魔王はいつ助けに来るのだろうか…。
後半は魔王視点!
「可愛いね、あなた」
俺は裸にされ、ニコラを抱き締めるよう命令された。
俺は、断れない。
断れば、体に傷が増えるだけだ。
昨日は2回失神した。
言うことを聞かなければ殴られ、エメの名前を言えば蹴られ、体はズタズタになってしまった。
しかし、夜になって、俺がエメの名前を呼ばなくなると途端に機嫌が良くなり、キスされ、足をからめ、腕をからめ、とても愛を注いでくれた。
これが飴と鞭なのだろうか。
けれど、ボロボロの心と体に彼女の愛は染み入って、涙を流すほど嬉しかった。
彼女はおかしい。
魔王の愛より、もっとおかしい。
それを受け止めてしまう俺が悪いのかもしれないが。
「ねえ、まだ帰りたいかな?」
「…っ、いいや、別に」
「嘘はダメだよ?」
「…ニコラと、一緒にいる」
そう言うと、優しくキスされる。
「よく言えました、教育したかいがあったね」
俺は彼女に毒されている。
魔王の愛とは違う、優しく、包まれるような愛。
これが母性なのだろうか。
「…私たち、恋人だよね?」
覆い被さられる。
俺は、嘘をついた。
正確に言えば、それはつかざるを得ない、正しい嘘だったと思う。
「…そうだよ」
「なら、さ、ちょっとは愛し合お?キスより、もっともっと気持ちいいことで」
俺は彼女に支配されている。
抜け出すことは、俺だけでは無理だ。
魔王が来るまでの辛抱。
しかし、ブリザードに阻まれたここは、指輪の通信もできず、ただ殴られて、待つしかない。
嫌だ。
が、魔王以外と関係を深めるのは、もっと嫌だ。
俺は、大切な判断を下した。
誤まってはいない。そのはずだ。
「嫌だ、俺はエメを愛している」
「…クソが、なんでッ…言う通りにならねぇんだよ…」
壁に思い切り拳を突き立てる彼女は、先ほどまでの落ち着いた女性などではなかった。
そして、その拳は、容赦無く俺に振るわれることになる。
魔王、愛してる。たとえ体が朽ちても、ずっと。
「…はッ!?」
ユーリの声がした。
ここは、ユーリ捜索のために立てた極冠近くのテント。
「エメラル様?随分うなされておいででしたが…」
ウルスラが紅茶を持って来る。
飲む気にはなれない。
「…お姉ちゃん、今日は無理だよ、さすがに」
マリンが外を覗いて、言う。
「ユーリを、探しに行くんです、ブリザードが何だって言うんですか?」
「そう言って、無理に進軍を続けたら凍傷で取り返しのつかないことになりますよ」
「…お兄ちゃんの足取りも、何もつかめてないのに行くのは、そもそも危険過ぎるよ」
二人とも臆病だ。
なぜユーリが攫われたのに、こんなに用心深いのか。
たかが神なのに。
「…二人とも、ついてくると言いましたよね?私だけ極冠地方へ行くのは危険だ、と」
ユーリが攫われた次の日。
どこを探してもユーリはいない。
ニコラに攫われたのだ。金時計が一番の証拠。
許せなかった。
ユーリを守れなかった自分が。
ユーリを奪ったニコラが。
だから、最低限の装備を持って、極冠へ行った。
途中、マリンとウルスラに追いつかれたが、口論の末についていくことで合意した。
しかし、私が思ったほど、ブリザードの中を歩くのは容易ではなかった。
「確かに、お伴しますが、この間に国の情勢が乱れては元も子もありません」
「それが何です?魔界なんて、人間にくれてやります、ユーリさえ帰ってくるなら」
二人とも何もわかってくれない。
「民の命はどうするのですか?」
「ユーリの命が大事です」
「…お姉ちゃん、やめなよ、お兄ちゃんに依存するの」
「依存?」
依存ではない。愛し合っている。
「お兄ちゃんはいつもお姉ちゃんに酷い目に合わされて、可哀想だよ」
「マリンだって同じでしょう?ユーリを犯して」
「お二人とも、おやめください」
ウルスラが間に入る。
早く見つけないと、ユーリが奪われてしまう。
けれど、この魔力の入ったブリザードを闇雲に歩いても見つからないだろう。
明日、作戦に出る。
そのために、ある武器を持ってきた。
ユーリ、待っていてください。
いよいよキツい勇者。
こんな状況は鬱になるよね…。まあそれがニコラたんの狙いでもあるわけですが。