勇者の経歴
10年前(5歳)
「お母さーん、ねえねえ、「ゆうしゃ」って何?」
「ゆうしゃ?ゆうしゃはねえ、強くて優しい人しかなれない、私たちみたいな人たちのリーダーみたいな人のことなのよ」
「へー!ぼくもゆうしゃになれる!?」
「そうねぇ…お母さんのお手伝いしたら、ゆうしゃに近づけるかもしれないねえ」
「やるやる!」
「じゃあまずお皿洗いを手伝ってね…」
8年前(7歳)
「…お母さん、ご飯できたよ」
「ごめんね…ユーリィ…こうやって世話かけちゃって…」
「お母さん、病院に行こうよ、5日間も熱が続いてるのがただの風邪なわけがないじゃないか」
「前も言ったでしょう?家にはそんなお金はないし、年を取ったら風邪だって治りにくくなるもんだから」
「…あのさ、俺の剣と盾と鎧、売ったら少しはお金になるから、それで病院に行こうよ」
「それはお父さんからもらった物でしょう?売ってしまったあと、お父さんが天国でどんな顔をしてると思う?」
「お父さんだって、お母さんが具合悪いのも嫌だろうし、それに、もしお父さんみたいに…その…死んだり、したら…」
「大丈夫、ユーリィはもう一人でも生きていけるから」
「なんだよ、それ、本当に死ぬつもり?」
「すぐによくなる、きっとね…」
7年前(8歳)
「ユーリィ…こっちに、きて…」
「…何?お母さん」
「あなたは、明日から勇者として、王宮の勇者決定試験を受けてきなさい…」
「え?で、でもお母さんは」
「私は、一人で平気だから…勇者の試験は…5年に一回だけなんだろう?今を逃したらもうチャンスはないし…ね?」
「お母さん、やせ我慢しないでいい、俺はここで農家として一生を過ごしてもいいんだ」
「最近は貴族様が何でも買い叩くからね…農家やって野菜とか鶏育てて、機織りして、それだけやってギリギリの生活なんだ…もう無理だよ…」
「でも、でもさ…」
「お父さんの剣と盾と鎧と、何よりその優しさと心があったら大丈夫だから、ね?」
「…また立派な勇者になったら、帰ってくるから」
「試験は1年間あるんだろ?焦らずに、周りに何を言われても耐えるんだよ、いいね?」
「絶対、1年先まで生きていてね?お母さん」
「約束するよ、私は約束は破らないからね」
「信じるよ、じゃあ…1年後にまた…」
「元気でやるんだよ」
6年前(9歳)
「ユーリィ・グレイ、メセタ・ベイクルス、カンティル・レジー以上3名に勇者の称号を与える」
「メセタ、試練は終わったけど、これからどうするんだ?」
「さあなあ、このまま衛兵として雇ってもらえるように、貴族様方に名前でも売るかね」
「今はそのまま衛兵になれるようなシステムじゃなくなったからな」
「カンティル、君は?」
「俺はハンターになるさ、そのために南方の国へ向かう」
「ハンター?魔王討伐するのか?」
「それは、ハンターの役目じゃない、ハンターは単に狩るだけだ」
「…」
「ま、とりあえず俺は親には顔見せるけどな、喜ぶと思うぜ、勇者になったんだからな!」
「ああ、俺もそうする」
「…親、か」
「…あ、その、ユーリィ、ごめんな」
「はは、謝らないでくれよ、親は生きてるのが普通なんだよ、俺が少し変わってるだけさ」
「…ああ」
「じゃあ、また会おうな」
「だな、元気で!」
「ん、衛兵でもハンターでも、死ぬなよ」
3年前(12歳)
「じゃ、新たな仲間に乾杯!」
「「乾杯!」」
「よ、よろしく」
「最初に魔王討伐すると言っていた時には驚きましたけど、ネミルさんが来てくれたなら現実的になってきましたね!」
「そうかいそうかい、俺はそんなに弱いかい」
「ま、まあまあ、勇者殿、気になさるな」
「魔法学校でたまたま出会っただけだけど、私は身寄りもないし、よく雇おうと思ったよね」
「俺も、3年前に親を亡くしたとこだからな、ネミル程では無いかもしれないけど、孤独ってことはよくわかるつもりだ」
「ふーん…?なんかもっと殺伐としたパーティかと思ってたら、割とフレンドリーなのね」
「ああ、仲良くしような!」
「うむ、旅もまだまだでござる」
「では改めて…」
「「「「乾杯!」」」」
現在
「ユーリ、ぼーっとして、何考えてるんですか?」
「え?ああ、ちょっと昔のこと思い出してて」
「…つくづく私を嫉妬させますね、ま、ベッドの中で愛は証明してもらいますけど」
「すみませんでしたごめんなさい」
「…あの、後悔していますか?」
「え?」
「その、ユーリも私を愛してくれてはいますけど、やっぱりユーリをここに閉じ込めてるようなものじゃないですか、それじゃ…ユーリに嫌われるんじゃないかって…その…」
「ははは、大丈夫だよ、愛するエメになら何されても大丈夫だから」
「何でも?」
「!!」
「じゃあ、シましょうか、ユーリ♡」
「ま、待て待て、何でもってのは」
「そーれ!」
「やめろ!そこ…!」
「ずっと、ずーっと一緒にいましょう!ユーリ!」
後悔はしていない。
愛するエメが側にいる。楽しい家族と使用人と仲良くできる。
それだけでいい。
まあ、昔の仲間とまたご飯を食べに行きたいとも、思いはする。
今度また、みんなに会えるかな。
ちょっぴりホームシックなユーリ。
こんな感じでしばらく経歴を書いていきます。