今回は神様の関わる話となると思われます(ネタバレ。
それはそうとUA10000突破です。
おありがとうございます。
思えば書き始めてかなり経ちますが、皆さまのご支援と暖かいコメント、評価に支えられてきました。
これからもリクエスト、指摘、批判、コメントにでもお寄せくださると嬉しいです。
ではでは、新章お楽しみください。
神光(その1)
「エメちゃん…ユーリ君」
ある死神は、魔界にある魔王城で魔王と勇者の様子をじっと見ていた。
二人とも身体中痛々しく血の滲んだ包帯が巻かれ、勇者は苦悶の表情のまま、かすれたうなり声が漏れることもある。
しかし、二人ともまだ目は覚ましていない。
「私はずっとずっと待ってる…二人が目覚めるまでずっと」
二人の頰を撫でてまたイスに座る。
思えば待ち続けて3日ほど経つ。
すっかり冬の空気となった外は、寒々しい風が強く吹いていた。
「ひとつ…神の話をしてあげる」
丁度その時、ある神は人間の女を連れて馬車に乗っていた。
その人間は500万ドレン(高級地の家が4軒買えるほどのお金)で、護衛として雇われた。
鉄砲を使った暗殺を生業とする女で、その手にかけた人数は100を超えるとすら言われる腕前。
その女は突然の話題に眉をひそめた。
「…は?」
誰が引いているのか、どこに向かうのかも知らされていない馬車の中で、そんなことを言われてはおかしく思うのも当然だ。
しかし神…時を止めることのできる欲の神は話し続けた。
「神というのは、ざっと4つに分けられるの」
「あたしゃ無教養だもんで、教会だって『仕事』の対象を追って入ったことが何度かあるだけさ」
「それは信仰上の神、今私が話しているのはこの世…それだけじゃない、神の世界に確かに存在している本物の神様のこと」
「…ぷっ、ははッ!そりゃあ愉快!神様がいると思ってんだな!いい歳こいて!」
「ふふ、私の話は覚えておいた方がいい、直前になって心の準備をするのでは遅いから…」
「?」
ある神の世界で、一人(?)の女神は猛烈な怒りから身体を打ち震わせていた。
なぜなら、毎晩毎晩聴こえてくる隣の家からの声。
「らめェ♡そこダメだからぁ♡あんっ♡イくっ…神様ぁ♡イっちゃいますぅ♡きゃん…っ♡だめ…もうダメぇぇ♡」
バンッ!
金槌を刃に振るう。
キィンッ…。
澄んだ音が響き渡るが、その反響が消えることもないままに雑音にかき消される。
「きゃあっ♡そこは違う穴ですよぉ♡んぁ♡ダメダメ♡すごいのきちゃうからっ♡許してぇ♡」
「…殺す、殺す殺す殺す殺す殺す殺す、殺すッ!」
鉄の女神であるパストスは、鍛えている最中の神の刃もそれに使っている神の槌も投げ出して家を飛び出た。
お隣の扉を開ける。
「ふひひ♡ここはどうかなっ♡それそれ♡」
「らめらめぇ♡そこはらめぇ♡もう返してくだしゃい♡」
「死ね」
ゴンッ!と人間の女と裸で『言葉通り』乳繰り合っている女神の頭をぶん殴る。
このクラスの神のなかでは怪力で知られるパストスの一撃に、薬の女神メデンは吹き飛ばされた。
女の顔の紅潮が冷める。
「ぇ…メデン様…?」
「この贄の女も叩き潰してやろうかぁ…?」
「ったくもう…パストスクンはいつも血の気の多いこと…やっぱりヒンソーな身体の子は身体と同じく気持ちに余裕がないのかな」
渾身の一撃を直に受けたにも関わらず、無傷でスタスタと大きな胸を揺らして歩いてくるメデン。
血管がはち切れそうなくらいに顔の真っ赤なパストスはとっっっっても自己主張の薄い胸を張って言う。
「生贄の女連れ込むのは好きにすりゃいいけどさァ!毎晩毎晩アンアンアンアン…」
「混ざりたいなら言ってくれればよかったのに♡きゃるんっ☆」
「……………」
「パストスクンの相手をしてたらこの娘の仕込み時間が減るじゃないか」
「どうせまた快楽漬けにして薬の実験台だろ?」
「え…?め、メデン様、本当ですか?」
「しッ!……パストスクンは間が悪いなぁ…また仕込み直しじゃないか…」
「嫌…嫌!嫌ぁぁぁ……ぁ♡」
「っせえな、お前は信仰してくれる人間がいるからいいけど、私のとこに生贄なんざ来やしねぇ」
「ふ、そりゃパストスクンが生きたまま鉄に人間を練りこんだ人錬鉄なんか作るからだよ」
「なんだと?お前のおかしな薬よかマシだ、それに人錬鉄の刀の切れ味と言ったらもう…!山脈とかもダダッ!と切れるんだぜ!」
「はぁ…パストスクンはこう…子供っぽいんだよ」
「お前のそれは間違った大人だろうが!」
