ヤンデレ魔王に追い回される日々   作:パ〜ム油

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ヘイジ回です。前回ハザラの街へ向かっていた理由がわかるかも?
あ、勇者視点です!


勇者の仕事

朝だ。

腰が痛い。原因は分かっている。ヤりすぎだ。

しかし、俺は今日、どうしてもやらねばならないことがある。

「いてて…」

ゆっくりベッドから出たつもりだったが、俺を抱きしめていないと眠れない魔王が起きてしまった。

「ユーリ?どこ行くんですか?」

「いや、少し、な」

昨日、魔王とヤりまくった後に部屋に戻ると、バルコニーに手紙が落ちていた。

 

ユーリィ殿へ

 

かような手紙を出さねばならぬこと、拙者もまことに心苦しい限りでござる。

今、そちらはいかがか。冷えてきたので風邪に気をつけてほしい。

この手紙を出した理由。それは、あることの密告でござる。

人間側は貴族様方を殺害され、メンツは丸潰れ。またも何かを企んでいるようなので、それをお伝え申す。

これは拙者の感じたことだが、近ごろ騎士団や王立警備隊がきな臭い動きをしている模様。

・武器の大量の買い付け

・鉄砲の改良

・これまで容認されてきたエルフ等の亜属の魔界追放

・教育改革

ここから考えられるのは、戦争。

武器、鉄砲はあからさまで、人間でないエルフ等の者は村を追われ、魔王城の近くの川上に、魔界の住人から隠れて住んでいるのでござる。

そして教育改革。これは魔族を全て憎む、排他思想の植え付けに他ならぬ。

勇者殿。

もはや一人の騎士の力で止めるには大きすぎる事態となったでござる。

ユーリィ殿の味方と、戦争の時に言えなかったにも関わらず、手紙で願うのはこの上なく情けないことは理解しているでござる。

その上で、どうか、エルフ達を助けてやってほしいと思って手紙を出した。

返事は無用である。

また会う時まで。

 

ヘイジより

 

この手紙を受けて、動かないわけにはいかない。

しかし、魔王に内緒でエルフ達を助けられはしないだろう。いつか話さなくてはならないだろうが、とりあえずまともな家くらいは手配してあげたい。

その前に、エルフのことを俺はよく知らない。そのための協力者、ウルスラに会いに行こう。

「ウルスラ、ちょっといいか?」

「はい、何でしょう」

「あのさ、エルフについて教えてほしいんだ」

「エルフですか?」

「ああ」

「構いませんが…」

聞いたところによると、こうだ。

・女性の出生率が95%を超える

・生まれた男子が族の中の女性全てのハーレムを形成する

・男子が生まれない族には、極めて異例ではあるが、他の種族から男子を連れてくる場合がある

・基本的に他の種族に縛りはないが、人間が最も遺伝子的にエルフに近く、安定する

らしい。

「…なぜ急にエルフのことを?」

「頼みがある」

事情を話した。するとウルスラは、予想に反して複雑な顔になってしまった。

「ユーリィ様、私は、そのお手伝いはできません」

「え?何でだよ」

「古来よりダークエルフとエルフは犬猿の仲、私もエルフも、互いにあまり関わりたくはないのです」

「かわいそうだと思わないか?」

「思いはします、ですが」

「俺の願いは、人と魔族が仲良くできる世界を作ることだ、エルフとダークエルフの対立は俺が何とかするから、な?手伝ってくれ、頼む」

俺が頭を下げると、ウルスラはかなり慌てた様子で。

「わ、わかりましたから頭を上げてください」

「よし!決まりだ!」

 

夕方、ウルスラと俺は魔王城の裏にある山を登っていた。

「川を辿ってはいますが…」

「うーん…まさか移動したか?」

一向に見つからない。それらしき生活の跡も全くない。

「ちょっと一回休憩するかぁ」

「はい」

石に腰掛け、川の水を飲む。

苦くて、洗剤の匂いだ。

「げほっ!ごほっ!」

「ユーリィ様!?」

「この水、洗剤の匂いするぞ!」

「…ですね、近いでしょう」

「よし!そうと決まればリスタートだ」

「はい」

 

