ヤンデレ魔王に追い回される日々   作:パ〜ム油

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ついにヴァール国地下に侵入!
新しいヒロイン登場回でございます。

関係ないですが章をまとめました。
少しは見やすくなったかしら。


王の苦難(その7)

ひんやりとした地下に足を踏み入れる。

俺、ヘルガ、魔王の順番に歩いているため、前はともかく背後からの襲撃はまずあり得ないだろう。

 

「…こんな空間が…地下に…」

たしかに地下は明らかに異質だった。

今まで旅してきたどんな場所とも違う感覚。

弾性のある塊、鉄でできた細長いパイプや丸っこい缶、どれもこれも見たことのない物ばかり。

と、その時。

 

「っ…!?」

「ユーリ?何かあったんですか?」

 

魔王が手のひらから出している光では照らせる範囲に限りがある。

俺は視界の悪い足元の何かを蹴飛ばしてしまった。

 

「これ…首…か?」

そこにあったのは真っ白な人間の頭部だった。

「ユーリ、よく見てください、この頭は骨でもないのに白く…しかも眼球らしき何かがはめ込んであります」

「一体全体これはなんなんだ?」

 

恐らく先代の王であるクライムが、機械を用いて人間を作ろうとしていたのだろう。

歩いて行く内にそう思った。

奥に進むにつれ、機械の置いてある乱雑さは増し、その中には武器のようなものも増えた。

 

ヘルガが筒を拾ってまじまじと見る。

「鉄の玉をいくつも高速で打ち出す仕掛けのようですね…こんな物を人に当てたら…アオイモムシに食べ尽くされた葉っぱみたいになってしまいます…」

「…あの男も、こういった武装を持って抵抗する可能性もあります、とにかく深追いせずに、慎重に行きましょう」

 

 

中はまるで迷路だった。

しかし、行き止まりというものはないようで、蜘蛛の巣のように張り巡らされた廊下を歩き通した。

 

 

「…ここ」

「妙ですね…ドアノブも錆びていません」

俺たちが立ち止まったのは、侵入して50分ほど歩き回った後に見つけた、蜘蛛の巣の端の部屋だった。

「行きますか…」

「全員、俺の後ろに続いて入ってくれ」

「ま、待ってください、僕が前に行けばマザクは攻撃してこないかもしれませんし…」

「ここは戦力的に考えて私が行くべきです」

「リーダーは俺だぞ」

部屋の前でわあわあと押し問答すること10分間。

 

「だいたい!あなたたちはいい年こいてイチャッイチャッイチャッイチャッと!見てる側の身にもなってください!」

「は?クソガキにはユーリの良さが分からないようですね、これだから乳臭い男は」

「ええい、とにかく!俺が前に行く!いいな!それと俺たち二人は夫婦なんだから、イチャイチャしてもいいだろ!」

「さすがユーリ♪」

「う…」

 

 

「よし…いくぞ…」

ドアノブを静かにひねり、突撃する。

そこにいたのはマザク…ではなく、うつぶせに倒れた人間…いいや、人間を象ったロボットだった。

白い女性的な体の線に青いラインの入ったボディだけが落ちており、頭部と脚部は存在しない。

「…これ、さっき見たものよりも完成度が高いですね…もしかしてマザクがこれを…?」

「いや…接合の具合なんかはさっきのと全く同じだ…劣化具合もこの部屋の中自体が密封されてるからか、他の機材と変わらない…」

「ふ、随分ともったいぶるものですね…また扉がありますよ…それと、棒状の何かも」

魔王が指差したものは、黒い円筒型の何かだった。

中心にボタンがついている。

「押すぞ…いいな…?」

静かにボタンを押す。

すると。

 

『諸君に告ぐ、これ以上私を深追いするつもりならばこちらにも考えがある。

ここは私の城だということを忘れないでもらおう。

黙って回れ右するのなら、君たちの命は奪わないでおいてやるが…扉を開けたなら、君たちは二度と日の目を見ることはないと思っておいてほしい。

 

私の死はここの崩壊と同じことだ。』

 

マザクの声でのメッセージが流れる。

「…マザク」

「行く…か?」

「むしろ、行かない以外に選択はありませんね」

 

