ヤンデレ魔王に追い回される日々   作:パ〜ム油

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雪編はここで終了。
次は何書こうかなぁ…リクエストないかなぁ…。


勇者の危機(その6)

魔王は強い。

そんなこと、魔界でも人間界でも当たり前だ。

どちらの世界にも、魔王に敵う力を持つ者は勇者を除いて、いない。

 

そう思っていた。

 

 

「くッ…主様、わらわを、椿をなぜ拒否する?」

雪が椿を突き立てようとすること50回ほど。

まだ椿は俺の肌に傷一つ付けられない。

ドッ!と城が揺れる。

「ええい!なぜ守らん!このままでは城が崩落するぞ!」

ふすまの向こうに怒鳴る。

すると、ふすまが荒々しく開き、血を流した男が壁にもたれかかっていた。

「申し訳ござ…いません…敵の侵入…が…」

「…ふん、役立たずが」

 

雪はそれを、椿で両断した。

 

「…」

俺がその光景に絶句していると、雪がこちらを無表情で睨んだ。

「主様はそこにおればよい、わらわが直接出向く」

「雪、部下をなぜ殺した!?殺す必要はないだろ!」

「主様とわらわの空間に、このような小汚い血と敵の侵入を許した、それだけで万死に値するのじゃ!」

俺の中の何かが切れた。

「ふざけるな!横暴もいい加減にしろ!」

「主様には関係ないわ!わらわは今から胸糞の悪い女を殺しに行く、主様とのお話はまた後じゃ」

そう言って振り向きかけた。

 

その瞬間。

 

「いいえ?また後、なんて機会は存在しません、貴女は今日ここで死ぬんですから」

 

ボッ!と音立てて、雪の横っ面を魔王が殴り抜いた。

 

一発殴られただけとは思えないスピードで吹き飛ばされ、天守の柵をミシミシと折ってようやく雪は止まった。

「エメ!」

「ユーリ、待たせてしまいましたね」

俺に駆け寄る魔王。

しかし。

 

「わらわの物に触れるな…それはわらわの所有物であるぞ…」

 

刀が俺と魔王を分かち、畳を切り裂いた。

「ふん、まるでバケモノですね、封じるだけの能無しのくせに…」

見れば魔王の背には、大量の札が張り付いていた。

「エメ、それは…!?」

「恐らく、私の魔力はこの札に封じられています、侵入した時に即座に張り付いたところを見るに、この屋敷に入った者はみな力を奪われるのでしょう」

俺がニコラを呼び出して逃げられなかったのも、それならば納得がいく。

「くくく…それ以上は…」

床に刀一本で亀裂を入れた雪がにじり寄る。

「…妖刀に憑かれた寝取り女、ですか、厄介この上ないですね」

「妖刀?」

「え?知らないんですか?あの赤い呪力は人に欲を生じさせる効果があるんですよ」

見れば雪の体はオーラのようなもので真っ赤になっていた。

「ふう…かかってきなさい?どちらが上か見せてあげますから」

魔王が剣を抜いた。

 

初めて魔王の間に来た時のような、重くて冷たい感覚が走った。

 

「…!」

睨み合う二人。

魔王は魔力が封じられているとはいえ、普通の人間相手になら力技でねじ伏せられる。

 

妖刀相手なら?

 

魔王が目にも留まらぬ速さで踏み込んだ。

剣がぶつかる重い音が響き渡る。

ガッ!ゴン!という、とても剣技による音とは思えない大きな音が連続して聞こえる。

その度に、畳は裂けて城が揺れる。

「ッ!?こいつッ!」

魔王が小さな悲鳴を上げる。

血が飛んだ。

二人が動きを止める。

「わらわから物を奪おうなどと不届きな…」

魔王が肩を押さえて間合いをとる。

ぐっしょりとかいた汗は、悪い色の顔を伝っている。

「…エメ?」

「ユーリの心配することではありません、私が片付けます」

魔王が震える剣先を向ける。

あれだけハードな動きをしてまだ立っていられる方がおかしいのだが、魔王には余裕があるようには見えなかった。

魔力で身体能力をあげる魔王に、魔力の禁止は致命的なハンデになっている。

「さて…とどめといくかのう」

言うなり雪は剣を地面と水平に構えて突進した。

「…!」

魔王はチャンスと言わんばかりに腹に向けて剣を突き出す。

その剣は雪の腹を貫いた。

しかし。

「う…ぅッ」

腹を刺してもビクともしない雪は、柵のない、そのまま落ちてしまいそうな天守に魔王を押し付けた。

「く…ここで落ちるわけには…!」

魔王は柵のあった出っ張りに掴まって、必死に耐える。

「エメ!」

「落ちろ…死ね!死ねェ!」

雪が魔王の手を踏みつける。

「ッ!汚い足を載せるな!」

「ふん、土足で上がり込んだ者がよくもまあ言うわ!」

魔王は苦痛に歪んだ顔で、何かを雪に投げつけた。

「何だ…これ…?」

雪は床に落ちたそれを、恐る恐る見る。

 

ビィーー!!

 

丸い筒に入った油紙が振動し、大きな笛の音を出す。

「こんな物で怯むか!」

「ウルスラ!今です!」

ガッ!と雪の胸に青い光弾が当たった。

そこに瞬間移動してきたかのような、強烈なスピードのものだった。

「くッ!こやつ…!」

「ふッ!」

魔王が飛び蹴りをかます。

雪はよろける。

が、しかし。

「…わらわの、最後の意地を見せてやるわ!」

椿を床に刺し込む。

すると魔法陣のような物が床いっぱいに展開された。

「…これは、何だ!?」

「ユーリ!脱出しましょう!」

「え!?」

「城が崩落します!」

「わらわの者は逃がしはせんぞ…!必ずや…!」

城が大きく震える。

魔王にロープを切断してもらい、その手を引かれて俺は天守の前に立った。

魔王に魔力記号の並んだ札を握らされる。

「飛行魔法の準備をします、ユーリは札に魔力を通してください!」

 

目を閉じて早口で何かを詠唱している魔王。

 

その後ろでは負けじと魔法陣を作動させている雪。

 

俺は札に魔力を入れるのをやめて、雪の方へ走った。

「ごめん、魔王、まだやらなきゃいけないことがある!」

「ユーリ!?」

走った。

狙うは椿。

俺は椿に触れるたびに、力が抜けていくような感覚に陥っていた。

 

俺の力は椿に反発されている。

 

力が力を拒否するということは、相反するということ。

 

ならば。

 

俺は椿を抱きしめた。

バチバチと白い火花が体中から散り、椿が腕の中で暴れ出した。

「ユーリ!?やめてください!それではユーリの力を消耗してしまいます!」

「エメ!雪を連れて脱出してくれ!」

詠唱していた雪は、椿の力を失ったからか、その場で倒れ伏していた。

「もう崩落は止まらない!俺は自力で逃げるから、さっさとしろ!」

「ユーリ!わがままもいい加減に!」

俺は雪を魔王の方へ突き飛ばした。

「必ず帰るから!俺を信じろ!」

「…ユーリの信じろ、はアテになりませんけどね…」

「いいから!帰ったら好きなだけ相手してやる!」

 

「約束です、必ず帰ってくること!」

 

「分かった!」

 

そう言って、魔王と雪は消えた。

 

その日、ある城が崩壊した。




駆け足の追い込みになってしまった…。
やはりアイディアの乏しい自分ではリクエストほどの膨らみにはなりませんね…w。
すみません、これからもっともっと精進します!
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