ヤンデレ魔王に追い回される日々   作:パ〜ム油

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魔界にも当然階級に上下があり、そして貴族もいるわけで…。


吸血鬼編
貴族会議


がたがた揺れる馬車。

「…エメ、俺、行くの結構怖いんだけど」

俺は立派なスーツを着ていた。つやつやと光る、新品の、高級だと一目でわかるスーツを。

「貴族会議で、ユーリは私の夫ですよ?みすぼらしい格好で行かせるわけにはいきません」

魔王は灰色のドレスだ。

綺麗だが、そう伝えて襲われかけたので言わない。

 

魔界には貴族がいる。

貴族は魔界を支える種族の長で、主要な貴族は12種いるという。

中には魔王家くらい金持ちの族もあるらしい。

今日は、その会議に呼ばれた。

 

「俺、人間だし…戦争がついこの間あったばっかりなのに、張本人が出て行くのは、ちょっとさ…」

正直言えば、怖い。

「大丈夫です、ユーリは私が守りますから」

手を繋がれる。

しかし、全く安心できない。

もしも守るはずの魔王が暴れたらどうするのだろう。

「ユーリ、着いたみたいです」

「…ああ」

胃のきりきりした痛みを我慢して、俺は馬車から降りた。

 

荘厳な建物だった。

神殿のような古めかしさと神々しさを持ち、なおかつ美しい建物。

「ここが魔界貴族御用達のダンスホールです」

ガーゴイルが何体も見張っているセキュリティを通った中には、緑色の絨毯が敷かれ、小さなテーブルがずらりと置いてあり、その上には宝石のごとく輝く料理が盛られていた。

「ここのご飯は中々美味しいですよ、コックがウルスラくらいの腕前ですね」

「なぁ、会議じゃないのか?」

「ええ、あくまで会議です、立食パーティのようなものですけどね」

やがて、人々が入ってくる。

俺と魔王は一人ずつに挨拶をした。

 

筋骨隆々の石でできた男。

真っ黒な翼の若い女。

姿の見えない影。

顔の無い女らしき者。

ケンタウロスらしき男。

緑色の髪の吸血鬼らしき女。

人くらいの大きさの鳥。

 

他にも色々といたが、印象が強かったのはこれくらいだろうか。

「では、第4251回貴族会議を行います」

普段からは考えられないような真面目さで、魔王が開会を宣言した。

そこからはフリータイムのようで、みんながせわしなく動き始めた。貴族というのは、人間も魔族も変わらないようだ。

 

「お主…人間か?」

石像に声をかけられる。

「は、はい、魔王の夫になりました」

「聞いてはいたが…なぜデラルス様が若造を、しかも人間を夫に選んだのだ?」

威圧的な聞き方だが、声からして純粋な興味に思えた。

しかし、なぜと言われて答えられる問いではない。

「…さあ?」

「…ふむ、そうか」

納得のいかない様子で戻って行った。

 

「あら?あなたは…」

黒い翼の女に声をかけられる。

悪魔の族長といったところか。

「魔王の夫のユーリィと言います」

「いい匂いね…人の匂いと、どこか神の香りがする…」

なんだか陶酔したように俺を見ている。

「あ、ありがとうございます?」

反応に困る。

「ねえ、一晩家に来ません?たぁっぷりおもてなししますよ?」

その女が肩に触れた一瞬。

燭台が恐ろしいスピードで飛んで来た。

女が目を向けると、燭台は真っ二つに切り裂かれて速度を失う。

「すみません、手が滑りました」

魔王がにっこりと笑っている。

「あら、それは大変でしたね、お怪我はございませんか?」

「私の心配はいりません、ですが夫は脆弱な人間でおりますゆえ、悪魔の接待には耐えられませんよ?」

「それは失礼しました、では私はこれで…」

そそくさと逃げる女。

そしてそれを見つめる魔王。

「…エメ、今のはやり過ぎじゃないのか?」

「他人の夫に手を出す悪魔が悪いでしょう?」

全く悪びれず、言い放った。

 

「御機嫌よう?ユーリィ様」

吸血鬼の女だ。

緑色の髪がさらさら揺れて、いかにも貴族といった感じ。

「どうも、初めまして、えーと…」

「ワイル家のミラ=ワイルです、以後お見知りおきを」

「ユーリィ・グレイです、よろしく」

ハグしてきた。

挨拶なので、魔王もハグと握手まではいいということだった。

すると彼女は耳元でこう囁いた。

「私の家に来ませんこと?」

「先ほどもお誘いを受けましたが、残念ながら仕事が忙しいものでして…」

完璧な返しだ。

仕事なんかほとんどないけど。

「いえいえ、お客ではございませんよ」

「…?なら、なぜ…?」

「吸血鬼の一族は古来より貴族の嗜みとして、人間狩りをしておりまして…ね?」

「狩った人間は、奴隷となります、血が美味しければ飽きるまで食用家畜、美味しくなければ手足を捥いで楽しんだり、解体ショーをしたりと…」

彼女は笑っている。

背筋に凍ったような感覚が走った。

「あなたは愛玩奴隷として、私と相性が良い感じがしますので、こうしてお声かけしているのですわ」

上品に笑っている。

側から見れば、ただの会話に見えるだろう。

しかし、内容は。

「…それに、噂によればあなたは、神を吸収したそうですね?」

「…っ、なぜそれを」

「あなたが欲しいのですわ、それでも今あなたがこちらに来ないのならば構いませんことよ?」

「なら、お断りします」

震える声で言う。

すると、さらに濃い笑みを浮かべ、こう言った。

「魔王家の周囲企業を買収して、あなたをこちらに渡らざるを得ないようにするだけのお話ですから」

俺はその時、知らなかった。

貴族の中で最も富を持つ族が、ワイル家だということを。

「ご冗談を…」

「まぁ、じっくりお考えになってくださいませ」

くすくすと笑い、去っていく彼女。

その背中は禍々しいオーラに包まれているように、俺には見えた。




吸血鬼登場!
キャラはまだ迷っています…。ヤンデレに追加してほしい属性があったら、コメントください!
吸血鬼編はたぶんもうちょい後…?
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