 

勢いよく扉を開け放ち、剣の柄を握りつつ部屋に飛び込む。

 

そこには、光るパネルを背にしてゆったりと腰かけてこちらを見るマザクと、部屋の端には先ほどの白いボディに脚部と頭部を付けた、完全体のような人型ロボットが放置されていた。

 

「…さて、この扉を開けたということは、死の覚悟ができたということですね?」

「マザク、もう諦めろ、お前の逃げ道はどこにも残されてはいないんだ、僕の口から言わせてもらう、投降しろ」

護身用ナイフを手に詰め寄るヘルガ。

魔王はこっそりと首を吹っ飛ばすための魔法の準備をしていたようだが、マザクの話は聞いておきたいので手を握って制する。

「ふ、ふふ…そこにあるガラクタ…白いお人形は、この部屋にあった死体…クライムの造り出した最後の機械でしょうね」

「最後の機械…?まだ完成もしていないだろう」

「その通り、しかし私はこの光る壁から色々な情報を抜き出しているのです、今は壊れてしまいそうで指一本触れることはできませんが、しかし全てを理解した暁には…」

「そいつを完成させようって言うのか?」

「ご明察」

 

このまま会話で応酬していてもラチがあかない。

剣を抜く。

「マザク、俺たちはそれを止めるためにやって来たんだよ、なんとしてもアンタを止めなきゃならない」

「それは難しい相談ですな…言っておきますが…あなたたちがここに入って来た時点で、もう私の勝ちは確定しているのです」

マザクが光るパネルに手をかざす。

「なに?」

 

「こういうのはいかがです?」

 

バシャッ!

「…!?」

天井にある蜂の巣のような穴から、青い液体が俺に降りかかる。

「ユーリ!…ユーリに何をかけた!?」

魔王がつめ寄ろうとするが、手で制する。

「遅効性の毒液ですよ…ま、あえてそれ以上言いませんが」

「毒液をかけたって交渉に進展はないぞ、従わないのなら俺が捕獲するまでだ」

毒液をかけられたと言うのに、俺の意識は全くの正常だった。

嘘かもしれないし、本当に毒なのかもしれない。

ただ、今はそんなことを気にしている場合ではない。

「ふ、構いませんとも、全ては整って…」

 

「なら、遠慮なく刺すぞ」

 

剣を下腹部に突き立てる。

位置的には腎臓の辺りだろうか。

「が…ぅ!」

パネルから手を離して腹を抱えるマザク。

「奥の手はどうした?勝ちとやらは?」

顔をあげさせて睨みつけると、マザクは笑い出した。

 

「言ったでしょう?ここは私の城だと」

 

次の瞬間、けたたましい警報音が鳴り響く。

 

『緊急ー緊急ー緊急コードの入力により本施設は466個全ての爆弾を作動させ、証拠隠滅を行います』

 

 

「ッ!逃げないと!エメラルさん、ユーリィさん!出口へ!」

「エメ!ヘルガを連れて早く逃げろ!」

「ユーリは!?ユーリはどうするつもりですか!?」

「まだやることがあるんだ!一刻を争う、必ず帰るから早く逃げるんだ!」

「…!」

「行け!」

「必ず…ですよ」

「ユーリィさん!?」

魔王は少しだけ迷った様子を見せたが、脱出魔法を使うには時間が無さすぎる、おまけに俺の強情さも知っての上だったのだろう。

 

まだ俺の方へ呼びかけるヘルガを連れて出て行った。

 

「さて、マザク、予告なく爆破されず、こうしてアナウンスで危機感を煽るということは、止める手立てがあるんだろう!教えろ!」

胸ぐらを掴んで剣を目にあてがう。

「くく、たとえあなたの推測が正しかったとしても、私がヘラヘラと喋ると思いますか?」

「…」

光るパネルのある壁に叩きつける。

「このまま爆破はありえない、俺たちを追い払うための作戦か何かか…あるいは追い払った後に爆破して全員潰そうって魂胆だろう、そうはさせない…」

その時、パネルから音声が流れた。

 

『ーコード受付完了ー爆破の決行ボタンを押してください』

 

