勇者は毎晩求めてくる魔王に耐えられるのか…?
「おはようございます!ユーリ!」
「…まだ寝かせてくれよ」
昨日、マリンちゃんに5回され、魔王に6回させられた。
腰痛がひどい。それとお腹が重い(マリンちゃんのせい)。
マリンちゃんは出すだけ出して、とっとと帰ってしまった。愛は本当にあるのだろうか…。
「さあ、起きないと、今日はベリ村まで行きますし」
魔王が俺の腰に手を当てて、治癒魔法を唱える。
一瞬魔王の手から優しい乳白色の光が出て、その瞬間に体がすっと軽くなる。便利な魔法もあるもんだ。
「さ、出発!」
魔王はいつも通り元気だ。おめでたいな。
「まあ、長居して野宿もアレだしな」
「野外も楽しいですし…私は別に…」
「よし行くぞ!」
先に部屋を出て行く。魔王がぱたぱたと後ろをついてくる。
今日は変な魔法道具屋とかにひっかからないといいけどなぁ。
宿の女主人は、昨日よりなんだかゲッソリしていた。
「…昨日は、お楽しみでしたね」
「ごめんなさい」
「ふふ、ユーリの喘ぎ声が聞こえちゃいましたかね♪」
魔王はやたら嬉しそうだ。どちらかといえば、昨晩喘いだのは魔王の方だった。
首輪のせいで魔王を襲う命令に俺が逆らえなかったからだ。
「道中お気をつけて」
「はーい、ありがとうございましたー」
魔王は当然のように腕を組んで歩き出す。たまにはいいものだ。
ハザラの街
境界の門
たくさんの兵士が門の近くに立っている。
ここは境界の門。その名の通り人間界と魔界を繋いでいる。
魔族は国に認められなくてはここをくぐれないが、人間に化けて入り、人間界で好き放題する魔物がいるために取り調べがかなり強化されているようだ。
「なあ魔王、この変装って魔法を解かれてもバレないよな?」
「魔法道具ですからね。そう簡単には壊れませんし」
俺たちの名前が兵士から呼ばれた。
「エメ・ラルス、ユー・レグン、こちらに」
偽名だ。ここからは魔王ではなくて、魔王が最初に名乗った「エメラル」から取った「エメ」と呼ぶことになる。
「書類に問題はない、門をくぐれ」
「ありがとうございます!」
ウルスラにお願いして偽造してもらったという個人証明書。精巧に出来ているとは思ったが、まさか、こうもスムーズに使えるとは。ウルスラの技量おそるべし。
青い光に満ちた門をくぐる。そして、次の瞬間。
人間界
境界の門
「ん、来たか、行け」
人間界の方はかなり適当なチェックだった。書類を見せたら、ほぼ見ないまますぐに通してくれた。
「ここが人間界…!」
目をキラキラさせた魔王は、とたとた走り回っている。
「転ぶなよー」
「空が青いですね!それにとても花とか動物がカラフルです!」
そういえば魔界の空は青というより紺だった。人間界のひとつひとつがこれまでの旅よりも、魔王には新鮮なんだろう。
「ここからベリ村まであとどれくらいですか?」
「3時間も歩けば着くはずだ」
てっきり不機嫌になるかと思えば、上機嫌で手を繋いできた。
「その間はユーリと二人きりですねっ!」
「そうだな、俺も久しぶりの人間界だし、満喫するぞー」
2時間後
魔王は木陰でぐったりしていた。
「まったく…あんなにはしゃぐからだぞ」
「すみません…」
熱中症だ。無理もない。こんな晴れた日に2時間、ろくに水も飲まずに走って喋っていたら疲れるだろう。
おまけにほとんど寝ていない。俺も眠いのは同じだ。
顔に眠いのが出ていたのだろうか。魔王がしなだれかかってきた。
「ユーリ、一緒にお昼寝しませんか?」
「でも、荷物とか盗まれたらさ…」
「平気ですよ、あんまり人も歩いてませんし」
魔王が手を握ってくる。俺も眠気がかなり出てきた。
「そうだな、少しだけ、寝るか」
「ユーリ、大好きです!」
その数分後には、木陰に寄り添って寝ている二人の商人の姿があった。
3時間後
ベリ村
「ふー、着きましたね!」
「ああ、懐かしいな…ここ…」
パーティで訪れたことのある村だ。そうだ、この辺で初めてドラゴン系統の魔物と戦ったっけなあ…。
「さ、町巡りです!」
「お、おいまお…エメ!」
そう呼んだ瞬間魔王がこけた。
「はう!ユーリにその名前で呼んでもらえる日が来るとは!これはいい予感がします!行きましょー!」
魔王は人間界に飽きることはなさそうだ。
久々に健全な移動編です。
勇者もかなり魔王に惚れ込んでますね。二人で木陰でお昼寝とか最高やないか…。