ヤンデレ魔王に追い回される日々   作:パ〜ム油

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視点は変わってヴァール国国王のヘルガ・ヴァールのお話です。
次のエピソードに繋がるのでどうぞお楽しみください〜。


王子編
王の苦難(その1)


僕はヘルガ・ヴァール。

ただの子供…いいや、人間界でも大きな大陸のうち2割ほども勢力を占めるヴァール国の王だ。

 

けれど僕は自分をこの国の王だと思ったことはない。

なぜなら。

「王よ、貴族による予算評議会の国家予算振り分け…もとい、軍事費拡張、貴族への慰謝料の増減などの案がまとまりました、お時間のある時にでも目を通しておいていただきたい」

貴族のトップたる男が玉座に座らされた僕に言う。

口調こそ丁寧ではあるけれど、国の評議会に王を出す制度を廃止させて実質的な僕の地位を貴族たちに移行させた男だ。

しかし、いや、だからこそ僕にはこの答えしかできない。

「分かった、下がっていい」

「はっ…」

 

 

この国は腐っている。

 

 

貴族は自分たちの私服を肥やし、今日どんな美味しい物を食べようかどんな美しい服を着ようか、そんなことしか頭にないヤツらだ。

 

国民はそんな貴族に反乱する気を失い、毎日毎日パンの一切れで争って水の一滴で血を流す。

 

けれど僕には何もできはしない。

玉座の後ろに立つ摂政、酒を酌み交わして暴れまわりながら会議する貴族たち、そして僕の部屋の周りを警護という名の監視を貴族に言われるがまま強める騎士たち。

僕は断言できる。

この国は衰退する一方だ。

僕に貴族たちを震え上がらせるだけの力があれば、摂政を操るだけの口の上手さがあれば、騎士を退かせるだけの摂政の部屋の金庫に保管された賄賂を自由に使えるだけの賢さがあれば。

 

そんな後悔を述べていても仕方がない。

だから僕はこうして少しでも苦痛を和らげるために、摂政や貴族から「お情け」で与えられるお堅い本の考え方をする。

自分の心なんてとうに捨てた。

ただ、油断して僕に見え透いた欲望を晒す人々が見える、誰よりも全てを理解できる立場で衰退する国を眺める優越感に浸る。

僕はそうしていた。

あの時までは。

 

 

 

魔王によると思われる単独大量殺人事件。

あの日僕は震えていた。

殺される恐怖ではない。

囚人、役人含む数百人を惨殺してみせるその圧倒的な力に興奮を覚えざるを得なかったのだ。

その顔を見たわけではない。

しかし、たしかにその時、忌むべき存在である「魔王」が僕の心を否が応でも昂らせたのだ。

 

 

 

勇者を取り戻すために勇者の出身の村に派遣された精鋭…といっても貴族出身の騎士たち数名を返り討ちにした事件。

勇者は、魔王は魔力を封じられてもなお騎士たちをぶち抜いてみせたそうだ。

僕は我慢ができなくなって、ついに摂政に尋ねた。

「なあマザク、ハザラの街のように僕たちの国も魔族と親交を持つべきではないのかい?」

「王様、それは王が気にすることではございません、王は今こそ大事な時…お勉強をすれば、いかにそれが愚かな考えであるかもお分かりになるでしょう」

その慇懃無礼な態度に、つい僕は反論してしまう。

「ふっ…愚かか、僕が…少なくともマザク、君より僕は賢いと思うけどね」

しかし摂政の男は怯むことも怒り出すこともしない。

「神はこう言っております「無知とは人の中でも最も恐るるべき災いとも言える、無知な者はみな等しく愚か、そこに身分の違いは存在しない」と…お分かりいただけましたか?」

卑怯な手だ。

ヴァール国の宗派であるグルヴ教というのは、簡単に言えば王家の取り扱い説明書だ。

貴族の作り出したマニュアルで、その言葉を引用すれば形だけはグルヴ教国であるヴァールの国の王たる者に言うことを聞かせることができる。

 

そして、もっと恐ろしい記述もある。

 

「死とは安息でありそれは非常に尊い。死に恐怖を感じるは即ち凡人である。」

 

この記述の指し示すところは。

「凡人ではない王ならば、死を偉大に感じるだろう」

ということだ。

 

これが僕に諭されるとき、僕はこの玉座やこの国というスケールではない、もっともっと遠いところへ行くのだろう。

 

 

 

ただ生きるだけの僕がいつものように閉ざされた窓から外を眺めていた時のこと。

がこんっ!とバルコニーに何かが落ちた。

生き物ではなくもっと硬い質感の。

「…骨?」

人の頭骨だった。

それを見た僕は。

 

歓喜した。

 

人の骨をこの高さまで投げ上げることなど人の力では不可能、そして投石機のような物を準備したならその時点で用意した国民は騎士に八つ裂きにされる。

つまり、この頭骨は人ならざる者からのプレゼントだ。

たとえそれが死のメッセージであったとしても構わない。

 

僕は生きる価値も刺激も感じたことはない。

最後にこんなイベントがあったのなら、それはそれで嬉しいことじゃないか。

 

 

 

予感は的中した。

 

僕は死ぬのだ。

 

 

ある日目を覚ますと、摂政が床に倒れていた。

血の気の引いた顔から既に死んでからかなりの時間が経ったことがうかがえる。

そして何より興奮をかき立てたのは。

赤い鎌を持って黒いローブに身を包んだ「人ならざる者」がこちらを見つめていたからだ。

 

「あなたは僕を殺しに来たんですか?」

「いいや…そうしてもいいのだがある頼みからそれはできない」

「頼み?」

「ついて来い、私には分かるぞ…お前はここから出たいのだろう?ぴっちりと矯正された魂が火遊びを求めているのだろう?」

す…と黒い手袋に包まれた手が差し出される。

 

断る理由は無かった。

 

僕はその、氷のように冷たい手を握った。

 

 

 

 

アシンの日記

今日ユーリ君に言われた通りの仕事をした。

一人子供をそれらしく誘拐してこい、なんて依頼でユーリ君の身体30分触りたい放題!

やるしかなかったよね、うん。

匂いクンカクンカしてぺろぺろ舐めました。とても官能的かつ充実した一日であったと思います。

また来るのが楽しみすぎる。

あと魔王城に届けたついでにユーリ君のおぱんつとハンカチをいただいてきました。

とても嬉しかったです。

 

それにしてもエメちゃんは何考えてるんだろね?

人間界の王子を捕らえて何になるのかって話。

けどね、エメちゃんにも手紙書いたけど、あの子はきっと殺されても文句ひとつ言わないよ。

あの子の魂は薄っぺらかった。

普通の人よりずっと欲も満足感も幸せも悲しみも何もない魂だった。

あ、摂政の魂戻すの忘れてた。




一風変わったテイストになっただけにヘタクソさが浮き彫りになったと思います、ハイ。
また新たな敵が出てくるかも…?
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