ヤンデレ魔王に追い回される日々   作:パ〜ム油

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牢から脱出した勇者。
ですが、魔王に会って無事でいられるのでしょうか。


新婚旅行(その10)

「久しぶりの外だ…」

涼しい夜風が気持ちいい。

8日ぶりだろうか。外に出るのは。

伸びをしているとエレナが肘で突いてきた。

「さっさと行くぞ」

「せっかちだなぁ」

「ですねぇ、なにかご飯でも食べてからでもいいじゃないですか」

「私はお前が外に出たいって言うから下着もコートも貸してやったんだ!従え!」

確かに恩人なので黙って従う。

魔王はあれから人を殺したりしたのだろうか。

会うのが怖い。

魔王と出会う前に魔王城に乗り込んだ時よりも怖い。

その時、遠くの方で轟音が聞こえ、赤い光と稲妻が見えた。

エレナはその音に驚いたようだ。

「今の光、なんだ?」

「…さあ、たぶん魔王だろう」

「じゃあ行きましょう!」

三人、音のする方へ走る。

近くに行くにつれて、空気中の魔力が濃くなっているのがわかった。肌がざわざわする。

「くそ、魔王…暴れないでくれ…」

「夫婦っていうよりは、飼い主とペットみたいな関係なんですね」

クインちゃんは結構キツいこと言う。間違ってはいないが。

そして刃がぶつかり合う音が聞こえた。激しい。これまで聞いたことのないような高音で、素早い音だ。

エレナが立ち止まる。

「…おい、ここからはお前が先に行け」

「ああ、あとは俺がやるから、隠れててくれ」

俺がやる、とは言ったが、暴れた魔王を取り押さえることは俺にはできない。

ただ魔王の、俺に対する怒りと悲しみを受け止めること、これからするのはそれだけだ。

「気をつけてくださいねー」

クインちゃんが手を振ってくれる。

そして俺は、音の聞こえる場所に踏み込んだ。

 

「なんでっ…わかってくれないんですか!?ウルスラの馬鹿!」

「止まってください!あれほど人間界で人を殺してはいけないと言ったでしょう!」

「ユーリが殺されたかもしれないんですよ!それを放っておけと言うなら、今すぐにウルスラだって斬ります!」

「っ…エメラル様、このままではユーリィ様の言っていた共存の願いは叶いませんよ!」

「それが、なんだって言うんですか!?ユーリは甘かった、それを許した私も甘すぎた!それだけでしょう!もう、邪魔をしないでください!」

「ぐッ…あ…!?」

そこでは、傷だらけのウルスラと魔王が互いに真剣で戦っていた。

いや、戦っているというより、魔王が大振りに振る剣をウルスラがひたすら受け止めている、という感じだ。

ウルスラは魔界大戦の時に着ていた青い魔力の脈がある鎧を纏っている。しかしそれも、魔力を循環させられないほどに痛めつけられ、青い光がたまに点滅するだけだ。

受け止められない剣閃は、少しずつウルスラの体の所々を切り裂いていた。

ウルスラは膝をついた拍子に俺を見つけたようで、目を見開いて何か叫ぼうとしたが、咳き込んで血を吐いた。

それを見た俺は、魔王を止めるより先にウルスラの方へ駆け寄った。

「ウルスラっ…!」

「ユーリィ様、私より、エメラル様、を…宥めてあげてください…」

「ユーリ…?ユーリなんですか!?」

魔王が剣を捨てて俺を抱きしめる。

「どこに…いたんですか?ずっと探してたんですからね…」

「…ごめん、一人にして」

「許しません、ずっと、これからずっと一緒に居ないと許しませんからね」

骨が折れるくらいの力だ。痛い。

けれど、魔王は震えていた。

泣いていた。

手を回して、抱きしめる。

「ごめんな」

謝罪の気持ちを言い表せない。こんなに思っているのに。

「よかった…!」

それから3時間ほど、俺と魔王はそこで抱き合い続けた。

魔王は終始、泣いていた。

 

