ヤンデレ魔王に追い回される日々   作:パ〜ム油

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それぞれの行動によって一国を落とすことにしたヘルガ達。
作戦開始です。


王の苦難(その4)

「ユーリ、使節からの返事が返ってきました」

魔王が俺の入っている風呂に乱入するなりそう告げた。

「…エメ、その報告は今、しかも素っ裸で、俺の風呂に飛び込んで来てまでしないといけないことなのか?」

「さあ?そういう難しい議題は裸で語り合って決めましょうか♪さあさあ、私の匂いをすりこんであげますね〜」

「どこ触って…!こら、や…やめ…」

するとまた扉が開き。

「ユーリ君…お背中お流しします♪」

アシンさん(素っ裸)が入ってきた。

「あれ?アシちゃん?さっきの食事に入っていた毒性マンドラゴラは食べなかったんですか?」

「エメちゃんこそお部屋の前のギロチンに引っかからなかったんだね…私は残念だよ」

「そもそもアシちゃんがここにいる必要はもう無くなりました、羊羹ハウスにでも帰ってユーリのパンツを送り返す荷造りでもしてなさい」

「ユーリ君のおパンツは家宝だよ…というかこの前エメちゃんの汚い部屋の押入れにユーリ君の髪の毛の入った瓶があったよ?しかも…2年前の日付のついた」

「はっ…にわかにはユーリの髪の毛のツヤが分からないようですね…さっさと帰ったらどうです?」

「ストーカーは嫌われるよ…私は正々堂々ユーリ君とちゅっちゅするもんね」

むにむに、もにもに、ぽよんぽよん。

肌色で柔らかい天国。

 

いや、こんなことをしている場合じゃなかった。

「二人とも!やめろ!」

「「はいっ!」」

「のぼせる前に出よう、な?また後でケンカはすればいいから」

「「はーい♡」」

やれやれ…アシンさんが来てからこの調子だ。

ま、俺も二人を統御できるようになってきつつあるし、最近は構わなくなってきたけれど。

「アシちゃん?私の洗濯物に呪いかけてませんか?それと呪怨針の仕込みもありますが」

「エメちゃん…いくらなんでも脱衣所に対神用の消滅魔法はどうかと思うよ?」

 

「…二人とも、こっちに頭を出しなさい」

「「はいっ♡」」

「「いたっ!」」

「これに懲りたら、今後大それたことはしないk」

「はぁはぁ…ユーリに叩かれた♡」

「うひひひ…ユーリ君にたんこぶ作ってもらった♪」

 

俺は湯上りと謎の感情によりぶっ倒れた。

嬉々として裸の俺を部屋に運び込もうとする二人を見つけたウルスラに助けてもらわなければ、命はなかっただろう。

 

 

 

「こほん、簡潔に説明するとですね…魔物は門番に多少の威嚇をされただけで、使節ということを伝えると大臣並みの待遇を受けたそうです」

「…本当か?国のでっち上げみたいなことじゃ…」

「いいえ、私は本人を観察していましたが、本当に手厚いもてなしを受けていました、特にマザクとかいう摂政はかなりフレンドリーでしたよ」

するとヘルガが疑念の表情を浮かべた。

「マザクが公務の場に一人で出てきたんですか?そんなはずは…」

「何か思い当たることでもあるのか?」

「マザクは基本的には僕の後ろに立って指令を下していましたし、謁見や諸国民への公務、見舞いなどには全く顔を出すことはありませんでした…」

魔王は目を細めて魔物からの報告書らしき紙束を置いた。

「…マザクという男、あなたが睨んだ通りだと思います…ただの人間にしてはどこかがおかしい…」

「単なる肥え太った貴族ではないでしょう、しかし、使節の派遣程度では見抜くことはできなかったようですね…突撃してみないと分からない、といったところでしょうか」

「よし、分かった…エメは報告書とヘルガの記憶とを擦り合わせてなるべく多く内部の地図や資料を作っておいてくれ」

「わかりました!」

「はい、了解です」

 

魔王からの報告を聞く限りでは、王国の兵士や騎士は見たことのない上級魔物が「使節」としてやって来たから中に迎え入れた、ということになる。

しかし、あまりに慣れたようなやり方で魔物を接待するマザクという男…その真相を探るためにも城に突っ込む作戦を練らなくてはいけない。

 

そのために俺は彼に連絡を取った。

 

喫茶「むーばー」

「悪いなヘイジ…急な呼び出しで」

ヘイジはまた少し老けたように見える。しかし衰えを感じさせない身体を鎧ごと揺らして答えた。

「なんの、勇者殿の願いとあらばすぐにでも駆けつけるでござる…そちらの奥方は?」

「アシンと言います…よろしく」

「これはどうも、ヘイジ・カドマツでござる、今後もよろしく」

アシンさんは俺と始めて出会った時のように無表情かつ冷たい瞳で挨拶した。

ヘイジはぎこちないが優しく笑って挨拶する。

「ええと…早速本題に入りたいんだけど…」

「何の相談でござるか?」

 

