ヤンデレ魔王に追い回される日々   作:パ〜ム油

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連れさらわれた勇者。
魔王は大変怒って…。


勇者の危機(その2)

その日、魔界から山が消えた。

朝日の差し込む大地に、青い稲妻が走って魔王城付近の山を消し飛ばしたのだ。

「エメラル様ッ!?」

仕えるメイドことウルスラは、主の部屋に走る。

「…ああ、ウルスラ、おはようございます」

宙に浮いてこちらを見た魔王は、全く笑わずにそう挨拶した。

「エメラル様、何をしているのですか!?今回という今回は、ユーリィ様とケンカしたくらいで山を吹き飛ばした、ではすみませんよ!」

流石のウルスラもカンカンに怒って叫んだ。

しかし、そんなウルスラを見て動じることもなく魔王は言い放った。

「いいえ?そんな些細なことではありません」

すっ、とバルコニーに降り立った魔王は、ある紙を広げてみせた。

「ユーリィが家出…いえ、連れさらわれたと見て、間違いないでしょうね」

そこには。

 

 

エメ、ごめん。俺は少し旅に出る。

行き先とかは気にしなくていいから。

その内帰る。

 

またな。

 

 

それを見たメイドは、薄く笑った。

「ああ、そういうことですか」

 

 

俺の記憶では、ヤマトの国は遥か遠くだったはずだ。

しかし、それはあくまでハザラの街の門を通れば、の話。

魔王城から出て数km歩いたあと、目の前の俺を誘拐した者は、真っ黒な装束に身を包み、巻物を手に何かを唱えた。

次の瞬間には、小さな港町にいたのだ。

転移魔法でも、世界をまたぐとなれば非常に負荷の大きい術になる。

それをやり遂げた者、即ち俺を攫った者は、一体。

「…どこなんだよ、ここ」

「ヤマトの国の港だ、あのカゴに乗れ」

そこには筋骨隆々の男が二人と、棒のついた箱。

「…え?乗れ?何に?」

「…主、カゴも知らんのか」

するとそいつは呆れた調子で指を指した。

「あのカゴに入れ、と言っている、聞かなければ…」

クナイ?と言うのだろうか。

ヘイジから聞いた暗殺者の武器を向けられて、丸腰(部屋着のまま)の俺は大人しくカゴに入った。

感想としては。

 

酔った。

 

「おお、やっと着いたか!わらわは待ちくたびれたぞ!」

カゴに乗って着いた場所、そこは立派な城の庭だった。

と言っても、俺の見てきた城とは違う。

黒い瓦を重ねた屋根、白い壁、重厚な門。

そして何より。

「わらわは主…ゆぅりぃと申したのう、主に嫁ぐ「雪」じゃ!光栄に思うがよい!」

目の前にいる女の子。

見た目からして12歳ほどか。

俺より年下なのは明らかだが、黒い瞳に白い肌、赤に所々薄桃色の花が描かれた着物と、目を引いたのが長細い刀。

「ご苦労じゃったの、もう帰ってよいぞ」

相当ご機嫌な様子で雪は言った。

「…さて、と」

男たちが城から出るのを見て、雪は俺に目を向けた。

「主様、わらわと少しお話といこうかの?」

その目は暗く、色々な感情で淀んでいた。

 

城の最上階であろう部屋(といっても恐ろしく広く「ふすま」とやらが部屋を仕切っている)で俺は雪と二人きりになった。

二人きりになった瞬間、雪は俺に飛びついてきた。

「主様ッ!」

「ッ!やめろ!」

抱きついてくる彼女を引きはがす。

「ふ、そうじゃな、まだ主様はこの状況を飲み込めていないのであったな」

「俺を攫って、狙いはなんだ!エメか?魔界か?」

「わらわはそんな物に興味はない、ただ一つ…」

襟首を掴まれて恐ろしい力で引き寄せられる。

黒く、吸い込まれそうな瞳はこちらをじっと見据えていた。

「ゆぅりぃ、主様を一目見てみたかったのじゃ」

「…なんで、俺を?」

にたりと笑って手を離す。

彼女の瞳と迫力のせいか、腰に力が入らなかった。

「ふふ、兵二…ヘイジ、といえば分かるかのう?」

「ヘイジ…俺の、仲間か?」

「うむ、兵二がつい先日にヤマトの国に帰ってきてのう、そこで主様の話を聞いたのじゃ!」

あのヘイジが俺を売るような話をするはずがない。

「話って、どんな?」

「自分が今仕えている者は、自分より年下であるのに強大な力を持ち、さらに優しさまでも持ち合わせた者であるとな!」

にははは、と笑う彼女に愛想笑いしながら言う。

「ならもういいだろ?帰してくれ」

「気が変わったのじゃ」

また抱きつかれる。

今度は、なぜか力の入らない体のせいで振りほどくこともできずにいた。

耳元で、甘い囁きが聞こえる。

「主はわらわと結婚するのじゃ、主の望む物は全てある、わらわが相手なら、文句も無かろ?」

聞くだけで頭の半分が痺れたような感覚のする声。

彼女の目も声も、なぜか俺の自由を次々と奪っていく。

そんな彼女の力に抵抗するために、俺はできるだけ冷たい声で言った。

「俺にはエメがいる、アンタと結婚なんて無理だ」

すると彼女は俺から離れて、淀んだ目で笑った。

「ふふ、主様ならばそう言うと思っておったわ」

次の瞬間、強い衝撃と轟音とともに、俺は壁に押し付けられていた。

咳き込むことも許されず、叩きつけられ、襟首を掴まれたままの姿勢で彼女を見る。

「判断を下すのはあくまで主様じゃ、しかし、あまりわらわを怒らせぬ方が良いぞ?」

 

「わらわは、そう気が長くないのでのう?」

 

空いた手で刀を抜き、眼前に切っ先を向ける。

「…刺すなら刺せよ、アンタに屈しはしない」

そのまま睨み合う。

と、急に手を離されて、俺は床に尻もちをついた。

「わらわは優しい、だから主様のわがままにも、少しの間なら待ってやろうぞ」

キンッ、と音を立てて鞘に刀を収める。

「忘れるでないぞ?主様の真の嫁は、わらわ、この雪であるということを」

笑う彼女は、何を考えているか全く分からない。

 

ただ一つ、俺を壁に吊り下げた時の彼女の目は、本気であったということ以外は。

 

「ふ、長旅で腹が空いたであろ?昼食にしようぞ」




今回のヒロイン登場!
情緒不安定ナルシスト(?)束縛系ヤンデレ!
…キャラぶっ込みすぎて、自分の技量じゃうまく描けないかもですが、どうぞ暖かい目で見守ってください!
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