長いことお休みしてすみません。
また少しずつでも上げていきますので、どうぞよろしくお願いします。
クインちゃんと、こんな会話をしたことがある。
「人の魂というのは、神様であれば誰でも取り出すことができるのです」
「え?なら、死神ってのは普通の神様なのか?」
「普通の神様というのがどんなイメージかわかりませんが…神様というのはそれぞれに得意分野があるものなのです」
「人の魂を奪うのに長けた神様が死神なのか」
「奪うだけではありませんよ、それこそ役職には含まれませんが、一度抜けた魂をまた封入することもできますし」
「なるほど…」
「死神は様々な呪いや魂に関する道具の知恵を人間界にもたらしていますね」
「人間界に?」
「そう!これこそ!「魂の鎖」です!」
「…あのな、今はセールスの時間じゃないんだぞ」
「少しは聞いてくださいよぅ」
「はいはい、それで?」
「これはですね、実際に死神が作ったといわれる道具を同じ構造で作り直したものです」
「何ができるんだ?」
「死神作のものよりも1億分の1ほどの出力ですが、これを魂に引っかけると、任意の時に魂を抜き取ることができるのです!」
「魂を抜かれたらどうなる?」
「人であれば、即死でしょう」
「…いらない」
「ティッシュと石鹸も付けますよ!」
アシンさんに囚われた俺に、彼女はオリジナルの「魂の鎖」をかけようとしている。
「アシンさん、やめてください、離してください」
俺は、アシンさんの細い腕からのオークよりも強い、下手すれば骨を折ってしまうほどの力で押さえつけられていた。
彼女は嬉しいような、動揺したような感じを言葉の端々に滲ませて俺に黒い鎖を近づけてくる。
「え、えへ…君は私のこと好きだよね、ねえ」
「このままだと、嫌いになります」
「大丈夫…君が好きならエメちゃんも許してくれる」
「アシンさん!」
「君のせいだよ…だから君の魂は私のもの」
「エメに罪悪感があるなら、離してください!」
そう叫ぶと、彼女はぴたりと動きを止めた。
「平気だよ…エメちゃんは一緒に過ごしてた頃から男の子のアプローチは断ってたんだから」
「俺は、エメを愛してます、あなたのものにはなれない」
「やだよ…私のものなんだから」
どこか、線の切れたような顔で、俺の胸に一直線に鎖を叩きつけた。
かちゃん、と音がして、鎖は消えた。
「これで君は…私のもの」
「…俺はエメをずっと愛してますよ」
「ねえ、君はさ…私が君を殺さないと思ってる?」
「当たり前です、本当に好きなら殺したりなんか」
「違うよ…君の死体を見たエメちゃんはさ、どう思うかな?」
迂闊だった。
魔王は実際、俺が奪われた時に神に喧嘩を売ったのだ。
そんな先の見えない状態で俺の死体を見たなら、アシンさんを殺すか、自殺してしまうか、もしくはどちらもか。
許すわけにはいかない。
もしも。
魔王が自殺したなら、アシンさんは俺を蘇らせて、自分のものにするだろう。
もしも。
魔王がアシンさんを殺したなら、心中となり、アシンさんは喜び、エメはきっと悲嘆に暮れる。
つまり。
俺は、鎖をかけられた時点で敗北なのだ。
「…わかりました、従います」
「うふふ…いい子」
頭を撫でられる。
逃げられない。
絶対に超えられない壁。
力で勝てず、策で勝てず、逃げることも叶わない。
「ねえ…私たち、夫婦かな?」
「…」
「ねえ…黙らないでよ?」
胸から、がしゃ、と音がして、締め付けられるような痛みが走る。
「くッ…はぁ…!?」
「ほら…ねえ?」
「ふッ…うふ、夫婦だから…!」
「ならさ…夫婦の営み、しよ?」
「それは…!」
「これは鎖で脅さない…君がうんって言うまで、私は君に聞き続けるから」
「…エメ」
「その名前ッ…言わないでよ」
「俺は、エメと会いたい」
「やめて…やめて!」
また鎖の痛みがやってくる。
このまま死んでも構わない。
ただ、ただ一つ。
魔王が悲しませたくない。
絶対に。
「エ…メ…」
「黙れッ…黙れ!」
ぶつり。
勇者が死ぬのを眺め、はっとした表情で魂を吹き返す儀式の用意をする死神。
死神は、この時がずっと続くと思っていた。
心を折れれば、親友を忘れられたなら、きっと幸せになる。
冷たい、見ただけで人を殺せるような魔王の目が、窓から覗いているのにも気がつかずに。
アシンの日記
思い通りにいかない。
今日だけで4回も殺してしまった。
ごめんね、痛いよね。
でも、私のものになる。
きっと、必ず。
だからそれまで、愛の鞭を受けてよ。
あなたは、私のも
血で、その後の文は読めなかった。
何回も言います。
お待たせしました。
さて、衝撃的な終わり方でしたが、アシン編はバッドエンドではないのでご安心を。
ではまたすぐに投稿します!