ヤンデレ魔王に追い回される日々   作:パ〜ム油

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ついに出会った三人は、一体どうなるのか…?


奴隷生活(その8)

何回も、何回も魔王は俺に問いかける。

そのたび、俺は首を横に振る。

「ユーリ、私と、帰りましょう?」

魔王の声は震えていた。

泣き出しそうな顔で、こちらを見ている。

「エメ、俺に構わないでくれ、それが、エメのためn」

言い訳が遮られる。

「私のためって、なんですか?ユーリは私だけ、ずっと私だけの物でしょう?たとえ私がボロボロになったって守る、結婚の時、私はそう神に誓いました!」

すると、急に足元が影で暗くなる。

魔王の背後から、パンッ!と、手を叩く音が聞こえる。

「さて、揃ったようですわね」

城の瓦礫によって作られた巨大ゴーレムが俺たちの頭上を覆っている。

魔王は俺の方に背を向け、ミラを睨みつけた。

「ミラ=ワイル、ユーリを返しなさい」

「そんなことが言える身分だとお思いですか?魔王様」

ミラが軽く笑い、手をかざした瞬間、俺のすぐ真横にゴーレムの固い拳が突き立てられる。

「ユーリッ!」

思わず振り返った魔王。

しかし、その行動は隙を生む。

その瞬間、魔王の首元にはレイピアが輝いていた。

「ミラ、エメに手出しはしない約束だろ!」

そう言うと、ミラは蕩けるような笑みで答えた。

「刺したりはしませんわ、これから言う問いに、きっちり答えていただけたなら、ですが」

「ミラ=ワイル、私に何を聞くというのですか?」

首から伸びるレイピアの先を睨みながら、魔王は聞いた。

「私に、あなたの夫を譲りなさい?」

「嫌です」

「なぜです?そうすれば、経済圧迫もやめると約束しますし、戦争もやめさせましょう」

しかし、魔王はそんな言葉には揺るがない。

「私にとって、ユーリさえいたなら、そのほかの物は全て手放しても問題のない物なのです」

「ふうん?奴隷さん…いえ、ユーリィさんに、妻に自分が売られる所を見せて心を砕こうと考えたのですが…」

考え込むような仕草で、ミラが一歩退いた。

首から刃が離される。

「…!」

その瞬間、魔王は横に飛んだ。

普通の人間ならば、腱が切れてしまうほどに素早く、長い跳躍だった。

しかし。

「あッ…!?」

魔王が大きく体勢を崩す。

魔王の隣にいたのは無機質な甲冑。

その手に握られた細剣は、彼女の足を貫いていた。

「ミラ!エメに手を出すな!」

思わず立ち上がるが、ゴーレムの指が俺をミラとエメから阻むように突き飛ばす。

「おっと、動けばもっと妻に傷がつきますわよ?」

「ごほッ…卑怯だぞ」

「動くな、と警告はしました」

「ユーリ…私のことは、いいです」

魔王の足は震えていた。

怒りか、悲しみか、それとも恐怖か。

「さて…と」

ミラが手を振り上げる。

「戦争の楽しみは、これからですわ!」

魔王の足から剣が抜かれ、甲冑に背を蹴られる。

そして魔王を、ゴーレムが掴み上げた。

「ユーリ…!」

「エメ!今助ける!」

ミラに向き直り、言う。

「なにか、勝負か何かがしたいんだろ、言えよ」

「ええ、これをプレゼントしますわ」

甲冑から細剣が投げ渡される。

「…?」

「私の用意した、12騎士」

エメを刺した甲冑を含めた12個の鎧が、俺を包囲するように歩いてきていた。

「これに勝ち、なおかつ私を倒せば、あなたの妻は返してあげましょう」

またも、ゲーム。

ミラにとって、人の命なんて、他人の愛なんて、本当に単なるゲームの駒に過ぎないのだろう。

「わかった、やろう」

「ただし…」

ミラはレイピアを俺に向けた。

「あなたが負けたら、その時は、あなたは私のものです」

「…ユーリ」

魔王が掴まれたゴーレムの手から血が滴り落ち、乾いた地面に吸い込まれた。

「大丈夫、俺が助けるから」

その一言で、魔王は力なく笑った。

「さぁ、来いよ!」

俺は柵に背を向け、死角のないように剣を構える。

「12人の猛攻…せいぜい楽しませてもらいますわ」

 

