え~、皆さんのおかげ様で
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なんだかもう震えがとまりません:(;゙゚''ω゚''):
ありがとうございます!m(__)m
それでは本編
四月
晴れやかな春の日差しが部屋へ差し込む朝。空気の入れ替えのために開いた窓の外から、気持ちの良い風が吹いてきてカーテンを揺らす。
風に運ばれてくる春の香りを感じつつ、私は壁際に立てかけた姿見の前でネクタイをキュッと締めYシャツの襟を折って戻す。ネクタイの位置を調整してから壁に掛けたハンガーから濃緑色のスカートをはずし、下から穿いてシャツの裾を入れてからスカートのチャックを上げボタンを留める。裾がはみ出ていないか一度背中側を確認し、今度は別のハンガーから袖と下衿に濃緑色のラインが入ったグレーのジャケットをはずして羽織る。ボタンを留めて所々の微調整を済ませたところで、改めて姿見で全身を確認する。
私が今着ている服は雄英高校の指定制服であり、今日が入学式ということで念入りにチェックしているところなのだ。
「……よし!」
特に気になる箇所も無く満足したところで姿見にカバーを掛ける。窓とカーテンを閉めて机の上に置いてあるリュックのチャックを開き、筆箱や校内の見取り図など入学案内に書かれている必要な物が全て入っているか確認する。……うん、全部あるようだ。昨日の夜も一度確認しているものの、こういうのは時間ができたら何度もやっておいた方がより確実だろう。
荷物の確認も終わり、リュックを背負い部屋を後にして階段を駆け下りる。玄関前まで来たところでタイミングよく右側のドアが開き、父がリビングから出てくる。
「おや、もう出るのかい?萃香」
目が合った父が笑顔で話しかけてくる。
整えられたオールバックの黒髪に優し気な目元。180㎝と長身ながらもスポーツは苦手だったらしくややほっそりとしている。30代も後半に差し掛かったものの見た目だけならまだ20代と言われても信じられるほどに若々しい。結果よくモテるらしいのだが、普段は口下手な上、父は母一筋なため仕事仲間と飲みに行っても必ず8時までには帰ってくる。休日は私の修行をそばで見ていてくれるし、時々旅行にも連れていってくれる。とても家族想いで優しい人だ。
「うん、今日は入学初日だからちょっと早めに!」
「ん、良い心がけだね」
父は微笑みながら私の前に屈んで優しく頭を撫でてくれる。もう子供じゃないと言いたいところだが、この暖かくて大きな手が私は好きなので許すことにする。
「あら、今日は萃香の方が早く出るみたいね」
なでなでのなすがままになっていると、母がリビングのドアからひょこっと顔を覗かせてから出てくる。
薄らとした茶髪が胸の下あたりまでストレートに伸びていて、外から入ってくる陽の光で少し明るく見える。父と同じく目元は優しく、赤みがかった黄色い瞳がとても綺麗だ。父とはひとつふたつしか歳は違わないけど、未だ大学生か新社会人と変わらないほど若々しい。身長は父から見れば低く私から見れば高い、ちょうど間くらいだろうか。
まったく、二人とも身長が高くて羨ましいものだ。私の身長は130㎝と低く、一番遺伝しておくべきところが継承されていない。身長が止まった当初こそウソダドンドコドーン!って思っていたけど、私は希望を捨てきれないでいる。だってまだ15歳だから!大丈夫、未来は明るい!
軽く現実逃避をしつつ、父と母の間をすり抜けて玄関で靴を履く。
「気をつけて行っておいで萃香」
「学校の皆さんに迷惑かけちゃダメよ?」
「大丈夫!行ってきます!」
玄関から見送ってくれる二人に手を振り返しつつ家を後にする。
「1-A……あ、ここだ。う~ん、思ったより早く着きすぎちゃったかな。というかドアがでかい」
時刻は7時50分。校門は開いていたものの、敷地内の人通りは少なかった。案内にある時間まではまだ40分もあり、新入生が入るだろうこの校舎ではまだ誰ともすれ違ってもいない。当然と言えば当然だよね。
歳相応にそわそわしている自分に恥ずかしさを覚えつつ、深呼吸をして1-Aと書かれたドアを開けて入ることにする。
「あう!」
頭を引っ張られる感覚に思わず声が漏れてしまいなんだと思って確認すると、どうやら角がドアと壁の間に引っ掛かってしまったようだ。慌てて廊下に戻り誰も見ていなかったか辺りを見回すものの、目撃者はいない。よかった、普段は気をつけているだけに、緊張のせいで醜態を晒してしまうところだった。
「よしっ!」
再度深呼吸をして、今度は引っ掛からないよう広めに開けて教室へと入る。
誰もいないだろうと思って意気揚々と教室に入ると、机に座った一人の男の子と目が合った。
「……」
「……」
どうやら私よりも早く来ている生徒が一人いたようで、メガネを掛けた彼と私はただじっと視線を交わし時間だけが過ぎていく。
「えぇっと」
さっきの見られた?!
