきた。
「萃香!雄英から試験の結果が届いたわよ!」
「えぇ?!」
さっき話題にしたばかりなのに、タイミング良すぎない?と思いつつ母から荷物を受け取る。
「ご飯を食べ終わったら、2階へ行って自分で確認してきなさい」
「お母さんは一緒に見ないの?」
「私は後であなたから直接聞くからいいのよ。こういうのはまず自分だけで確認するものなの。」
そう笑顔で言われた私は早々に食事を済ませ少し大きな封筒を持って自室へと上がる。
(少し重い?)
訝りつつも封を開けて机の上に取り出してみる。何枚かは入学案内の紙でそれだけで合格できたことがわかるが、その中に薄いタブレットのような機械があるのを見つけた。重さの原因はこれだったのかと思いつつスイッチがいくつかあったので電源ボタンらしきものを押してみる。
『私が投影された!!!』
「えっ、オールマイト?」
起動音とともに目の前の壁に映しだされたのは現在ヒーローたちの頂点に立っていると言われる№1ヒーロー『オールマイト』だった。今年から雄英の教師になるとの話は本当だったようでスーツを着ている。サイズが合わず筋肉でパツパツという残念なことにはなっていないようで良かった。
『初めまして、伊吹萃香くん!私はオールマイト!今年から雄英で教師として赴任することになってね。こうして合否を君たちに伝える役が最初の仕事というわけだ!!さて、さっそくだが君の合否を発表させてもらおう!・・・おめでとう!合格だ!』
オールマイトがオーバーリアクション気味に私の合格を伝えると、彼の背後の画面に"合格"と文字が映し出された。
『筆記試験に問題無し!実技のポイントも112ポイントと文句なしのトップ合格だ!』
その結果を聞いて思わずグッとガッツポーズをとる。
『さて、先の実技試験についてだが、君たちに与えられていたのは仮想敵ポイントだけにあらず!』
オールマイトがそう言うとスクリーンの文字が変わり
『審査制の
握手を求めるように腕が伸ばされたところで映像が切れる。どうやらこれで終わりのようだ。
まさか敵ポイントの他に救助ポイントなるものまであったとは驚いたが、それよりも驚いたのは私がトップで合格したことだ。私はそのまま余韻に浸るように椅子の背もたれに背中を預けて目を瞑る。
(これで雄英に、ヒーローとしての第一歩を踏み出すことが出来る!)
しばらくして雄英に合格したことを母に伝えると、目にうっすらと涙を浮かべ「おめでとう」と言って抱きしめてくれた。夜帰ってきた父にも伝えると大喜びしながら高い高いをしてくれたので、私もお返しにと高い高いしてあげるとあまりの嬉しさのせいか父は泣いていた。
その日はお祝いということで父が外食に行こうと言いだし、合格した本人よりもウキウキしているのを私と母で宥めながら家を出た。
入試試験直後。雄英高校大会議室。
そこでは雄英の教師陣が受験生たちの合否について話し合っていた。
「続いて、次が最後の合格者となります。と同時に今年の実技試験でトップの成績を出した者です。受験番号2306番、伊吹萃香」
教師の一人が紹介すると、会議室に設置された大画面のテレビに試験の状況が映し出され、各教師が手元の資料を捲る。
「"密と疎を操る個性"だぁ?おいおい随分と抽象的な個性名だな」
「ええ、私もそう思いましたのでまずは実技の映像を観ていただいたほうが早いでしょう」
そういって教師はリモコンを操作して画面外へとはける。
再生が始まり最初に映し出されたのはスタート直後。そこには地面に罅が入り他の生徒が困惑する中、高速で飛び出していく小さな少女の姿があった。
「…これは身体強化系の個性か?」
速度が自動車ほども出ていることを確認した一人の教師が質問をする。
「最初はそうかと思ったのですが、スタート地点を確認したところ衝撃によってひび割れる地面とは少々異なっておりまして」
「どう違うのかしら?」
別の教師が問うと、「これを見てください」と言って画面を切り替えると指示棒を一点にあてる。
「このひび割れの中心点ですが、あまりの衝撃に直径5センチに渡って一部が粒子化し陥没しています。」
「つまりどうやったかわからんが、この受験生は踏み出す最初の一歩で発生する衝撃を、逃がさないよう一点に集めて爆発させた。そういうことか?」
先ほどの教師が聞くとコクリと頷く。
「そいつはシヴィー!!だがよ、それならさっき見た爆豪ってやつの個性と似たようなもんじゃねえか?あの少年は両手からだけだがこのお嬢ちゃんは爆発に似た衝撃をどこからでも出せるってーだけだろ?」
「……それでは続きをお見せしますので、今の仮説が正しいかどうか皆さんに確認していただきたいと思います」
あえて答えを言わず、試験内容の続きを再生し始めたことに教師陣は訝りつつも黙って観ることにした。