「!?」

見ると、マザクは手を後ろに回して光るパネルに何かを入力したようだった。

「それが管制塔か…!?」

「ふ…終わりだ!何もかも!全ての知の富は私とともに滅ぶのだ!」

「やめろぉぉ!」

ボタンに手が触れる。

その時。

 

 

「ー起動ーTC06が異常時より起動しましたーこれより不要パーツの削除を始めますー」

 

部屋の端に転がっていた白いロボットが起き上がり、腕をマザクに向ける。

マザクはあっけに取られた様子だ。

「な…なんだ…?なぜ今になってコイツが起動した?自爆回路によって電力供給が…?」

次の瞬間。

 

バババババンッ!

 

「ひッ…い、いぎ…ぎッ!」

 

バンッ!ガシャッ…ダダダダ!

 

「ぁ…」

 

マザクが血を吹き出して転げ飛んだ。

ハスのように円筒に8つの穴が空いた腕をしまい、通常の人間の手らしいマニピュレータを手にアタッチメントさせて白いロボットはこちらを見た。

 

「な…なんだ…っ?俺も…殺すのか…?」

 

すると青い目がチカチカとピンクに点滅した。

 

「ー不可解なコードー不可解なコードのアクセスを拒否しますー不可解なコードのアクセスを拒否することを拒否しますー不可解なコードのアクセスを拒否することを拒否することを拒否しますー不可解なコードのアクセスを拒否することを拒否することを拒否することを拒否します…」

 

一人で謎の言葉を発し続ける白いロボット。

逃げるなら今がチャンス、そう思って歩き出したその瞬間。

 

バシュゥ!

体の関節や頭部の穴から煙を吐き出した。

 

「ー恋ーTC06は己の感情に従いますー対象の捕獲を行いますー」

 

「…え、捕獲?」

 

グンッ!とあり得ない加速で突進してくる白いロボット…もとい、恐らく呼称はTC06。

腕をいっぱいに広げての突撃をかわすと、壁に激突して砂埃…というより岩雪崩を起こした。

 

「今のうちに……あ…れ?」

 

足元がおぼつかない。

頭も痛いし、めまいまで起きてきた。

 

「さっきの…毒液…?」

 

跪いた俺の肩に、ガシャ、と手が置かれる。

 

「ー捕獲ー捕獲を完了しましたー続いて行動呼称の省略の後に連行へと移行しますー」

 

すると俺の顔に、TC06は黒くて丸っこいモニターの顔を近づける。

青かった目はピンク色になっている。

 

「キスでもするつもり…か…?はは、口が無いじゃないか…」

ニヤリと笑ってみせると。

 

「ー捕縛ー麻酔による対象の捕縛を決行しますー」

 

しゃこっ、と口元にあたる部分が開く。

そこには、肉感やぬめり、匂いまでもが再現…いや、完全に人間のそれの「口」があった。

 

舌が異常に長くて、3本あることを除いては。

 

「んぐゥ!?んむッ!んー!ん!」

キス、というよりも荒々しくて、口の中が舌で蹂躙されて削り取られそうなキスをされる。

 

「ー放出ー麻酔放出しますー」

 

二本の舌にガッチリと舌をホールドされ、口内を舐めまわされつつ、もう一本の舌が喉の方まで滑り込み。

 

ブシュゥ!

 

 

なにかを放出し、その後意識が薄れていった。

 

 

 

「ー捕獲完了ーダーリンを捕獲しましたー」

「ー訂正ーダーリンではなく呼称は人間でしたー」

「ー訂正ー人間ではなく呼称はダーリンですー」

「ー問題発生ー自我の分裂を確認ー恋を削除しますー」

「ー問題発生ー恋を削除できませんでしたー肥大化していきますー」

 

 

「ー訂正完了ーダーリンを愛の巣へ運びますー」




新たなヤンデレっ娘は最強の機械っ娘。
機械も一目惚れさせる男の夢〜ユーリィ〜。

なかなかイメージしにくいと思いますが、TC06の体は高身長のスレンダーなお姉さんで、ディズニーのドロッセルの顔の部分が黒いモニターっぽくなって、そこに目とかのランプが付いてるようなイメージです。

(わかりにくっ。
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