顔がカァっと熱くなるのを感じてそんなことを思っていると、彼は自分の席から立ちあがるとススッと歩み寄ってくる。
「初めまして!ボ……俺は私立聡明中学出身、飯田天哉だ」
気を遣ってくれた!逆にもっと恥ずかしいです!
「は、初めまして。伊吹萃香です」
ビシッとした姿勢でカクカクと動く彼に気後れしつつ、私も軽く頭を下げて自己紹介をする。聡明中学といえば有名な超エリート校だったような覚えがある。
「伊吹君だね。よろしく!どうやらボ……俺が最初のようで、他の生徒たちはまだ登校してきていないようだ。机にそれぞれ名前の書かれた紙が貼ってあるんだが、見たところ名前順なので君の席は廊下側、ボ……俺の後ろあたりだろう」
「ありがとうございます」
お礼を言いつつ、指示されたほうへと向かう。どうやらさっきのことには触れないでいてくれるみたいで助かった。切れ長の目で怖そうに見える人だけど、思ったよりも真面目で良い人そうだ。
早々に自分の席を見つけたのでそこへ座る。荷物を置いて一息ついたところで教室を見渡してみると、一般的な学校に比べて広いことがわかる。天井も高くて様々な個性に対応できるように設計されているようだ。時計を確認してみるとまだ10分ほどしか経っていない。飯田君はトイレに行くといって教室を出てしまったので話し相手もいない。私は鞄から学校案内を取り出して、そこに挟んであった紙を取り出す。そこには校内の見取り図が描かれていて、新入生が迷わないようどこに何があるかわかるようになっている。常に持ち歩くのもあれなので、時間を潰すことも考えて今のうちに覚えておこうと思う。
「机に足をかけるな!雄英の先輩方や机の製作者方に申し訳ないと思わないか!?」
「思わねーよ!てめーどこ中だよ端役が!」
集中しすぎたせいか、何度も読み返してるうちに時間も過ぎて、教室の席は他の生徒たちでほぼ埋まっていた。騒いでいる方に目を向けると、先ほど自己紹介した飯田君と別の生徒が言い争っていた。
ツンツンと四方八方に伸びた金髪に着崩された制服。後ろからなので顔は見えないけど、あの態度からしてなかなかに悪い顔をしているにちがいない。正直、ああいうオラオラ系は苦手なんだけど、今の私は弱くはないので目をつけられてイジメられたりはしないと思う。うん、だってここヒーロー科だしね。
喧嘩を止めようか迷っていると、一人の男子生徒が入ってきて飯田君の気がそちらに逸れることで言い合いが止む。どうやらあの緑髪で気の弱そうな少年は飯田君と知り合いらしい。そこに茶髪でショートボブの女の子が加わることで空気が一気に軽くなる。
緑髪の子が緑谷出久君で、ショートボブの子が麗日お茶子さんというらしい。
「お友達ごっこがしたいなら他所へ行け。ここはヒーロー科だぞ」
彼らの話が盛り上がり始めていたところに突然教室の外から声がする。私の席は後方にあるので窓越しに廊下を見ると、誰かが芋虫のように寝袋に入っているのが見えた。彼はもぞもぞと寝袋から出てくると、当たり前のように教室へ入ってきて教室内を一度だけ見回す。
「はい、静かになるのに八秒かかりました。時間は有限。君たちは合理性に欠くね。……担任の相澤消太だ。よろしくね」
突然の辛辣なコメントに誰も反応出来ず沈黙していると、先生はどこからか学校指定のジャージを取り出して生徒に掲げて見せる。
「早速だが、コレ着てグラウンドに出ろ」
頭が追いつかず未だ反応を見せない生徒に対して先生は一言「急げよ」と告げて教室を出て行ってしまう。
「とりあえず今は言う通りにするしかないだろう」
飯田君は私の前の席に戻ってくると、体操服が入った袋を取り出して着替えようと周りを促す。
「20……21。全員揃ったな。ではこれから個性把握テスト行う」
体操服に着替えてグラウンドに集合したものの、全員がこの状況を把握できていないところに先生から予想外の言葉が出た。
「個性把握テスト?!」
「えぇ?!入学式は?!ガイダンスは?!」
これから始めることを知った私たちは驚いていた。それはそうだろう。入学案内によるとこの後行われる本当の行事は、体育館での入学式と説明会である。
でも先生はただ一言「そんな時間はない」と切り捨てると、早々にテストの概要説明を始める。どうやら先生曰く、中学での個性禁止による体力試験は合理性に欠けていて意味が無いとのこと。今日はその個性をフルに活用することで結果がどうなるかを見るらしい。
「伊吹、中学の時、ソフトボール投げ何mだった?」
「え、っと……52mです」
