ヤンデレ魔王に追い回される日々   作:パ〜ム油

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場所を戻して、勇者たち。
魔王と旧パーティを仲良くさせることはできるのか…?


実家挨拶(その5)

ワグナ村宿「わぐなぁ」

 

「ユーリ、私たちを仲良くさせようとする努力はおおいに受け入れますし、構いませんが…」

布団の上に立って、魔王は拳を握りしめてこちらを睨みつけていた。

「なんでッ!寝室まで同じなんですか!」

びっ、と指をさした先には怯えるような、可哀相なような目でこちらを見るネミルとハルカ。我関せずといった様子で窓の外を見るヘイジ。

「まあ待てよ、とりあえず今はお互いの目的から整理していくことが必要だ」

イスに座って魔王を手招きする。

「…ふんっ」

そっぽを向いて、俺の膝に乗ってきた。

「あのね、ユーリィ、私たちも真剣に話すんだからイチャラブはまた後でにしてくれる?」

「俺のせいなのか!?」

「そうです!そんな座り方、不純です!」

「あらあらぁ?賢者サマはこういう体位に関しても賢いものなのですね?」

顔を真っ赤にしたハルカ、げんなりしたネミル、俺にくっついて離れない魔王。

ラチがあかない。

「うるさい!」

「「「…ごめんなさい」」」

「眠るのは当分先になるようでござるな…」

 

1時間後

「ふーん?実家に帰るんだ?」

「ああ、少しの間お墓まいりも行ってなかったしな」

「ですが…そのためだけにわざわざ人間界に?」

「そのためだけ、ではありません、現に先ほどもサキュバスの盗賊をこらしめてきたところです」

サキュバスという言葉にぞくりと背筋が凍る。

「ユーリ?今なにを考えましたか?」

魔王が振り返って笑いかけてくる。

「えっ!?な、なにも!ほら、三人はなんでこんなところにいるんだよ?」

「…後で公開羞恥調教でもやりましょうか?」

「ごめんなさいやめてください」

「冗談です」

「私たちは、アンタたちが人間界に来たって情報を聞いてね」

「わざわざ先回りしてたのか?」

「忠告する意味も兼ねて、でござる」

ヘイジが重い口を開く。

ネミルたちはその言葉にひどく動揺した。

「ヘイジ!はっきりそんなこと言ったら…!」

「ネミル殿、ハルカ殿、それとない言い回しでユーリィ殿とその婦人を追い返すことはできないと、わかっているのでは?」

「ヘイジ?何言ってるんだ?」

魔王が真剣な顔つきで問いかけた。

「私たちを人間界から追い出す算段だったんですか?」

「追い出す、というのとは違うのでござるが、やはり結果的にはそのようなこととも言えるでござる」

ぽりぽりと頭をかいて、ヘイジはカバンから紙を取り出した。

そこには騎士団の装備改定の旨が書かれていた。

「装備改定?」

「今日の騎士団では、かなりの機械化が進んでいて…」

「ユーリ、全く書いてある言葉がわかりません」

「俺もだ」

「そもそも軍事機密とも言えるような書類だからね、身内に通じたらいいのよ」

「情報を流してるのがバレたらヘイジさんも危なくなるのでは…」

「心配は嬉しいが、それでもやらねばならぬこともあろう」

「けど、生半可な機械ならそれこそネミルとかでも破壊できるだろ?」

「私が弱いみたいな言い方やめて」

「そんなつもりじゃ…」

話をしていると股間がぐりっ、と腰で潰された。

「いででで!?」

「ごめんなさい、腰が滑りました」

魔王が不機嫌そうに言った。

「こほん、話を元に戻そう」

「すみません、うちのユーリが」

「俺じゃn」

「勇者様、少し静かにしてください」

あれ?みんな俺の敵?

「恐ろしい兵器は、まだ開発段階なのでござるが、魔力を無効化するような物だと聞いておるのでござる」

「魔力を無効化…!?」

そこにいた全員が、息を呑んだ。

魔族と人間との違いとして、魔力の最大量や使用効率が挙げられる。

人間は魔族に比べて、魔力をそれほど使いこなせない(俺みたいな才能や特殊な魔女家系を除いて)。

それに比べて魔族は、これまで俺が関わってきたミラ、魔王、ウルスラ、マリンちゃん、やや桁外れの力をもつ者が多いが、やはりそれでも強大な家系の魔族は単体でも国を滅ぼす。

それは魔族独自の魔力操作技術が無ければ不可能とも言える。

だから人間は自分たちの手で、硬い皮膚や鋭い歯を作り出そうとしてきた。

だから魔族は自分たちの手で、肉体を変え感覚を変えて様々な種に増えてきた。

「…どうやって、魔力を使わせないようにするんだ?」

「そうです、確かに魔術で魔術を封じることはできますが、魔族相手に魔術戦を挑む人間はいないでしょう?本当に機械単体でそれを行うんですか?」

「わ、私は魔術できるし」

するとヘイジは立ち上がった。

「拙者は、忠告しに来ただけでござる」

「…?」

「この兵器が投入される前に逃げるのが賢明…そう言いたいのか?」

ヘイジは黙って頷いた。

「拙者としても心苦しい、しかしことは一刻を争うでござるよ」

「もしも」

魔王の冷たい声が響く。

「もしも私たちにその兵器が使われなかったら、その兵器はお蔵入りになるんですか?」

「…いや、恐らく、別の魔族が狙われるでござる」

「なるほど、分かりました、ユーリ?そろそろ寝ましょう?明日の出発は早いですよ」

すると魔王は膝の上から立ち上がり、俺を米俵のように担ぎ上げた。

「エメ、どうする気だ?」

「どうするもこうするも、私たちは魔族の長と勇者の夫婦ですよ?同族がおかしな機械のテスターになるのを黙って見ていろと言うんですか?」

にっこり笑った顔に、少しだけ恐怖を覚えた。

「まさか、研究所を破壊するのか?」

「そんな手間なことしません、相手が仕掛けてくるまで堂々とお墓まいりに行きましょう」

その魔王の笑みは、なんだかとても危なっかしいように感じて、無意識に抱きしめていた。

「え?ゆ、ユーリ?珍しいですね」

「エメ、確かにエメは魔族の長だけど、その前に俺の妻なんだ、心配させるようなことだけはしないでほしい」

すると魔王も手を回して、背中を優しく撫でられた。

「ユーリ、私はユーリと一緒に死ぬまで、ずっとずっと添い遂げますから、約束です」

こうしてお互い10分ほど抱き合っていた。

が。

「あぁもうユーリの匂い嗅いでたら興奮してきました!」

「!?おい待て待て、ネミルたちもいるんだぞ!」

「確かにユーリの可愛い声を聞かれるのは癪ですが、そんなことは些細なことなんです!」

 

「…耳栓、ある?」

「コーヒーならあるでござるよ」

「淹れましょうか…」




今回は宿屋でほのぼの編でした。
新たな波乱の予感…?
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