一緒に過ごす異性なんていませんが…。
というか、浮かれたクリスマスオーラと正反対の迎え方をしてしまったこのお話…。
首が痛い。
手足が痛い。
傷ついた俺の体に寄り添う魔王。
その顔は、リードを手にして満足そうだ。
だから俺は、リードを断ち切った。
魔王はそれを見て、泣いた。
「…ぅ」
青色の柔らかい光に目が覚めた。
「お目覚めですか?」
ウルスラの声だ。
「ウルスりゃ…?」
舌が回らない。手足も動かない。
「ろ、ろうなっえるんあ…?」
「麻酔の代わりの魔法と、ベルトで固定しています」
「あんれそんなこと…」
「舌を噛まれては、また自殺に繋がるでしょう?」
「おえは、自殺したいんじゃ…」
「知っています、ですが、エメラル様のご安心のために」
「エメ…」
「今、エメラル様はとても不安定でらっしゃいます、ご公務の手も止まり、ご飯も喉を通らず、ユーリィ様の名ばかりを口にしています」
「エメに、会わせえくえ」
「…エメラル様から、伝言です」
そう言うとウルスラは、紫に光る水晶を目の前に置く。それは映写機のように、壁に魔王の姿を映した。
「こえって…」
「エメラル様から事前に預かったものです」
「ユーリ、これを見ているなら嬉しいです
でもユーリからしたら、私の顔なんて見たくもないですよね
私は、ユーリを殺そうとしていました
あれだけ愛すると言って、殺そうとした
それは決して許されるべきことではありません
ユーリ、私を嫌ってもいい、でもこれだけは、本当に信じていてほしいんです
私はユーリを愛しています
たとえユーリが死んだって、想い続けます
たとえユーリに嫌われても、追いかけ続けます
たとえ、たとえユーリが…私のことを殺そうとしたって、受け入れます
ユーリに殴られて、蹴られて、切られても、ずっと追いかけます
想いが届かなくたって…私、は…
諦め、ませんから…
こんな、っ…粘着質なところ、嫌い、ですよねっ…でも、でも私はユーリが好きで、愛する形はこうやってっ …、表すものだって、それしかっ、わからなくて…
ごめんなさい、ごめんなさいユーリ、許してもらえるなんて、思ってません…
でも、私は、ユーリに嫌われても、どうしてもユーリを守りたいんです
遅くなって、ごめんなさい
あの三人の暗殺者は、きちんと埋葬して、お墓を立てました
ごめんなさいっ
本当にっ…ごめんなさい…」
そのあとは、思い出を話していたかと思えば泣き出し、ひたすら謝罪して、何を言っているかわからないように喚いたり、ひたすらにガタガタの魔王が映っていた。
「もう、いい」
水晶の光が消える。
「…行きますか?」
ウルスラが俺の顔に手をかざし、次の瞬間には口の痺れが取れていた。
「ありがとう、ウルスラ」
拘束具が外される。
「不安定ですから、くれぐれも怒らないように」
「わかってる」
そして俺は、愛する人の元へ向かう。
もう責めることはない。
慰めてやる。たったそれだけ。
「エメ、入るぞ」
「…だめですよ」
「なんでだ?」
「わざわざ殺されに、来たようなものじゃないですかっ…自分を殺そうとした相手のいる部屋に、入るなんて」
「入るぞ、いいな」
扉を開ける。
そこには、散乱した俺の下着や服や、使っている食器、もっこりと膨らんで震える毛布があった。
「来ないでください、私を殺しても、蘇ってでもユーリにつきまといます」
毛布が喋る。
「おい、エメ、伝えたいことがあって」
「聞きたくないです!もうやめてください!私はユーリをこんな愛し方しかできなかったんです!仕方ないじゃないですか!」
「俺はお前を」
「やめて!」
「好きなんだ!」
「っ…え?」
「愛してる、だから勝手に死ぬなんて言うなよ」
「やめて、やめてください、そんなことを言うから私が辛くなるんです」
「辛くたって俺が側にいてやる、だから」
「そう言っても、ユーリは私を嫌って」
「信じろよ!俺が好きって言ってんだよ!」
もう俺は腹をくくった。
魔王に歩み寄り、抱きしめる。
「こんな私で、いいんですか?」
「当たり前だろ、エメじゃないとダメだ」
「人を殺すのは避けますけど、性欲もすごいし、独占欲もあるし」
「全部含めて、言ってる」
「…もう、嘘だとかは通じませんよ?」
毛布から泣き腫らした顔が出てくる。
「ああ、好きだ、エメ」
優しくキスしてやる。
すると目に再び生気が宿った。
「ユーリ、ユーリ…怖かったですよぉ…」
押し倒され、抱きしめられる。
優しく包んで、頭を撫でてやる。
「ごめん、気持ちも考えずに、あんなに怒って」
謝罪した。
しかし、何やら様子がおかしい。
息が荒い。
顔が赤い。
まさか。
「…ずっとご無沙汰でしたよね?こっちは」
「ま、待てよ公務とかもあるし」
「全部含めて好き…なんですよねぇ?」
「それはっ…!」
「もう逃がしませんからね、ユーリ♡」
14時間後
「ぅぅ…なんでこんな雑務が溜まってるんですか…」
「溜まった公務を、気絶するまでユーリィ様とシたりしてサボったからではないですか?」
「全く手伝ってくれないし…」
「当たり前です、で、なんでここでエメラル様の惚気を聞かなくてはいけないんですか?」
「ウルスラが寝たら寂しいじゃん」
「ユーリィ様にお手伝いをお願いしては?」
「ユーリィが隣にいたら集中なんてできませんよ…むふふふ…」
「…寝ます」
「ちゃんと仕事しますから隣にいてくださいお願いします」
無事仲直り。
今日中には聖夜(番外編)を書きたいと思っております。
どうせ恋人なんていませんし…。
ユーリィみたいなイケメンが恋人とか友達にいたらいいですね…。