ヤンデレ魔王に追い回される日々   作:パ〜ム油

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遅くなってしまいました…すみません。
いよいよ侵攻開始です、神光だけn(殴。


神光(その3)

「…」

今日もユーリは眠っている。

顔色はいい、体も温かい、クインちゃんの言う生体反応とやらもある。

けれどやはり、目は覚まさない。

「ユーリ、今日はアシちゃんが一度家に帰って、溜めた仕事をしてくるそうです」

ユーリの髪を撫でる。

「私はユーリに嫌われないようにしっかり仕事をこなしていますよ、アシちゃんも今晩には帰ってくると思いますし…」

 

ユーリが目覚めなくても、私は話しかけて、栄養注入術式を新しくし、服を変える。

 

と、その時、扉がノックされた。

「はい」

「エメラル様…」

ウルスラが若干焦ったような様子で入ってくる。

「…先ほど洗濯をしようとしたのですが、これがユーリィ様の衣服のポケットに入っていました」

ウルスラが差し出した物には見覚えがあった。

クリスマスのあの日を思い出す。

 

「……金時計」

 

 

 

「あァ…こりゃ綺麗な人錬鉄だ…」

鉄の神パストスは、うっとりと手に持った刀を見ていた。

魔力を少し通せば白い光を放ち、透き通った色の人錬鉄製の刀。

「…コイツで誰を斬ればいいんだ?」

「言った通り、あなたには護衛を務めてもらいます…早速ですが、人間界へ向かいましょう」

「…ふーん」

ブンッ!と鋭い音を立てて、一度刀を振って鞘に戻す。

「まぁ…適当な人間を辻斬りしてみればいいかぁ…ひひ、久しぶりの人錬鉄の刀…楽しみだなぁ…」

 

「行きましょう、人間界で少し準備をした後に『彼』を奪いに行くこととします」

 

 

 

「…間違いありません、この刻印はあの泥棒猫の物です」

私は、ウルスラと共にユーリのポケットに入っていた金時計を『あの時』の金時計と照合していた。

 

結果は一致。

ぴたりと同じ時計。

 

「そうですか…エメラル様、これは何のメッセージだと受け取るべきなのでしょうか…ニコラとやらはユーリィ様の体内にいるはず…」

「なんとも言えませんが…ただユーリの体からあの女が抜け出た可能性も視野に入れなくてはいけません」

「クインさんによれば、緑色のあの『吸収』の魔力は今も健在だと聞きますが」

 

「ずっと不可解に思っていました」

 

「…?」

「あの時、TC06とやらが自爆を試みた時のことです」

「それがどうかされましたか?」

「ユーリはあの女を取り込んでから時を止める力が付いたと言っていましたし、現にそれを自由に行使することが可能なのは確認しています」

「…」

「ユーリは無鉄砲で一途で、私をかばったのもユーリの性格を考えたなら不思議ではありませんが、しかしいくら監禁されていたとは言え、ノーガードで私をかばって自爆を受けたとは思えないのです」

「いつものユーリィ様なら咄嗟に時を止めて、被害を食い止めたと言うのですか?」

「アシちゃんからお留守番の時の話も聞きました、どうやらユーリが怪我した際にユーリはきっちりと力を使っていた様子があった、と」

「…そうですか、しかしまた彼女が来るとしてもどのように対策すればいいものか…」

 

 

 

「…うーむ……」

その頃ヘイジは、鎧をまとって剣を腰から下げてケーキ屋で甘い香りのケーキと睨めっこしていた。

「お…お客様、ご注文はお決まりでしょうか?」

若い男が引きつった笑いを向けて問いかける。

「いや…焼き菓子にしようか…うーむ…」

 

ヘイジは勇者が大怪我をしたと聞き、ヴァール国での勇者への裏切り行為(未遂)などの礼も兼ねて、甘いものでも持って謝りに行こうと思っているのである。

 

また、単なるお見舞いやお詫びというわけでもない。

 

ヘイジの腹に植え付けられた刻印。

おびただしい魔力を放つそれは、ヘイジを一時的に不死にするものであった。

ヘイジは不死など望んではいない。

ただ、魔王に「裏切りを気に病んでセップク?でもされたら困りますからね、あなたの命なんてどうでもいいですが、ユーリの悲しむ顔なんて見たくはありませんので」と言われて付けられたものだ。

ヘイジはあれから滝修行により、心がさらに澄んだと自覚している。

しかし、目の前のケーキ一つ選べない。

 

「…失礼する、毎度毎度すまん」

 

そして今日もケーキ屋を後にする。

外はすっかり暗くなっていて、冷ややかな風が今にも雪を運んできそうだ。

 

しかし、その暗闇に潜むソレをヘイジは感じ取った。

 

「ひひッ!死ねっ!人錬鉄の刀で斬られることを光栄に思えよぉ!」

赤い髪をした女が、暗闇からおどり出るや否や目にも留まらぬ速さで袈裟斬りをかましてきたのだ。

「こ…のっ…外道!辻斬りとは卑怯なり!」

ヘイジはあまりの速さから目に見えない刀を、熟練の剣さばきで感覚のみで受け流した。

 

そのはずだった。

 

「そんな雑な剣で防げるわけねぇだろ…♪死ねッ!血撒き散らせよぉ!」

ピンッ…!

鈍い音も何もなく、ただ鈴の鳴ったような美しい音で刀と鎧と、そしてヘイジの体は両断された。

 

パチンっ!

と、鋭い音で鞘に刀が納められる。

 

だが、ヘイジの二つに分かたれた体は淡い黄色の光を放って再結合しつつあった。

まるで何もなかったかのようにヘイジは立ち上がり、襲撃者の顔を眺める。

 

「…ゾンビではなさそうだが…お前……」

「さて…ただの刀でもあるまい、武人たるもの闇討ちしたとなれば覚悟はできておろうな?」

 

折れた剣を向けるヘイジ。

その赤髪の女は、切り裂いたように笑って名乗り、そして。

 

「アタシはパストス…名前くらい聞いたことあるかなぁ?アンタらとは何ランクも違う、カミサマさ」

 

静かな戦いが始まった。

 

 

 

「…何やってるの、あの女」

ケーキ屋の屋根に立ち、ケーキ屋の店番からプレゼントさせたケーキを頬張ってパストスと人ならざる者との戦いを見つめているニコラ。

「飽きた、これ捨てておきなさい」

「はい」

暗示にかかったように素直に言うことを聞く若者にケーキを押し付け、ぼーっと月を眺める。

 

黄色い口をニヤリと開いた月を見ながら、「彼」を思い出して火照った頰をぺちぺちと叩く。

 

「…すぐにでも迎えに行くから、待ってて」




あかん…ヤンデレ短編集書きたくて悶々としてたらこんな遅くなってもうた…こんなこと読者さんに言えない…。
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