あ、あけましておめでとうございます…。
遅くなって申し訳ございません…。
俺は夢を見ていた。
ずいぶんと長い夢だったように思える。
今まで会って、話してきた人々。
母親、父親、村の人たち、王様、ハルカ、ヘイジ、ネミル…。
そして魔王、ウルスラ、マリンちゃん、ルビルさん…。
そんな人たちが、みんな集まって笑って話している。
俺はそこにはいない。
けれどそんな世界ができるのなら、その暁には俺はいなくなっても構わないと思う。
ここが夢だと俺は知っている。
この夢を現実に起こさなくてはいけない。
だから俺は目覚める日を待っている。
たとえずっと目覚めることはなかったとしても、それでも俺は意識が無くなるまで待ち続ける。
楽しそうに会話しているみんなを見ながら。
「治らなかったらただじゃおかない、はやく治療にかかって」
「パストスクンも厄介なのを連れてくるなぁ…なんでわざわざ人間なんかのための薬を作らなきゃいけないんだか」
「っせーな…いいからさっさと作れよ」
数日をかけて、ようやく神世界についたニコラ、パストス、そしてユーリィ。
道中で、ユーリィを無理やり犯そうとして馬車が火事寸前になったり、ごろつきに絡まれてキレたパストスが人間をブロックに解体したりと色々あった。
が、やっとのことで着いた神世界でも、やはりトラブルが起きてしまった。
いつものことではあるが、薬の神メデンは裸に白衣を着て人間の女と情事にふけっており、いきなり高度な薬の調合を求められても材料は足りないかもしれないと言うのだ。
「あなたの事情は関係ない、作ってもらう、あなたもこの人間の容態は分かるでしょう?」
「そうだなぁ…確かに脳にダメージがある、でもさ、それ以前に一つ質問いいかい?」
「構わない」
「この子、今すぐ殺した方がいいよ」
「…は?」
パストスは部屋の中の気温が一気に下がったように感じた。
ニコラは極めて冷静で、なおかつ煮えたぎる怒りを滲ませて問いかける。
「殺すとはどういうこと?」
「そのままの意味さ……この子は特殊だ、脆弱な人間に特別に「神」から与えられた力を持っているんだ」
「その何が問題なのか分からない、彼は確かに神ですらも吸収することができる、それは知っている」
「ピウラー様…全能神様は人と魔物とに平等に力を分配した、魔物の中でも強い力を持つ魔王に対抗できるよう、実力が拮抗して、絶滅を防ぐように勇者を作り出した」
「……」
「この子は勇者だよ、なのに魔物の側に付いていてはピウラー様の意思に反したことになる」
「何か問題か?」
「もしも魔物側が人間側への侵攻を開始した場合…人間は滅びてしまう、かといって勇者を人間側へまた与えるわけにもいかない」
「…」
メデンはイスに座り真っ白な袋に入った粉を渡した。
「私は責任を持たないぞ、この人間を生かすのは好きにするといい…でもそれはピウラー様のご意向ではない、裁きを受ける覚悟があるのなら…もう何も言わないよ」
そして、立ち上がって白衣を正すと奥の部屋へ飛んで行った。
「あぁんっ♡メデン様ダメぇ♡そっちはダメだってば♡」
「さてと…さっさと魔王城に届けに行くか」
パストスが息苦しさから解放され、伸びをしながら言った。
「………」
「悪いことは言わない」
「え?」
「コイツは吸収の魔力を持っているんだ、それは下手をすれば魔王以上の力を手に入れる可能性があるということだろ?」
「でもね、彼はそんなことをする人ではない」
「どうだかな」
ピリッとした空気がまた生まれる。
馬車の中はしばらく無言だった。
「…」
「ここだけの話な、ピウラー様は非常に感情的な方だと聞いてる」
「感情的?」
「人間界を創った時に、ピウラー様は自分の失敗作をそこに埋めたんだよ」
「失敗作…『なりそこない』が、人間界にあるの?」
「そ、アレは人じゃない、地下深くで眠りについているが…もしもアレが発掘でもされてみろ、人には持ち得ない強力な魔力と強靭な肉体、オマケにあの巨体だ」
「ピウラー様の不始末で、あの世界が滅ぶ?」
「そうなるな、ただしそれを狙っているとも見られる」
「……」
「ピウラー様の号令一つで人間界は滅ぼせる、もしも人間側が結託してコイツを守ってもな、無駄なんだよ」
「それでもお前は言えるのか?コイツが好きだと」
その昔、機械の天才クライム・ヴァールは留学中に書いたとみられる、ある遺跡に関する手記を残していた。
その手記は土に埋もれて隠されている。
私は機械工学チームと大喧嘩をして、グループから仲間はずれにされてしまった。
しかし、そのおかげで私はこの遺跡を見つけることができた。
とても古いが造りはこの国の城よりもしっかりとしている。
そもそも地下にこのような広大なホールを建造すること自体、まだ誰もやったことがないだろう。
長い長い階段を下った後、私は見つけたのだ。
人形のように四肢を力なく垂らした大きな「人間」を。
サイズは足も伸ばすと24mといったところか。
極めて機械的なものであるにも関わらず、しかし私はここに通い詰める内にこれが生き物であると気がついた。
恐るべきことだ。
今日私はヤツとコンタクトできた。
ヤツは一つだけの黄色い目で私を見た。
ヤツが私に敵対心を抱くのであれば、農家が葉につく幼虫をつぶすように私も捻り潰されるのだろう。
しかし、ヤツは立ち上がりすらしなかった。
駆動部におかしなところがあるのか、ギリギリと嫌な音を立てて足が震えていた。
明日部品を持ってきてやろう。
足はまるで精巧な機械細工のごとく入り組んだ骨と滑らかなパーツで構成されていた。
そこに恐る恐る入り、メモしながら修理した。
ヤツは喜んでいたようだ。
ホールの中で立ち上がり、目をちかちかと光らせた。
が、実際めちゃくちゃ怖かった。
デカくて死ぬかと思った。
遺跡を調べたまとめを書いておく。
・あれはゴーレムではない、血は通っておらず、機械のようなパーツも多いが立派な生き物だ。
・この遺跡は車の格納庫のようになっており、おそらくホールの頂点が開くようになっているのだ。誰がなんのためにそんな仕掛けを作ったのかは分からない。
・食堂の飯はまずい、特に今日のカレーは煮込みすぎたカエルの糞みたいな味だった。よくもまあみんなニコニコして食っていられ←書くとこ間違えた
・人の作ったものではないだろう。そんな形跡は全くないのだ。
・コイツ自体は気のいいやつだが、なにぶんできることが少なすぎる、頷くことやお辞儀、首を振ることを教えたが頭を壁にぶつけた。瓦礫で圧死するかと思った。
・言葉は喋れなさそうだ。口(?)の中も見せてもらったが、エネルギー管が大量に繋がれていただけ。戦闘用なのだろうか。
・おもな材質は石のようなものだろう。トンカチで叩くと少し削れたりもした。怒ったようでトンカチを踏み潰された。
明日でここを去らなくてはならない。
それを伝えると、言葉は理解できるのかゆっくりと頷いた。
もう来ることはないだろう。
彼が人に見つからないことを祈る。
戦闘になんて使えば、人を殺しすぎる兵器だ。
とても人の作ったものとは思えなかった。
新キャラ『なりそこない』登場(?)です。
今回は攫われたりはナシです。
次話で今回はおしまい。
次の章をお楽しみに!