ヤンデレ魔王に追い回される日々   作:パ〜ム油

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ヴァールの城下町へ向かう勇者と魔王。
しかし、その水面下では人間の勇者奪還計画が遂行されているのでした。
あ、勇者視点!


新婚旅行(その7)

「あのー…ユーリ、怒ってますか?」

「別に、もういいからさ」

魔王が申し訳なさそうな顔で俺の後ろをぱたぱたと付いてくる。

今日はベリ村を出て、この国の中心部とも言えるヴァール城下町へと向かう。

しかし昨日、この旅で初めて魔王と喧嘩をした。

 

ヘイジに正体がバレた。

俺は逃げようとしたが、主に魔王のせいで逃げられず、ヘイジも混乱していたのだろう。剣を抜いて俺を止めようとした。

それを、魔王が見てしまった。

魔王はヘイジを苦しませて殺すために、腹に穴を開けた。その後、指を切り落とそうとした魔王を何とかなだめ、宿に連れて行った。

ヘイジはそこで倒れたまま、置いて行ってしまった。

彼は人間側でも数少ない俺の味方だ。彼がパーティのメンバーや人間たちに口を割ることはないだろう。

ただ、魔王が使ったのは高威力の魔法ではない。ありふれた魔法で、低音の炎を手に灯して、腕力のみで鎧と肉とを突き破ったのだ。オークでもそれほどの力には遠く及ばない。まして、下級の炎魔法を使う魔物にもそんな力はない。

彼の傷を見た者は、痛めつけるためだとすぐに分かる。それも尋常ならざる憎悪と力量によって、だ。

そこへきて、ヘイジが俺を捜していたということは、何らかの理由あってのことだろう。

ウルスラの書類か、あるいは誰かに宿の部屋の中での姿を見られたのか。とにかく、不審な点が見つかったのだと思う。

人間たちはこう考えるはずだ。

勇者か魔王か、とにかく上級の魔物が人間界に来ている。

と。

このままでは、じき見つかる。

それを魔王に話した。が、聞く耳を持たない。

「ユーリは何があっても守ります、脆弱な人間共のせいで新婚旅行が邪魔されるなんてあってはなりません!」

だそうだ。

 

「ユーリ、お願いですから、なにか言ってください…」

後ろで魔王が蚊の鳴くような声で話しかけてきている。俺と5分会話しないだけで泣きそうだ。

さすがにかわいそうになってきた。

「ちょっと考え事してただけだから、な?」

「ユーリ…ごめんなさい…」

ぐずぐずと泣いている。いつもこの調子ならもう少し楽なのに。とりあえず今は慰めるのが先だ。

「な?魔王、向こう着いたらまたご飯食べて一緒に添い寝してやるからさ」

「ありがとうございますぅ…」

手を繋いで歩いていると、検問が見えてきた。

心なしか、検問にはいつもより兵士が多い。

「止まれ」

「あ、書類はこれです」

「…ふむ、そうだ、ここでは荷物検査をする」

「え?あの、そんなの聞いてません」

「お上からのお達しだ、なんでも魔界が何か企んでいるそうでな、騎士様が一人重傷を負った」

「魔界はっ…その…」

魔王は魔界の企みだということを否定しようとしたようだ。しかし、俺が手を強く握るとすぐに黙った。

「…貴様、この剣はなんだ」

俺が肌身離さず持っていた勇者の剣。看板に見えるよう包装していたのだが、見つかってしまった。

「それは、その、魔界の市で売られていました物で…」

「ほう?中々変わったデザインじゃないか、一度見たら、忘れられないような、な」

足が震える。冷や汗が出る。

逃げ出したい。しかし、いつの間にか兵士に囲まれている。

その時、魔王が耳打ちしてきた。

「私が、全員殺します、隙を見せたらここから逃げてください」

「だめだ、そんなこと」

「このままではユーリが殺されます」

「俺一人のためになんで10人ほどもいる兵士が死なないといけないんだ、とにかく、ダメだ」

魔王はうつむいた。握った手は強く握って離さないまま。

その時、俺は考えていなかったのだ。

王国が、わずか一晩で勇者捜索のための強硬策の許可令を出していたことなんて。

そして、兵士が口を開き、大きな声で文書を読み上げた。

「ヴァール王第872の国令「人間界での勇者及び魔族の脅威に対する最低限の強硬的措置の行使における責任負担」より貴様を捕縛する」

 

兵士が俺に、一斉に鉄砲と剣を向ける。

魔王は、その言葉の意味が分からず、俺の首に剣が当てられるまで動けなかった。

「ユーリっ…!」

「エメ、手を出すな、いいから、俺は」

しかし魔王の耳には入っていないようだ。

「離さなければ、殺します…ッ!」

「ボロが出たな、呼び名はユーリ、か、よし、その態勢を崩さないままゆっくり早馬に乗せ、極秘牢に運べ」

「聞こえないなら…」

「妙なことをしてみろ、こいつの首が飛ぶぜ」

魔王とその兵士はしばらく睨み合っていた。

しかし、俺の方を向いて、俺の前で指輪をつけた手を小さく振った。

指輪は荷物検査のテーブルの上に置いたままだ。

「必ず、助けます、それまで生きていてください」

「…じゃあな、また、会おう」

「さっさと連れていけ」

そして俺は連行された。

鉄で固められた馬車に、手足を拘束されて詰め込まれる。

魔王はどうなるのだろうか。

これから俺は、どうされるのか。

指輪の無い今、俺は魔王との連絡手段は絶たれた。

 

こんなことなら、魔王ときちんと向き合って、いつ死んでもいいようにしておけばよかった。

後悔と不安が渦巻く。ああ、新婚旅行最低のイベントだ。




まさかの急展開…。
離れ離れになった二人はこれからどうするのでしょうか?
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