戦争前なのにめちゃ呑気。
「ふっ!はっ!」
ユーリが剣の素振りをしている。私から見たらまだまだ未熟な剣の扱いだけど、そこが可愛い。
「ユーリ!剣教えてあげます!」
私が駆け寄るとユーリは急に後退した。
「この前もそんなこと言って、組み伏せられてそのまま夜までヤらされただろ!」
「あ、あれは…密着すると匂いが…」
その時はユーリの手を後ろから握っていたら、ユーリのいい匂いがぷんぷんしていて、理性を失ってしまった。
「とにかく!一人でやるから!」
「ユーリ!そんなつれないこと言わずn」
中庭から追い出されてしまった。
「ユーリはあんな剣術しか使えないんです!ここで私がユーリを守らなくてどうするのですか!」
と、カッコよく叫んでみたはいいけど、何をどうやって守ったらいいのだろう。
とりあえず、ウルスラにでも聞いてみよう。
「ウルスラー、いますか?」
ウルスラの部屋をノックする。
かなり時間をおいて、がしゃんがしゃんと何かをかきわけるような音がした。
扉が開く。
「エメラル様?どうなさったのですか?」
出てきたウルスラの服はいつものメイド服だけど、ところどころゴミが付いている。
「ウルスラ、私はユーリの花嫁として、きちんと修行したいのです」
そう言うと、ウルスラはハッとした顔をした。
「エメラル様…ついにその気になっていただけたのですね!」
「はい!修行に付き合ってください!」
「わかりました!ではまず、基本的なことから!」
ウルスラと私は、陽気に歩き出した。
「…?」
なぜか私はキッチンにいた。
「エメラル様、料理のさしすせそをご存知ですか?」
料理の知識ありきの戦闘の知恵でも教えてくれるのだろうか。
「さしすせそ?」
「これが分からなければユーリィ様も失望なさるかもしれません」
それは困る。
料理のさしすせそ。
相手をどう料理するか、ということだろうか。
「わかりました!」
「どうぞ」
「殺戮!死屍累々!好き!セック◯!ソーセージ!」
ウルスラが笑顔のまま固まっている。
なにか間違えたのだろうか。
しばらく後
「中々上手くなりませんね…」
卵焼きを作らされていた。
相手を卵の要領でまとめてしまえ、ということだろう。
「なんでウルスラはそんなに上手なんですか…」
ウルスラの作った卵焼きは美しい黄色で、綺麗にまとめられている。
私の作ったそれは、真っ黒。もはや黒くなったスクランブルエッグといった感じ。
「ささ、もう一回です」
ずいとフライパンと卵を押し付けてくる。
「…これ、修行に関係あるんですか?」
「!?逆に不可欠ですよ!」
なんだか怒られてしまった。
「まあ、料理は一度休憩しましょう」
「はい!」
びりっと音がして、手元の布が破れる。
「あっ…破れました」
「またですか?」
なぜか洗濯させられていた。
しかも時代遅れの洗濯板なんかで。
「こんなこと、浄化魔法でいいじゃないですか」
「大切なのは夫を思うことです、それこそ妻の鑑!」
かなりヒートアップしている。
妻の鑑…。
※以下は魔王の妄想です
「な、なあ!もしかして、この服はエメが洗ってくれたのか?」
「わかってくれました?ふふ」
「…俺はエメの可愛らしさにもう我慢できない」
「ユーリ…」
「今日は寝かせないからな」
「んッ…♡お願いします…」
※以上は魔王の妄想でした
「ぐへへ…」
涎を垂らしていたら、布が破れた。
ウルスラがうんざりしたような目をこちらに向ける。
「…エメラル様、今日の花嫁修行はこのあたりにしておきますか」
「ですね…ん?」
修行だったはず…花嫁?
「どうしました?」
「花嫁修行?今までやったのは、人間のメスとかが嫁入り前にするアレですか?」
「まあ、人間もしますね、エメラル様が興味を持ってくださって嬉しい限りでs」
嫌な予感。
「これは、戦闘とかには影響しない?」
「しないでしょうね」
「…ウルスラ」
「はい?」
「時間を返してください!!」
事情を理解したウルスラは、落胆と同時に魔王の変わらなさに少しほっとしましたとさ。
「エメ、そんなに落ち込んで、どうした?」
ユーリが心配そうに声をかけてくれた。
「え?な、なんでもないですよ」
「なんでもないことはないだろ、話してみろよ」
ユーリはいつも優しい。
どうせいつか分かるなら、正直に話そう。
「戦争からユーリを守れるか、心配なんです」
そう言うとユーリは、一度驚いたような顔をして、急に笑い出した。
「な、なにがおかしいんですか!ユーリが死んじゃったら私はもう生きていけないんですよ!?」
素敵な笑顔を見せている。可愛い。
「はは…ごめんごめん、エメが俺を守ることでそんなに悩んでくれてるって思うと、愛されてるなぁってさ…」
まだニヤニヤしている。
確かに私がユーリに守られたい、なんて言われたらその場で襲いかかるほど嬉しい。
「…ふん、ユーリはいいですね、守られてて」
「はは、エメが危なくなったら、すぐ助けに行くよ」
爽やかに笑って、私に星を飛ばしてきた。
あ、ダメだ。
「ユーリ誘ってますよね?」
「え?」
とりあえず押し倒した。
ユーリは照れ隠しなのか、顔を強張らせて暴れている。
動かれたら困るから無理やり押さえつけた。
「いただきまーす」
「おい魔王!?今日くらいはさすがに勘弁してくれ!」
「ユーリが悪いんですよーだ」
とても濃厚な一夜だった。
修行してよかった!
案の定花嫁修行苦手な魔王。
またもやかわいそうなウルスラたん。