そしてまさかの…。
「ぅ…?」
薄い明かりに目を覚ます。寝ているのは豪奢なベッド。
辺りは黒を基調として整えられた、ホコリひとつない部屋だった。
そして、俺の顔を覗き込んでくる魔王が。
「お前…!」
「勇者様!」
ほぼ同時に口を開く。魔王は俺に馬乗りになって、抱きついてきた。
咄嗟のことで全く理解ができなかったが、このままではまずいのでとにかく暴れる。
「っ!離せよ!俺をどうするつもりだ!」
「あ、ご、ごめんなさい!勇者様には説明してませんでしたね」
ぱっと離れて、放った一言は、想像も付かない言葉だった。
「勇者様…いえ、ユーリィ・グレイ、私はあなたが、ずっとずっと大好きでした!結婚してください!」
「…!?」
なんで俺の名前を?
好き?結婚?
「…どういうこと?」
「私は今まで3人の勇者を葬ってきました、しかし、あなたを初めて遠視魔法で見た時に、私は感じたんですよ、あなたと私の間に繋がる赤い糸を!」
「赤い糸…?」
「そうです!あなたは私と結婚すべきです、ずっと前から、産まれた時から決まっているのです!」
「か、からかっているのか?」
「照れずともいいのに…勇者様ったら…」
勝手に頬を赤らめている。恐怖を超えて、狂気を感じる。
「結婚なんて、できない、俺とお前は戦うべきなんだよ!」
「そんなものどうでもいいでしょう?」
「どうでもいいっ…!?」
「あなたが人間界の腐れ国王に命令される筋合いはありません、私のお婿さんなんですから」
「…帰してくれ」
そう言った瞬間、周囲の空気が凍ったような感覚に襲われた。
「勇者様…いえ、ユーリィ…ユーリと呼びましょうか、ユーリ?何と仰いましたか?」
「だ、だから、人間界に帰してくr」
俺は最後まで言葉を続けられなかった。
俺の頭すれすれに魔王の拳が振るわれ、壁をへこませたからだ。
「ユーリ、あなたは人間界に居すぎて、心を蝕まれたのでしょう」
にっこりと、目以外で笑みを浮かべ、俺を壁に押し付ける。
これまで様々な魔物と戦ってきたが、下手するとオークよりももっと強い力だ。
「痛っ…」
「ユーリ、私と一緒に居ればあなたは、元の自分を取り戻せます」
「何が元の自分だよ…俺は、勇者だ!」
「ふ、ふふふ、あははは!」
急に狂笑しだした。
俺、殺される?
「何、笑って…」
「いいでしょう、ユーリ、あなたが勇者だというならば」
魔王が指を鳴らすと、黒い鎧に身を包んだダークエルフが俺の装備を持ってきた。
「私と、勝負です」
「勝ったら、いいのか?」
「勝ったらあなたは解放されます、負ければあなたは」
「お前と、結婚?」
「いえ、私に刃向かった罰として、少しの間、私専用奴隷にでもなってもらいますか」
この女は、おかしい。さっきまで告白されてたのに。
ただし、今は従う他ないだろう。
「分かった、受けて立とう」
きちんと戦うつもりなんて、毛頭無いけど。
そして俺と魔王は、魔王の間へ向かった。
次回はバトル…になるのかな?
魔王の奴隷とは恐ろしや…。