光の乱舞だった。

一瞬で、機械のごとくリズムで踏み込んできた甲冑たち。

俺は、痺れの取れた足で壁を思い切り蹴る。

多少監禁されはしたが、魔力の通りも問題なく鎧を飛び越えることができた。

振り向く前に後ろから、一つ蹴倒す。

甲冑はバラバラになり、濃い緑色の魔力が空気に消えた。

「よし…一体目…ッ!?」

即座に足を引っ込める。

足のあった場所に、剣が降ってきたのだ。

先ほどまで仲間だったモノの鎧を傷つけるのを、全く躊躇いのないように剣が次々襲いかかる。

「隙はどこだ…?」

面白そうに見ているミラ。

おそらくは彼女が操っているのだろう。

後ずさるようにミラへ近づく。

が、それを見越したように二つの鎧が猛スピードで突進してくる。

「ぐっ!?」

作戦は、こうだ。

一体は爆破魔法で足元をさらう。

その後で、もう一体を始末する。

そのはずだった。

だが、次の瞬間。

「…?なぜ?なぜ私の鎧が壊れるの?」

残った11個の鎧が、自壊した。

ミラは信じられないような目で俺を見る。

俺は何もしていない。爆破魔法も唱えていなければ、そんな広範囲にわたる魔法を使えば俺まで危険に晒される。

魔王の呟きが聞こえた。

「何の光…?」

 

空が、青かった。

 

空が青いのは当たり前だが、しかし、その染まり方は異常なほど鮮やかで、きらきらと揺らめいていた。

「ぅ…あ…?」

見るとミラが腰を抜かしている。

チャンスだ。

だが、鎧が壊されたくらいで何をそれほど恐れているのか。

「ミラ、終わりだ、諦めろ」

剣を構えてゆっくりと近づくも、なにかうわ言を呟いたまま、全くこちらに関心を向けない。

「やめて…お前は私が捨てた駒だろう…?なぜ?あなたは死んだ、私が切り捨てたはず…!」

ミラは中空の炎を、怯えた目で見つめていた。

ガツン!と音がした。

振り返ると、ゴーレムから瓦礫が落ちてきていた。

原因はわからない、しかしミラの魔力は不安定で、それに伴ってゴーレムが崩れかけているのだ。

「ユーリ!」

斜め上から声がした。

魔王が落ちてきたのだ。

「エメ!今助け…!」

踏み出した足元に、またもレンガのようなものが落ちてくる。

このまま崩落しては、三人ともが死んでしまう。

「…頼むぞ、魔力を使わせてくれよ、ニコラ」

ゴーレムの体が震え、瓦礫の落ちるスピードが上がってきた。

そのとき、俺は叫んだ。

「ニコラ!時を止めてくれ!」

 

世界が緑色に包まれた。

 

しかし、またも体は動かない。

頭に声が響く。

「あなたに30秒あげるわ」

「30秒?短い!そんなので、二人も安全な場所には運べないだろ!」

「だからこそ、よ」

ニコラが目の前に現れる。

「お久しぶり、勇者サマ?」

仰々しく挨拶すると、彼女は魔王を指差した。

「あなたの妻を取るか」

そして、ミラを。

「あなたの憎い相手を取るか」

「なんで…こんな選択をさせる?」

「言ったはず、愛には恐ろしい一面もあるって、だからこうして、選択を助けてあげてるのよ」

「なぁ、なんでそんなに一人にこだわるんだよ、みんなで仲良くするのが一番だろ!」

すると、ニコラがため息をついた。

「やれやれ…じゃあ、残り30秒…スタート!」

ニコラが消えると、体が自由になった。

まず、魔王を担ぐ。

しかし魔王だけ助けるつもりは毛頭ない。

「ニコラ、これが俺の答えだ」

ミラと魔王を並べて寝かせ、その上に抱きしめるように覆いかぶさる。

「愛を注ぐのは一人でいい、だからって、見捨てるなんてできるわけないだろ!命はもっと、大事なものなんだ!」

そう叫ぶと、頭で声がした。

「それが、あなたの答えならば、否定はしない、でも…」

そこで言葉は途切れ、辺りの魔力が薄くなる。

「でも、何だ?」

「今のあなた、3Pしてるみたいな構図よ」

「ぶっ!?」

時は動き出す。

盛大に吹く音とともに、瓦礫は無慈悲に落ちてきた。

 

重症の勇者と、傷だらけの、戦いの元の二人が発見されたのは、それから約3時間ほど後。

吸血鬼軍のほぼ全員が幻影を見て、戦意喪失したすぐ後のことだった。




終戦!
今までの暴虐が祟って、簡単にやられてしまいました…。
次回の次回くらいからは、リクエストにあった勇者のお墓まいりをやってみたいと思います。
随時リクエスト募集中!
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