ヤンデレ魔王に追い回される日々   作:パ〜ム油

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いよいよ全能神編です!
と、その前にもうちょい日常回が書きたかったので書きまする。


全能神編
全能神の憂鬱


「と、いうわけなのですよ〜」

 

甘ったるいロリボイスで目が覚めた。

ここは魔王城の二階にある、広い広い会議室。

イスが柔らかくてフカフカで広くて座り心地が良くて、ついつい寝てしまった。

 

「おはようございます♡ユーリの寝顔…ハァ…ハァ…」

隣の魔王は俺の寝顔でサカっているようだ。

 

「……」

後ろに座ったウルスラが痛々しい目でそれを見ている。

 

「で、ですよ〜、お分かりですか?」

そしてチョークを持って眼鏡をかけたクインちゃんが、何やら意味の分からない式や図、魔法の種類などについて記してある黒板の前でオドオドしている。

 

 

 

今日俺たちが、4時間に及ぶクイン大先生の講義を受けることになった経緯というのは「緑色の魔力」について、詳しいことが分かったとのことであったためだ。

 

俺の持つ緑色の魔力は相手の魔力や、時にはその存在自体を「吸収」してしまうものであると認識していた。

しかし、クインちゃんが言うには(後でウルスラが簡潔に話をまとめた資料によると)吸収というもの自体は、魔力の性質やその状況からくる結果の現象というだけであり、緑色の魔力単体で言うのならもっと複雑な役割を持っていると言うのだ。

 

 

「即ち、ユーリィ様が持つ緑色の魔力は相手をユーリィ様に近づけているのではありません、ユーリィ様が相手に近づいている、ということです」

 

例えばニコラを吸収したあの時。

あの時の俺は、ニコラの手助け無しでは時止めを発動できないものであると思っていた。

しかし、ニコラ自身は魔力を全く使っていないと言う。

そもそも魔力的存在として俺の中に吸収されたニコラは、時止めのような膨大な魔力を必要とする魔法は使えなかったであろう、と言うのだ。

ニコラがやっていたのは、緑色の魔力を時止めの方向に動かすための「魔力の流し方」を実践しただけ。

つまりそのコツさえ知れば、ニコラがいなくても時止めを使えるということになる。

 

道理で俺が時止めをする時には、ニコラの力を借りているにも関わらず世界が緑色の魔力に包まれるわけだ。

 

しかし、まだ疑問は残っている。

 

「ま、待ってくれ、吸収はどうなる?俺がニコラ…神に近いモノになったとしても、ニコラを吸収した説明にはならない!」

「それは簡単です、ユーリィ様の魔力で一時的に彼女は魔力に「分解」されました、∞の量を持つ緑色の魔力はそれを内包してしまったのです」

「……!」

つまり、と一拍おいてウルスラは口を開いた。

 

「緑色の魔力…その正体は『同化』と『分解』の効果を持つ、∞の量がある魔力なのです」

 

 

 

情報量が多すぎて、俺には意味が分からなかった。

しかし、クインちゃんやウルスラの言うことを信じるのならば、俺は神の中でも最高位にいる全能神に対してですらも、同等かあるいはそれ以上の立場になれるわけだ。

 

「……エメ」

「なんです?ユーリ」

「こういう魔力とかってさ…他にも持ってる魔族とか、それこそ神様とかはいないのか?」

「…聞いたことがありませんね、恐らくユーリは人間の中でのバグなのでしょう」

「バグ?」

「神は下界を統治しています、人や魔族を作ったのは彼らですから当たり前と言えば当たり前なのですが…しかしその能力は、一介の人間が持つものとしては……あまりに強大なのです」

「…ああ」

「神々がそれに危機感を抱いて手出しをしてこないのは、きっと神々もユーリの力が未知数であると、そう判断したからなのでしょう」

「…とんでもない事なんだな、これ」

「とんでもないですね、でもそんなユーリも愛してます♡」

「よ、よせよ…」

魔王の顔が近づいて来たその時だった。

 

「お話の途中です」

「「ごめんなさい」」

 

 

 

 

 

その頃神世界では、光の溢れるある場所で、火の神、水の神、土の神、風の神が円卓についていた。

 

目つきの悪い男神…火の神が言う。

「どうなってる!ただの勇者の人間ごとき、神に気安く接触したのならば殺してしまえば良いではないか!」

 

行儀良く座り、青いオーラを身に纏った女神、水の神が透き通った声を上げる。

「それができない…いえ、やりたくは無いからこうして私たちが招集されているのです、慎みなさい」

 

大きな身体を丸めるようにして話を聞いていた、屈強な身体付きの男神、土の神が重々しく言う。

「ピウラー様直々の招集命令だ………それに、この人間は俺たちから見ても特殊なことは確かだ」

 

ベール一枚に身を包んだ豊満な身体の女神、風の神が椅子をぐらぐらさせて言った。

「てかさー、これめっちゃイレギュラーじゃん?アタシらにもどうしようもできないのに、どーすんのさ」

 

 

各々がわぁわぁと騒ぐ中、円卓に光の矢が突き刺さった。

 

四人は一気に口を閉じ、辺りに緊張した空気が流れる。

 

「貴方達の戯れ合いが見たくて呼んだわけではないの、下らない雑音を立てないで欲しいものね」

 

「申し訳ありません…全能神様」

水の神が頭を下げる。

 

水の神の方から歩いて来た全能神は、つまらなそうに言い放った。

「貴方達が話し合って解決する問題なら、私だけでとっくに処理をしているわ、頭の悪いのは嫌いなの」

 

絹のような、それよりも白く輝くローブに身を包んだ女神は、副神達に薄く微笑みかけた。

 

 

「貴方達には協力を求めているの、「彼」を私の物にして、世界をもう一度安定させるための、ね」

 

 

 

 

 

そのころ、ある小さな教会に一人の賢者が座り、神に祈りを捧げていた。

ある人の無事と神のご加護を祈っていたのだが、次の瞬間、彼女の持つ杖が、ゴムが弾け飛ぶように吹き飛んだ。

 

「………勇者様…?」

 

賢者は勇者に買ってもらった杖を拾う。

 

その杖には、縦に力づくで切り裂いたようなヒビが入っていた。

 

 




短編をいくつか書いております。
気が向いたら是非お読みください。

短編書くのにハマっているのにいかんせん体力が…。
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