ヤンデレ魔王に追い回される日々   作:パ〜ム油

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捕まった勇者。
そろそろ吸血鬼編も終わりです。


奴隷生活(その6)

ユーリィ・グレイ

 

満月。

青白いその月は、俺のタイムリミットを表していた。

「奴隷さん、覚えていますよね?私とのお約束」

ベッドに縛られ、血を望むタイミングで吸われ、ご飯は一口一口、好きだと言わなければ食べられない。

「…何も、覚えていない」

それでも虚勢を張って口ごたえする。

ミラはそんな俺を撫で、冷たい目で言った。

「私と同じ種族になるのです、逃げられはしませんわ」

「願い下げだ…誰が吸血鬼なんかに…」

「儀式準備をします、少し眠っておきなさい」

機嫌を損ねたのか、電気銃を向けられる。

そして。

 

バズンッ!

 

ミラ=ワイル

 

「やっと…やっとあなたは私と同種…!」

私は嬉々として、儀式に必要な金のナイフ、金の皿、マント、絹の布を準備していた。

彼は可愛い顔で眠っている。

「…あなたの血を吸うのも、これで最後になるのでしょうか?奴隷さん」

名残惜しい。

彼の血は、色も味も香りも何もかも文句なしの美味しい血だった。

最後に少しだけ、少しだけ吸おう。

「あ〜ん…」

すると、扉がノックされた。

「…何?儀式をするのだから、入るなと言ったでしょう?」

「ミラ様、急ぎのお手紙が…!」

何やら血相を変えたような声。

不審に思い、扉を開ける。

「なんですか?」

上質な紙に書かれた手紙だった。

 

 

ミラ=ワイル様へ

 

殺す。

ユーリィを返すのなら、半殺し。

よく考えて決めなさい。

止めようなどと愚かなことは考えないよう。

 

デラルス・エメラルより

 

 

「…ふっ」

思わず笑いが溢れる。

震えるような筆跡。

おそらく倒産や合併関係の書類処理に追われて、ずっと文字を書き続けていたのだろう。

あるいは、怒りかもしれないが。

満月の位置はまだ低い。

「私の鎧と武器を用意なさい、それと、全ての兵に召集命令を、今こそ魔王家を潰す時が来ました」

「し、しかし、魔王家と戦争で…勝てる見込みが?」

役に立たない部下。

「使えない部下はいりません、言うことを聞けばよいのです、いいですか?」

電気銃を向ける。

「っ!わ、わかりました…!」

走って行った。

魔王に力は及ばずとも、財力も兵士もこちらの方が上にある。

「…明日から、私が魔王ですか、奴隷さん…いえ、ユーリィも喜んでくれますわ」

電気銃を放り捨てる。

せっかくフルチャージして、奴隷さんと楽しく遊ぶ準備はできていたのに。

「まぁ、あの馬鹿魔王に償ってもらいますわ、痛めつけて叫ぶ声を楽しむ吸血鬼文化は、本当に正しいことですわね」

鎧を着込み、レイピアを持つ。

負ける気はしない。この夜で終わらせてみせる。

 

デラルス・エメラル

 

「エメラル様、こちらの書類にハンコを…」

45時間。

私はずっと起きている。

 

会社の処理に追われることもそうだが、何より心配なのは、ユーリィの指輪の位置が少しだけこちらに向かい、すぐにあのクソ女の根城に戻ってしまったこと。

「…ユーリが帰って来たがってるんです」

ウルスラに何度もそう言った。

ウルスラも精一杯働いてくれている。

「…それは、そうかもしれません、ですがこの仕事を清算しておかないと、ユーリィ様も心配します」

目の下にクマのできた彼女に、私はこれ以上何も言えなかった。

 

「ウルスラ、寝てください、あとは私が何とかします」

ウルスラはふらふらと頭を揺らして、それでも私に付き添ってくれている。

もうまともな給金を払い続ける保証もないのに。

「できません、私はメイドです」

「メイドなら主人の言うことを聞きなさい」

「メイドだからこそ、主人の手伝いをするのです、そのやせ我慢を見抜くのも私の仕事です」

「ウルスラ、言うことを聞けないなら怒りますよ」

「エメラル様がお休みになるのなら、私も休憩します」

ラチがあかない。

今日こそ、ユーリを取り戻す算段なのに。

マリンが魔力砲を用意、お母さんの号令で魔王家の軍を全員召集、メイド達はこの家を守らせ、クインちゃんは魔力脈をいじって城を攻撃する。

ただ一人、ウルスラは反対していた。

「…ウルスラ、あなたには感謝しています、涙が出そうと言ってもいいくらいに」

「エメラル様?」

「けれど、やはり私は、ウルスラよりもユーリを助けることを選びます、だから、あなたを…!」

手を差し出し、魔力針を胸に打ち込む。

とす、と何の抵抗も無く刺さった。

「…帰ってきて…くだ…さ…」

どさり、と倒れる。

ウルスラを部屋のベッドに運んでやり、私は武具を付けて外に出る。

 

そこにいた、5万を超える、先代魔王からのコネと繋がりだけで集まった、兵に私は言う。

 

「今の私は、お金も夫も、何もかもを失いました、それでもこうして集まってくれたこと、それだけでも私はあなたたちのような人々に、感謝します」

辺りに響くのは、揺れる木の音。

誰も何も喋らない。

この演説で、私は勝つ。

全てを取り戻してみせる。

 

剣を抜き、掲げ、そして叫ぶ。

「我々は魔界を統べる者!それを覆そうという不遜者には、鉄槌を下さねばならない!我々が手を取り合えば、どんな敵も恐るるに足りない!今こそ、我々の力を知らしめるのだ!」

その場の兵の、叫ぶ声を聞いて、私は魔王という仕事の重みを、これまでにないほど強く、有り難く感じた。

 

ウルスラ・バード

 

「…エメラル様、やるのですね」

小さな黒い針を服から抜く。

窓の外には、人と明かりが大量にある。

服を脱ぎ去り、青い鎧を露わにする。

「私はメイドです、たとえ死ぬこととなろうとも」

扉を開け、踏み出す。

「ルビル様と出会った時から、私は魔王家と運命を共にする所存ですので」

数歩廊下を進み、赤面。

「なんて、カッコつけ過ぎですかね?」

 

アシン・ハース

 

「やるんだね…エメちゃん」

送られて来た手紙を読み、私は山に登っていた。

「できるだけ仕事は増やさないでほしいけど…今回は特別かな?」

赤い鎌を握る。

この術を使うのは何百年振りだろうか。

「ユーリ君、エメちゃん…私もお手伝いさせてもらうよ?」

死の大地。

そこには、死神以外何もないわけではない。

 

これまで魔界で死んだ、全ての死者の魂が、ゆっくりと動き出していた。

死神から乗り移る許可を得た魂は暖かい肉体を求める。

ぼんやり光る魂は、ただ一直線に吸血鬼の城を目指していた。

「さて、暖かい血の通った体は早い者勝ちですよ…ま、戦争が終われば私が殺し直しますけど」

 

魔王軍

生者約50000(+死者推定10000000000)

吸血鬼軍

生者約250000




次の次あたりで締めになります!
次はどんなキャラ書こうかなぁ…。
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