1952年生まれなのでもう定年迎えてもいいと思っている、パン袋のアレです。
今回は春日未来メインの回でもあり乙女ストーム!の総合回。乙女ストーム!のプロデュースも佳境へ向かっていきます。最後までバッツPは活躍するのでお楽しみに。
それでは、バッツPの活躍をお楽しみください!
編集ログ
2018-01-08 善長→善澤に修正
「乙女ストームの単独公演!?」
年も終を迎える十二月。暖房のよく効いた社長室で俺はその話を聞いた。
なんでも、『乙女ストーム!』の人気に伸び代がある今、更なる躍進へ向けてライブをするつもりらしい。
それだけ聞けばいい話に思えるが、問題は別にあった。
「そうとも!彼女達の、引いては未来のアイドル候補生たちを育てるのに、君の成長は必要不可欠だ。これは私からの試練ということだね」
「だからと言って...まさかクリスマスにライブを開催する必要あるのかよ!?一月もレッスン出来ないじゃないか!」
そう、社長がこのライブを考えそして俺に話すまでにかかった時間はやく一時間。
なんでも、記者で飲み友達のさんの質問を切っ掛けに企画したらしい。
「本来ならあと二月は要するとは思うのだが、幸いにも会場の抑えには一つツテがあってね。丁度そこが空いていたから、鉄は熱いうちにと予約をしたんだよ」
「社長はホンット話が急なんだから...分かったよ、そこまでされたらやるしかないか」
「うむ!それでこそ君だ!バックアップは秋月君に任せてあるから彼女とミーティングをしておくように頼むよ」
腑に落ちないにも程があるが、未来達の初めての単独ライブだ。折角のチャンスを無駄には出来ない。
頬を叩き、気合を入れ直して事務所の律子と話をしに行く。
なんだか冬だってのに生温さを感じる風が、少しやな予感を感じさせる。
------------------------------
「かくかくしかじか、という訳だ」
「単独ライブ!?それは嬉しいですけど、クリスマスですか〜」
「...クリスマス。...一ヶ月ない、よ...?」
「それに、曲はあるんですか?前回のライブと同じ曲ならまだしも新曲とかついていける気が...」
「では、ライブのMCにマジックでも...いえ、冗談です」
みんなに訳を話したが、予想通りあまり好感ではない。ついでに言うなら新曲も持ってきたからレッスンも厳しくなる。
「うーん...」と俺が唸っていると、ガタッと立ち上がったのが一人。
「みんな、やろう!」
一人ずっと黙り込んでいた未来だった。
「大丈夫、レッスンだって間に合うように頑張ればいい!だって、私たちのライブだよ!?ここで諦めたらいつチャンスがあるか分からないよ!」
未来は、決して諦めていなかった。どんな絶望的なハードスケジュールでも掴めるチャンスがあるならその可能性にかけている。
なんだかそんなやり取りを懐かしく思えてくる。
「む〜、未来がそんなこと言ったら負けられないよ!わたしもやる!」
「そうですね。無茶ではありますが、無理ではないですし。...行けるぞ、瑞希」
「...杏奈、自信ない...。...でも、やってみたい...」
「み、みんな...決めた!わ、私もやります!出来るかは分からないけど、でも、やる前から諦めたくは無いです...!」
「お前たち...。よし!分かった!俺も全力でサポートすっから頑張るぞ!」
「「「「「おー!」」」」」
未来の態度に焚き付けられた他のメンバーもやる気を取り戻す。ここぞといったところでまっすぐ進もうとしている未来に感動しながらも、改めて俺も覚悟を決める。
これからやることはライブのセトリ決め、舞台セットの企画、レッスントレーナー、etc、etc...
正直、想像しただけで卒倒しそうな量のタスクだけど、未来達の為に頑張ることにした。
------------------------------
「ワン、ツー、スリー、フォー...!」
ライブまであと二週間。未来達のレッスンを始めて今日で7回目。あれから個人レッスンや集合レッスンを丸々担当している。
レッスントレーナーを雇うことも出来たけど、俺自身の力であいつらを支えたいと思ってあえて雇っていない。
俺がレッスントレーナーを代用出来ているのも踊り子マスターと世界各地でピアノを弾きまくったお陰だ。
「はぁっ...はぁっ...きゃあ!」
「百合子!?大丈夫か!?」
足がもつれて百合子が尻餅をつく。レッスン続きで休みの無かった未来達の体はすでに悲鳴を上げていた。
参ったな、ここまでタイトなスケジュールだとライブなんて言ってられない。心に軋みが入ってライブの前に崩れてしまう。
「百合子さん...!大丈夫...?」
「う、うん。ちょっと捻っただけだから」
「プロデューサー。七尾さんはこれ以上は」
「そうだな。みんなも疲れているだろうし...」
俺がどうしたもんかと悩んでいると百合子が察したのか「まだ大丈夫です!」と強気な姿勢を見せる。
多分、自分が足を引っ張ってしまっているいると思ってるんだろな。だったら...
