またも勇者に危機が降り注ぎますw。
勇者の危機(その1)
朝。
目を開ける。
「はぁっ♡はぁ、ユーリかわいいですよ、私と繋がって、寝ながら腰動かしちゃって…♡可愛いですぅ…んッ!」
目の前に魔王の顔、よく見ると全裸で俺の上に乗っかって上下に律動している。
「…エメ、寝てる時にヤるの、何回目だ?」
「えっ?はぁ、はぁ、だいたい…24回目…ですねぇっ♡んんッ…!」
俺は深く息を吐いて、体に力をこめる。
「寝てる時にはしないって、約束だろうがぁ!」
起き上がる力でぶん投げる。
「んあぁッ!いきなり抜くなんて♡」
ベッドで腰を抜かしてぴくぴくしている。
とりあえず着替えようと、放り出すために魔王を抱えて扉に向かう。
と、急に扉が開いた。
「ユーリィ様、ノックの返事がな…い…」
絶句したウルスラの目には。
脱ぎ散らか(ひっぺが)された魔王の衣服。
汗とかで色々と濡れ、物欲しそうな顔で俺を見る魔王。
素っ裸で元気な愚息をさらして魔王を抱きかかえるその夫。
「ウルスラ!ユーリと愛し合ってるんです!朝ごはんなんかいりません!出て行きなさい!」
「ウルスラ、これは違う!決してそういうアレじゃ」
すると、気持ちの悪いくらいの笑みで言った。
「どうぞ、昼までごゆっくり?」
バンッ!と閉まった扉は、魔術結界の淡い輝きを放ち始めた。
「おい!?待て!シャレにならないっt」
肋骨でも折れそうな力の羽交い締めで倒される。
「えへ…えへへへへ…♡ユーリ…愛し合いましょうか?ウルスラの許す時間まで…♡」
8時間後
「はぁ…」
「夫婦の営みの後はお腹が空きますねぇ…」
すっかりお昼の時間に、冷めきった朝ごはんを食べる。
廊下ですれ違ったウルスラは心なしか痛々しい目をしていたように見えた。
「あ、ユーリ、そういえば」
魔王が緩んだ表情を戻して話しかけてきた。
「ん?」
「ユーリは、ヤマト?の国って知ってますか?」
「ヤマトの国…」
ヘイジの故郷の国だ。
確か、俺のいたヴァール国から船で2週間も離れた異国だったはず。
「ああ、とんでもなく遠いけど…そこがどうした?」
「い、いえ、何でも…」
魔王が目を伏せた。
その仕草の合間、魔王が暗い目をしたのを、俺は見逃さなかった。
「エメ、また何か困ってるのか?」
すると魔王はぎくり、と肩を跳ねさせて答えた。
「な、何言ってるんです?そんなわけ…」
食器を持つ魔王の手を掴み、目をじっと見る。
「正直に言え」
「あ、ぅ…」
目を伏せ、ぼそぼそ喋り始めた。
「その…魔族社会で言う、「身請け」をしたいと…」
「身請け…」
身請けというのは、魔族社会独特の文化である。
これは国王の名の下で行われる、一種の儀式的な国交行事だ。
まず、身請けを申し込む側の国は、申し込まれる側の国の土地や資源(ごくごく稀に種族や人間)を譲ってほしい、ということを伝える。
申し込まれた側の国が了承した場合、申し込む側は約束の物を手に入れる。
その代わりに、申し込んだ国は申し込まれた国と主従関係、あるいは国交を結ぶ。
今回、関係のよくないヴァール国のある向こう側の世界である、ヤマトの国から身請けの申請がきたというのは、人間と魔族が結ぶ初めての条約なり国交であると考えてよい。
その嬉しい知らせに、思わず叫んだ。
「やったな!ついに魔族と人間が国際的にコンタクトを取ったってことじゃないか!」
「最後まで聞いてください、身請けで向こうが望むものは、あなたなんですよ?」
「…え?」
「ヤマトの国は、あなたをヤマトの国に婿入りさせたら我々と主従関係を結ぶ、と言っているのです、宣戦布告に他ならないでしょう?」
全く、信じられなかった。
「なんで…俺を?だってヤマトの国なんて行ったこともなければ、その国の知り合いなんてヘイジくらいしか…!」
「その男も信用なりませんが、今のところは相手の出方をうかがってから決めます」
「何を決めるんだよ!」
魔王は苦虫を噛み潰したような顔で言った。
「戦争するかどうか、ですよ」
夜
俺は身請けの書状を魔王に見せてもらっていた。
「ヤマトの国の印も押してあるでしょう?」
「…ああ」
「ユーリはただでさえ人気なのに、あんなに離れた人間界からまで身請けしたい、なんて言われてはたまりません!」
「エメ、身請けは断るだけでもいいだろ?なにも戦争にする必要はないじゃないか」
「ユーリを、私だけのユーリを身請けしようなんて、送られた時点で相手からふっかけられたようなものなんですッ!!絶対に許さない、私が国王の首を引きちぎってやる!」
激昂した魔王は机を叩いた。
魔界樫でできた机には、数cmの亀裂が入った。
これまでにないほどの豹変ぶりに、言葉を失った。
「っ…」
「…ごめんなさい」
「エメが大事に思ってくれてるのはありがたいけど、やっぱり戦争なんかしたら、魔族と人の溝が深まるばかりじゃないか」
「それでも…私は…」
魔王の目は、かなり危うげに見えた。
俺は、魔界の指導者の一人なのだ。このまま魔王を放っておけば、本当に戦争をしかねない。
「今日はもう休もう、エメもきっと、旅の疲れが取れてないんだ、な?」
魔王の肩に手を置き、ゆっくりと立ち上がらせる。
「どこにも、どこにも行きませんよね、ユーリ」
涙をいっぱい溜めた目でこちらを見る魔王を、優しく抱きしめる。
「大丈夫、離れていても、ずっとずっと一緒だ」
「信じて…っ、ます…ぅ…」
泣きじゃくる魔王をベッドに連れて行き、頭を撫でてやると、すぐにすうすうと寝息を立て初めた。
「…おやすみ、エメ」
ウルスラやマリンちゃんも眠り、静かになった廊下を通って部屋に入る。
「…?」
部屋に入って机を見ると、そこには紙と、ついさっき墨を入れたばかりであろう筆が置いてあった。
「なんだ…これ…?」
机の前に立つ。
首に、ひやりとした感触があった。
殺すつもりなら、今とっくに首を切られているだろう。
声をできるだけ押し殺して、背後の者に語りかける。
「…狙いは、俺の命か?」
「黙って筆を取れ」
男とも女とも付かない声で、後ろの者は言う。
言われた通り筆を握る。
震える筆先を知ってか知らずか、全く感情を読み取れない声でそれは喋った。
「今から、我の言う通りに文字を書け、抵抗すれば貴様も、貴様の嫁も殺す」
「…わかった」
何をさせる気かはわからない。
が、これだけは分かった。
魔界や国の問題などではなく、俺と魔王に、重大な危機が迫っているということは。
今回はヤマトの国です。
ジャパニーズHENTAIは偉大ですよね…。
それだけ妄想ネタも増えるわけで、今回の悪役は和風のヤンデ(ry。
次回もお楽しみに!