果たしてミラはどうするのか?
「おはようございます、ご主人様」
ミラに向かって頭を下げる。
この挨拶も、もうすっかり慣れた。
魔王城に連れて行かれ、俺は自殺覚悟で魔王にメッセージを伝えた。
そして魔王もそれを返してくれた。
これからどうなるか、それは分からないが、あの時叫んだことに対する後悔はない。
思いのほか、ミラは上機嫌な声で言った。
「おはよう、奴隷さん」
「今日のご飯は…」
赤黒く跡の付いた首筋を出す。
しかし、ミラは吸わない。
「この一晩で素直になった…わけはないでしょう?」
冷たい目で睨まれる。
「…当たり前だ、必ず魔王は助けにくる」
睨み返す。
すると、また元の微笑みに戻って、部下に命令し、細長い木箱を持ってこさせた。
「ところで、人間界では、魔物ハンターとかいう職業があるそうですね」
「…?」
「自分よりも弱い生き物を狩って暮らす、原始時代への退行に他なりませんわね」
「…はい、ご主人様」
「けれど私は、ハンターごっこをしてみたいと思いましたの」
木箱から、長い金属の棒を出す。
いいや、棒ではない。
「獲物はもちろん、あなたですよ?」
彼女は説明書を開いた。俺にも読ませる。
商品名
かみなりさま
射程
〜4m
使用上の注意
・本商品は獣駆除、保護のため作られたものです。魔族、人間には絶対に使用しないでください。
・エネルギーフルチャージによる最大使用回数は10回です。
・しぼりによって電力を増減させられます。
・本商品により電撃を当てた生物は一時的な麻痺、失神をしますが、過信せず、きちんとトドメを刺して接近するようお願いします。
・魔力によるチャージや、強化は出力が本来よりも大きくなり、安定しなくなる恐れがありますのでご注意ください。
「さて…追いかけっこでもしましょうか?」
楽しそうに鳥獣捕獲用の鉄砲を弄ぶミラ。
「ルールは?」
「敬語を忘れていますよ?ルールは…そうですね、このお城からスタートして、魔王城までにします」
「…!」
すると、ミラは俺の顔を手で包み、悪魔のような笑みを浮かべた。
「あなたは私から逃げる獲物、私があなたを捕まえるまでがゲームです」
「もしも、魔王城まで逃げられたらどうなるんですか?」
「その時は、あなたは自由ですよ、逃げられれば、ですが」
にこりと笑って、鉄砲のしぼりを調整している。
逃げる。
ここで逃げられたら、俺の勝ちなのだ。
俺はここに来るときに持っていた、盾、鎧、剣、そして指輪を返却され、重装備で立っていた。
「さて…始めましょうか?奴隷さん」
ミラはかみなりさまを高く、空に向かって掲げた。
「用意…」
引き金が引かれる。
「始め!」
ズバンッ!と中に黄色と赤の火花が散った。
スタートにかみなりさまを撃ったのは、余裕からか、出力のチェックなのか。
俺はただひたすらに走る。
魔王城まではここから歩けば1日ほどかかる。
無謀な挑戦かもしれなかったが、幸い野宿はできるし、お金も多少はある。
「逃げなきゃ…とにかく…!」
吸血鬼というのは、長時間陽に当たると弱るらしく、ミラは傘をさして、ゆっくりとした足取りで向かってきた。
逃げられると、確信した。
残り9発
2時間ほど経ったか。
スタート地点から9kmほど離れた山の中腹。
足を止め、後ろを警戒しながら倒木に腰を下ろす。
「はぁ、はぁ…撒いたか?」
かなりの距離を離したはずだ。
これならば、簡単かもしれない。
油断は禁物と分かってはいるが、あの遅さで追いつけるようには思えなかった。
川に出て水を飲む。
「ふぅ…ここからどれくらいだろうな…」
手を伸ばすと、左手に指輪が光っていた。
「エメ…」
連絡は取れる。
取る気にはなれない。
魔王に頼っても、状況は好転しない。
むしろ俺の位置を知らせるようなものだ。
「…待ってろ、すぐ、行く」
俺は立ち上がり、また歩き出した。
俺はその時、予想もつかなかった。
ミラは手加減するつもりなどなく、だからこそ追ってこなかった。
その後、俺は、彼女の恐ろしさを知ることになる。
え?短い?
すみません…構想がまとまらないまま、ハンティングされるM妄想を書き出してしまい…。
その4に続きます。