「うッるさいなぁ…もういいから、明日おまんじゅうでもあげるし、帰りな帰りな」
「お前の薬臭いまんじゅうは爆発したりするし…」
「ほら、仕込みの邪魔、帰った帰った」
女の嬌声を背に、なんだか上手く誤魔化されたようなそうでもないような気がしながら、パストスは家に帰った。
そして所は馬車に戻り。
「神というのは、詳しく言えば全能神、副神、一次神、二次神という分類ができる」
「…はぁ、そんで?」
「全能神というのは言わずもがな、全能の神様、この世を作り、観察してらっしゃる神様のこと」
「名前は確か…ピウラーだっけ」
「そう、人間界の言葉で言うのならピウラー様が全能神のこと」
「ほー…宗教のご高説もヒマだし聞いてやろうじゃないの」
「そして副神、これは既に数の決まった神様のこと」
「数が決まった?他のは決まってないのか?」
「それはまた後で言う、ざっと言えばこの世界にある基本的な物を司る神…水、火、土、風の四元素の神様のこと」
「ほぉ…その神様があたしらの生活を日々支えてくれてんのか?」
「さあ?私もそんなレベルの神様と会ったことはないから分からない」
「……」
「全能神様の次に偉い神様、滅多に顔は出さないの」
「何がなんだか…」
「一次神は人間の統治、信仰上で生まれた神様のこと」
「…?」
「…たとえば、人が生きる上で避けられない死…それを司る死神が例に挙げられる、その他に太陽神、月の神…色々ある」
「要するに、人間の認識できる物の神様ってことか?」
「ええ、中々頭が回る子」
「…褒められてるのか貶されてるのか」
「そして最後の二次神、これは一次神によって力を与えられた、極めて人間に近い神様のこと」
「その線引きは何なんだよ?」
「時間を止める、なんて芸当はいくら高名な魔法使いでも不可能に近いよね」
「…らしいな」
「それができる人間は、もはや人間ではないから神として区分される」
「へぇ…宗教ってのはおかしな話だな」
そして、馬車が止まる。
「…やけに暑いな…馬車だから熱がこもってるのか?」
「出ましょう、ここが目的地」
その暗殺者の女が見たのは、煮えたぎるマグマだった。
「…!?」
「あなたはここから、私と一緒に遠いところへ行くの」
女の目に凶暴な光が宿る。
「心中なら他を当たりな、あたしはまだまだ生きないといけないからな」
「何も殺すとは言っていない」
「こんな場所に連れてきて、あんな報酬を支払っておいて…ただの護衛の仕事じゃないだろう」
「ふふっ…そうだよ、けれどあなたに拒否権は無い」
「いいや?あるね」
「…」
「コレだよッ!」
ドドンッ!
まるで連射式のライフルのような音を立てて女の持つ拳銃が二連続で火を噴く。
腰のホルスターに手を伸ばし、拳銃を抜き、構え、引き金を二連続で引く。
この間は1秒もかからなかっただろう。
だが、硝煙の向こうに女はいない。
「人に近いといえど、神は神、見くびらないでほしい」
背後から声。
そして次の瞬間には、もう銃は手の中に無かった。
「ぁ…?」
後頭部にある冷たい感触。
火薬の匂い。
「ゲームオーバー」
「…か、神、なのか、あんた?」
「そう、そう言うのが正しい」
「…ッ、なんで、あたしを狙う」
「あなたのような、人をたくさん殺してきた邪悪な魂の持ち主というのは、贄にぴったり」
「…嘘だったのか、護衛もなにもかも」
「そう」
「…500万ドレンはなんなんだよ、あれは」
「私が創り出したお金、心配しなくても本物となにも変わらない」
「そうじゃねぇ…!初めからこうして連れて来れば…!」
「…あなたの命は500万ドレンよりも高いの?私は道理を大切にする、もっと欲しいなら」
「人の命が金で買えると思ってんのか!?」
「その稼業でご飯を食べてきたあなたが、それを言える?」
「ッ……」
「ついてきて、殺しはしないから」
マグマに向かって歩く道中、女は自分の乗ってきた乗り物は馬車などではないことに気がつく。
馬も何も引っ張っていない、ただの車だったのだ。
どうして動いていたのかなど分からない。
そんなことを考えられる暇はなかった。
「行こっか…神世界に」
神と人間はマグマに飛び込んだ。
「アシ…ち……ゃ…」
「エメちゃん…?」
その日、魔王は目を覚ました。
こんこんと眠り続ける勇者の側で、死神は魔王を抱きしめて涙を流して喜んだ。
魔王☆復活!
そして新キャラ二人出てきましたね。
ニコラの口調忘れたので次回までには勉強してきます。