彼が(ヤンデレ)ロボットを作るに至った経緯です。
俺は王族に生まれた。
この大陸にごまんといる人の中の一人でも、そのステータスを持つだけで道行く民がひれ伏した。
彼らは決して俺を畏れているのでも、敬っているわけでもない。
彼らが畏れ敬うのは俺の「たまたま」強かった先祖。
たまたま力に恵まれて、たまたま財力があり、たまたまその流れに乗ることができた者。
そんな人間がおこがましくも大勢の人間の上に立つべきではないと、俺は思う。
「おお!クライム、そんなに本を読み込んで!お前も18になって王子としての自覚が芽生えてきたのだな」
「お父様、これは王になるための勉強も兼ねての趣味です…ただ、勉強すればするほど僕は疑問に思います」
「どうした?何でも言ってみろ」
「なぜ、お父様のような人間がこの国の王なのですか?」
「…なに?」
「お父様は人格者ではありません、僕が仲良くしていたスラム育ちの娘との仲を引き裂いて許嫁を探しています」
「…あんな娘はいかん、スラムなど下賤の」
「それに、お父様はお母様と仲がよくはありません、もっと言うのならお母様の家も現在は失脚間近だ、あなたは王家の看板のために人生を捨てたのです」
「僕はそんな生き方はしたくはない、それとも、お父様はそんなくだらない生き方で楽しいの」
「分かった、もういい」
「……クライム、お前の読んでいる本はな、機械工学のはるかに進んだ海の向こうで書かれたものだ」
「…」
「そこでだ、お前も留学をしてみないか、そうすればその考え方も変わるだろう」
「僕を死んだことにして弟に政権を継がせるつもりですか?しかし弟も病弱ですが」
「………ふ、思えば、あの女の腹から生まれたお前は、妾の子よりも可愛げのない子供に育ったものよ」
「…」
「お前の前で臣下の首を刎ねた時が懐かしいなあ、4歳のお前は何が起きたか分からず震えていた」
「僕を、殺すのですか?」
「お前なら分かるだろう?」
「そうですね、たしかにその通りです」
「…拳銃は作るのが大変だったなあ、親父を殺してもそれほどスッとしないし、やるんじゃなかった」
「ま、留学には行ってみるか、機械工学とやらにも興味もあることだし」
「スイ、迎えに来たよ、俺と一緒に行こう」
「…く、クライム?アンタ、なんでスラムに…!?留学したって噂が…それに一緒にってどういう…」
「今が城への帰りさ、そして君は今日から王女だ!もちろん親御さんも城に部屋を設けてあるから!」
「え、ちょ、どういう…!?」
「「「クライム様!スイ様!ばんざい!ご結婚おめでとうございます!」」」
「あなた…私、幸せよ、こうやって貴方と結婚して、スラムのみんなに好かれて、子供までお腹に…」
「お、おい泣くなって…」
「ふふ…でも…ほんとに幸せ…」
「よし!今日は飲んで飲んで飲みまくれ!酒代は全部貴族持ちで払わせるから!」
「く、クライム様、ちょっとそれは」
「脱税をこの前正してやったというのに、昨日まーた悪いことしてたなあ…額は大したことないが、公に知られたら火炙りになるぞ?」
「喜んでお支払いします」
「おしゃ!飲め!食え!」
「お、おおお王子様が!」
「ふわッ!?寝てた…で、なんだ?落ち着いて話せ!」
「王子様がご出生です!女王様もご無事です!」
「…よっしゃあ!」
「あ、クライム様!まだ医師に確認を…!」
「どけどけ!妻の顔が見たいんだよ俺は!」
「ん…もう、もしかしてずっと廊下で待ってたの?」
「おう、ちょっと寝ちまったけどな…子供見たよ…俺に似てハンサムだ」
「…疲れた、ちょっと寝ていいかしら」
「大歓迎だが、タイミングに悪意を感じる」
「ふふ…」
「欲しいものとかあったら何でも言えよな」
「そうね…欲しいもの…」
「2年前誕生日忘れたのは悪かった、あれの償いも込めて何でも取り寄せてみせるから」
「…も」
「え?」
「子供、ほしいかな」
「えっ」
「えっ」