1時間後

「あれは…」

「エルフですね、こんな洞窟にいたのですか」

「じゃ、行くぞ」

「…どうしても行かなければいけませんか?」

「ああ、来いよ」

ウルスラは少し迷った。しかし、ゆっくりと後をついてきた。

「あの、エルフのみなさん」

声をかけた。

エルフ達は長い耳で俺の声を聞くと、硬直した。

「俺は敵じゃない、俺は」

「に、人間ッ!近寄らないで!」

若い女のエルフが洞窟の前に立ちはだかる。

「違う、あんたたちを助けたくて来たんだ」

「嘘だ!私たちは言われた通り魔界に来たんだぞ!なのに、これ以上何を奪う!」

何人もに睨まれている。

俺の弁解に、エルフ達は全く聞く耳を持たない。

「昨日も来ただろう?もう帰ってくれ!」

ウルスラが俺の肩をつつく。

「ユーリィ様、これ以上は」

黙って帰るわけにはいかない。彼女達も家を奪われたのだ。

俺も何かを捨てて、信頼を得るしかない。

「…すまない、この通りだ」

俺は、地面に土下座した。

エルフ達は急にざわめき出した。

ウルスラはそんな俺を見て唖然としている。

「信じてくれ、俺はユーリィ・グレイ、魔王の夫だ」

「ユーリィ…?魔王様の、夫?」

しばらく土下座していると、女のエルフはへたりと地面に座り、他のエルフは洞窟から出て来た。

 

事情を話すと、エルフ達は俺を信用してくれた。

しかし、辛かったのは彼女達に生きる必要性を訴えることだった。

「…我々に、もう男子はいません、どの道滅びゆく一族なのです」

「でも、こんな所で野垂れ死ぬのなんて…」

「私のような年寄りはここに残ります、若い子たちを連れて行ってやってください」

年老いたエルフは、生きることを諦めてしまったようだった。しかし、ウルスラが。

「これは、魔王様のご命令なのです」

「魔王様?どうしてだい?」

「魔王様は、たとえ我々のようにダークエルフとエルフという二つの族に分かれても共に歩めると思っていらっしゃいます、これは、命令なのです」

「…わかったよ、ありがとうね」

ウルスラは、小さく俺に笑ってみせた。

そして、別れ際。

「これからどうしたらいいんですか?」

「今から移住先は用意します、男子はそこで探してください、もしも族を途絶えさせたくないなら」

「わかりました、お願いします」

「任せてください」

 

その日は別れを告げ、帰った。

城に入るなり魔王が飛びついて来た。

「ユーリ!お帰りなさい!」

「ただいま、ごめんな、一人にして」

魔王の頭を撫でていると、急に魔王に押し倒される。

「ユーリ?なにか、おかしな匂いがします」

「おかしな匂い?」

「ええ、亜人族特有の匂い、エルフか、その辺りですか?なぜユーリからそんな匂いがするのですか?」

目の色が変わっている。暗い色だ。

「魔王、落ち着け、な?」

「落ち着け?ふざけないでくださいよ」

腹を踏まれる。かなり強く。

「ぐふッ…!?」

「ほら、言ってみてくださいよ」

「ぅ…」

このままでは内臓破裂もおかしくない。

 

仕方がないので、話した。

「だから、匂いが付いたんだ」

魔王はうつむいて、ぼそぼそと言った。

「…今度、案内してくれたら信じます、もしも証拠が無ければ、本当に殺しますよ?」

「あ、ああ」

魔王が笑いかけるとこんなに怖いものだったのか。

というか、魔王だから当たり前か。

「今日のところは許します、けれど勝手な行動はしないでください」

「ごめんな」

次の瞬間、魔王の目がピンク色に見えた。蕩けた顔で、告げる。

「まあ、今晩はその匂い落とすまで許しませんけど」

「!?」

 

初めて、魔族の役に立てた。

これからはきちんと、魔王の夫として、魔族のために、そして勇者として、人のために生きていきたい。

そしてまた仲間と、ヘイジと仲良く話したい。

それさえできたら、魔王に殺されたって構わないと思う。

俺もたいがい、魔族に染まったなあ。




ヘイジグッジョブ!
やっと勇者がお仕事しましたね。まあ結局魔王にバレてしまうのですが。
そもそも過労死寸前ですからねw。主に魔王の相手で。
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