突然名指しで質問されたので慌てて答えると、周りの女子から「おぉ」と声が漏れる。先生は「そうか」と言って私にボールを投げてくる。
「じゃあ個性を使ってやってみろ。円から出なきゃ何しても良い」
「あの、なんで私なんですか?」
「お前が今年の入試一位だからだ」
間も空けず即答した先生の言葉に周りが騒然とする。私の実力を見定めようと熱い視線が注がれる中、別の睨みつけられるような視線を感じる。
「早よ、思いっきりな」
先生に急かされたので、とりあえず投げることに集中しようと円の中に入る。
「……ふぅ~~」
確かこういうのは重たいほうが良く飛ぶはず……。私はボールの比重を重くすると同時に自身の身体も強化する。見た目には変わらないけど、このボールは今陸上競技で使われる砲丸よりも重い。
とりあえずこれだけでいいかな。そう判断したところでフと疑問に思ったことを先生に尋ねる。
「先生、飛ぶなら投げることにこだわらなくても良いでしょうか?」
「かまわん」
先ほどと同じように即答で返された。ただ、欲しい回答は得られたので実践することにする。
私がひゅっとボールを真上に投げると一部から「え?」と疑問の声が出たが気にしない。目の前の空間を密で筒状に固定し、右拳にさらに力を集中させる。さらに集中させていくと拳は熱を帯び始め、陽炎が発生して周りの景色が歪む。
私はそのまま腕をグッと引いて構え、落下してきたボールと空間が直線に被るところで一気に拳を振り抜く。衝撃を逃がさぬよう入試時と同じように圧縮。
「んんんにゃあぁ!!」
「「「……にゃあ?……」」」
ボールに激突した瞬間ゴッという音とともにボールが固定した空間を通り抜け、遥か遠くへとぶっ飛んでいく。
「まず自分の最大限を知る、それがヒーローの素地を形成する、合理的手段……」
しばらくしてピピッと反応した機器を先生がこちらに向けると、画面には3235mと表示されていた。……そんなに飛んだんだ。今までの測定は何だったのかと思えるほどの大記録に、思わず頬が緩む。
「すっげえ」
私の記録を見た生徒の一人が呟くと、他の生徒たちも歓声をあげて次々に賞賛の言葉をかけてくれる。それがなんだかむず痒くて、顔が熱くなるのがわかる。
この測定の趣旨を理解したことで皆がやる気満々で楽しそうだと興奮していると、先生が怒気のような気配を滲ませて口を挟む。
「面白そう……か。ヒーローになるまでの三年間、そんな腹づもりで過ごす気でいるのかい?……よし、トータル成績最下位の者は見込み無しと判断し、除籍処分としよう」
先生の静かに放った言葉に一瞬全員が凍りつくものの、すぐに我に返った生徒たちが抗議の声をあげる。それはそうだろう。せっかく苦労して雄英に合格することが出来たというのに、入学初日に除籍処分をされたのではたまったものではない。さらに声をあげる生徒達に対して、先生はさらに言葉を重ねる。
「生徒の如何は教師の自由。ようこそ、これが雄英高校ヒーロー科だ」
髪をかき上げ、ニヤリと笑う先生に気後れしつつも、麗日さんが理不尽だと尚も言い寄る。
「今日まで日本は大規模な自然災害や凶悪犯罪の脅威にさらされてきた。ここは理不尽に塗れている。そんな理不尽を覆してこそヒーローだ。いいか、これから三年間、我々はこれから全力で君たちに苦難を与え続ける。プルスウルトラ、全力で乗り越えてこい」
先生はこちらを挑発するように人差し指をクイと曲げ不敵に笑う。
そしてもう誰も反論をしてこないことを確認すると、計測を再開するとだけ言って黙ってしまった。
皆まだ言いたい事はあったようだけど、一度こうしてグラウンドに出てきてしまった以上は仕方ない。気持ちを切り替えて体力測定に臨む方が賢明だろう。
先生のあの態度からして、たぶん本気なのだろう。
うぅ、こういう重い空気……苦手だなぁ……。
前回書かなかった両親の描写。どうしようどうしようと思っていると、ジョー〇ター卿が囁いてきました。「今回からでもいいさ」と。
……(*´ω`*)ニコ
さて次回は個性把握テスト……になると思う!予定は未定なり!
そして私の小説を評価してくださった方々!ありがとうございます!
一人一人にメッセージを送るということはございませんが、感想蘭で「あ、この人評価してくれた人」と気づいたときには、感想の返信とともに感謝を述べたいと思います。ごめんなさい。
それでは次回もお楽しみに!|д゚)
ではでは
12/19 少々内容を編集しました。詳しくは活動報告に記載しています。