「ヴァール国の城を開城させたいんだ、訳は後で説明する…ヘイジの知り合いにスラムに通じてる人間はいないか?」

 

「き、急に何を言い出すかと思えば…スラムに住む友人もいるにはいるが…しかし、スラムの連中で王国騎士団と戦おうとは無謀ですぞ」

「ああ…戦術はスラムの連中に死なない程度に暴れてもらって、その隙に俺達が忍び込むような感じだ」

するとヘイジは俯いてぽつりぽつりと言った。

「うむ…理由は聞かないとしても、恐らくスラムの人々は拙者の紹介あってもそれほど働きはしないと思うのでござる…」

「え?…そりゃまた、どうして?」

「スラムは職にあぶれた者の溜まり場…そして彼らがそこを安住の地とする以上、スラムに危険が及ぶほどの大仕事はかなりの対価がないと動いてはくれないでござる…」

「…そうか」

あまりの正論に口をつぐむとアシンさんが喋り出した。

「かなりの対価というのは…お金のことですか?」

「各々望む物は違うと思われるが…恐らくは金と住処と職になるでござる、500人を超えるスラムの人々全員に用意するとなると…」

 

「そちらの要求と都合は分かりました…全て支払いますので助っ人を頼むと話は通せますか?」

 

「「!?」」

アシンさんの突飛な一言に俺もヘイジも目をまん丸にしてしまう。

「す、全て払うと言っても…ざっと見積もって200万ドレンはかかるでござる!そんな簡単に言って信じられるとは…」

するとアシンさんは背筋を凍らせるような瞳でヘイジを真っ直ぐに見た。

ヘイジの体が少し震えたように見えた。

「500万ドレン払いましょう、不要ならもっと…この場に貴方が呼ばれたのはユーリィ様が貴方のパイプ役としての能力を買ったからです、自信がないのでしたらどうぞご退席ください」

あまりにも高圧的な言い方。

それでは呼び出されたヘイジの立つ瀬がない。

「そんな物言いないだろう、元はと言えば俺がスラムに出向いて説得するだけの力がないから…」

「勇者殿!拙者は腑抜けておった!」

がたん!とヘイジが立ち上がる。

「!?」

「ヘイジ・カドマツ、命に代えてもこの使命をやり遂げるでござる!どうか一任してくだされ!」

「え、あの、ヘイジさん」

「ユーリィ様は貴方に任せると仰っています…しっかりと任務を遂行するように」

「了解でござる!」

言うなりお茶代(の数倍の額)を置いて店から出て行くヘイジ。

「な、何が起きたんだ…」

「人に仕えていないと生きていけないタイプの人なんだよ…いい友達がいるね、ユーリ君」

「ど、どうも…?あ、それと何百万ドレンは誰が支払うんだ?」

「ああそれは…エメちゃんにツケといて」

「…」

「ユーリ君の冷たい視線…大好き♡」

 

 

「はァ!?500万ドレン!?魔界大戦の賠償金の20分の1以上じゃないですか!なんでそんな約束したんですか!アシちゃんの馬鹿!」

「魔界大戦で得た法外なお金だって元を辿ればヴァール国のお金だったじゃない…還元すると思えば軽い軽い」

「人ごとだと思って…魔王家だっていつまでもお金持ちじゃないんだからね、二度とそんなことを言わないように!」

「はいはい…うるっさいなあエメちゃんは」

「なんですって?だいたいアシちゃんは昔から…」

 

 

俺は攻め落とす過程をヘルガと話し合いながら紙にまとめた。

500万ドレンはヘルガの手から決行日に直接スラムの人々に前払いで渡す算段だ。

ヘルガの顔を見ればきっと協力してくれるだろう。

あとはヘイジの技量次第。

 

「あの…ユーリィさん、一ついいですか?」

「ん?なんだ?」

「決行の日を5日後にしてほしいんです」

「5日後?なんでまた」

「その日は父が亡くなった…いえ、殺された日、その日にクーデターを起こしたいんです」

ヘルガの目に悲しみと怒りと、そして希望を感じた。

複雑な感情が混ざりあったもので、しかし決していい感情とは言えないが、それでも出会った頃の彼よりずっと人間らしかった。

「分かった…少しはいい表情するようになったな」

「あ、あはは…なんかその皮肉ったような褒め方、父を思い出しますよ…」

「そりゃ嬉しいもんだ、決行日までに体壊したりするなよ、俺もそろそろ寝るから…おやすみ」

「おやすみなさい」

扉を開ける。

ついつい父親気分になってしまったが、魔王と中々子供が生まれないからだろうか。

「ユーリ♡おかえりなさい♡先っぽだけヤりましょ〜♡」

「ユーリ君…お疲れ様、お姉さんと一緒に寝よっか」

 

いいや、もうすぐできてもおかしくないな。




なんだかんだで使いこなせば超有能な魔王と死神。
次の次あたりからは侵攻スタートになりますね、次の章から登場するヒロインもお楽しみに!

もうちょい頑張って頻度あげよう…。
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