次に映し出されたのは1P敵との最初の接触シーン。離れたところから一気に加速した少女だがそこは雄英の誇るロボットなだけあり間合いに入る瞬間を見計らって前腕を振りかぶる。
「このあと」
その一言で次に起こることに全員が集中する。
1P敵から振り下ろされた腕は少女を捉えることはなく、少女は一気に懐へ入ると1P敵のボディにそっと掌を添えるのが見えた。先ほどと似たような方法で吹き飛ばすのだと思った教師陣は次の瞬間困惑する。
1P敵が一瞬の硬直の後に、なんと自壊し五体がバラバラになったのである。これを見た多くの教師陣は今何をしたのかを見抜こうと考えるが全員が答えに辿りつけないでいた。
さらに映像は進み、場面は会場の中でも一際開けた広場へと入る。そこには多数の敵を配置しており、一人で対処するには少々厳しくなるように設定した地点だった。が、少女は何も問題はないとでも言うように突っ込んでいく。その立ち回りはプロヒーローである彼らさえも中々に舌を巻くほどで、着実に一体ずつ処理をしていた。
「次です」
言葉を挟んだところでまた画面に集中する教師陣。
少女は後続の受験生が追いついてきたことを確認したところで2P敵の背後へと回り込み尻尾を掴むと、空中へと高くジャンプしブンブンと回し始める。次の瞬間一部の教師から「おおお」と声が上がる。
なんと周りの瓦礫が振り回されている敵に次々と集まっていくではないか。それが2メートルほどの大きさになったところで少女は振りかぶると、勢いよく敵に向けて塊を投げつけた。轟音、衝撃、それによってカメラの映像が数秒ブレる。立ち込めた砂煙が不自然に晴れると敵達は一体残らず全滅していた。
「次が最後です」
教師がそう言うと、また場面が変わる。
「まだあるのか…」と、先ほどまでの情報だけですでに妙な疲れに襲われている教師陣は最後ならばと目頭を押さえつつ再度画面を見る。
試験も最終局面、0P敵が登場し受験生は手を出さず逃げながら確実に各ポイント敵たちを撃破していた。それを見ても教師たちは特に反応はしない。なぜならヒーローも万能ではないため自身が手に負えない状況になることも少なくない。それを理解している彼らは受験生たちが0P敵を倒すことにはあまり期待はしていない。あくまでこの不測の状況でどう判断できるかを見ているにすぎないのだ。
そんな中で一人の受験生が腰を抜かして座り込んでしまう。このままでは危ない。誰かが救助に向かわねば大変なことになるだろう。そう考えたところで彼らは理解する。
((((もしかすると…さっきの少女が?))))
それを証明するように彼女、伊吹萃香が受験生と0P敵との間に颯爽と現れた。
教師の一人が「イエアーーー!!」と興奮気味に叫ぶ。
少女は何かに集中するためなのか、その場で静かに目を閉じて動かなくなる。
それをみて教師陣も期待をする。ヒーローに必要とされるもの、人を助け守る自己犠牲と奉仕の精神。それがこの少女には備わっていることはわかった。ならばこの0P敵にたいしてどう戦うのか。最初のように分解し自壊させるのか、それとも広場で見せたような怪力を使って正面から打ち砕くのか。この先の結果が気になり彼らは一時的に職務を忘れ、食い入るように画面へと視線を注ぐ。
誰かが唾をゴクリと鳴らし…そして…次の瞬間………
―少女は巨大化した―
「「「なんじゃそりゃ~~~~~!!!」」」
あまりの出来事に一斉に椅子から転げ落ち度肝を抜かれる教師たち。
「はああぁぁん?!なんでここで巨大化?!意味不明すぎて着いていけねえぞ!」
「どうやったかわからない…でも…熱いじゃない!!」
「クケケ、こいつぁ想定外だ。これだけ見りゃMt.レディの個性と似てるな」
「"密と疎を操る個性"破格の能力だ…ぜひB組にっ…」
(はぁ、どいつもこいつも)
今まで座りっぱなしで試験映像を淡々と観ていたせいか、肩や首が凝っていたこともあり、彼らは立ち上がるなりそのまま少女の個性について話したり、A組B組のどちらに入れるかで揉めたりとお祭り騒ぎになってしまう。
もちろん静かに映像を観続けている者もいたが、いちいちこの状態を止める労力がもったいないと思い、彼らは我関せずを貫いて黙っていることにするのだった。
そんな最中、再生が続く映像の中で少女の豪快なアッパーを食らい、0P敵の頭部がただ静かに画面の外へと消えていくのだった。
夜中3時!…うごご、ヒロアカ編に入ってからペースが落ちてしまったorz
さてさてなんと!UAが1万を超えました!これも作品を読んでくださる皆さんのおかげです。本当にありがとうございます!m(__)m
お気に入りも160件を超えて嬉しさもありつつ、読者の方々を満足させることが出来ているのか不安にもなります。
ですがまだまだ投稿を続けていきたいので、今年もあとひと月ありませんが、どうぞよろしくお願いしますm(__)m
んではでは!(=゚ω゚)ノ