3時間10分後

魔王と抱き合っているところに、ウルスラの声が飛んでくる。

「砂糖吐きそうなので、そろそろいいですか?」

「うぇ!?」

「ウルスラぁ…邪魔しないでくださいよ…」

上を見るとウルスラの傷は完治していた。

ただ鎧だけが弱々しく光り、ボロボロに切り裂かれたままだった。

「な、魔王、ここだとまた攫われるかもだし、戻ろう」

「…エメです」

「エメ、帰ろう?」

「はい!」

俺に一度キスすると、魔王は離れた。

ウルスラが近寄ってくる。

「それにしても、エメラル様にも見つからないような所からよく逃げ出せましたね」

「あ、その件でちょっと二人に紹介したい人がいるんだけど、さ」

「紹介?」

塀の方へ戻る。

そこにはむっつりしたエレナと顔が真っ赤のクインちゃんが。

「もういいぞ、出てきて」

「…見せつけてくれるな、人を3時間も待たせて」

「あ、あの、夫婦だから別にとやかく言わないですけど…お二人とも抱き着き方が、や、やらしい…です…」

「い、いいから、後で聞く」

 

事情を話すと、エメもウルスラも複雑そうな顔をしていた。

「ユーリ、また女の人を…」

「ごめんな、でもエレナが居なければ俺は…」

ウルスラが冷たい声で言う。

「たとえ刺されたとしても、ですか」

「っ、それは…」

エレナは魔界大戦で俺を刺した。それは事実だ。

逃亡に協力してくれたとしても、彼女たちが受け入れてくれるとは限らない。

「…頼む、スパイでも何でもないのは俺が保証するから」

その言葉で俺は、魔王の機嫌を損ねたようだ。

「私はどうでもいいですよ、その女が何者かなんて、とにかく私とユーリに危害を加えないなら好きにしてください」

ウルスラは少し考えて、言った。

「いいでしょう、では城に住んで、私と寝食を共にして、使用人として働いてもらいます」

「…ウルスラ」

「いいのか?」

「ただし、不審な行動をしたなら殺します、いいですね?」

「…ありがとう」

そこまで完全に空気だったクインちゃんが手を挙げた。

「私も魔界で開業したいですー」

「「「!?」」」

さすがのウルスラも戸惑って。

「ま、待ってください、そう簡単に人間を魔界で増やすわけにはいきません」

「ふふ、私だったらそのちょっと破れた鎧も修復できますよ」

そう言うとウルスラは唸って迷い始めた。

迷うこと20分。

「わかりました、ただし魔族に襲われたりしても知りませんよ?オークとかは柔らかい肉が大好きですから」

「べ、別に怖くないですー!」

 

そんなこんなで、新婚旅行は途中で挫折だ。

帰りはウルスラが魔法で作り出した馬車。

2つを、俺と魔王、ウルスラとクインちゃんとエレナで分けて使うことになった。

「ユーリぃ…もっと激しくしてくださいよぅ…」

「魔王っ…もう無理ッ…」

「じゃあ今日のお薬は「サキュバス印の腰が止まらなくなる超長持ち媚薬」でいきましょうか!」

「魔王、おい待てそれ…」

「ん?ユーリ、大丈夫ですか?ってえええ!?ちょ、大胆すぎますってばぁ♡」

1時間後

「魔王、愛してる…!」

「んぅ!ユーリ…!わ、私も愛してますけど、もうお腹がユーリので一杯なんです…!」

「ダメだ、俺をこんなにした魔王が悪いんだからな?」

「ん、待っ…あっ…♡だ、だめです…♡こんなに激しくしたら、んっ♡繋がってる音、聞こえちゃいますから」

「いいんだよ、愛し合うなってのが無理な話だから」

「っ…あっ♡や、だ、こんなはしたない声、みんなに聞かれちゃいます…♡」

 

「聞こえてるんだよ…あのバカップル…」

「また今日も眠れないんですか…」

「は、はわわ…えっちぃ声がどんどんおっきくなってます…」

「にしても激しすぎるな…ちょっと冷やかしに行かないか?」

「…寝ます」

「私には刺激強すぎますから…」

「ふーん?え…そっちの穴も使うの…?うわうわ…聞こえる…」

「壁に耳当てて盗み聞きする癖も、使用人は直しましょう」

「うう、えっちぃですよぅ…」

 

次の日、4人がフラフラ、1人がツヤツヤで魔界に辿り着くのは言うまでもないことである。




3000字超えてしまった…。
というかえっちぃ内容が大半ですねw。
削除されませんように…。
意外とムッツリなエレナさん。
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