ヤンデレ魔王に追い回される日々   作:パ〜ム油

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今回は雪とのいちゃらぶ回でござんす。


勇者の危機(その4)

「のう主様、そろそろわらわと結婚したくなってきたかのう?」

夜、食事を済ませた後の布団の上。

俺の膝に雪が頭を乗せて、上機嫌に話していた。

「何度も言ってる、俺は雪と結婚するつもりはこれっぽっちもないんだよ」

斬りつけられないように、努めて優しい口調で言う。

「…のう、わらわに魅力は無いのかの?」

「いや、魅力があっても、俺には…妻がいるんだよ」

「主様はわらわのことをもっとよく知るべきじゃ、でなくては結ばれるものも結ばれぬ!」

「…」

「ふふ、聞く必要はない、わらわが寝るまで相槌を打って、そのあとまた求婚すればよい」

笑う彼女の顔は、幼い少女の笑みだった。

その笑顔には何の穢れもないように見えた。

少なくとも、剣が腰から少しだけ浮いたその一瞬には。

 

「わらわの兄者はな、「鬼」と呼ばれるほどに強い男であったのじゃ」

「…ヘイジが言っていたよ、この国を実質たった一人で征服した男がいるって」

「兄者はこの椿を片手にな、戦場を咲き乱れる椿のごとく、真っ赤に染めたそうじゃ」

椿の柄に手をかけてまた笑った。

「兄者は人を斬り、従え、国を統一した、しかしわらわには兄者が本当に鬼になるのではないか、と思えたのじゃ」

「鬼?」

「うむ、悪い意味での鬼…兄者は椿を振るえば振るうごとにその心が荒んでいくように見えた、国を統一するまでは、兄者はいつも戦場から帰ってきて、どれだけ疲れていようが剣を置いてわらわと遊んでくれていた」

「戦争で荒んでしまったわけじゃないのか?」

「それもあるやもしれぬ、けれど…わらわにはもっと恐ろしい者による力としか思えぬのだ」

ころ、と寝返りをうって言った。

「兄者の心は確かに歪んだ、仲間も意思にそぐわないと判断したなら簡単に切り捨てるようになってしもうた、愛や絆や義理を捨てて、渦巻く独占欲をむき出しにしているように思えてならなかった」

顔を背けているが、背中が震えていた。

その背に手を当てて撫でる。

「…それで?お兄さんは?」

「兄者は亡くなった、椿を自らに刺して自室で独り、苦悶の表情を浮かべておった」

鼻をすする音が聞こえた。

頭を撫でてやる。

「お兄さんのことが好きだったんだな」

「大好きだった…けれど兄者はもう…そしてわらわも…」

「…」

「わらわもまた、独占欲が、残酷さが現れておるのじゃ、なあ主様よ、わらわを嫌うか?かような独裁を繰り返すわらわを、嫌いになるのか?」

俺の腰を掴み、顔が引き寄せられる。

突然のことに抵抗するヒマもなかった。

柔らかな唇の感触。

「…雪」

「けれど、わらわはこれだけは言える」

服を強く掴み、目に涙を溜めてこちらを見ている。

「主様を欲するのは、土地や財産などではない、独占欲によるものなどでもない!ただ、ただわらわは…!」

がたん、と椿が畳に落ち、雪は俺にしがみついた。

「わらわは主様が好きなだけじゃ!ヘイジに聞き、忍を主様の元に遣って観察させ、そして決めたこと!これは愛じゃ、主様がわらわと共になるのなら、わらわは独裁もやめる、城も何もいらん!」

「雪、落ち着け、そんなに話したら眠くもなくなるぞ」

「…ッ!その煮え切らない態度がッ!」

起き上がり、俺を布団に押し倒す。

「わらわの我慢に、細い針を突き立てるように、それでいて甘い香りのように誘惑しておるのだ!」

おもむろに着物をはだける。

怒りか恥ずかしさか、その上気した顔が近づいてくる。

「待て!俺は雪とは…!」

引き剥がすべく暴れた。

足に冷たい椿が触れた。

その時。

「「!?」」

赤と白の火花が椿から生まれて布団に飛び散った。

「な、なんじゃ?何が起きた?」

「…」

椿を下ろし、少し離れる。

焦げた布団からは俺の僅かな魔力と、魔力とは違う何かの力を感じた。

胸がざわついた。

何かは分からない感覚が体を巡ったのだ。

「…すまぬ、迫っても困惑させるだけであった、主様を経験豊富なわらわがリードせねばならぬ、と焦ってしもうての」

目を逸らして言い、布団に隠れた。

「絶対経験豊富じゃn」

「斬るぞ」

 

魔王城

「ウルスラ、装備は?」

「整っています、人間ならばこれで十二分でしょう」

「人間ならば…ですか」

「…?何か気にかかることが?」

「いえ…何でも…」

「…お姉ちゃん、ホントに魔王軍とかと一緒じゃなくて、私たちだけで行くわけ?」

「当たり前です、魔王軍みたいな荒っぽい連中がユーリに触れるのなんて、考えただけでもゾッとします」

「霊の私がなんで四人の特攻部隊に入れられるのよ…そんな余力があると思うの?」

「お母さんは霊力を余らせすぎです、そんなに性欲と霊力があるなら色仕掛けでもしに行けばどうですか」

「あら、人をそんな風に言うなんて、お母さんそんな娘に育てた覚えはないわよ」

「…お母さんは確かに働いてほしい、お兄ちゃんもいっつも干からびるくらいヤられてるじゃん」

「ええ、あのヒトかユーリィ君にしか手を出さない分溜まって溜まって仕方ないのよ」

「こほん、皆さん、今回の作戦は奇襲で城を混乱させた後にエメラル様が総大将を倒すのが流れです、分かりましたね?」

「はいはい」

「各々の任務を果たす上で、絶対に勝手に動かないことです、いいですね?」

「…ウルスラ、私たち魔王家にルール求めてどうするの?」

「ええ、型破りが当たり前よ、人間みたいに律儀な作戦なんてやっていられないわ」

「…はぁ、出発しましょうか」

 

その日、魔界最強にして最小の軍が進軍を始めた。




次回は「儀式」です。
今回ニコラたんを使わない説明も次回かその次あたりになると思われます。
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