ヤンデレ魔王に追い回される日々   作:パ〜ム油

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はい。
遅くなりました。
風邪引いたり丸ぼうろ食べてたりしたら遅くなりました。

ごめんなさい。


神光(その4)

「チッ…!なんなんだよ!」

夜の街で、ヘイジはズタズタに切り裂かれては蘇り、を繰り返し続けていた。

さすがのパストスもゾンビとはまた違う『不死身』に不信感を抱きつつあるのだ。

「人間がなんでこんな精度の高い不死の魔法を持ってやがる…クソッ!」

「もういいでしょう、行きましょう」

ぽん、と肩に手を置いたニコラ。

戦いを邪魔されたパストスは強烈な殺意を滲ませるが、しかし刀を作る交換条件である限りは従わざるを得ないのだ。

「…ああ、分かったよ」

「…どこへ向かうつもりでござるか?」

「あなたには関係のないこと、それに知ったのなら迷わず止めに入られるでしょう」

 

風が頬を撫でる。

次の瞬間には、二人の神の姿はなかった。

 

 

 

「ユーリ…今日はハザラの街で大きなセールがあったみたいですよ」

寝ている勇者の横に腰掛けて手を握っている魔王。

やはり勇者の目は開かない。

かすかな寝息が聞こえるだけだ。

「あはは、覚えていますか?大衆食堂に行った時のこと…ウルスラが昔凝っていた健康食品とやらは味が薄くていけません、ガンガン油を使ったご飯もいいですよね」

最近、勇者は寝返りをうつ頻度も多くなった。

あと少しで回復するのかもしれない。

そう信じて魔王は声を毎日毎日、数時間もかけ続ける。

 

と、乱暴に扉が開いた。

 

「エメラル様!」

「…ウルスラ、あなたにもノックを忘れることがあるんですね」

血相を変えたウルスラが部屋の中に飛び込んできたのだ。

いつも礼儀や外聞を重んじるウルスラがノックも尋ねもせずに部屋に入ってくるなどというのは、ここ数百年も生きてきてはじめてのことだった。

「それで?ウルスラがそんなに慌てることなんて滅多にないでしょう、クインちゃんが部屋を吹き飛ばしましたか?」

 

「し、下に…ニコラ様と、もう一人が」

「…はい?」

 

 

 

「よぉよぉ、アンタが魔王様か?」

「…お久しぶり」

 

魔王城の接客の席にどっかりと腰掛けたパストスは、不躾にもテーブルの上に足を乗せていた。

そしてうっすらと笑いを浮かべたニコラがとなりに座っている。

 

「ウルスラ、お茶を出して差し上げなさい」

「……」

「ウルスラ」

「分かりました」

 

かつかつ、とウルスラの足音が遠ざかったのを確認した後に魔王が口を開いた。

 

「何の用ですか?ユーリに見捨てられたクソ女が」

 

しかしニコラの反応は魔王の予想したものとは大きく異なったものだった。

 

「ふうん…私はこのまま帰ってもいいの、けれど『彼』のことを目覚めさせたいのならば私の話を聞くべきだと思う」

「…!」

 

「端的に言う、『彼』はこのままじゃ目覚めない」

 

 

 

「お待たせしました、お茶を持って参りました」

こんこんこん、とノックの後に一拍おいて扉が開く。

そこには。

 

魔王の喉元に刀をひたりと当てているパストス。

それも構わない勢いでニコラに摑みかかる魔王。

そして薄ら笑いを浮かべたニコラ。

 

それを見たウルスラは迷わずお茶を床に捨てて体に魔力を張り巡らせる。

 

「…何をなさっているのですか?」

とてつもない殺意を孕んだ一言にパストスが目を向ける。

「へっ、見りゃ分かんだろ?魔王サマがニコラに掴みかかってきたから、護衛のアタシが護ったんだよ」

「エメラル様」

「…殺す」

「エメラル様、私も席に加わってもよろしいですか?」

「……」

何も言わずにニコラを睨みつける魔王に代わって、ニコラが興味なさげに答えた。

「私の方は構わない、どうぞ?」

 

 

「彼は脳に大きなダメージを負ってしまった、だから、このままここで寝かせていても意識を取り戻すことはない」

 

 

ニコラの話はこうだった。

 

まずニコラ自身が彼の元から抜け出たタイミングでは、勇者の思考能力は残されていた。

だから会話を交わすこともできたがその直後、抜け出るわずかに前のことだった。

「彼の脳に残された機能は体の制御、魔力精製と記憶能力と思考能力」

「それが通常のことでしょう」

「通常のこと、と言えるのは彼が意識を保ったことを前提に話しているから」

勇者は意識を取り戻す能力を失ってしまった。

脳へのダメージは治ることはなく、治療不可能だという。

 

 

「…ユーリが脳へのダメージを負ったのは百歩譲って信じることとしても、それがなぜ…」

 

「なぜあなたにユーリを引き渡さないといけないのですか?それに、あなたに預けたならユーリが意識を取り戻すなんて保証もないでしょう」

 

話の問題はここ。

 

「もしも私に引き渡してくれたのなら、2週間ほどで彼の頭を全て完治させてあげようと言っているの、何が不満なの?」

 

「あなたの能力は分かっています、ひとたびユーリの身柄を渡してしまえば時を止めて逃げることなどいくらでもできる」

 

「お待ちください、エメラル様」

「なんですか?ウルスラ」

「この方たちはユーリィ様を時を止めてさらうこともできたにもかかわらず、こうして真っ正面から向かってきたのです」

「…」

 

「ちょっとは頭の働くヤツがいるじゃねえか」

「あなたは黙っていて、それとその態度は無礼」

 

「分かっています…そんなことは」

「ならば引き渡さない理由もないでしょう」

「ウルスラはなぜそう割り切れるのですか?ユーリは私の宝物なんです、一時的にでも手放すことはできません」

 

「宝物……分かった」

 

かたん、とニコラが立ち上がった。

そして言う。

 

「人錬鉄の刀を担保にする、そうすれば『彼』に見合うくらいの価値はあると思うの」

 

「「は?」」

パストスと魔王の二人が素っ頓狂な声を上げる。

 

「テメェがこれをアタシにくれるって言うから協力したんだよッ!それは約束が違う!」

「考えてみて、あなたは私より上位の神、殺そうと思えばいつでも簡単に殺すことができるのよ?」

「ユーリの命はそんななまくら刀なんかよりずっと上ですっ!」

「誰の刀がなまくらだぁ?喉掻っ切ってやろうか!?」

 

その激しい議論は2時間続いたという。




ヤンデレ短編集書きたい。
でもこっちの更新も疎かにしたくない。
あと企画倒れになりそう。

みんな!オラに元気を分けてくれ!
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