「あぁ〜!疲れた!俺もう体動かないよ...!」
「へっ?プロデューサー?」
「レッスントレーナーがこれじゃもう駄目だ!レッスンは中止!」
「え〜、プロデューサーさんさすがに体力無さすぎじゃないですか?」
「ほら翼!プロデューサーさんもお仕事で大変なんだよ!」
大袈裟に仰向けで倒れ疲れましたアピールをこれまた大袈裟にやる。説得するよりこっちの方が時間がかからなくてすむ。
百合子はあまり表情こそ晴れないが、杏奈の追加の説得で折れてくれた。
百合子と杏奈にお金を渡し、飲み物を買って来て貰っているあいだ、作戦会議をリーダーである未来としていた。
「未来、お前はレッスンの調子はどんなもんだと思う?」
「みんな頑張っています。でも、まだ振り付けが合わなくて...」
レッスンの調子から残り二週間の調整を話す。やれるかどうかの話はしなかった。
それはみんなの覚悟を信じていないと思われるからだ。不安はあるけど、俺だって未来達を信じてやりたい。
「プロデューサーさん、レッスンの時間を増やすことは出来ないんですか?」
「そうしたいのも山々だけど、こうもスケジュールがカツカツだとな...」
現に未来達の人気はそれなりなもので、毎日誰かがどこかで仕事しているくらいだ。番組の降板や代理も立てられない今、この状況は中々まずいものだ。
「プロデューサー。では、こうしましょう。」
「お、何かいい案あるのか瑞希?」
「はい。夜に劇場を使うのはどうでしょうか?つまり...合宿です」
合宿...そうか、そういうのもあったか!入れるとしたら本番の二日前あたりが丁度いいな。
「それならいけるかもしれない!でかしたぞ瑞希!」
「えっへん。もっと褒めてくれてもいいんですよ?」
「合宿!やったー!がっしゅくがっしゅく!」
合宿ができることに未来も喜んでいるみたいだ。翼と杏奈と百合子にも話しとかなくちゃな。
------------------------------
本番二日前、そして合宿の日。
まだ規模の小さい、港の倉庫よりちょっと小さい程度の劇場でダンスレッスンとかボイスレッスンを始める。
新曲もおよそ通しで踊りきれるようになり、踊りながら歌うことができるくらいにはなった。
「...よし!一回休憩だ!」
「「「「「はい!」」」」」
「いや~、頑張ったよ~!わたしもう疲れちゃった」
「そうだね翼。瑞希ちゃんも、杏奈も百合子もお疲れ様!」
「お疲れ様です、春日さん。皆さん、いい感じにそろってきました。」
「そうですね。あ、まだ詰めなきゃいけないところはあるけれど...」
「うん...。でも...しっかりそろうと...気持ちいい、から...」
今は夜の九時。この合宿時間だけでも相当な効果があった。踊りも歌も段々仕上がってきたし、連携も崩れるときの方が少なくなってきた。
「瑞希、改めて合宿を提案してくれてありがとな」
俺は改めて、この合宿を提案してくれた瑞希に礼を言う。
「いえ。私はユニットのことを思って考えただけですから。...えっへん」
「未来も。最初にみんなの背中を押してくれたからみんなここまでやってこれたんだと思うよ」
続けて未来にも礼を言う。未来がみんなの背中を押してくれたし、他の...百合子、杏奈、翼もユニットのことを考えて頑張ってくれていた。
「えっ!?そ、そうですか~?でへへ~」
「そして杏奈と百合子も。体力で遅れはとっていたけど根性は他三人にも負けていなかったぞ?」
「あ、ありがとうございます!」
「...杏奈...正直、不安だった...。でも...みんながいたから...」
「あれ?プロデューサーさん?わたしは~!?」
「翼は...なんかやったっけ?個人レッスンいつもサボってた気が...」
「え~!?ひどいですよプロデューサーさん!」
「冗談だって!色々みんなのダンスをアレンジしてくれたんだもんな忘れるわけないよ」
冗談を交えながらも翼をほめる。
「明日も練習があるけど、それは最後のミーティングも含んでいるから。実際には今日が最後のレッスンだったからさ、話しておきたかったんだ」
「「「「「プロデューサー(さん)...」」」」」
「って、なんだか湿っぽくなっちゃったな。休憩は終わり!次のレッスン始めるぞ!」
俺らしくなかったかな?でもやっぱ言えるときに言っておかなきゃ。ガラフの時みたいに、言いたいときに言えないんじゃ悔やみきれないからな。
それからさらに一時間レッスンをしてから銭湯へ行き、寝る準備に入った。俺は外で冷たい風を浴びることにした。
「あっプロデューサーさん!ここにいたんですね!」
「未来か。ここ寒いぞ?」
「いいんです。プロデューサーさんとお話したかったから...寒っ!」
未来はこの寒さに関わらず寝間着だけで来ていた。なにやってんだか、そう思ってコートを貸す。
「えへへ、ありがとうございます」
「全く、それで話って?」
「あぁ、そうでしたね。実は、プロデューサーさんにお礼がしたくって...」
「俺にか?」
「はい!い~っちばん最初の頃からずっと、私たちをここまで連れて行ってくれて、ありがとうございます!」
それはライブ直前に聞きたかったけど、そんなことされたら涙でエクスデスが一本育ちそうになるからこのタイミングで助かった。
「なんだよ改まって。それくらいプロデューサーなら当然だって!」
「そうですけど、それでもお礼を言いたくって」
「そっか。なら受け取っておくよ。どういたしまして」
なんでこう、夜のテンションっていやに素直になっちゃうんだろうな。
「でも、だからといってライブでは気を抜くなよ?」
「分かってますよ~、でへへ~。プロデューサーさんも、しっかり気を抜かないでくださいね?」
「
「...はい!よろしくお願いしまーす!」
気の抜けた返事の仕方だけど、その語気は確かに決意の固まった様子がうかがえる。
風は冷たく、強い向かい風だ。でも、これくらいじゃなきゃ楽しくないしな!
いかがでしたでしょうか?
今更ですが百合子のP呼びって「プロデューサーさん」だったことに気づきました。ここはバッツが最初に会った百合子との縁だかなんだかってことでお許しを。
次回、最終回!乙女ストーム!の単独ライブ当日。ここまで頑張ったから後は全てぶつけるだけ!そして...
感想、誤字脱字報告等いただけると幸いです!