「い、いや、その、一緒に寝ると、その、次の日の朝腰が痛いし、あとイく時無意識かもだけど首に噛み付くから跡がつk」
「叶えてくれるの?ありがとう♡」
「え、あの、スイさん」
「産んだあとが塞がったら覚えておいてね♡」
「…いてて」
「スイ、大丈夫か?ハルクの時よりも痛そうだけど」
「ははうえ?お薬いる?」
「ありがとうハルク…でも大丈夫、こんな痛み、全然気にならないから」
「本当か?何かやってほしいことがあったら」
「いいのよ、ちょっと風邪気味なのかも、もう寝るわね」
「…ん、おやすみ」
「おやすみなさい!ははうえ!元気にね!」
「ハルクもね、おやすみ…」
「ちちうえ、ははうえはどこ?子供は産まれた?」
「…」
「いもうとは?おとうとは?」
「母上はな、遠いところへ行ったんだ」
「遠いところ?」
「そうだ、安らかな顔で笑って…娘ももっと大きくなったらアイツにそっくりだったろうなぁ…」
「二人とも、いないの?」
「…そう、そうだ、もういない…さよならだ」
「…」
「く、クライム様、ボグトの王家がお嫁をこちらに嫁がせたいとのことで…」
「黙れ、俺はしばらく部屋で公務だけする、遺骨と仕事の書類とメシしか持ってくるなよ」
「ちちうえ?」
「そ、そんな!ご子息はどうなさいます!」
「ハルク、16歳になったら俺の部屋に来い、伝えなきゃいけないことがある」
「…うん」
「クライム様!」
「来た、か…大きくなったな」
「父さん、話したいことがたくさんあるんだ」
「いいや、それは聞けない、やりたいことを完成させるなら、あまりに俺には時間が足りないんだ」
「じゃあ、なんで僕をここに呼んだんだよ!」
「この王冠を、お前に渡す」
「…」
「戴冠式はできないが…しかし、俺のやっていることが完全にできたのなら、きっとお前にも話す」
「分からないよ、父さん、なんでそうなったんだよ」
「俺から話すことはもうない…いい王になれよ、俺はいつでもお前を見守っているから…」
「父さん!開けてよ!父さんっ!」
「俺たちの娘を、お前の分身を、必ず作り出すからな」
「…兵器なんて作るつもりはない、が、動力区間のモーターが兵器を運用を前提としている以上は…こうするしかあるまいて」
「なあ、スイ、お前の顔が思い出せない、俺はどうしてこうなってしまったんだ…叶うことなら今すぐ骨壷も叩き割って、お前を出してやりたいよ」
「スイ、今日な、血を吐いた、水銀の使いすぎかもしれんな、娘のお前は機械だろうと俺は人間…敵わないよ」
「…眠い、ついに、俺の体も…?」
「電子頭脳に全ては打ち込んだ…お前自身の記憶こそ入っていないが…お前がどういう行動をするか、こいつは45finモーターAIで解析して……いかんいかん、機械に没頭しているとお前は構ってほしくて怒っていたな」
「頭部は…お前とは違う形にしたよ、お前はもうここにはいないんだからな…娘も俺みたいなハンサムになったやもしれん…あとは…これを付ける…だけだ」
「綺麗だ…ふ、お前は娘になんて付けるつもりだったっけかな…」
「この子はテール・クロウム・ヴァール…だったな、お前の地方じゃ、名前は3つに分かれるんだっけ…はは、こんな文献を探すのに2時間もかかってしまった」
「…スイよ、カンツ・ヘルネ・スイ…娘の名前をここに刻もうと思ったが…しかし俺にはそんな体力も残ってはいないみたいだ」
「TC…とだけつけよう、イニシャルさ…ウチのVを付けたら、どうせ王家の物にされてしまうし…誕生日は娘もお前も6日だったな、あの時は忘れちまって悪かった…」
「お前が0番目の俺の娘、そして6日に生まれたテール・クロウムだ、なに、ひとりぼっちなわけじゃない…誰かが発見して、このシステムを使用するまでは眠っていてくれ」
「…おやすみ」
俺の物語はここで終わるが、しかし俺たちの娘はきっとこれからも生き続ける。
今行くよ。
スイ。
TC06誕生秘話でした。
王家の嫁に迎えに来てもらいた(ry。